表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/366

94話 今日、判明しました。

 


「いっちゃん、海釣りしよう!」

「お前はいきなり何を言ってるんだ?」

「カイお兄ちゃん、船出して! そしてサメが出るところ連れてって!」

「サメを釣ろうとするな!?」

「はぁ……葉月、サメは駄目だ」


 今は別荘に向かっています。カイお兄ちゃんが車で迎えに来てくれたよ。


 本当はね、いっちゃんは1人で行くつもりだったんだって。如月(きさらぎ)の別荘を貸してほしいってお兄ちゃんに言ったら、それが叔母さんの耳にまで入って、私を連れてくるっていう条件を出されたみたい。いっちゃんはイベント鑑賞の誘惑に負けて、私を犠牲にしたのだ。酷いよ、いっちゃん!


 先生は明日来るんだって。来なくていいのにね。仕事の都合上、明日しか空いてないんだって。だから来なくていいのにね。


「ふふ、葉月ちゃん。変わらないわね」


 そう言って、助手席で笑っているのは、カイお兄ちゃんの婚約者の皐月お姉ちゃん。この前正式に婚約したらしい。知らなかった。


 皐月お姉ちゃんは子供の時に会って以来だ。この2人は星ノ天(ほしのそら)学園の卒業生。高等部の時から付き合ってるんだよね。私といっちゃんもよく遊んでもらった記憶がある。


「変わらな過ぎて困ってるんだ。何とかしてくれ」

「あら、一花ちゃんも全然変わってないわよ? 2人とも元気みたいで安心したわ」

「どうして~?」

「ふふ、だって2人とも、私にとっても妹みたいなものだもの。心配してたのよ、ずっと。あれ以来、魁人も2人に会わせてくれなかったしね……」


 確かにね~。でも皐月お姉ちゃん、カイお兄ちゃんの判断は間違ってなかったと思うよ~?


「お姉ちゃんは綺麗になったね~」

「あら、ありがとう。葉月ちゃんも可愛くなっててびっくりしたわよ?」

「いっちゃん! 可愛いって言われた!」

「今のはお世辞だ。覚えておけ」

「お世辞じゃないわ。本当に2人は可愛くなったと思ってる。本当は今すぐ抱きしめたいぐらい」

「じゃあ、あとでギュってして~、お兄ちゃんの目の前で」

「何で僕の目の前なんだ、葉月?」

「嫉妬して私にもう構わなくさせるためだけど?」

「逆に私が嫉妬してるんだけどな~? 魁人(かいと)はいつも葉月ちゃんの話ばかりなんだから。気持ちは分かるけど」

「お姉ちゃん、もっといい人いるよ~?」

「そうね~。そうしようかしら」


 無理無理。お兄ちゃんは皐月お姉ちゃんから離れられないよ。すっごい好きだもん。学生の頃に皐月お姉ちゃんに迫ってきた男を、家族ごとどっか知らないところに追いやったからね。可哀そうに。


 皐月お姉ちゃんと久しぶりに話してると、なんだか昔が懐かしくなっちゃった。あの頃は楽しかったな~。もう戻れないけどね。



 4人で昔話も交えながら、別荘に向かう途中に休憩も兼ねてドライブインに入った。あれ? あ、花音たちだ。会長たちもここで休憩とってたんだ。


「葉月っち~、一花~」


 花音と舞もこっちに気づいて近寄ってきた。

 そしたら2人とも皐月お姉ちゃんを見て、ペコリとお辞儀している。


「この前はありがとうございました!」

「ありがとうございました。この前は助かりました」

「あら、いいのよ。気にしないで?」


 ん、んん? あれ? 皐月お姉ちゃんを知ってる? 何で?


 私が首を傾げていると、花音と皐月お姉ちゃんが苦笑してこっちを見ている。


「葉月ちゃん。この前ね、この子たち沙羅さんに引っ張り回されてたのよ。ちょうど私が通りがかってね。その時にもう挨拶してたの」


 はい?


「ごめんね、葉月。黙ってて。心配かけると思ったの」

「いやぁ、ごめんごめん、葉月っち! 沙羅さんに拉致られちゃってさ。その時に皐月さんが助けてくれたんだよ! かっこよかった~、あの時の皐月さん」

「ふふ、これでも付き合いは長いからね。葉月ちゃん、心配しないで? 別に変な事は無かったから」


 ……いや……私、あの時、花音に何もしないでって言ったよね? 何してるの、叔母さん。


 いっちゃん、知ってたの? あ、知ってたね。目を逸らしてるもんね。あ、カイお兄ちゃんも知ってるね。目を逸らしてるもんね。


「いっちゃん……カイお兄ちゃん……?」

「いや、葉月……母さんは悪気は無くてだな」

「あ~葉月。2人は大丈夫だったんだ。ただ沙羅さんが買い物に付き合わせただけでな。何も無かったから、お前にも言う必要がないだろ?」


 へ~ほ~。そう来ますか。そう来るんですね。わかったよ、いっちゃん。


「……帰る」

「ほー、どうやって帰るつもりだ? ここまで来てしまったのに」

「何言ってるの、いっちゃん。そこに帰る手段があるのに」

「手段だと?」

「カイお兄ちゃんの車で帰る。運転出来るもん」

「やらせると思うのか!? そしてしれっと言うな! 免許持ってないだろ!?」


 やだな~、いっちゃん。前世の知識で運転出来るに決まってるじゃん。確かに免許はないけどね。ふっ、お兄ちゃん、今ポケットを死守したね。そこにあるんだね、車のカギ。さっさと奪ってか~えろ。


 と、お兄ちゃんの方に足を向けた所で、腕を今度は花音に掴まれた。


「葉月、本当に大丈夫だったの。一緒に遊ぶって約束したよね? 帰るのは駄目だよ?」

「そうだよ~葉月っち。往生際が悪いよ?」


 ……むー。確かに約束したけど。


「ほら、葉月。花音も舞もこう言ってるぞ。文句なら後で沙羅さんに直接言え。帰るのは無しだ」

「……わかったよ~」

「うん、いい子だね」


 頭をよしよししてくる花音。いい子って完全に子ども扱いですね! っていうか皐月お姉ちゃん。その生温かい目で見ながら、「いい友達持ったわね~」って言わないで。皐月お姉ちゃんも母親化してるよ!


 結局私は、別荘に着くまでむーっとしてた。途中、いっちゃんに花音から持たされたはちみつ漬けの梅干し食べさせられて、一気に機嫌は直ったけど。だって~これおいしいんだもん。いっちゃん、もう一個~。ん~んまし~。



 ちなみに別荘着いてから叔母さんに会って、もうしないって言わせたよ。当たり前でしょ? 今度はちゃんと守ってよね? ホントにどうなるか分からないからね?


お読み下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ