表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/366

90話 遊園地イベント

 


 さてさてお腹も膨れて、機嫌は直りましたよ。花音のはちみつ漬けの梅干しおいしかった~。あれ、おやつにもなるんだよね~。またも~らおっと。


 忘れているかもしれないけど、今日は乙女ゲームのイベント日。どんなイベントなのかはいっちゃんに聞いてない。でも、今日は遊園地だよ? 私的にはイベントより遊んでいたいんだけどな~。


 舞を連れて、また絶叫系行くかな~と思ったら、舞がダウンした。


「舞~? 次いこ~?」

「いや……いやいや、葉月っち……ちょっと休ませて? さっきご飯食べたばかりで絶叫系3連発はきついんだけど?」


 え~? そう?


「少し休んでろ。お前がここまで駄目だとは思わなかったな」

「あたし、こう見えても繊細なんで……」

「どこが~?」

「どういう意味かな!? って――う――タンマ……」


 顔を青白くさせてるよ。本当に駄目そう。


「飲み物買ってきてやるから、ちょっとここで休んでろ」

「ごめん……一花……」

「いくぞ、葉月」


 え? いっちゃん、舞を置いていくの?


 いっちゃんがさっさと行ってしまったので、舞に一言言って追いかけた。


 ん、あれ? いっちゃん? 飲み物買うんじゃないの? こっちに売店ないんだけど? 見ると、ここは迷路? 


 あれ、会長たちじゃん。会長たちとはまた別行動なんだよね。


「いっちゃん、もしかしてイベント?」

「そうだ。ここで会長と花音がペアになる……はず……」


 自信ないの?


「いっちゃん、舞が待ってるよ?」

「ちょっとは空気に当たった方がいい。それにこれが終わったらすぐ戻る。問題ない」


 いっちゃんの優先順位はイベントなんだね。舞、ごめん。私は止められないよ。ちょっとだけ休んで待っててね。


「それでどうするの?」

「あたしらも入るしかないな」


 ということで、やってきましたラビリンス。あっスタンプラリー形式だ。スタンプラリーといえばレクリエーション思い出すね。あの時は一個もスタンプついてないけどね!


 いっちゃんと一緒に入って花音たちを追いかける。いっちゃんがゲームの知識で場所は把握しているらしい。何人かのペアを追い抜いていくと、会長たちの声がしてきた。


「会長……? これ合ってます?」


 花音の声だ。


「合ってるだろ、多分」


 うん、良かったね、いっちゃん。ちゃんと花音と会長のイベントだよ。あ、安定の鑑賞モードになってるね。


 2人から気づかれないように、私もソッと覗いてみる。一応地図みたいなもの持ってるみたい。受付で貰ったもんね。


 そういえば、ここのラビリンスは結構有名らしいよ、入ったら出られないって。そういう時はリタイアが出来るらしいけど、その時用にボタンみたいなのも渡された。


「会長。さっきのところ、やっぱり右だったんじゃないですか?」

「……大丈夫だから、ついてこい」

「はぁ……一回あの場所まで戻ることを勧めます」

「大丈夫だって言ってるだろ。言う事聞け。俺を誰だと思ってる」

「今はただの方向音痴の人ですよ。何でそこで意地を張るんですか。戻りましょう」


 花音強し。肩を竦めて、あの会長をあしらっている。会長の腕の服を掴んで引っ張ってるもん。


「あれ? こっちからきたんだっけ?」

「はー……ほら見ろ。お前だって迷ってるじゃねえか」

「会長には言われたくありませんよ」

「そもそも方向音痴だとはお前に言われたくないな。入学式の時に迷ってたのはどこのどいつだ」

「あれは!……その……確かに迷ってましたけど」


 シュンッとする花音。ちょっと可愛い。あれ? 何かちょっと会長がオロオロしてるような……。


「あ、あー……その……言い過ぎた……か……?」


 それを聞いて花音がきょとんとしていた。え、どしたの、会長? 何か変なの食べた? いや、花音の甘辛きんぴらごぼう食べてたよね。好物なんでしょ?


「……何だ?」

「いえ……いきなりどうしたんですか?」

「は?」

「だって、ちょっと素直になってるから」

「……何なんだ、お前は。落ち込んだり怒ったり驚いたり……」

「はい?」

「……調子が狂う」

「はあ……」


 よく分からない顔してるね、花音。すいません、私も分かりません。


「どうしたらいいのか分からん。小鳥遊より、お前のほうが厄介だ」

「……そう言われても」

「お前にとっての正しい俺が分からない。面倒だ……本当に……」

「すいませんが、意味がちょっと……?」


 花音にとっての正しい会長?

 花音にとっての……?


 花音に……とっての……?



「お前……俺にどういう風にしてほしいんだ……?」


 会長が、少し辛そうにしてる。


 花音はただ黙って会長を見てた。



「私がこうしてほしいと言ったら、会長はそうするんですか……?」



 花音の言葉が静かに響いて、今度は会長が黙ってしまった。


「私は別に会長にこういう風になってほしいとか、要求するものはありませんよ?」

「……」

「まあ……自信過剰なところは直してほしいですけどね?」


 花音が苦笑して、一歩会長に近づいた。


「何をそんなに恐れているのか分かりませんけど……」


 ビクッと会長の肩が動いた。


「どんな会長でも会長であることに変わりありません」


 花音が手を伸ばして、会長の頬にそっと触れる。


「だから、そんな辛そうにしなくて大丈夫ですよ?」



 柔らかい微笑みで、会長を縛り付ける。



「会長が不器用だってことはもう知っていますから」



 会長はしばらく黙って、花音を見ていた。


「……誰が不器用だ」


 花音の手を取って、そのまま歩き出す。


「ちょっ……会長?! そっちは……!」

「黙ってついてこい。さっさと脱出するぞ」

「いや、ちゃんと地図確認しましょう!? それと手! 離してください!」

「うるさい。さっさと歩け」

「だからっ! そういうところを直してほしいんですってば!」


 会長と花音が遠ざかってく。


 いっちゃんはもうプルプルモードに入っていた。



 胸に手を置く。



 モヤモヤする。



 これなんだろ?



 おかしいな……。



 コーヒー飲めばスッキリするかな……。



 おかしいな……。



 ああ。



 違う。




 私はもうおかしくなってたんだった。




 だから、



 これが正常だ。




 プルプルモードのいっちゃんを連れて舞のところに戻ったら、舞はまだグッタリしていた。


お読み下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ