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短編小説

おちたラジオ

作者: とり
掲載日:2022/07/15

 



 高架沿(こうかぞ)いの道(みち)をあるく。

 熱帯夜(ねったいや)で朝はやくおきた時、ぼくはいつもそうしていた。


 車(くるま)も、自転車(じてんしゃ)もない。たまにみつけるのは、同じような散歩(さんぽ)客(きゃく)だけ。


「おはよう」


 広場のようになった舗装路(ほそうろ)の、ベンチからあいさつがした。知らないおじさんだ。


 ノイズまじりの音(おと)も聞こえる。

 携帯(けいたい)ラジオだった。早朝(そうちょう)のニュースが、スピーカーからながれている。


「おはようございます」


 ぼくはあいさつをかえした。街灯(がいとう)のしたで、おじさんのはげあがった頭(あたま)や、ほそいからだ、ウエストポーチ、そばに置いたラジオが、鮮明(せんめい)に浮かびあがっていた。


(ぼくが持ってるのと同じやつだ)


 バッテリー充電(じゅうでん)のできないタイプ。うしろがわにフタがあって、なかに単四電池(たんよんでんち)を二本(にほん)いれて使う。


 電波受信(でんぱじゅしん)のために、アンテナが長(なが)く、ななめに立てられていた。


「チャンネル、かえてみる?」


 おじさんがラジオをすすめる。


「あ、いえ。いいです」


 ぼくは片手(かたて)を振って、「すみません」とつづけようとした。アンテナが、指(ゆび)にあたる。


 ラジオが落(お)ちた。

 あわてて、ボクはしゃがみこんだ。


「ごめんねえ」


 おじさんは、ばつがわるそうに腰(こし)をかがめた。

 ポーン。

 と午前五時(ごぜんごじ)をしらせる音声(おんせい)がする。


 はずれたちいさなフタと、ひっくりかえったラジオを、ぼくはひろった。


 なかに電池(でんち)は、入(はい)っていなかった。







 ※このものがたりはフィクションです。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 読(よ)んでくださったかた、感想(かんそう)をくださったかた、ありがとうございました。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ・以下の文章(ぶんしょう)を修正(しゅうせい)しました。


  旧→『ひとも、車(くるま)もない。』

  改→『車(くるま)も、自転車(じてんしゃ)もない。』


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