音無の砦②
なんだろうなぁ…。僕は大隊長と一緒に砦の中に入った。さっきまでそこに人がいた。と評するに値するほどの生活感があるのに、人影は疎か音すらない。2人はお留守番。あれだけの荷物、野盗の類に狙われてもおかしくないからね。まぁ2人の力量と持ってきた荷物を使えばね。スノウ隊長には、中身を使って良いよっめ言ってあるし。
「主よ。不可思議であるな」
「どの辺りが気になる?大隊長は」
「慌てたように打ち捨てられた荷駄と足跡。先程まで人がいたであろうと推測される居住スペースや、調理場からの炊煙の立ち昇り方。足跡に関しては、規則性はなく、てんでバラバラ。敵襲でもあったのか。そう考えられるが、であれば打ち捨てられた武具が…抑、斃れた兵がいるはずなのにそれすらない。おかしすぎるではないか」
「うん。それは、僕も思った。でもね…」
「ん?いかがした?」
「それ以上に、この音の無さと…ふざけた魔力の歪み方をしているんだよね…これは、無音というか、風魔法の応用?風をひとまとめにして、音を漏れないようにしている…?いずれにせよ、異常な事態がこの砦襲っている感じなんだ」
「ふむ…ワシもなんとなく感じていた、この気持ちの悪さは、そうか。魔力の歪みであるのか。して…いかがする?」
「うぅん…多分、予測としてはあそこ…」
「ふむ…」
僕が指を指したのは、西側の楼台。四方を分厚い壁に囲まれ、高さも十分なこの砦。壁の内側には、兵4人並んでが通行できる通路が巡らされている。そこに銃眼を設けて、敵を撃つのだけれど…。
「当然、銃眼は内側を向いているわけはないから、壁内の様子がわからない。だから…。この砦は、東と北に壁内に入れる階段が設けられていたはずだから、怪しい西の楼台に向かってみよう」
「それはなぜであるか?」
「ん?足元の足跡だよ」
「ふむ…。ん?…!」
「そう。とっても慌てていたんだと思うのだけれど、途中から足跡が規則的に2つの方向…北と東の階段に向かっている。だからそこに向かおうかと」
「しかし…なぜ西に的を絞るのであるか?南にも楼台はあるが…」
「だって…僕たちは、南東の方向から入って入って来たでしょ?とりあえず、レイルさんの報告にも異常性がなかったから敵兵やら何やらがある可能性は低いかなと」
「だからこその東側の階段であるか」
「うん。北から登って、敵兵や混乱した味方に攻撃されるのは御免被るからね。遮蔽物…あるかはわからないけど、迂回して様子を見つつ怪しい場所に向かうのが、やっぱりいいよね。こちらは2人しかいないから」
「うむ。では、向かうとしよう。主のサポートは安心してほしい」
「うん。大隊長は、僕の事をよく知ってるからね。よろしくね?」
「おまかせを!」
そう言って、頼もしい胸板を右の拳で打ち付け、敬意を評してくれる大隊長殿。いやぁ…今の僕の階級は一般兵なんだけどなぁ…。今までの会話、レイルさんに見られたら、お小言ハリケーンだよ…。っと、そんな冗談はおいておいて、侵入してみよう。この不思議な不思議な砦の内部に…ね。




