71話 ドラマ
ゴロゴロ。ゴロゴロ。今日も暇~。
花音が勉強している横でゴロゴロ転がり続ける。花音が時々こっちを見て苦笑していたよ。携帯ゲームやってたんだけど、飽きちゃったんだよね~。他に何かないかな~って思いながらネットで『面白いモノ』で検索してみる。うん! ない!
「葉月、お茶でも飲もうか?」
「ん~飲む~」
花音が立ち上がって、ゴロゴロしてる私を避けながら、キッチンに向かった。今度は『変なもの』で検索してみる。うん。前にも見たことあるものばっかり。
他に何かないかな~。あれ? そういえばこの間、舞が何かのドラマが面白いって言ってたような……タイトルを思い出して検索してみる。あ、あった。
何てことないよくある恋愛ドラマみたい。何々? 仕事をクビになった女の子がライバル会社に入っての逆襲劇? でも、クビにされた会社の息子に気に入られて……ってこれホントに面白いの?
体を起こして、テーブルに携帯を置いた。舞が面白いって言ってたし、暇潰しにちょっと見てみようかな。花音がお茶を持ってきてくれた。ほどよい熱さです。
「花音~。花音も見る~?」
「ん、何を?」
「この前、舞が言ってたドラマ~」
「ああ、そういえば言ってたね。んー私はいいよ」
「音出さない方がいい?」
「出しても大丈夫だよ」
音出していいって許可が出たから、少し低めにして再生してみる。ちょっとコメディ要素も入っていた。テンポがいいドラマだなって思う。舞が好きそう。
1話目はすんなり見れた。よっしゃ、どんどんいこう。
簡単に言えば、主人公の自分の復讐したい気持ちと、相手の男性への恋心で悩むストーリーみたい。恋心がさっぱりですけどね。だって押し倒されてドキドキってよく分からない。なんで漫画みたいな表現入れてるんだろう?
花音は分かるのかな? っと思って、勉強してる花音に聞いてみた。
「花音? 花音はこういう風に押し倒されたりしたことあるの?」
首を傾げて私の携帯画面を見てきた。
「んー、妹たちに押し倒されたりはしてるけど……」
花音。それはちょっと違うと思う。
「葉月はないの?」
「ん~、ないよ。このドキドキっていうのがさっぱりだね~」
「それは私も分からないなぁ……」
もしかしたら、今後会長に押し倒されて、花音もこの主人公みたいになるのかな? そういうイベントがあるとはいっちゃんに聞いてないけど。
ムクムクっと自分の中で好奇心が湧いてきた。
よっし! これは試してみるしかないでしょう!
「花音!」
「ん、何って、きゃあ!!?」
ドサッと花音を押し倒してみる。
思ったより勢いが強すぎたみたい。
「もう、葉月……いきなり――っ!?」
めちゃくちゃ顔が近くにあった。
「へへ~。どう、花音? ドキドキする~?」
「~~~~~!!」
おお、花音の顔が真っ赤に染まっていくよ。かっわい~!
「……葉月……さすがに……ち、近すぎる……」
「ん~?」
ドキドキしてるのかな~? でもなんかたっのし~。目が泳いでるもん。
「はぁ……葉月、もうどいて?」
「えへへ~。花音、顔真っ赤~。かっわい~」
「かっ……!? だからっそういうことは……」
花音が耳まで真っ赤に染めてる。おもしろ~。
「おい、葉月。お前、あたしのノートどこに……」
「「「あ」」」
花音の反応を間近で堪能してると、ノックと一緒にいっちゃんが入ってきた。
そして3人で固まってしまった。
いや、いっちゃん。ノックしたら返事するまで待とうよ?
「あーその……すまん……」
いっちゃんが目を逸らした。花音が私の下で今度は首元まで真っ赤にしている。私はやりすぎたかなって顔をしてしまった。
「コホン……葉月、一応聞いておこうか。お前にこんな趣味があったとは記憶してないが、何してる?」
「いっちゃん。何やら誤解をしているみたいだね?」
「だから一応聞いているんだ」
「あ、あの……一花ちゃん……これはね……」
「いっちゃん。これはね、ちょっとした実験なんだよ」
「ほう。そうか、実験か。何のだ?」
「あの、葉月も……そろそろどいてほしいなぁ……?」
「ドラマを見ていたんだよ」
「そうか、ドラマか」
「そうなんだよ、いっちゃん。ドラマでね、主人公が相手の人に押し倒される場面があってね」
「なるほど……それをお前は真似してみようと思ったわけか。それで?」
「押し倒して、花音で遊んでました」
「花音に迷惑かけるなって言っただろうが!?」
いっちゃんの蹴りが炸裂して、花音がいっちゃんに救出された。
いっちゃんは私にしこたま説教して、自分の部屋に帰っていった。あれ、いっちゃん? ノート取りにきたんじゃないの?
花音は花音でフウと息をついて、怖い笑顔をしていた。
「葉月? 悪ふざけはだめだよ」
「……花音?」
「何?」
「ドキドキした?」
私の言葉でまた花音は顔を赤くしていた。可愛いと思いました。
次の日は1日玉ねぎ尽くしだったけど。
もうやらないと誓った。
お読み下さり、ありがとうございます。