一悶着
とりあえず、僕たちは彼女たちと無事に合流を果たした。負傷者を連れ立ってのことだったので、レイルさんは少し動揺していたけど…スノウ隊長は、テキパキと行動してくれて、砦副将さんたちを打ち捨てられていてまだ無事な荷台に乗せることができた。僕たちが持ってきた荷駄は、荷物を降ろしてはいないからね。
「…と言うわけで、聞いての通り。また、見ての通り、この砦の戦略的価値は著しく低下した。スノウ。見立てはどうか」
「正しく、大隊長閣下が仰る通り、この砦には戦略的価値は最早ありません。ですが、マートが言うように調査もまた必要かと」
「うむ。して、マート。調査はこの面々で行うのが良いか?」
「うぅん…本来なら…ね。でも…ですが…負傷者が居るので、早急に領都に送り届ける必要があるのも事実なので、僕一人で調査をしようかと」
「なっ!?」
「うむ…大変心苦しいことではあるが、致し方あるまい」
「だっ…大隊長閣下!直言をお赦しください!」
「なにか?レイル」
「はっ!あまりにも、マートの考えは無謀すぎます!1人で…敵がまだいるかもしれない場所の調査など…まずは、負傷者の命を第一にすべきであると愚考いたします!」
「そうか…」
「わっ…わたしっ…は…。マートさんにお願いすべきだと…」
「何故です?隊長!」
「れっ…レイルさんの…言うことも、間違いでは…ないです…「ならっ!」ですがっ!敵が…残していった痕跡を消してしまうかもしれない。それに!この砦に、我が軍の人間は…誰ひとりとして居ないんです…。ここから大挙して…敵が現れたなら…領都は一溜まりもないんです!」
「でもッ!マートは、ただの一兵卒ですよ!?彼に何ができるって言うんですか!?」
「そっ…それは…」
言い淀みながら、僕の方をみるスノウ隊長。はぁ…仕方ない…か。僕は、大隊長を見て、スノウ隊長を見て、頷く。大隊長が息を呑んだけど、ここは仕方ない…。
「レイルさん…。僕は、多分…。ここにいる誰よりも、魔法の使い方が上手いんだ。自惚れでもなんでもなくて…ね」
「うそよ!そんなの絶対嘘!だって、自分から凄いなんて言葉は出ないはずだもの!」
「まっ…まぁ…それはそうなんだけどさ…。スノウ隊長の試験記録ってあるでしょ?」
「ええ。1位よね。でも…その上にまだ人が存在するような記録になっていた気がするわね。それが?」
「本来の1位は僕」
「はあぁぁぁ!?そんな訳…」
二の句をつごうとすると、大隊長とスノウ隊長の2人が、レイルさんに向かって頷く。2人の様子から、僕の言葉が本当であろうと、少し疑うのを抑えるレイルさん。
「それじゃぁ…。アタシと勝負してよっ!」
「うぅん…」
「今はいいわ!そこまでアタシも馬鹿じゃない。領都に戻ってからでいい。だから、アタシと勝負してっ!」
「えぇ…」
面倒くさい…。助けを求めるために、大隊長に視線を投げかけたけど、諦めろ。そう目が語っていた。せめて…目立たないところで…あっ。大隊長が人払いしたうえで、領都郊外の訓練場を使わせてくれる?はぁ…。スノウ隊長に至っては、キラキラした目で見てくる…。あの人も、魔法バカが大概だからなぁ…。
「はぁ…。わかった。戻ったらね…。それじゃあ…大隊長。スノウ隊長。レイルさん。砦副将さんたちをお願いします」
「うむ」「はい!」「ええ」
こうして僕は1人この砦に残り、領都に戻る荷馬車を送り出し、砦内の調査に取り掛かった。まぁ…1人で調査できるなんて、こんなに【運】がいいことなんてないよ!さぁ…どんな痕跡があるのやら。まっ…おおよそ、胸糞悪い結果にはなるだろうけどね…。




