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入学式が待ちどうしい

なんか楽しくなってきた。

万物の鏡(ユニバーサルミラー)、治癒」


 ママとの模擬戦の後、傷を治すのは私の役目になっている。


「ありがとうクウキちゃん、そういえば試験の対策はしているの?」


 傷を治すのも久しぶりで、なんだか懐かしい気分になっている私にママは王都に来た目的を思い出させてくれた。


「対策?」


 試験対策なんかしなくても余裕で合格できると思っていた私は、試験を受けると決めた日から今日まで笑顔の練習しかしていない。


「学校の試験ってそんなに難しいの?」


 ママはレイギス魔剣学園の卒業生なので、いろいろ知っているっぽい。


「クウキちゃんにとって難しい試験なんてあるわけないでしょ、隠蔽のほうよ!隠蔽!」


 一応スキル「悪癖の道化師」の隠蔽を常に発動させているが、ママには王都に来ていることがバレていた。


 隠蔽に裂く魔力の量をもっと増やしてみたら大丈夫かな?


「これでどう?」


 ママに鑑定してもらう。


「少しはマシになったけど、まだダメね」


 思考錯誤を繰り返して、結局ママからの合格が出たのは、私の魔力を一割くらい使ったときだった。


「これで準備完了ね」


 隠蔽の完成度に感動しつつ地下室から1階に上がると、外は真っ暗になっており、私は模擬戦と隠蔽の練習でへとへとになっていた。


 ほんとは王都に来た初日に観光とか食べ歩きとかしたかったけど、ママとの模擬戦は楽しかったしいいか。


「クウキちゃん、一緒にお風呂に入りましょう」


 ママはバスタオルを持ってニコニコしている。


「セクハラしてくるからヤダ、一人で入る」


 ママは一緒にお風呂に入ると体を洗うとか言って胸を揉んできたり、耳を舐められた私の反応を見て楽しんだりする、犯罪者一歩手前の人なのだ。


 ママにお風呂の場所を教えてもらい一人で体を洗っていると、浴室の外から衝突音がした。

 転移で浴室に入ろうとしたママが、私の時空結界に衝突したのだろう。二年前は転移で侵入したママにいろいろセクハラされていたが私も成長している。


「クウキちゃんのイジワル」


 浴室から出ると廊下で座り込んで拗ねているママを発見したがここで優しくしたら私の負けだ。


「台所貸して欲しいんだけど」


 ママは立ち上がると無言で奥の扉を指さして不機嫌そうな顔をしながら浴室に入っていった。


 私とのお風呂をどんなけ楽しみにしてたんだよ……


 奥の扉を開けるとパパの店の厨房と同じくらいのスペースに食器棚や魔力で起動するタイプのコンロなどが並んでおり、食糧保存の魔道具まで置いてあったが、全て新品同様にピカピカだった。


 おそらく綺麗に使っているのではなく、ママは料理を全くしないので一度も使ってない。


 よって台所には食材は何もなかった。


 ママがパパと結婚した一番の理由は「料理が上手だから」らしく私が産まれる前から料理なんてしてない。


 私は収納魔法で収納していた肉や野菜をまな板の上に並べてパパに教えてもらった料理を思い出しながら作り始めた。


「あらいい匂いね」


 完成した料理をテーブルに並べているとバスローブ姿のママが浴室から出てきた。


「パパから教えてもらったの、ママの分もあるよ」


 ママと会ったら披露して喜ばせようとしていたので、美味しそうに食べてくれて私も嬉しい。


「クウキちゃんは良いお嫁さんになるわね」

 そんなの当たり前だよ


「ありがとうママ」


 ママと久しぶりにご飯を食べて、お話してとても幸せな食事だった。


「明日も早いし、そろそろ寝ましょうか」


 食器を洗い終わりソファーでくつろいでいると、ママが寝室に案内してくれた。寝室の中は真っ暗でなにも見えなかったが、ベットが一つ置いてあるのがわかった。


「このベットを使って良いわよ、狭いけど我慢してね」


 寝室の中に入ってベットに寝そべるが、そこまで狭くない。むしろ小柄な私には広い方だと思う。

 あとママのいい匂いがする。


「ありがとうママ、おやすみ」


 布団をかぶって寝ようとすると、ベットの上が光始めてママの転移してきた。


「おやすみクウキちゃん」


 いや待て……私を抱き枕みたいにしないで。


 確かにママと寝るには狭い。


「ちょっと暑いから離れて」


 ママを突き放そうとするが、さらに抱きしめる力が強くなる。


「だーめ」


 久しぶりに会ったし、まぁこれくらいは許してあげるか……


「ちょっとクウキちゃん、遅刻するわよ」


 遅刻?なんのことだろう……まだ寝てたい……


「おはよーママ」


 目を開けると知らない天井で、隣には慌てた顔のママがいた。


「おはようじゃないわよ、早く着替えて」


 ママの顔を見て完全に目が覚めた。今日はレイギス魔剣学園の試験日だ。

 急いで顔を洗い、身支度を整えて家を出る。


「いってきます」


 試験中は学校の寮に泊まるので試験終了までここには戻ってこない。


「いってらっしゃい、試験頑張るのよ〜」


 ママの声援を聞いて門を飛び出したときに気がついた。


 学校どっちよ……


 ママ曰く王城と同じくらい大きい建物だからすぐにわかるらしいが、同じくらいの建物が北と西に一つずつありどっちが王城でどっちが学校なのかわからない。

 家に戻ってママに聞こうとしたが、すでに転移で何処かに出かけていた。


 やっぱり昨日下見するべきだった……


「早くして、試験に遅れちゃうわ」

「待ってください」


 別れ道で悩んでいると私と同い歳くらいの女の子二人組が凄いスピードで私を追い越して西の城に向かった。


 会話からしておそらく私と同じ受験生なので、この二人について行けば試験会場に行けると思い私は尾行を開始した。


 都会の女の子も結構速いスピードで走るんだな……


 しばらく二人を尾行しているとレイギス魔剣学校と書かれた門が出てきた。


 道中前の二人がちらちら私を見ている気がしたけど、気のせいだろう。


 門の前には受付のようなものがあり受験生と思われる人たちが列を作っていて、私もあの列に並ぶと思うとゾッとする。

 私が尾行していた二人組は列に並ばずに門の中に入っていったが、私は門の前の広場に残った。


 こんなに人が集まっているの光景を産まれて初めて見た。


「受験生の方ですか?受付はあちらですよ」


 門から少し離れた場所で受付の列が減るのを待っていると、学校の職員っぽい女性が列に並ぶように促してきた。


「あっ、あ……ありがとうございます」


 人が減るまで待っているのでほっといて欲しかったが素直に列の最後尾に加わる。


 話かけられて驚いたのもあるが、知らない人と会話するのは緊張して心臓がドキドキしている。

 さらにあの女性は私に声をかけながら、私のことを鑑定していたことにも驚いた。


 今の私を鑑定したところで、スキル「双剣術」と「氷の担い手」を持つ、魔力量700の女の子にしか見えないと思うので、なんの問題もないがいきなり鑑定するのはマナー違反だと思う。


「試験申請票か試験招待状とお名前をお願いします。」


 試験問題を想像しながら並んでいると私の番がきた。


 この学園の試験は私みたいに招待されなくても、国にスキルの申請をすれば受験できるみたい。


「ク、クウキアニシスです」


 ちょっと声が小さかったかもしれないがちゃんと言えた。


「お待ちしておりましたアニシス様、この受験票を持って後ろの門をくぐり、中にいる誘導員の指示に従ってください」


 受験番号が書いてある一枚のカードを受け取り門をくぐると受付の人と同じ服を着た誘導員がところどころに立っていて、迷わずに試験会場にたどり着いた。


 門から試験会場の教室までかなり距離がありこの学校が想像以上に広いことがわかった。

 私はおそらく試験会場から門まで自力で辿りつくことができない。


 私が案内された試験会場の教室の中には机と椅子が30席くらいあり、最後尾で受付したせいか私の1席を除いて全ての席に人が座っていた。

 試験前で緊張しているのか、誰一人として話をしたりすることなくとても静かに座っていてとても中に入り辛い。


「みんな集まったかニャー」


 勇気を出して教室に入り最後の一席に座ると、知っている可愛い人が試験用紙を持って入ってきた。


 ミミロさんだ。


 なぜミミロさんがここにいるかはわからないが、ここにきてミミロさんに会えたのはとても安心する。

 私と目があったときにウインクでアピールしているミミロさんが私を癒してくれる。


「私はこの教室の試験管だニャ、今日だけの付き合いになるがよろしくだニャ。早速だが試験一日目は3種類の筆記試験をやってもらうニャ、用紙を配るけど合図があるまで始めちゃダメだニャ」


 用紙が配られて教室には怖いほどの重たい空気が流れているが、私はさっきから私に向かってウインクを続けてるミミロさんのせいでなんだかふわふわした気持ちなっていた。


 マジでかわいい……試験なんてどうでもいい。


 ミミロさんに見惚れていると試験開始の笛が響いた。


「試験開始ニャー」


 一斉に試験用紙を裏返す音で我に帰ると私も問題を解き始める。


 一枚目の用紙は数字の試験で、簡単な足し算や掛け算をはじめ、魔力変換率を求める計算、公式を使った魔法威力の理論値を求める問題など、問題が進むにつれて難しくなっていき最終問題には、上位スキルによる魔力変換率100%超えする「魔力増幅現象」についての証明問題があり学園のレベルの高さが垣間見えた。


 勉強嫌いな私は問題の意味すら解らなかったけど、他の試験で取り返せば大丈夫。

 問題を諦めてミミロさんを眺めていると終了の笛が鳴った。


「試験終了ニャー、用紙を前に回すニャ」


 周囲の反応はバラバラで安心している人もいれば絶望している人もいたが筆記試験の一枚目で一喜一憂しないでほしい。



「二枚目を配るニャ」


 すこし休憩を挟んでミミロさんが二枚目の用紙を配り始めた。


 さっきの試験はよくで50点くらいなので二枚目から本気だす。


 開始の笛と共に勢いよく問題をめくる。

 二枚目の用紙はスキルの試験で、「スキル「氷の担い手」で使用できる魔法を答えろ」など「鑑定眼を使えるスキルを答えろ」といったスキルの知識を問われる内容になっていて、「万物の鏡」を持つ私にとってはとても簡単な試験になっていた。


 こんなサービス試験でいいの?


 一度もペンを止めることなく最終問題に辿りついた。


 ん?


 最終問題「現在に確認されている超級スキルを7つ全て答えろ」


 なんだこれ?


 超級スキルってなんだっけ、存在は知ってるいるけどどのスキルが当てはまるかわからない……


 そういえば昔ママが、「世界には人智を超えた最強のスキルが九つある」って言っていた気がする。


そのスキルを使ったとき確かに人智を超えた気がした。


 ママに感謝しつつ「灯火の巫女」、「常闇の哀」、「氷華の咲人」、「神樹の護」、「神託の殲女」と私が龍王を倒すときに使った「鮮血の英雄」とママが持っている「束縛の断絶」を書いて試験は終了した。


 私が持っている2つのスキルはおそらくママと私しか知らないので超級スキルではないのだろう。


 三枚目の用紙は冒険者の試験で、「薬草が育ちやすい場所の特徴を答えなさい」とか「トレントの弱点を答えなさい」などの問題が続いていたが、用紙の裏に進むと「現在の剣聖の名前を答えない」や「C級依頼を達成した時にもらえるギルドポイントの平均を答えない」などの冒険者についての問題になっていて、王都の冒険者事情に詳しくない私は裏の問題すべてを飛ばして最終問題まで辿りついた。


 最終問題は「現在のS級冒険者の名前を7人全て答えなさい」だったので、唯一知っているママの名前を書いて筆記試験を終了した。


 まだ時間があるみたいだし居眠りするミミロさんでも眺めてよ。


「これで一日目の筆記試験終了ニャ、お疲れ様だニャ。」


 冒険者の試験と数字の試験はよくて50点くらいだがスキルの試験は全問正解なのでたぶん問題ない。……と思う。


「このあと明日の実技試験までは自由時間だニャ、寮でゆっくりするのも良いし闘技場で体を動かしても良いニャだけど学校の外に出たら即失格になるので気をつけるニャ」


 試験終了後我慢出来ずにミミロさんをモフリに行ったが「採点が忙しいからダメニャ」と言って受験生立ち入り禁止のエリアに逃げられてしまった。


 昼過ぎに試験が終わり明日の試験まで暇を持て余した私は指定された寮に向かった。


 寮は2人部屋になっていて学校に入学してからもずっと2人部屋で生活するらしい。


 同部屋の人いい人だったらいいなぁ


 私の受験番号が書かれた部屋の前に着くと少し緊張したが、流石に試験終了直後に昼寝をしにくる受験生もいないと思い気兼ねなく扉を開けた。


「こんにちは、わたしはハル・ヒラハシヤです」


 部屋の中には桜色の髪を靡かせ同性の私ですら見惚れてしまいそうな笑顔をした少女がいた。


 少女の笑顔が眩しいすぎて一旦扉を閉めてしまった。


「大丈夫ですか?びっくりさせてしまってすみません。中に入ってください」


 すぐに扉が開いてさっきの少女が私の顔色を伺ってくる。


「だ、大丈夫、私こそ驚かせてごめん。私はクウキ」


 部屋に入ると扉側からバスルームとトイレが並んでいて奥の広いスペースに二段ベットと机が2つ置いてありちょっとしたホテルのような作りになっていた。


「クウキさんはどこからきたんですか?」


 私が荷物の整理をしているとヒラハシヤさんが質問してくる。

「私は遠くからきたの、ヒラハシヤさんは?」


 私の街は地図に載ってないらしいからこのくらいしか言えない。


「クウキさんはおもしろい方ですね、わたしは王都出身ですよ、あとハルでいいです」


 相変わらず笑顔がかわいいすぎる、アンナさんが言っていたことは本当だったんだ。


「今から運動場で明日の実技試験の練習をしに行こうと思うんですが、クウキさんもどうですか?」


 ハルは荷物の整理を終えると長剣を持って扉に向かった。


「私は筆記試験で疲れたから昼寝してるよ」


 少し微笑んでからハルは部屋を出て行った。


 ハルを鑑定してみたいが勝手に鑑定したのがバレて嫌われるのは嫌なので明日の実技試験まで我慢しておこう。あと実技試験の練習ってなにをするんだろう……



「クウキさん起きてください、食事の時間ですよ」


 目がを開けるとハルの顔が目の前にあって少し恥ずかしい。


 食堂の混雑を避けるために私達受験生は食堂の利用時間が決められているのでハルが起こしてくれたようだ。


 食堂に入るとすでにたくさんの受験生がいてその中に一際大きい魔力を持つ人がいたが、とりあえず今はご飯が優先。


「美味しいですね」


 食事中のハルも可愛くて、もうハルに養ってもらいたいと思い始めている。


「明日の実技試験楽しみだね」


 特にハルの実力を見るのと、私の寄生先候補を見つけるのが楽しみ。


「そうですね、今までの鍛錬の成果を存分に出し切りましょう」


「そうだね」


 特に鍛錬とかしてないけど。


 食事を終えるとハルは体を動かしてくると言って夜の運動場に消えて行ったので私は寮に戻ることにした。


 1人で部屋に戻りシャワーを浴びていると浴室の中が光り出した。


「クウキちゃーん」


 学園内で私が結界を使えない事をいいことに、全裸のママが転移で侵入してきた。


「ちょっとなにしてるの!」


 ママは美人でスタイル良くて好きだけどこの性格は直して欲しい。


「試験を頑張った娘の背中を流そうと思って」


 そういってママは私の背中に胸を押し当ててながら、私の胸を触ってくる。


「ちょっとやめてよ」


 学校の寮の中で一体なにをしているんだ。


「昨日の夜はあんなに甘えてきてたじゃない、あら結構成長してるわね」


 確かに抱き枕みたいなっていたけど、娘の胸の成長を直で揉んで確かめる親がどこにいる。


「ただいまクウキさん」


 ママにセクハラされているとハルが帰って来た。


「今日はここまでのようね、楽しかったわクウキちゃん」


 ママは転移で帰って行った。


 ママにセクハラされているときに転移で逃げればいいのだが全裸で転移できる場所もなく浴室に侵入されたら最後ママが満足するまで我慢するしかないのだ。


「大丈夫ですか?クウキさん」


 ママのせいでクラクラになりながら浴室を出るとハルが心配してくれた。


「大丈夫、私はもう寝るね」


 そのままベットに飛び込み私は眠りについた。明日はママ来ないでほしい。


「おやすみなさいクウキさん」


 ハルの実力を見るのが楽しみで仕方ない。そういえば実技試験ってなにするんだろう。


「おやすみ」




「クウキさん朝食もおいしいですね」


 次の日の朝寝起きの悪い私を食堂に運んでくれたハルが満面の笑みを浮かべている。


「今日の実技試験ってなにするんだろうね」


 私は試験についてなにも知らないので少しワクワクしていた。


「試験管によって違うみたいですけど、単純に試験管と模擬戦したり、的に向かって魔法や戦技を打ち込んだりするらしいですよ」


 シンプルな試験ほど怖いものはない。


「心配だなぁ」


 しっかり加減できるかどうか心配でならない。


「大丈夫ですよ、自分を信じていきましょう」


 ハルは前向きでいい子だなぁ



 朝食を終えて指定された闘技場に行くと100人程度の受験生が集まっていて、体をほぐしたり武器の素振りをしたりしていた。


 ハルの表情もさっきとは違いどこか緊張して見える。


「これより実技試験を開始する、私はこの学校の教師をしているダグ・ガルバだ」


 他の受験生を観察していると細身で髭を生やしたおじさんが空中から現れた。


「今から君達にはこの魔法陣が書かれた盾に魔法もしくは戦技で攻撃してもらい、盾が示した数字がそのまま実技試験の点数になる。受験番号を呼ばれた者から前に、1011番」


 最初に呼ばれたのは長剣を持った男子で自身満々の表情をして盾の前で剣を構える。


長剣術(ソードオペレイト)、スラッシュ」


 深く踏み込んで長剣で盾を斬りつけると魔法陣が発動し137の数字が浮かんできた。

 高いのか低いのかわからないが周りの反応を見る限り低いのだと思う。


「次1012番」


 次に呼ばれたのは杖を持った女の子で真剣な顔で杖を構える。


「いきます、炎の担い手(ファイヤソーサラー)、ファイヤーボール」


 火の球が盾を襲い534の数字が浮かんできた。

 基本的な魔法だがかなり練習してきたことがわかる威力で、さっきの男子と比べてもわかる通り高得点だと思う。


 その後の20人くらいの受験生は100〜200点くらいを連発しているので、目立たずに合格するには180点くらいを目指して頑張ろう。


「次1044番」


「はい!」


 威力調整のイメージトレーニングをしているとハルが呼ばれていった。


 この試験の試験管は常に鑑定眼を発動しているのでそれに便乗して私もハルを鑑定してみた。


 ハル・ヒラハシヤ、スキル「上級長剣術」「魔力創造」魔力量12000。


 十四歳という年齢で上位スキルを持っているのも驚いたが、スキル「魔力創造」は魔力さえあればどんな物でも造り出せる便利なスキルで私もよく使用している。


 剣一本創造するのに魔力を3000くらい消費するコスパが悪いスキルだがハルの魔力量なら充分使いこなせる。


 ちなみにミミロさんの「大剣の狂者」は「上級大剣術」の上位スキルなのでハルの「上級長剣術」もまだ進化する可能性がある。


 これは本格的にハルと仲良くしなければいけない、てか可愛いくて、優しくて、強い、こんな完璧な人と同部屋になれてたことを神に感謝しないと!


上級長剣術(ソードマスター)、シュレット」


 ハルは盾の前に剣を構えるとスキルを発動させて盾を撫でるように振り降ろす。

 あまりに美しいフォームに魅入っていると、剣が盾を斬りつけた衝撃波が私の髪を揺らす。


 盾に表示された点数は987で間違いなくこの試験の最高得点を記録した。


「お疲れ様、すごかったね」


 私の隣に戻ってきたハルに声をかけるとハルは首を横に振った。


「今の剣聖様が十四歳の時に出し点数は1200点くらいなんだって、私なんてまだまだです」


 なんだか悔しがっているが今のハルも充分すごいと思う。


「最後1223番」


 待ちくたびれてウトウトしていると私の番号が呼ばれた。


「頑張って」


 応援してくれてるハルに手を振って、盾の前に立って杖を構える。


 これまでに出た点数を整理すると、ハルの987点が1位で2位が534点でその下に400点台が2人に300点台が1人いて後は200〜100点の間だった。


 180点くらい出せば合格できそうだが、そんな普通の点数ではハルの隣に立つことはできない。


 せめて300点台を出して少しだけハルに近づこう。


 この時の私は忘れていた……私がポンコツだということを……


 さっきのイメージより少しだけ(かなり)力を入れてスキルを発動させる。


氷の担い手(アイスソーサラー)、アイスアロー」


 ほんとは「万物の鏡」を発動させたが隠す為に「氷の担い手」を発音し、魔法を発動させる。


 一本の氷の矢が盾に衝突した瞬間ハルの時とは比べのもにならない衝撃波が会場を襲う。


 加減ミスった……


 衝撃波の後に残ったのは穴の空いた盾と私の諦めの表情だった。


「それは盾の故障じゃな、盾が壊れる直前に300と表示されとったぞ」


 試験場にいる誰もが硬直している中、どこからか現れた和服姿の幼女が盾を突き始めた。


「故障でしたか、すみません学園長。1223番の点数を300点にしておきます」


 試験官の先生がペコペコして盾を拾い上げると学園長と呼ばれる幼女はどこかに消えてしまい私の中に疑問だけが残った。


 私の魔法が盾に当たった瞬間に表示された数字は9999だったが、あの幼女には300と見えたのだろうか?

 私としては狙い通りの点数を取れてよかったけど、あの幼女に変な恩を擦り付けられた感覚があり不安でもある。

 そして何より幼女から感じた魔力量が凄まじくママに匹敵する魔力を持っているに違いない。


 あの幼女には近づかないようにしよう……


「これで実技試験を終了する、明日の模擬戦に向けてしっかり準備するように」


 盾爆発事件がなかったかのように二日目の実技試験は終了した。


「練習しないんですか?」


 受験生のほとんどが明日の模擬戦の為に素振りをしたり、的に向かって魔力を撃つ中私は寮に戻ろうとしていた。


「寮に戻って昼寝したい」


 ハルは少しの間不思議そうな顔をしていたが、すぐに納得した表情を浮かべて送り出してくれた。


「盾の爆発はすごかったですもんね、ゆっくり体を休めてください」


 なんか勘違いをしているがいいでしょう。

 寮の部屋の前に着くと中から話声が聞こえてきた。


 魔力がダダ漏れすぎて誰がいるのか解った私は、深いため息をついて扉を開ける。


「おっ、思ってより早い登場じゃの」

「おかえりなさいクウキちゃん」


 ママと学園長が楽しくお話ししていた。


「さっきはありがとうございました」


 一応助けてもらったのでお礼言っておく。


「よいよい、しかしあの盾をアイスアローで破壊するとは思わなかったぞ。キイナよ、ソナタの娘は化け物かの?」


 失礼な幼女だ。


「おそらくクウキちゃんが本気を出したら、私とナツミちゃんが二人がかりで戦っても負けます。まぁそうですね化け物です」


 失礼な母親だ。


「それはヤバいのぅ」


 幼女が品定めするような目で私を見てくる。


「クウキよ、その隠蔽を解いてくれないかの?」


 そんなことするしたら私のスキルがバレちゃうじゃん……


「ナツミちゃん、それは辞めておいた方がいいわ。今はクウキちゃんが隠蔽しているから鑑定できているけど、隠蔽を完全に解いたクウキちゃんを鑑定したら目が潰れちゃうわよ」


 え、そうなの?


「それはどうゆうことじゃ?」


 確かに隠蔽を憶えてから今まで完全に解いた事はないけど、鑑定しただけで目が潰れるってやばくない?


「例えるなら……至近距離の太陽を天体望遠鏡を使って観察するようなものだわ」


 それはヤバい。


「それはヤバいのぅ」


 うん、それはヤバい。


「そういえば、なんで私の部屋にいるんですか?」


 盾を壊したことを怒りにきたのかな?


「そうじゃった、実はクウキに頼みごとがあってのぅ」


 そんなことだろうと思ったよ。まぁさっき助けてもらったし別にいいかな。


「いいですよ」


 依頼内容を聞く前に即答した私を見てママが驚いている。


「それはありがたい、依頼内容は魔人探しじゃ」


 学園長の話によると、この学園に魔人が入り込んでいるらしく、まだ被害は出ていないが被害が出る前に見つけ出したいとのことだった。


「ママでもわからないの?」


 ママの結界だったら魔人が結界内に入った瞬間にわかる筈だけど。


「受験生用に結界を緩和していたのよ、あとすごく隠蔽がうまくてわからないわ」


 ママでもわからない隠蔽って流石魔人族、だが甘い!


「私たぶんその魔人知っています、受験番号1366の子です」


 昨日食堂で見た子で、寄生先候補として受験番号を覚えておいた。


「流石だわクウキちゃん」


 その後の話し合いの結果、今すぐに捕まえるのではなくて明日の模擬戦で私と実際に戦ってもらい、ほんとに魔人族か確かめてから捕まえることになった。


 話し合いが終わると幼女は雪のように消えていった。


「あの幼女は一体なんなの?」


 この学校で一番偉い人なのは解ったが、その他がわからない。


「ナツミちゃんは、私と同じS級冒険者でレイギス魔剣学園の学園長よ、そしてクウキちゃんに使用を禁止しているスキル「氷華の咲人」のスキル持ち(ホルダー)よ」


 スキル「氷華の咲人」は全てを凍らせことが出来るスキル。


昔夏の暑さに耐えれなくなった私が部屋を涼しくするために「氷菓の咲人」を発動させたら、街全体が氷に包まれてしまい、その日から四日間雪が降り続く異常気象を起こしてしまった。


 その他にも超級スキルを使った失敗はたくさんあるがそのたびに深大な被害が出た。


「ママはいつまでいるの?」


 昼寝したいから早く出ていってほしい。


「クウキちゃんとお風呂に入るまで?」


 問答無用でママを追い出し私はベットに潜り込んだ。


 明日の模擬戦が楽しみになってきたが、嫌な予感がしてならない……


 ちょっとした不安を抱きながら私は眠りに着いた。




「ハル、近いんだけど」


 目開けるとハルが私の顔を覗き込んでいた。


「すみません、ご飯の時間なのでクウキさんを起こそうと思いまして」


 ママを追い出した後すぐに寝たのは覚えているが夜ご飯には早い気がする。窓の外を見てもまだ明るい。


「夕食にはまだ早くない?」


 ハルはお腹が空いているのだろうか?


「もう朝ですよ、クウキさん」


 えっ?


「なんで起こしてくれなかったの?」


 別にハルを目覚まし時計にするつもりは無いが夕食時には起こしてほしかった。


「クウキさん盾を壊した時に魔力使いきって疲れていたので、模擬戦の朝まで休ませた方がいいかと思いまして……」


 ハルがすごく優しいのはわかったが、私が魔力使いきっていたら学園どころか王都が無くなってるよ。


「ありがとうハル」




 朝食を摂り、模擬戦の会場となる闘技場に行くとすでに対戦表が張り出されていた。

 私の対戦相手は昨日の作戦通り魔人族と思われる1366番の女の子になっている。


「クウキさんの対戦相手って昨日の実技試験で1300点を出した女の子じゃないですか?」


 ハルが心配そうな表情で対戦票を見つめる。


 てか魔人さんも少し加減ミスってて草。


「じゃあ頑張らないとだね!」


 ここにきてアンナさん直伝のスーパースマイルを発動させたが、ハルの心配そうな表情は変わらない。


「ハルの対戦相手は誰なの?」


 話題を変えようと私も対戦票をみる。


「わたしの相手は1002番の方です。強い人だったらいいですね」


 ハルと私はお互い第一試合になっているのでハルの戦いを見るのは入学してからの楽しみにとっておこう。


「次会うのは合格発表の時ですね、お互い頑張りましょう」


 模擬戦が終了した受験生はそのまま面接会場に移動し面接が終わり次第そのまま解散となるのでハルとは合格発表までお別れすることになる。


「そうだねお互い頑張ろう」


 入学したらまたハルと同部屋になれたらいいな。




 模擬戦の会場に行くと対戦相手がすでに闘技場の中心くらいに立って準備をしていたので、私も駆け足で立ち位置に向かう。


 私よりも背が高くて目元まで伸びた前髪が顔を隠しているが相当な美少女に見える。


「よろしくお願いします」


 私が美少女の正面に立つと美少女の方から握手を求めてきた。


「あなたもしかして気づいている?」


 握手を躊躇した私を見て勘づいたようで、鋭い目つきで私を鑑定し始めた。


「勝手に鑑定するのはマナー違反だと思うよ」


 魔人族を注意しながら、本当に魔人族かどうかとりあえず私も鑑定してみる。

 一応隠蔽しているみたいだが私には関係ない。


 名前は「アリージュ」 種族 「魔人族」 スキル「冥刻の夜剣」「雷の担い手」 魔力45万6000。


「あなたなにをニヤニヤしている」


 お互い鑑定し合い、試合開始の合図を待っているとアリージュが話かけてきた。


「別に試合が楽しみなだけだよ、魔人族と戦うのは久しぶりだからね」


 素直に強者と戦うのは好きなので、顔が緩んで仕方ない。


「あなたじゃ無理よ、私のオモチャになるだけだわ」


 確かに魔力700の女の子じゃあ遊び相手にもならないがそこは心配しなくてもいい。


「アリージュを倒せるように頑張るよ。」


 自分の名前を呼ばれて驚いてるアリージュはなんか可愛い。

 鑑定されたことに気づいていないのだろう。


「どこで私の名前を知ったかは知らないけど、これでもう私のオモチャになってもらうしかないわね」


 さっきよりもヤル気を出してくれてこちらとしても嬉しいけど、なんか変だぞ?


「なんで人間の学校に通おうと思ったの?」


 なんか今ならなんでも答えてくれそうなので聞いてみる。


「あなた少し前に「龍王の深淵」が消滅したことは知っている?」

 知っています。私がやりました。


「知らないけど、何か関係あるの?」

 もしかして犯人の私を殺しに来た……?


「ダンジョンを監視していた私の部下によると最後に龍王の深淵に入ったのは、人間の女の子だと言うの」


 待ってそれ以上聞きたくない!


「私はその話を聞いた時、私はその女の子が欲しいと思ってここに探しに来たの」


 私を連れ去りに来たってこと?


「じゃあその女の子を殺しに来たとかじゃないのね?」


 アリージュが首を傾げる。


「私が女の子を殺すわけがないでしょ、私は人間の女の子を愛しているの」


 ん?


「特にあなたのような美少女が大好きよ、もし死ぬとしたら美少女と戦って殺されたいくらいだわ」


 あれ?


「龍王の深淵を壊した女の子なら私のこと殺せるでしょ?」


 この魔人族は綺麗な顔でなにを言っているのだろう。


「はぁぁ、早く試合が始まらないかしらぁ、あなたをオモチャにして遊びたいわぁ」


 もう駄目だ、こいつ(アリージュ)はただの変態だ。


 模擬戦開始の笛が鳴ると同時に襲いかかってきた変態(アリージュ)を私の全力パンチが一撃で気絶させた。


 気絶したアリージュは変装が解けて青白い肌の白い髪で頭には黒いツノが生えていて人間の姿よりも少し幼い感じになっていた。


「魔族を一撃で倒すとはのぅ」


 どこかで見ていたであろう学園長とママが転移してきた。


 魔人族のスキルとか見てみたかったがキモすぎて倒してしまった。


コイツ(アリージュ)どうなるの?」


 この変態(アリージュ)の行方には特に興味はないができるだけ近づきたくない。


「まだ決めてないが、意識を取り戻すまではわしが監視しておくかのぅ」


 学園長はニヤリと笑うとアリージュを肩に抱えた。


「そういえば、クウキは面接免除にしといたからもう帰って良いぞ」


 とてもありがたい事を言って学園長は雪玉が弾けるように消えていった。


「じゃあ帰りましょうか、クウキちゃん」


 どうやらママが右手を差し出して一緒に帰ろうと誘っている。


 なんだかんだでママは優しいから大好き。


 ママが差し出す手を握るとママの家の地下室に転移した。


 あれ?


「なんで地下室なの?」


 どうせならリビングとか寝室に転移してくれたらママに甘えられるのに。


「今回の試験を観察してみてね、ママわかったの」


 私の可愛さを再確認したのなら嬉しい。


 どうせクウキちゃん成分がたりないとか言い出すに決まっている。


 試験では学園長にスキルを見られないように守ってくれたし、魔人族と戦う時も私の戦いが誰にも見られないように多重結界を張ってくれてたし、今日くらいは甘えてあげてもいいかなぁ


「なにがわかったの?」


 もうしょうがないママだなぁ〜


「クウキちゃんには鍛錬が足りないってね」


 ん?


「今から入学までの一カ月間クウキちゃんを鍛えなおします」


 え?どうして?


「だってこのままのクウキちゃんを入学させたら他の生徒さんを殺しかねないでしょ?」


 そんなことは……たぶんない……と思う、てか心を読まないで!


「これから頑張ろうね、クウキ」


 ママが私を呼び捨てにするとき、この地下室に地獄が始まる。


 二年ぶりの鍛錬……死んじゃうかも。

 はぁ入学式早くこないかなぁ。



 はやくハルに会いたい。

大体酔っ払いながら書いてます。

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