敵陣にて
「…うんしょっと…」
いやぁ…道中、敵と一切遭わなかった。索敵も一応はしていたけど、無駄に終わっちゃった。一本道で本陣まで一直線なんだけどねぇ…。これは誘われているのかいないのか…。
それと、入口に近づくにつれて坂を登ってきた。流石に、入口から紐なしバンジーではなかったみたい。そこは安心…。
「うぅん…。半径2㎞範囲に敵性反応と生体反応なし…か。うぅん…放棄されたって感じかな」
陣内を歩いてみると、兵士用の天幕の数が極端に少ない。竈も同じく。将軍用の天幕は少なくていいんだけど、これは明らかにおかしい…。
砦に飛んできていた矢の数。勿論、魔法で反射していた分を除いても、攻城兵器の操作やら穴を掘るやら射手やらを鑑みて、この陣には少なくとも1万の兵士がいたはず。なのに、天幕の数は2000人を少し超える程度の量。探索魔法で調べてそうなのだから、やっぱりなにか変だ…。
「うぅん…これはやっぱりそういうことなのか?でもなぁ…うぅん…」
◎
「あぁ…貴方様は今何方にいらっしゃるのでしょうか…。あぁ我が君…」
「失礼いたします!」
「なに?」
「例のものが届きました。至急…」
「わかりました。向かいますから、早々に去りなさい」
「はっ!」
あぁ…。突如として姿をくらましてしまった我が君…。疾く疾く、お姿を発見し、このような暗く湿気っている地下から這い出しとうございます…。
◎
「うぅん…。目新しいモノはない…か。ん?」
なにか一瞬だけど、魔力の揺らぎを感じた。なんだろう…。背中がゾワゾワするこの感じ…。得体のしれない何かが近づいてきている?それとも電池の前触れ?
なんか嫌な感じがするから、放出している魔力をしまって…。痕跡は…自然なようにしてっと…。偵察は引き際が肝心。ってね!
マートが穴に入った直後、揺らぎから一人の女性と、小柄な兵士が現れた。女性は、少しマートがいたであろう場所に目を見やり、訝しげな表情を浮かべたが、兵士に促され将軍用に張られていた天幕の中へと姿を消した。




