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第八話 恋心

 第八話です。


 ラブコメ要素がとうとう、出てきます。


 えぇ、覚えたての「色悪」という言葉を使ったので、精度に問題あると思いますが、今日もよろしくお願い致します!

13


 ベイカー・鈴は事務所の一室でひたすら、何もしない状態を続けていた。


 あの事件を経験してから、力が入らないのだ。


 しかし、前に踏み出さないといけないのは事実だ。


 とりあえず、気分を変える為に休憩がてら、テレビを点けた。


〈指定暴力団黒陽会会長の藤宮勇作が新宿のホテルで機鋼会会長の篠田健介と会談をーー〉


〈ここ、新宿は黒陽会会長と機鋼会会長の会談があるとの事で、警察当局と暴力団が入り乱れる、厳戒態勢となっております!〉


 その厳戒態勢となっている、新宿の様子を眺めながら、身震いをした。


 あの時の犯人は暴力団関係者と聞いていたが、その正体は奴らの親である、政治家と官僚に対して、福祉事業の利権に関する、恫喝を行う為に送られた殺し屋だと週刊誌で書かれていた。


 その時の様子として、大学生たちに強姦されかけた女子大生に関しては表向き上、不明。


 しかし、ネットの匿名掲示板では堂々と鈴の名前が飛び交っている。


 公式情報ではないと言う事で、芸能活動は休止にはならないので、一安心だが、心無い、誹謗中傷には泣きそうになる心境だ。


 もっとも、芸能活動休止以前に仕事が無いのだが。


 それにしても、あの時の犯人は・・・・・・結鶴の匂いがした。


 声も似ている。


 気のせいだと思いたいが、結鶴が犯人なのか?


 しかし、鈴はすぐにそれは現実離れした考えだと思い直した。


 結鶴がまさか、殺し屋であるわけ・・・・・・


 そう思っていた、鈴はスマートフォンを取り出して、秋山結鶴の名前でネット上の検索をした。


 出てこない。


 彼はツイッターやインスタグラムなどの一切のSNSをやらないことが見て取れる。


 そこから、隠し撮りした、結鶴の写真を眺める。


 我ながら、ストーカーじみているな?


 そういう時だった。


「鈴、調子はどう?」


 マネージャーの川野が様子を見に来る。


「はぁ」


「事態が事態だから、休学してもーー」


「そんな学費あると思いますか?」


「そりゃそうね?」


 そう思っていた時だった。


「鈴? その子・・・・・・」


 川野は目を丸くする。


「えっ? 違う! 違うから! 何でもない!」


 何も言われていないのに狼狽する。


 自分が通っている同じ大学に行為を抱いている男がいることを事務所に悟られたくないからだ。


 どうせ、知られたら、叶わぬ恋になるのだから。


「渋谷で現職の警察官をボコボコにした子じゃない!」


 えっ?


 どういうこと?


 渋谷で現職の警察官をボコボコにした?


「確か、渋谷駅で現職のSPが大学生風の男にいいようにボコボコにされて、痴漢の罪で捕まったって聞いたけど・・・・・・・」


 えっ?


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


「その子! その子が現職の警察官をボコボコにして、一部で英雄扱いされているのよ!」


「えっ、犯罪じゃん!」


 川野は「いや、いや、いや。痴漢をした警察官を過剰正統防衛とはいえ、御用にまで導いた人間だから、ネット上じゃあ、勲章者扱いよ? 警察は現職のしかも、SPっていう、エリートがやった犯罪だから、表彰は出来ないけどさ・・・・・・何で、その子の写真持っているの?」とまじまじと鈴の持っている写真を眺める。


「大学の同級生なんだよね?」


「あぁ・・・・・・そうなの? 鈴って、案外そういう強くて、悪い子が好きだよね?」


「結鶴君は悪い人じゃない!」


 鈴がそう反論すると、川野は「ちなみに現在、動画は削除されているけど、拡散はされているからねぇ・・・・・・ただ、動画を拡散した人間の投稿が途絶え続けているという謎の現象が起きているから、何か、この子はかなり、ヤバい素性を抱えているんじゃないかと言われているのよねぇ?」と言い出す。


「ヤバい素性って?」


「その道の関係者とか?」


「結鶴君がヤクザだって言いたいの?」


「堂々と口にするんじゃないよ! とにかく、その同級生とは距離を置いた方が良いよ! これ忠告だからね? 休みな? 十分にさ?」


「分かりました・・・・・・」


「あんたが心配でしょうがないよ。こういう危なくて、悪い男が大好きでしょうがないんだもの?」


 そう言って、川野は「じゃっ、変な気を起こすなよ?」と言って、部屋を出る。


 結鶴君がヤクザの関係者?


 だとしても、どうして、大学に通えるのだろうか?


 いや、ヤクザの関係者だとしても学問の自由とかがあるから、大学には通えるとは思うのだが・・・・・・


 どうしよう、凄い、気になる。


 結鶴君のあの色気はここから、来ているのか?


 そう考えると、鈴は益々、結鶴の写真をまじまじと眺めていた。


「まずいなぁ」


 鈴は結鶴に再会するのが待ち遠しくなってしまった。


 そういう知性と力強さと滲み出る、暴力性を隠せないというのならば、ますます、男として惹かれてしまう。


 そういう男を求めていた。


 テレビを観ながら、思わず、笑みがこぼれる自分がいた。


 すると、そこに出て行ったはずの川野が部屋に入って来た。


「うわぁ!」


 驚いて、椅子からずっこけてしまった。


「にやけるなよ。確かにあの子、格好良いけど、社会的にマズいかもよ? まぁ、何度も言うけど、そういう男が好きなのはあんたの昔からの好みだけどさ?」


「でも・・・・・・結鶴君がまだ、ヤクザの関係者か何かなんて、分からないじゃん?」


「真面目な優等生女子に限って、色悪に心惹かれるのよね? 困ったわよ」


「色悪って、何?」


「まぁ、歌舞伎の役柄の一つで格好良い極悪人というところね? コンビニでたむろしているチンピラとか中学生のヤンキーとか軟派なホストやお笑い芸人風の崩れたお調子者程度とはワケが違う、二枚目の超極悪人だけど、マジで関わるなよ! そういう色悪に惹かれるのは一女性として、分かるけど!」


 色悪か・・・・・・


 確かに結鶴君にはそんな感じも抱けるな?


 変な正義感を掲げていて、実態は真面目じゃない、歪んで、乱れた男よりは限りなく極悪人でいて、根が真面目な方が男としては魅力的だ。


 これは休学なんてしている場合じゃない。


「大学行きます」


「・・・・・・頼むから、秋山結鶴には近づかないで」


 川野の申し出を鈴はこの時、どう無視をしようかと初めて、考えていた。


 続く。



 次回、第九話 嵐の前


 明日もよろしくお願い致します!



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