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51話 誤解?

 


 先生との会話が終わって、寮までカイお兄ちゃんに送ってもらった。


 あ~疲れた。移動だけでも疲れるのに、お兄ちゃんはお兄ちゃんで帰りの車の中で口を酸っぱくして「連絡をちゃんとしろ」ってうるさいんだもん。しかも花音のことも聞いてくるし、会長たちにも迷惑かけるなとか小言ばっかり。


 でも夕飯は私の好きなものでいいっていうから、トカゲとか何かの目玉とかカエルとかの料理屋に無理やり連れてってもらったよ~。顔青くしてたけど、無理やり口に突っ込んでやった。おいしいのにね~。


 時刻はもう深夜。花音はもう寝てるだろうな~。

 いや~先生に突っ込まれた時はどうしようかと思ったけどね~。だからあの人苦手なんだよ~も~。


 でもさ~先生。確かに我慢してるけど~私は基本変わってないんだけどね~。まあ、そこはあの人も分かってそうだけどさ~。あ~次行くのやだ~。も~行きたくないよ~。


 あれ、電気ついてる?


 部屋に着いて、ドアを開けると電気がついていた。何故に?


 そ~っと静かに中のドアを開けてみる。


「あ……おかえり、葉月」

「………………」


 思わずきょとんとしてしまった。共同のガラステーブルで、勉強している花音が私を見上げてきたから。


 花音、まだ起きてたの? いつもはこの時間にもう寝てるのに。


「どうしたの?」

「いや……まだ起きてたんだ~と思って……」

「今日は何だか目が冴えちゃって」


 明らかに嘘だよね。だって朝も早いから絶対23時には寝るようにしてたじゃん。今0時過ぎてるよ?


 もしかして……待ってたとかないよね? え、ないよね?


「花音……待ってた?」


 思わず口に出して聞いちゃったよ。そうしたらきょとんとした顔をして、クスっと笑いかけてくる。


「違うよ、葉月。本当に目が冴えちゃってただけ。だから眠くなるまで勉強しとこうって思ったの。もう私も寝るよ」

「そう……」

「葉月、お風呂は?」

「あ~、ん~……どうしよっか……」

「……疲れてる顔してるね、葉月」


 いや、はい。そうなんです。ちょっと頭が回らないくらい疲れてるんです。あの先生のとこ行くとこうなんです。


「とりあえず入ってきたら? ちょっとは疲れとれるかもしれないよ? 一応いつでも入れるようにしておいたから」

「ん? ん~……そうする」


 花音は神様ですか? いつ帰ってくるかも分からなかったのに。ありがたく入らせていただきます! と思ってちょっとゆっくり湯船に浸かりました。ぽかぽか~。あったまる~。


 お風呂から上がると、花音がハチミツレモンのジュースを出してくれた。というか、ホントに至れり尽くせりなんですけど。


 どしたの、花音? もう寝た方がいいんじゃない? 目がトロンとしてるよ。


「花音、寝ないの?」

「寝るよ。葉月がそれ飲み終わったらね」


 え、飲み終わるまで待つの? もしかして洗おうとしてるの、このコップ? それぐらい自分でやるよ?

 ん~……何か変だな~……どうしたの?


「花音? 何かあった?」

「何もないけど?」

「眠そう。寝ていいんだよ?」

「……大丈夫」

「コップなら自分で洗うよ。大丈夫だよ?」


 お風呂ゆっくり入っちゃったから、もう1時を回っていた。なのに寝ようとしないんだもん。私もこれ飲んだら寝るよ? 今日は先生との会話で疲れてるしね。


 でも花音は何故か黙り込んじゃった。


「ねぇ……葉月?」

「ん?」

「本当に大丈夫……?」


 んん? さすがにコップ一つぐらい洗うのは大丈夫だよ。いつもやってるよね?


 ソッと頬に花音が手で触れてきた。思わずきょとんとしてしまう。そんなに洗うかどうかが心配? 壊さないよ?


「大丈夫だよ? コップ洗えるよ?」

「そうじゃなくて……こんな疲れてる顔初めて見たなって……」


 …………まあ、確かに疲れてるけど。


「……婚約者と一緒にいたのに、なんでこんな疲れてるの?」


 思わず言葉を失った。


 今、花音さん何て言いました? 婚約者!? いませんけど!?


 いや、待て……もしかしてカイお兄ちゃんのことかな!? いっちゃん! 何て説明してるのさ! 知ってるはずなのに!!


「いや、あの、花音?」

「如月ってすごい大財閥なんだってね。そんな人が葉月の婚約者だなんてびっくりしちゃった……」

「あのね、花音?」

「お金持ちの人たちってすごいんだね……私達みたいな年齢で婚約者とかいるんだぁって思って……」

「違くてね、花音?」

「やっぱり、別世界なんだなって……」


 全然花音が聞いてくれない。いっちゃん、ホント何を言ったの?


 ハァと珍しく自然と溜め息が出て、花音の手を握り返した。あ、やっとこっち見た。


「葉月?」

「あのね、花音。いっちゃんから何聞いたか知らないけど、というか何聞いたの?」

「……如月さんが大財閥の息子さんで、葉月の婚約者だって?」

「子供の時の話なんだけど、それ」

「でも身内なんでしょ?」

「あ~……うん……身内は身内なんだけどね?」

「婚約者だから身内なんでしょ?」


 何やら変なことになってるね、花音さん。身内って言ったら、もっと普通のことを連想してくれないかな~?


「……ただの従兄だから」

「……はい?」

「だから……カイお兄ちゃんはただの従兄。あの人、ちゃんと彼女もいるから」

「そ、そうなんだ……え……というか……何かごめん……勝手に誤解して」


 ホントだよ。いっちゃんの説明不足だよ。ただでさえ疲れてるのに、なんでこんな弁明しなきゃならないのさ。


 ……モヤモヤしてくる。

 花音がこんな誤解するとは。


「あの……葉月?」

「ん?」

「何か……いつもと違くない? 気のせいかな?」


 やば、いつもの作り笑顔バレた? 心配かけない為に、笑うようにしてたのに。疲れすぎて何も考えてなかった……どうしよう。


 ……こういう時こそあれだ! 笑って誤魔化せだ!


「気のせいだよ~花音~」

「そ、そうかな?」

「そうだよ~」


 このまま誤魔化す! 押し通す! 花音もさっきからずっと眠そうな顔してるから大丈夫!


「花音~もう寝よ~? 私ももう寝るし~」

「……そうだね」

「な~に? それとも一緒に寝る~?」

「うん? 別に……いいけど」

「はい?」


 あ~れ~?! 花音~!? どうしちゃったのかな~?! 入寮日の日にちゃんと断ってたよね!? あれかな!? 眠すぎて何も考えれてないのかな!?


「えーと、じゃあ……葉月のベッド?」

「いや、あの……花音? 自分のベッドで寝ていいんだよ?」

「?」


 コテンと首を傾げる花音。いや、その仕草、可愛いけども! そして、もう限界そうだね! 半分瞼閉じてますね!


「寝よ……葉月……」


 いやいやちょ~っと花音?! 手を引っ張らないで!? 私まだコップ洗ってな――


 そのまま手を引っ張られてベッドに引きずり込まれた。コップだけは何とかテーブルの上に置いたけどね。ただ、手を握られたままだから脱出できず。


 何これ? どんな状況? どうすりゃいいの?


 すぐ隣に花音の顔。

 しかも握った手をぎゅっとしてくる。


 ……花音あったかいな。

 あれ……? そういえば誰かが隣にいるのって……いつ以来?


 ああ……だめだな……疲れすぎて何も考えられないや……。


 花音はもうスヤスヤ寝ていた。人の気も知らないで。


 まぁいいか……あったかいし。

 ああ、そういえば……まだあれ飲んでない……。


 でも……あれ……眠いなぁ……おかしいなぁ。


 まぁいいか……疲れてるせいかな……それにあったかいし。



 私は久々に何も飲まないで眠りについた。



 次の日の朝、顔を真っ赤にした花音に謝られましたとさ。


お読み下さり、ありがとうございます。

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