無事に戻りて
あの後僕たちは、負傷者を台車に乗せて特に会話をすることなく城に戻った。砦内での戦闘の爪痕。味方の大量失踪。そして、生存者が若干名という最悪を目の当たりにしてきたのだ。戦場を経験している大隊長もスノウ隊長もこの不可解な事象に頭を悩ませ、初陣に近いレイルさんは顔を青ざめ俯いている。
僕?僕はほら…。あっそうそう!報告はしたよ!官舎に戻って、大隊長がね。あの隊長殿は命からがら逃げてきたみたい。大分錯乱してるから、復帰は絶望的かなぁ…。
その点、レイルさんは官舎に着いたら直ぐに同期を掴まえて、街に繰り出していた。甘いものを食べて発散するらしい。まっ発散できるならしたほうがいい。この先何があるかわからないからね。
「マートよ。よくぞ無事に…無事に戻ってきてくれたぁぁぁ!儂は儂は…」
「将軍…ぐるじぃ…」
戦場で生き残ってきた…。戦闘はなかったけど、せっかく帰ってきたのに…死にそう…。
「旦那様。そろそろマート様を開放なさいませ。顔が青を通り越して土色ですぞ」
「おっ…おっ!まーとぉぉぉ!おのれぇ!誰が斯様仕打ちを…!!!」
「ゲホッゲホッ…いやっ…将軍…貴方の…」
うぅ…やっと開放された…。抱きしめてくれるのは嬉しいけどさぁ…。丸太2本に、熊レベルの力で抱きしめられたらそりゃぁ息だってできないさ…。止めてくれてありがとう…。
「なんのなんの。旦那様のマート様に対する愛情は
、山よりも高く海よりも深いですからな」
いやいやいや…ナチュラルに心を読まないでよ…。
「ふぉっふぉっふぉ」
はぁ…。まぁいっか…。後ろでマートマートと五月蝿いよ…将軍…。
「将軍…将軍…。…義父上!」
「…ッハッ!…ふむぅ…普通に父上で良いのにのぅ…。まだまだ壁を感じるが…」
「取り敢えず…なにか食べたいです…」
「おぉおぉ!これはすまなんだ。頼めるか?」
「既に食堂に準備してございます」
「ふむ。流石だな。マート。それでは夕餉としようか」
「はい!」
晩御飯は、いつもよりちょっぴり豪華だった。戦場に出るといつもこうしてくれる。僕は、迷い込んだ拾い子なんだけどね…。それは置いておいても、嬉しいことには変わりない。話す内容は血生臭くて気分は沈むけれど…。仕事上の話だからと割り切っても、作ってくれた人に悪いなぁなんて…。さっ。今日も食事が摂れたという『運』の良さに感謝しつつ、明日も頑張ろう。




