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85話 遊園地に行くために

 


「遊園地イベント? 前言ってたの、いっちゃん?」

「そうだ、明後日か」


 夏休みに入りました。期末試験? 聞かないでおくれ。安定の最下位だから。


 鴻城(こうじょう)の家に無理やり連れていかれたあの後、舞とレイラはすごく気まずそうにしていた。


 いっちゃんに聞いたら、机を一個投げ飛ばしただけだって。私が意識飛ばしたの一瞬だったみたい。すぐにいっちゃんとメイド長が押さえてくれて、私もすぐに元に戻ったからね。いや、ごめんよ、いっちゃん。苦労かけるね。


 舞とレイラにも謝っておいたよ。夏休みに入る頃には前みたいに普通に会話してたけど、内心はどうなのやらだね。


 花音は全く変わらなかった。これもビックリ。

 普通、机を投げ飛ばすとかの異常行為見たら、もっと怖がるとかなるんじゃない? 抱きしめられた後も、ちょっとして「帰ろ」って言ったら、離してくれた。


 それからは全くいつもと変わりません。しかも全然触れてこない。おじいちゃんとの事や叔母さんとのことも触れてこない。これは私にとっては好都合ですね。


 今は実家に帰省中。明日帰ってくるけど。

 休み中に生徒会で休み明けからの学校行事の打ち合わせや手配とかをやるんだって。忙しいね、生徒会。


「生徒会のメンバーで遊園地行くんだよね?」

「ああ、そのはずだ。一学期のお疲れ様会と称して行くはずだが……」


 遊園地。遊園地ね~。

 私も行きたいな~。楽しそうだな~。ジェットコースターとかベルトつけないで乗ってみたいな~。絶対、いっちゃんに止められるけど。


 ん? でも、いっちゃんは見に行くんだよね。あれ? じゃあ、私も便乗して行けるじゃん。別に私はイベント見なくてもいいから、その間に好きに行動すればいいんじゃない?


「いっちゃんいっちゃん。私たちも、明後日遊園地?」

「そうだけど、あたし1人で行く。お前は留守番だ」


 あっれ~? おっかしいな~?


「何で?」

「お前が遊園地に行って、大人しく出来るとは思えん。どうせ一緒に行っても、あたしがイベント見てる隙に逃げ出すに決まっている」


 バレてる。


「いっちゃん。私、大人しくしてるよ?」

「どの口が言う。ちょっと胸に手を当てて考えてみろ」

「……思い当たる行動が胸の中に生まれません」

「やかましいわ! 前に行った時に、コーヒーカップ回しすぎて壊したこと忘れるな!! 死ぬかと思ったわ!」


 え~、あれはね、点検不足だよ? 私のせいじゃないよ?


「とにかくだな。今回はだめだ。ここで大人しくしてろ」


 むー、やだー。つまんないー。


「おっじゃま~」


 舞がいきなり部屋に入ってきた。あれ? 今、舞も帰省中じゃなかった?


「どうしたんだ? お前、来週じゃなかったか、帰ってくるの?」

「ふっふっふっ! 向こうの友達の予定が見事に夏休み中合わなくてね! 急遽、帰ってきました!」

「なんで合わなかったの~?」


 ズンっといきなり膝から崩れた舞。え? どしたの?


「…………みんな……彼氏との予定で忙しいって……高校入って……仲良かった子たちがみんな、いつのまにか彼氏持ち……」

「……ガンバ」

「だから、応援しないで!?」


 それ以外言うことが見つからなかったんだもん。


「まあ、だから暇だから帰ってきたんだよ! いいもん! こっちで恋人見つけるもん!!」

「出来たらいいね~」

「生暖かい目で見るのやめてくれない!?」

「あ~やかましい。うるさくするなら、実家に帰れ」

「一花まで酷い!? あ~花音! 早く帰ってきて~……2人がいじめるよ~……」

「明日帰ってくるけどね~」

「そういうことじゃなくてね!? はっ! こんな話するつもりじゃなかったんだよ! ほら、2人ともこれ見て!」


 そう言って舞がカバンから何かのチケットを取り出した。あれ、これって。


「遊園地のチケット! パパから貰ったんだよね~! 明後日までの有効期限だから、皆でいこうよ!」


 おお~~!!! ベストタイミングだよ! 舞!!


「は~い!! 行く行く!!」

「おっ、葉月っち乗り気だね!! よしっ!! 一緒に彼氏見つけにいこうぜ!!」

「それはいらない」

「お前、ナンパ目的で行くつもりだったのか……」

「いいじゃん! 夢見てもいいじゃん!! イケメンが声掛けてくれるかもしれないじゃん!!」

「「無理だと思う」」

「ハモらないで!?」


 グスングスンと泣き真似する舞を見ながら、いっちゃんはやれやれと顔を振っていた。ふふ~ん! でもこれで私も遊園地いけるもんね~! 何しよっかな~。


「葉月は留守番だからな」


 っ!? いっちゃん!? 何故に!?


「さっきも言ったが、お前が行くと遊園地の経営者が泣くことになる。だめだ」

「やだ! 行く!」

「駄目なものは駄目だ」

「いっちゃん! 私だって遊びたい!!」

「一花、それはちょっとあんまりだよ。葉月っちだけ、置いてけぼりはさ~。あたしだって皆と一緒に遊びたいんだけど?」


 舞!! 私も舞と遊びたいよ!! そして泣き真似下手だったね!!

 でもいっちゃんは横に首を振り続ける。むー!!


「いっちゃん! 私、大人しくする!」

「ほら、葉月っちもこう言ってるんだよ? あの葉月っちが大人しくするって言ってるんだから、皆で楽しもうよ!」

「うん、舞!! ベルトつけないで乗るだけにする!!」

「あたしの援護返してくれないかな!? 危ないから!! どこが大人しいの、それ!?」


 えー? 大丈夫じゃない?


「ほら見ろ。こういうことを考えてるんだ。とてもじゃないが、連れていけないだろ?」

「た、確かに一花の言う通りだけどね……んー……ああ、そうだ。じゃあ、もし危ない事や勝手にどっか行ったりしたら、花音に頼んで一週間玉ねぎのご飯だけにしてもらおうよ?」


 あれ、舞? 今、なんか恐ろしい事言わなかった?


「ああ、その手があったな」

「でしょ? そうすれば、葉月っちは下手なことできないし!」

「そうだな……それだったら葉月、連れてってやるぞ?」

「おっ! 一花からの許可が出たよ、葉月っち! 良かったね!」


 い……


 いやだ~!!! じゃあ、留守番でいい!! 留守番でいいよ!! そっちの方が好き勝手出来るもん!!!


「そうだな、留守番させるのも不安だったしな。これで安心して望めるな」


 いっちゃあああん!!!???



 こうして私の遊園地行きが許可を出されたのでした。


お読み下さり、ありがとうございます。

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