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35話 GWイベント


 ついにきました、GWイベントが!


 ちなみに舞は今日帰ってくるんだって。だから今日の夜は4人で花音のご飯を食べることになっている。


 今日はなんとすき焼きを作ってくれるらしいよ! このすき焼きのために昨日土鍋を買いました! 楽しみ~。「こんな高いの買わなくていいのに」って花音が言ってたけど。


 いっちゃん的には今からがメインイベントだけどね。私は夜ご飯がメインです。


 さて、今日の予定は計画通りの『花音を迎えにいったらイベント見れちゃいました』作戦だ。時刻はおやつを食べる15時。生徒会室に私たちは今向かっている。あ、なんか小腹が空いてきた。いっちゃん、何か持ってない?

 ありゃ、だめだ。集中している。


「いっちゃん、何でそんな緊張してるの?」

「いや、相手が誰なのかがな……会長だったらいいなと思って……こればっかりは行ってみないと分からないし……」

「ねえ、いっちゃん。前から聞きたかったんだけどさ?」

「ん? 何だ?」

「今のところ、花音の会長への好感度? が爆下がり中なんだけど……これはどうなの? ゲーム通りなの?」


 会長の話を出すと、花音の笑顔の温度が冷えるんだよね。これってどうなの?


「大丈夫だ。今のところゲーム通りだな」


 へぇ、そうなんだ。


「まだまだ、これから徐々に会長が心を開いていくんだよ。この心の変化を楽しむゲームだ。まあ、ここは現実だがな」

「ふーん、なんか信じられないけどねー」


 まず、あの会長が心の傷というやつを抱えてるというのが信じられない。中等部に私がやったことはトラウマになってるみたいだけど。でも、いっちゃんは教えてくれないんだよね。「それをお前に言ったら絶対会長で遊ぶから」って前に言われた。確かに。でもいっちゃん? 遊べる心の傷ってどんなの?


 そんな会話をしながら生徒会室に近づいていくと寮長たちが現れた。お、会長以外の3人も一緒みたい。

 あれ? ということは今会長と花音の2人きり? じゃあイベントの相手は会長なのかな。あ、いっちゃんが小さくガッツポーズしている。


 寮長は私達を見かけると、一気に疲れた顔をして近づいてきた。


「一応聞きましょうか……今日は何しに来たのかしら?」

「やだな~寮長。私が何かしにきたと思ったの? それは誤解だよ」

「さっさと白状しなさい」


 私が何かをするのは寮長の確定事項らしい。今日は違うのに~。というより、他の3人? なんで目を合わせないようにしてるの?


「いや、寮長。信用できないのは重々承知しているが、今日は違うぞ」

「あなたたち、別に学園に用事なんて無いでしょう?」

「寮長、今日はね……なんと、すき焼きなんだよ!」

「……はい?」

「あー……つまり今日、あたしたちは桜沢さんを迎えにきたんだ。一緒に夕飯の材料を買いに行くことになっててな」

「……なるほど……今回はちゃんと理由がありそうね。でもまだもう少しかかるわよ?」

「私たちがちょっと早く出すぎちゃったみたいだね、いっちゃん」

「ああ、そうだな葉月。寮長、終わるまで待ってていいか?」

「はぁ……別に構わないわよ。ちゃんと大人しくしておくことが条件だけどね」


 そういえば寮長たちは何で生徒会室から出てきたの? と聞いてみたら、今からレクリエーションで使う道具のチェックをしにいくらしい。量も多いからこの人数で来たんだって。


 レクリエーションは1年生の交流会だ。1泊2日でキャンプしに行くことになっている、毎年恒例の行事である。行くのは近場のキャンプ場。外部組と内部組、他のクラスとの交流を目的にしているって前に寮長が言っていた。中間試験が終わってからだから、試験のお疲れ様会も兼ねてるらしいけど。


「良かったね、いっちゃん」

「ああ……こればかりはラッキーだな!」


 嬉しそうないっちゃん。きっとこの後に鑑賞モードに入って、そのあとプルプルモードに入るんだろうな。私は早くすき焼きの材料買いに行きたいんだけどなぁ。


 目的の生徒会室が見えた。お、ちょっとドアが開いている。これは、あれかな? どうぞ見てくださいってことかな?


 近付いて中を見てみると、会長と花音が何か書類の整理をやっていた。無言で。

 

 え? これがイベント? でも意外だわ~。会長が書類整理とか。ねえ、いっちゃん……あ、無理。もう鑑賞モードに入ってた。


「……」

「……」


 ねえ、いっちゃん。これが見たかったの? すごくつまらないよ?


「……何か意外ですね」


 と思ったら、花音が口を開いた。会長が怪訝な目で花音に視線を向けている。


「こういう書類整理なんてやらないと思っていました」

「……はぁ。お前、俺をなんだと思ってやがる」


 え? ただのお坊ちゃまですけど。意味分からないナルシストだと思ってましたよ?


「いつも偉そうにしてるだけの人かと」

「……俺をそういう風に言うやつは小鳥遊ぐらいだと思ってたがな」

「葉月じゃなくても思うと思いますよ」


 淡々としながら花音が答える。相変わらず、刺々しい~。


「……小鳥遊との生活はどうだ?」

「え? 楽しいですよ」


 いや、会長? 何故にそんなこと聞いてくるの? けど、花音楽しいと思ってくれてたんだね~。私も楽しいよ~。


「……“楽しい”ね。あんな頭おかしいやつと暮らして、よく楽しめるもんだ」


 おおう? 会長さん? 喧嘩売ってるのかな? 頭おかしいのは認めますけどね!


「……あなたがただ葉月の良い所を見ていないだけだと思いますけど?」

「あ? 良い所?」

「少し不思議なところもありますけど、彼女は根本的に優しいですよ。私より長い付き合いあるのに全然見えてないんですね」


 怖い笑顔の花音がいます。いや、花音? そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね? その信頼が痛いよ!? 嬉しいんだけどね!? なんかムズムズするよ!! 私のちょっとしかない罪悪感がズキズキしてるよ!!


 会長が驚いた感じで花音を見ていた。ですよね~。花音にこの後会うのが躊躇われるよ。いっそ、他の人みたいに頭おかしいイメージでいてくれた方が気が楽だわ~。実際自覚してるからさ~。


「随分信頼してるんだな、あいつのことを。あいつの噂も聞いているんだろ?」

「噂よりも自分の目で見たことを信じるタイプですから」

「……そうか」


 そう言って会長は何だか考え込んでしまった。んん? どうした?


「だったら、これからもあいつを頼む」


 はい? 今なんて言ったのかな? 聞き間違いかな? 花音もきょとんとしてるんですけど。


「一応、あいつもウチの生徒だからな。これ以上馬鹿やらないように面倒見ろ。さすがにあいつだけは予想できない」

「……何か……本当に意外ですね……」

「はぁ……だからお前は俺を何だと思ってるんだ」


 そう言って会長は次の書類に手をつけた。


「俺が生徒会長だってことを忘れるな。ただ目立ちたいだけで会長なんて面倒臭いことやれるか」

「……そうですよね」

「選ばれた責任っていうものがあるんだよ。お前には分からないかもしれないがな。選んでくれた奴らがいるんだ。それに応えないでどうするっていう話だ」

「……」

「お前が俺をどう思っていようが、ここの今のトップは俺だ。トップの俺が迷ったらどうしようもないだろうが」

「……だからって横暴なのはどうかと思いますけど」

「それで今まで上手くいってたんだ。お前と小鳥遊が特殊なだけだ」

「……どこからそんな自信が出てくるのか分かりません」

「お前は自信ないやつがトップにいて嬉しいか?」

「それは……」


 花音は黙ってしまった。うん。まあ、やだよね。会長、ちゃんと考えてたんだな~。ちょっとびっくりだよ。いっちゃんが推してたのはこういう理由? この前蹴り上げてちょっと可哀そうだったかな~。反省はしてませんけどね~。偉そうな態度はやっぱりイラっとくるけどね~。

 でも花音は違ったみたい。


「……すいません。偏見でした」


 花音のすごいとこはここだよね。自分が悪いと思ったらちゃんと謝るところ。私には無理だな~。


「……別にいい。それに勧誘の時は……その、俺も悪いところはあった」


 おお~なんだ。童顔先輩の言う通り、ちゃんと反省してたんだね。謝ったよ。花音が目を丸くして驚いているし。


「……そんな驚くことか」

「え? あ、いえ……その……すいません」

「……まぁいい。さっさと終わらせるぞ。東海林に何言われるか分からないからな」

「あ、はい」

「……それと小鳥遊に伝えておけ」


 んん? 私? 何かな、一応聞こうか?


「葉月にですか? 何を?」

「家に連絡しろと」


 …………お~い……誰~? 会長にそんなこと言ったの~? って心当たりは1人しかいないんだけどね~……会長にそんなこと言えるのはあの人しかいないし……絶対嫌です。


 ん? あれ? いっちゃんがプルプルモードに入ってない。そして何故か呆れた目でこっちを見てる。これはあれだ。「お前まだ連絡してなかったのか」という目だ。ええ、してませんけど、何か?


「お前ら、何やってるんだ?」


 いっちゃんと目で会話してると、会長がドアを開けて私たちを呆れた目で見てきた。ありゃ、いることバレちゃった。


「あれ? 葉月? 東雲さん?」

「やっほー花音。迎えにきたよ~」

「すまない。少し早く着いてしまったようだ」


 いっちゃんの切り替えの早さよ。さすがだわ~。


「あ。え~と会長? さっきの……」

「はぁ……伝言頼むまでもなかったな。小鳥遊、お前、家に連絡入れろ」

「え? やだ~」


 いっちゃんに肘打ちされた。そんな私を会長は呆れた目でずっと見ている。え~だって面倒なんだもん。花音が途端にオロオロし始めちゃった……はぁ、仕方ない……。


「……わかったよ~……気が向いたらね~」


 私が肩を竦めてそう言うと、2人が何故かホッしたような顔をしていた。うん、気が向いたらするよ~、いつかね~。


「花音~まだまだかかるの~?」

「え……あーうん。まだちょっとかかるかな」

「桜沢さん、会長。あたし達でやれることがあるなら手伝うが?」


 いっちゃん? 私が手伝うと倍時間がかかると思うけど? 案の定、会長に渋い顔されたから、いっちゃんだけ手伝うことになった。


 私? 私は何もするなって言われたから、大人しく花音の持ってきていたお菓子を食べてのんびり待ってましたよ。暇なんですけど~?

お読み下さり、ありがとうございます。

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