幼馴染の作り方! ~幼馴染がいなければ、作ればいんじゃね!?~
気分転換で書いた作品
頭を使って書いてません、脳死系作品です
『あいつ俺の幼馴染だからさ~。だから仲がいいんだよ』
こんなムカつく事を言われたのは幼稚園だったか、いや小学校低学年の時だったかな?
幼馴染ってなんだ? なんだその素敵な響きは? 俺にもいるのか? どこにいるんだろう?
それを聞いてすぐ、俺は父さんに俺の幼馴染はどこにいるのだと聞きに帰った。
「いや、お前に幼馴染はいないだろ?」
「な、なんで俺にはいないんだよ!? 隠してんのか!?」
「隠してねぇよ……転勤族だったし、近くに歳の近い子がいた事もないし……」
「そんな……」
思えば俺、幼馴染どころか仲の良い友達がいた記憶もあまりない。
父さんの仕事の関係のせいもあると思うけど、俺も積極的に作ろうとしてなかったかも。
「俺は友達が少ない……」
「ま、まぁほら! ここには永住するから! 頑張って友達を作ろう!」
「友達じゃなくて、俺は幼馴染が……」
いや、いないのなら……作ればいんじゃね?
そうだよ。簡単な事じゃないか!
「父さん! 幼馴染ってどうやって作るの!?」
「ど、どうやってって……う~ん、そうだなぁ」
父曰く、幼馴染とは昔から傍にいて、幼い頃からずっと仲良くしていた友達の事を言うらしい。
朝から一緒に遊んだり、朝起こしに来てくれたり、一緒に学校に行ったりするらしい。
家が隣同士な必要があるとか、窓からお互いの部屋を行き来できる必要があるとか、家族ぐるみで付き合いがある必要とかはないらしいよ。
なんだ、それなら簡単じゃないか。今からでも作れるじゃないか。
ちょうど今は夏休み。時間なら腐るほどあった。
「俺ちょっと幼馴染作って来る!」
「お、おいっ! 幼馴染って作ろうと思って作れるもんじゃ————」
その日から俺、黒峰悠登は街を走り続けた。なぜ走るのか、それはもちろん幼馴染を作るためだ。
まだ見ぬ俺の幼馴染の誕生に思いを馳せ、一人でいる子に声を掛けた。
複数で遊んでいる人達に話し掛ける勇気、ちょっとなかったんだもん。
「そこの君っ! 俺と遊ぼう!」
「え、え? なに急に……誰?」
――――
「どうしてそんな悲しそうな顔してんの!?」
「……いきなり何? あなた誰……?」
――――
「毎日俺の事を起こしに来てくれないかっ!?」
「は、はぁ? なによあんた、誰よ」
――――
「そこの君っ! 俺とあ……んだよ、男か」
「僕、女の子だけど……」
――――
「そこの窓から外を見てる君っ! あ~そ~ぼ~!」
「いやです」
しかし、思ったより見つからない。今日声を掛けられたのは五人だけ。そもそも幼馴染って何人いてもいいのかな?
でも正直、これ以上は厳しいかもしれない。仲良くなる時間も必要だしなぁ。
一丁目の公園、二丁目の空き地、三丁目の駄菓子屋、四丁目のコンビニ、五丁目の大きな家。
場所を覚えた俺は、それから毎日その場所に通い続けた。ちなみに俺の家は三丁目だ!
一応他の子も探したりしたんだけど、大抵他の子と遊んだりしていた。つまりすでに幼馴染がいるようなのでパス。
俺は一人でいるこの五人に狙いを絞った。
「こんにちは! 俺と遊ぼう!」
「えっと……どうしようかな」
――――
「笑ってる方が可愛いよ!?」
「……ほっといて」
――――
「優しく揺すって起こしてくれないかっ!?」
「だからなんなのよ!? なんでアタシが!」
――――
「女の子ならスカートとか履いてみない?」
「い、いやだよぉ……似合わないし」
――――
「お外に出てあ~そ~ぼ~!」
「……いやです」
毎日毎日、風が強かろうが雨が降っていようが通い続けた。
もちろん会えない日もあった。俺の方が行けない日もあった。それでも俺は、彼女達を幼馴染にするために頑張った。
こいつ俺の幼馴染なんだ! その言葉を言える日が来る事を信じて。
「おはようございます! 俺と遊ぼう!」
「う、うん……いいけど」
――――
「ほら笑ってよ! 君の笑顔が見たい!」
「……はぁ、また来たの……?」
――――
「耳元で優しく囁きながら起こしてくれないかっ!?」
「……そもそもアンタの家知らないし」
――――
「やっぱ女の子の格好の方がいいよ!」
「ほ、ほんとに!? でも……」
――――
「今日は天気がいいので外であ~そ~ぼ~!」
「……い、いや……です」
日に日に彼女達と仲良くなっているのを感じていた。夏休みの最初の頃とは全く違ってきていた。
幼馴染と言える関係まであと一歩……ん? なんか違う気がする。なにか忘れている気がする。気のせいか?
「おはこんちは! 俺と遊ぼう!」
「う、うん。今日は何するの……?」
――――
「あっ!? 笑った! やっぱり可愛い!」
「う、うるさい……」
――――
「君に起こしてもらいたいんだっ!?」
「はぁ……はいはい、いつかね」
――――
「お、お……お? スカート!?」
「ど、どうかな? 似合う……?」
――――
「今日は日差しが弱いのでお外であ~そ~ぼ~!」
「……お庭でなら、いいですよ」
順調順調。このまま行けば、夏休みが終わる頃には五人もの幼馴染が出来ているだろう。
俺、夏休みが開けたらアイツに言うんだ。
『こいつら俺の幼馴染だから、仲いいんだよ』
緩む頬が抑えられなかった。
「おはこんばんち……おっと、これはダメか」
「あっ! 待ってたよ~」
――――
「だから俺は言ったんだよ! 幼馴染がほしいと」
「……うん、面白い」
――――
「窓は開けとくからさ、いつでも入っていいよ!」
「ちゃんと玄関から行くわよ!」
――――
「おぉ~! 今日も可愛いなぁ!」
「あはっ、そう言ってくれるの君だけだよ~」
――――
「お~い! あ~そ~ぼ~!」
「あ……いま行きますっ」
――――
――
―
「おぉ悠登。お友達を連れて来たのか?」
「違うよ! 友達じゃなくて幼馴染!」
何を言っているんだ。こんなに仲良くなって、ついにウチで遊ぶようになったというのに。
これで幼馴染じゃなかったら何なんだよ。
「「「「「「えっ?」」」」」」
「えっ? 違うの!?」
なんか幼馴染のみんなが驚いた。
「「「「「「違うんじゃ……ない?」」」」」」
「な、なぜ!?」
やっぱり朝起こしに来てもらったり、一緒に学校に登校してないからか?
それなら夏休みがあけたらすぐにでも――――
「……悠登よ。言ったよな? 幼馴染とは昔からの友達の事だと」
「そういえば……でも昔からって、具体的にいつからだよ?」
「……決まりはない」
「決まりはないの!? じゃあもう幼馴染でいいじゃないか!」
「と、ともかくあと数年は、この子達と仲良くしていかなければ幼馴染になれない!」
「な、なんだってぇぇ!?」
――――
――
―
―
――
――――
そして月日は流れ――――
「――――ちょっと悠登、そろそろ起きなさいよ」
「う~ん……もうちょい」
「もぉ……起きなさいってばっ!」
「ぐぅわばっ!?」
文字通り叩き起こされた。めっちゃお腹を叩かれた。
なんなのこのツンデレ暴力系幼馴染。なんで何回言っても優しく起こしてくれないのだ。
「……おはようございます」
「おはよ。ほら、さっさと顔を洗って来なさいよ」
「へいへい……ったく、優しく起こしてくれよ」
「うるさい(はぁ~……可愛い寝顔だったぁ)」
大体、朝起こしに来てくれる系の幼馴染ってこういうタイプだっけ?
まぁ起こしに来てくれるだけ嬉しいし、ありがたいのだけどさ。
それにこの子、なんだかんだ優しいんだよなぁ。
――――
「……おはよ、朝ごはん出来てる」
「お~、いつもありがと~」
「ん、寝癖ついてるよ(もう、可愛いなぁ)」
「うそ? マジで?」
リビングにいたのは二人目の幼馴染。この子はなんて言うんだろうなぁ……言っちゃなんだが覇気がない。
ダウン系幼馴染? いや違うか、物静か系幼馴染。
「動かないで、直すから」
「お~」
「うん、完璧」
「ありがとな」
ちなみにこの子はめっちゃ世話焼き。
そして静かに淡々と、めっちゃ完璧に家事をこなす。そして、ツンデレ系と微妙に仲が悪い。
「明日は私がユートを起こす」
「ダメ、それは譲らない」
「あなたばかりズルい」
「アンタはアタシに料理させてくれないじゃない」
このように、なんでかよくぶつかっている。
まぁ本気で喧嘩している所など見た事がないので、放っておいているが。
―――
「ゆう君! おっはよ~!」
「はよ~」
「あははっ、眠そ~」
「眠くにゃい……」
いつも通りの時間に家を出ると、丁度いいタイミングで三人目の幼馴染の登場。
この子はボーイッシュ元気系。いつも明るく、こっちまで楽しくなる。
「二人もおはようっ!」
「おはよ~」
「おはよ」
元気系は流石だな、みんなと仲がいい。
この子がいるだけで雰囲気が明るくなる……のだが。
「ゆう君ゆう君! 手を繋いで行かない?(今日こそ手を繋ぐっ)」
「……だめ、許さない」
「ダメよ、なに言ってんの」
でも、たった一言で周りのに空気を一変させる能力を持っている。
ツンデレ系と物静か系の雰囲気が一瞬で変わったが、いつもの事なので気にしない。
――――
「ご、ごめ~ん、お待たせっ」
待ち合わせ場所に少し遅れてやって来た、四人目の幼馴染。
いつもポワポワと独特な雰囲気を醸し出す彼女は、ちょっと色々と残念。
あえて言うならば、天然残念系幼馴染。
「悠登くん、今日も眠そうだね(一緒に寝たいなぁ)」
「……お前、寝癖が酷いぞ? あと口にイチゴジャムついてる」
「えっ!? あわわわわっ」
「お前を見てると和むわぁ」
慌てて手鏡を取り出し確認する彼女。それを見ていると口元が緩んでしまう。
この子の隣にいると、凄く落ち着くのだ。
「天然って強いわね」
「これは強敵……!」
「負けないぞ~!」
「な、直った!? ジャム取れた!?」
「ううん、まだ付いてる」
はぁ、和むわ。
――――
「みなさん、おはようございます」
「「「「「おはよ~」」」」」
学校に行く前に迎えに行くのは、五人目の幼馴染。
大きな家から出てきた女の子は、他の幼馴染とは全く違った雰囲気を纏っていた。
丁寧お嬢様系幼馴染み。それしか浮かばない。
「悠登さん、お隣いいですか?(今日もカッコいい~)」
「お~もちろん」
「宿題、ちゃんとやりました?」
「……うん?」
「あ~、やってないですね? 今日は見せませんよ~」
「そ、そんな事を言わないで……」
この子は頭がいい。勉強関連は全部この子に面倒を見てもらっている。
つまりこの子には頭が上がらない。あと多分、怒らせると一番怖い。
「なんだかんだ見せるくせに」
「多分、一番あざとい子」
「敵に回したくないタイプ!」
「ん~? みんな何言ってるの?」
――――
――
―
いつも通り、五人の幼馴染と登校。いつも通りではあるが、今日から新学期だ。
つまり、あのイベントが発生する!
『お前達って、どんな関係なの?』
俺達の関係を知らない奴なら聞いてくるだろう。そして俺は言ってやるんだ。
『俺達、幼馴染なんだ』
人生で1度は言いたい言葉、不動の一位。この言葉を言える季節が今年もやって参りました。
さぁ、早くおいでよ。気になるだろう? 俺達の関係が!
でも一つ気になるのは、最近そう言うと微妙な顔をするんだよな、この五人。
「なんか悠登、ソワソワしてない?(アタシと同じクラスになりたいのねっ)」
「うん、少し挙動不審(同じクラス同じクラス同じクラス)」
「クラス分けって緊張するもんね~(お願いします! 今年も彼と同じクラスで!)」
「ドキドキするねぇ~(悠登くんと同じクラスがいいなぁ)」
「みんな一緒だといいですね(悠登さんと私は同じ、後は他のクラスでお願いします)」
「お~、俺はC組か~」
「……っ! やったっ!(余計なのも一緒だけど)」
「……ん、やった(けど残念、お邪魔虫が沢山)」
「あ! 私もC組!(まぁよし! ベストじゃないけどよし!)」
「よ、よかったぁ……(出来れば悠登くんだけが良かったなぁ)」
「今年もみんな一緒ですね!(ちっ……)」
どうやら今年もみんなと一緒のようだ。誰か一人だけ別のクラスとかじゃなくて本当に良かった。
それに俺に取っても好都合。これで幼馴染宣言のチャンスが広がった。
――――
――
―
そしてついに、その時はやって来た。
始業式を終え、自己紹介などを終え、今日はこれでお仕舞いとなった放課後。
ホームルームが終わったと同時に俺の元へとやって来た幼馴染の五人。
その五人と仲良さそうに喋っていると、隣に座っていた男子生徒が不思議そうな顔で話し掛けてきた。
「黒峰……だったよな? その子達とどんな関係なんだ?」
「……んふふ、聞きたいかね?」
待ってました、興味津々といったその表情を待っていました。
幼馴染だと言った時の表情はどんなのだろう? あぁ見たい、その表情が見たいっ!
「あ、あぁ……聞きたいな。そんな可愛い子達、なかなかいないし」
「そうか! では教えよう! この可愛い五人はなんとっ!」
「なんと……?」
「俺の幼馴染なんじゃぁぁぁ!!」
か、い、か、ん、っ! もはや特殊性癖である。
体が震える、脳が喜んでドーパミンどっぱどぱ。
幼馴染だと教えられた男子の驚いた表情も素晴らしい。過去最高に気持ち良かったかもしれない。
「ご、五人も幼馴染がいるのかよ!?」
「うしゃしゃしゃしゃ! いるのだよ!」
「「「「「…………」」」」」
そこから少しだけ話して、彼は教室を出ていった。彼とはいい友好関係を築けそうだな。
なんて馬鹿な事を思っていたもんだから、幼馴染達が微妙な顔をしているのに気が付いていなかった。
「じゃあ俺達も帰ろうか、幼馴染達よ」
「……ねぇ悠登」
「うん?」
「あのね」
「うん」
「なんて言えばいいのかな~」
「うん?」
「えっと、そのね?」
「うん」
「もう、嫌です」
「うん?」
「「「「「「ただの幼馴染じゃいやっ!」」」」」」
「な、な、な……なにを言い出したぁぁぁ!?」
ど、どういう事だ!? 幼馴染じゃ嫌ってなんだ!?
お前達だって幼馴染って事を喜んでいたじゃないか! 嬉しいって言ってたじゃないかぁぁ!
「お、お、お幼馴染だろ!?」
「幼馴染やめるっ!」
「なにーー!?」
「それ以上の関係になりたい……!」
「幼馴染以上の関係ってなんだーー!?」
「幼馴染だけど、幼馴染じゃないの!」
「どういう事じゃーー!?」
「もう幼馴染じゃ満足出来ないよぉ」
「俺は大満足ですーー!?」
「幼馴染としてしか見てくれないんですもん」
「幼馴染なんだから幼馴染として見るでしょーー!?」
どうしてイキナリそんな事を言い出した!? 何が不満なんだ!? 俺なりに頑張って来たのに!
まずい、とにかくまずい! 多分あれだ、最近俺、少し関係性に胡座をかいていたのかもしれない。
幼馴染になった彼女達、昔ほどの頑張りをしていたかというとそうでなかった!
心を入れ換えます! 甘えすぎてました! だからそんな事を言わないでくれぇ!
「た、頼むっ! 俺の幼馴染でいてくれぇ!」
「「「「「だから……嫌なのっ!」」」」」
「なんでだぁぁぁぁ!」
この日俺は、幼馴染を失った。どこで何を間違ったのか、一瞬にして失ってしまった。
しかし次の日、普通に起こしに来てくれたし、ご飯作ってくれたし、元気に挨拶してくれたし、口元にジャムは付けてたし、優しく微笑んでくれた。
何も変わってないんだけど、でもやっぱりどこか違う。
「だって、あれはね……」
「うん、あれはない……」
「そうだよねぇ……」
「私たち幼馴染は……」
「負けヒロイン……」
「「「「「そんなの絶対にイヤッ!」」」」」
幼馴染でいてほしい男の子と、ただの幼馴染ではいたくない女の子達の戦いは……続く?
お読み頂き、ありがとうございます
書き終えて気づく、名前も出てこないし人物描写もない…
脳死系というより想像系作品
いつか連載する事があれば…ちゃんと書きます
時間潰しになったら評価や感想、お願い致します