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甘えんぼタイム ―葉月Side

 

「んー? ゴロンタ、お腹空いたの~?」

「みゃ」

「でももうすぐ花音も帰ってくるよ~。みんなで食べよ~?」

「みゃ」


 ゴロンタが鳴きながら私の足の周りをウロウロして、たまに自分の餌置き場をチラチラと見る。もうそこに自分のご飯が用意されていることを理解しているみたい。


 しゃがんでゴロンタの頭を撫でると、もっと撫でろと言わんばかりにスリスリと擦り寄ってきた。でも、視線はやっぱりご飯置き場の方である。仕方ないなぁ。花音もいいって言うと思うから、先に食べさせますか。


 花音が作っておいてくれているゴロンタのご飯を用意すると、勢いよく食べだした。最近、食欲旺盛である。良きかな良きかな。


「ただいま」


 あ、花音だ。花音が帰ってきた。

 ひょこっとキッチンルームから顔を出すと、花音がまた「ただいま」って微笑んでくれた。


「おかえり~花音~」

「何してたの?」

「ゴロンタのお腹を満たしてた」

「そっか」


 花音もキッチンルームを覗いて、まだ食べているゴロンタを見ていた。そんな花音を見て、ピンと気づきました。どこか疲れている様子である。


「葉月もお腹空いたよね。ごめんね、今日は遅くなっちゃって」

「花音、疲れてる? 体育祭の準備大変?」

「平気だよ。新しい子たちも入ってきたしね」


 今は今度の体育祭の準備で生徒会が大変らしい。去年も大変そうだったしね。今年は月宮学園との合同だって言ってたから、余計大変なのかも。


「お風呂ピカピカだよ。花音すぐ入れるよ」

「ありがとう、葉月。でも先にご飯にしようか。私もお腹空いちゃったしね」


 花音のしっかりさんめ。でも私は料理を作るのを禁止されている。いっちゃんにだけど。人が食べれるものではないらしい。自分でもそう思う。


 疲れているだろう花音は、ゴロンタの頭を撫でてから早速ご飯を作ってくれた。てきぱきてきぱき。疲れているだろうけど、その動きはもはや手馴れている。すごいけど、やっぱり疲れている時は休んでほしいなって思う。寮の食堂のご飯でもいいけど、花音は値段が高いものだと顔を青褪めさせるからね。


 でも、私は唯一花音が嬉しくなることを知っているのだ。


 花音が作ってくれた美味しいご飯を食べて、後はのんびりタイム。花音がお風呂に入っている間に、ゴロンタと遊んであげる。私は花音が帰ってくる前に入っちゃったからね。


 ガチャっとお風呂から上がった花音が部屋に入ってきた。今である。


「花音~」

「うん?」

「おいで~」


 勝手にぬいぐるみで遊んでいるゴロンタを放っておいて、ポンポンと自分の膝の間の絨毯を叩いた。きょとんとしている花音が可愛い。


「おいで~」

「そこに?」

「そう~」


 訳が分からなそうにしている花音が、静々と私のところに近寄って、私がポンポンと手を叩いている場所に座った。


 ギューってそのまま花音を抱きしめた。


「よしよ~し」

「葉月?」

「お疲れ様~花音~」


 頑張り屋さんの花音にしてあげられること。私もハグ好きだけど、花音も絶対好きである。前から花音はハグしてくれてたからね! 花音とのハグは眠くなっちゃうけど、我慢するもんね!


 思惑通り、花音も私の背中に腕を回してきて、肩に顔を押し付けてきた。はい、可愛い。ポンポンとそのまま頭も撫でてあげる。いつものお返しである。えへへ。


「葉月、それズルい……」


 ズルいとな? でも花音が嫌がっている様子はない。さらにギューってしてくるもん。


 花音は実は甘えんぼさんなのだ。知ってる。去年私が入院している時そうだった。

 疲れている時とか、なんか不安な時とか。あの時はよくしがみついてきてたし。私が悪いんだけども。


 今は何となく分かってきた。あの時は怖がらせてしまっているって思っていたからだけど、そういうことだったんだって。


 でも、花音は私がこの部屋に戻ってきてから、極端に甘えんぼモードにならなくなった。代わりに私が甘えてるけども。


 だからこうやって花音が明らかに疲れている時は、私が極端に甘やかすのだ! そう決めているのだ!


「葉月の体温が一番落ち着くなぁ」

「私も~」


 花音あったかいから好き~。ポッカポカ~。あ、さっきお風呂入ったばかりだから余計か。


 よしよ~しと思いながら、頭を撫でて抱きしめていると、花音がふと顔を上げてきて、私の顔を覗き込んできた。うむ。安定の顔真っ赤。可愛い。


 そのままほっぺにチュッてしてきたから、私もお返しと言わんばかりにほっぺにチューする。ふふって笑いながら、花音も啄ばむように何度もしてくる。可愛すぎである。


「このままだと駄目になりそうだなぁ……」

「うん?」


 駄目とな? 花音はしっかりさんだけども。


 背中に回されていた花音の腕が抜けて、私の頬にそっと手を添わせてきた。くすぐったい。

 熱の籠った瞳で嬉しそうに微笑む花音は超絶天使と思いながら、スリスリとその大好きな手に頬を押し付ける。


「可愛い」


 はて? それは花音ですけども?

 きょとんとしている間に、花音の顔が近づいて、そのまま唇を重ねてきた。


 その柔らかさと、この花音の熱に溶かされるキス好き。


 あったかいなぁ。

 ポッカポカだなぁ。


 顔を離すと、間近で微笑む花音の姿。


 ほら、花音の方が絶対可愛い。


「花音の方が可愛いもん」

「葉月はもうちょっと自覚しようね」


 何を!? あと何故にそこで怖い笑顔に!? 今さっきまでの超絶天使花音はどこへ!?


 訳が分からないのが顔に出ていたのか、「葉月だもんね」と呟いて、また花音がギューって抱きしめてきた。よく分からないけど、ギュー好きだからいっか。


 それに、今は全力で花音を甘やかすと決めているのだ!


「花音~」

「ん?」

「疲れてる時はちゃんと言ってね~」

「大丈夫だよ」


 花音が腕の中でクスクス笑いながら、擦り寄ってくる。



「葉月にこうやって元気もらえるから、だから大丈夫」



 嬉しそうに抱きしめてくる花音には敵わない。


 えへへ。元気あげてるならいい。


「葉月、もう少しこのままがいいな」

「うん」

「後でアイスも食べる?」

「うん!」


 花音のアイスは絶品ですからね! 今日は何味かな~?

 お互いにギューしていると、ゴロンタがぬいぐるみで遊ぶのが飽きたのか「みゃ」と私と花音の間に入ってこようとした。だめだよ~ゴロンタ。今は花音の甘えんぼタイム中なのだ!


 でも花音は優しいから、ゴロンタも一緒にギューってしてくれた。


 ……あれ? これは結局私の方が甘やかされているのでは?


お読み下さり、ありがとうございます。

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[一言] 天然葉月はいい!
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