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教えてくれてるよ(花音の実家編⑤) ―葉月Side

 

「か、花音!」

「ん、何?」

「あ、あ、あ、あれ! レイラの好きなピクちゃん人形だよ!」

「本当だね……」

「売ってるところ、初めて見たよ!」

「わ、私もかな……中学までここよく来てたんだけどな……」


 うーんと不思議そうに私が手に持っているピクちゃん人形を隣から覗き込んでくる花音。


 実は今、駅前のショッピングモールに来ています。

 いっちゃんと舞、それと一応レイラにもお土産を渡すために買いにきた。いつも花音は帰省した時に、ここで私たちへのお土産を買ってくれていたらしい。


 本当は詩音と礼音も一緒に来たがっていたんだけど、お母さんが止めていた。詩音と礼音も一緒だとゆっくり見れないだろうからって気を遣ってくれたみたい。気配りしっかりさんなところは花音がきちんと遺伝していますね。


 詩音も礼音もむーって膨れてたよ。それを花音のお父さんが宥めていた。

 花音のお父さんは今日もお仕事だって。本当はお休み取ってたんだけど、同僚の人が風邪でダウンしちゃって、代わりに出勤しないといけなくなったとか。ご苦労様です。


 でも早めに帰ってこれるみたいだから、今日の夜も礼音たちと一緒にゲームするって約束した。楽しみ~。


 詩音たちにも早めに帰ってくるって約束して、ここに来たはいいんだけど、そこでこのピクちゃん人形を見つけちゃったよ。


 ふむー。これ、ちゃんと売ってたんだね。しかもご当地バージョン。あんまりにも見ないからレイラが自作してるんじゃないかって最近思ってたんだけど。


 デフォルメされたピクちゃん人形ぬいぐるみご当地バージョンのお腹を押したら、プヒュッて口みたいなところから空気が出てきた。うむ。可愛くない。でも仕方ない! レイラにこれを買っていってあげようじゃないか! 見つけてしまったからね!


 ということで、パッパと買ってきました。あ、これに色々細工しよう。お腹を押せば目が飛び出るようにしよう、そうしよう。


 買った人形が入っている袋を片手で持つと、もう片方の空いている手に花音が指を絡ませて握ってきた。


「レイラちゃん、きっと喜ぶよ」

「花音、違うよ。喜んでほしいんじゃないよ。私はレイラを驚かせたいんだよ!」

「うん、なんか可哀そうな事になりそうだから、普通に渡そうね。細工するようだったら、帰ってからしばらく玉ねぎだからね」

「しません」


 ちぇ。釘刺されちゃった。仕方ないなぁ。レイラ、花音に感謝しなよ。


「あ、ほら葉月。ここのエビ煎餅が一花ちゃんのお気に入りなんだよ」

「いっちゃんも驚かせたいから、エビ煎餅じゃないのがいい」

「他にもあるから見てみようか」


 手を離さないで花音が色々と周囲のお店のことを教えてくれる。

 花音は学園に来る前まではこういうところで生活してたんだなぁと、その頃の花音を想像して楽しくなってくる。詩音たちとも買い物に来ていたって言うから、きっと色々と引っ張り回されたんだろうな。


 というか……花音さんや? なんか距離がいつも以上に近くない? 


 色々と見ながらだけど、花音がいつも以上に近い。もはや私の腕に自分の腕を絡ませている。


 朝から機嫌がすごいいいんだよね。はて? 昨日のご飯の時は普通だったと思うんだけども。それに花音にお母さんたちの前でギューされてから、あんまり覚えてないや。眠くなっちゃったんだもん。


 ま、いっか。花音が楽しそうだとこっちも嬉しいしね! お、なんだあのお煎餅は? ワサビとはちみつのコラボレーションですと!? 


「花音! これがいい!」

「こういうのが売ってるのも初めて知ったなぁ。葉月、こういうの見つけるのすごく上手いよね」


 そうなの? まあ、隅っこに置いてあったからね。地元民の花音が知らないなら、余計にこれに決定! 


 いっちゃん、どんな顔するかなぁ? 絶対エビ煎餅を買ってくると思ってるに違いない。えへへ、絶対あの悔しがる顔すると思うんだよね! 期待していたお土産じゃないんだもん!



「あれ? 花音じゃない?」



 うん?


 お土産屋さんを出てしばらく歩いてたら、花音に声が掛かりました。


 花音も「あ」って言ってる。知り合いかな? その子たちは男女何人かで歩いてたけど、花音に気付いてこっちに来たよ。


「ちょっとー! 帰ってきてたなら教えてよ!」

「ごめん。すっかり忘れてた」

「ひどいなぁ。連絡待ってたのにぃ」

「本当、ごめんね」

「ね、いつまでいるの? まだいるなら遊びに行こうよ」

「あーえっと……ごめん、明日には戻らなきゃ行けなくて」

「「え~~~」」


 すごいがっかりしてますね。花音の地元のお友達かな? そのうちの一人のショートカットの女の子が私に気づいたみたいですね。私より短いよ。ソフトボールとかやってそう。若干、肌焼けてるし。


「ねえ、花音。彼女は?」

「あ、えっと……」


 言い淀んだ花音の様子で察した。ふむ。さすがに友達にはまだ伝えてないよね。こういうのは花音がちゃんと後で言うと思うから、ここは合わせますかな。


「花音のルームメイトだよ~」

「え!? じゃ、じゃあ星ノ天(ほしのそら)の生徒!?」

「ん? うん、そう」

「「……納得」」


 ジロジロ見られて全員に納得されたんだけども、なんで?


「花音、なんで今納得されたのか分かんない」

「葉月は無自覚だからね」


 すごくにっこりと花音に返された。え、これは無自覚関係あるの? 首を傾げてたら違う女の子がやっぱりジロジロ見てきたよ。


「やっぱり、星ノ天ってすごいねぇ。レベルが高すぎぃ。綺麗だし、着てる服もアクセも全部ブランド物。これ、この前の雑誌で見たけど、値段見て卒倒したもんねぇ。しかも着こなしてるしぃ」


 いや、これはいつもの店で店長に買わされたんだけどね? 別に着こなしてはいないんだけども。動きやすいから着てるだけだよ。そして店長にこの服着る時は絶対このアクセ忘れるなって言われただけなんだけど。店長、絶対わざと高いコーディネートしましたね。


 でも花音が間に入って、視線を邪魔してくれた。というか、さっきより強く手を握られるんだけど、なんで?


「あんまりジロジロ見るのは失礼だよ、蛍?」

「それもそっかぁ。ごめんねぇ?」


 ごめんねって言った割には花音の横に移動して見てるけどね。まあ、いいけどさ。


「な、なあ桜沢」

「あ、広田君、久しぶりだね」

「あ、ああ。久しぶり。あのさ、今からみんなでボーリング行こうかって話になってたんだよ。明日帰るっていうなら今から一緒に遊ばないか?」


 女の子たちの後ろにいた男の子が花音に声を掛けてきた。なんか爽やかな感じ。僕サッカーやってますって顔してるね。いや、服にサッカーボールの絵が描かれてただけなんだけども。

 というか分かりやすい。ほっぺ真っ赤。緊張してるのが丸わかり。


 つまり、花音に気がある。


 なるほど、少しもやっとしますね。会長の時より分かるな。これが嫉妬かぁ。


 ……あれ?

 なんか、モヤモヤするけど、嬉しくもあるな。なんでだろ?


「そうだよ、行こうよ、花音! 久しぶりに話しもしたいし! だって春休み帰ってこなかったじゃん! 寂しかったんだから!」

「私も賛成ぃ~。何があったか聞かせてもらうからぁ」

「え、いや。ごめん。午後には帰るって約束しちゃってて」

「それ詩音たち? 大丈夫だって! ちょっとだけだからさ!」


 モヤモヤなのにポカポカもする自分の気持ちが不思議でいたら、なんか話が進んでる。


 そっか、帰らなかったってことは地元のお友達にも会えなかったってことだもんね。ふむ。春休み中、花音は私につきっきりでしたからね。


 チラッと彼の方を見ると、めちゃくちゃ期待しているような視線を花音に送っている。むむ。彼がいるのは嫌だけど、でも花音にとっては友達かもしれない。この機会を逃したら、今度は夏休みまで会えなくなるし。


 花音は友達を大事にする方だ。レイラとか舞とかを見ていると分かる。


 花音が大事なら、私も大事にする。


 家族と同じ。


「花音」

「え、何、葉月?」

「遊んでおいで? 私は先に帰って礼音とゲームしてるからさ」


 花音にとって予想外のことを言ったのか、パチパチと目を瞬かせていた。そんなに驚くこと?


「……だめ。私も一緒に帰るよ」


 途端に真剣な表情になって見つめてくる。ちゃんと一人で帰れるのか心配なのかな? 


 大丈夫だよって伝える為に手を離して頭を撫でようとしたら、花音はその手を離さないで更に強く握ってくる。そんなに心配することないのになぁ。でも花音が嫌がることもしたくない。どうしよ?


 どう言えば安心してくれるかなぁとか考えていると、「あのさぁ」とさっきジロジロ見てきた子が口を開いた。


「あなたも来なよぉ」

「うん?」

「そうすれば花音も心配しないんじゃないぃ?」

「おーそうだね! 学園での花音の話とかも聞きたいし! 一緒にいこうよ!」

「私はいい~」

「よっし、決定ね! はい、いくよ! 花音もいくよ!」


 え、え、え? 断ったの聞こえなかったの? なんで花音と私の腕引っ張ってってるの、この子は?


 隣の花音も慌てたように、「ちょっ! 強引すぎるよ! 茜!」って抗議してるけども。全く聞いてませんね。しかも花音の友達だから下手に動けないし。


 結局、そのままズルズルと引っ張られていきましたよ。花音の友達、意外と力強いな。いっちゃんには負けるけどね! あ、彼が嬉しそうにしてる。あんまり花音には近づかないでね?



 ◇ ◇ ◇



 やってきたのはボーリング場。

 はて? なんでこんなことになったんだろう?


 そして私の隣には、花音のお友達のショートカットの子とジロジロ見てきた子が座っています。そして花音は何故か別のレーンに行っちゃいました。というか連れていかれました。


 ショートカットの子は茜、ジロジロ見てきた子は蛍、という名前らしいが。

 それよりも、彼が花音と一緒のレーンなんだよね。本当は近づかないでほしいけど、でも暴れるわけにもいかないからなぁ。あ、花音が心配そうに見てくる。こっちは大丈夫だよ~。手をフリフリ。


「ごめんごめん、小鳥遊さん。ちょっと無理やりすぎたよね」

「茜は強引だからねぇ。腕大丈夫ぅ?」


 はて? いっちゃんの蹴りを常日頃から受けていますしね。

 それに、子供の頃のゴリラさんとのダンスレッスンより遥かに人間の力は弱いのだ。ママが見本で楽しそうにやってたんだよなあ。私もいっちゃんも振り回されてたよ、うんうん。いっちゃん、怒ってたけど。


「全然反応ないねぇ」

「もしかして、痛かったとか?」


 蛍が私の前を手で振っていたよ。茜は心配そうに顔を覗き込んできたよ。つい昔のことを思い出しちゃってた。最近、本当に思い出すこと多くなったなぁ。


「小鳥遊さんは花音のルームメイトなんでしょ?」

「うん、そう」

「あ、やっと反応したねぇ」

「あのさ、花音って学園でどう? 浮いてないかな?」

「そんなことないと思うけど?」

「ホント!? あーよかったー! 心配してたんだよねー!」

「そうそう、やっぱり星ノ天はお金持ちの人たちの集まりだからねぇ」


 この二人、本当に花音を心配してる感じ。中学の友達? 仲が良かったのかな。でも大丈夫だよ。生徒会の人たちもいるし。あとクラスメイトは餌付けしていってるしね。今のクラスもそうだし。


 向こうのレーンで花音はこっちをチラチラ見てるね。あれは私をやっぱり心配してますね。自分の方を心配してね。彼が楽しそうに話しかけてるのが見えるもん。こっちはこっちでちゃんとやるから。


「二人は花音の中学のお友達?」

「うん、そう! あたしと蛍と花音は同じクラス! ま、小学校も一緒だけどね」

「花音はしっかりさんだからねぇ。生徒会にもよくヘルプ頼まれてたよぉ」

「そうだね! しまいには会長の補佐してたもんね!」


 今もそうですね。中学の生徒会の手伝いは楽しかったって言ってたもんね。しっかりさんの花音も想像できる。きっと今と同じように楽しくやってたんだろうなぁ。


「あと、よく告白されてたなぁ」


 ……今なんと?

 中学の時の花音を想像して楽しんでいたら、蛍という名前の子が聞き捨てならない事を言いだした。


「そうだね。花音可愛いからね、モテてたよ。ほら向こうのレーンのサッカーボールの服の男子。あいつも同じ中学だけど、まだあれは花音の事好きみたいだね。一回振られてるんだけどな。めげないやつだ」


 なんですと!? もう既に振られているとな!? すっごいモヤモヤ――するんだけど、なんだろ? やっぱりポカポカもするな。さっきから何故に? とまた不思議がっていると、蛍が「でもさぁ」ってこっちを見たよ。何かな?


「花音、この前の冬休みで好きな人できたって言ってたんだよねぇ」

「ああ、それね。小鳥遊さん聞いてない?」


 ……それ、私のことですね。


「同じ学園の人らしいんだけどぉ」

「優しい人だって言ってたんだけどね」

「でも見たことない顔してたんだぁ」

「そうだね。恋してる女の子って感じだった」

「名前とかは教えてくれなくてぇ」

「小鳥遊さん、同じ学園だしルームメイトでしょ。何か知らない?」


 あなたたちの目の前にいます。そしてその頃の私はまったく花音の気持ちに気づきませんでした。会長のことが好きだって思ってたんだもん!


 何も言わない私に「知らないのかぁ」って二人はがっかりしてる感じだったけど、目の前にいますけどね。もう両想いですけどね。


「小鳥遊さんでも分からないのかー。残念」

「あーあ。あの花音が好きになった人がどんな人か知りたかったぁ」

「……あの花音?」

「あー。花音ってさぁ。いつも妹や弟優先してたんだよねぇ」

「そうそう。告白の返事も全部、今は興味ないって言って断ってたし」

「花音は姉バカだからねぇ」

「礼音も詩音も可愛がってたから」


 そうなんだ。でも昨日のことを思い出すと納得。二人とも花音にべったりだったしね。花音も満更でもない様子だったし。


 でも詩音と礼音の気持ち分かるわー。花音にお世話されると、それなしじゃ生活できなくなるよねー。今の私がそうですから。


 そんな花音が私を選んだんだなぁ。

 今でもさっぱり分からないけどね。私のどこが良かったんだろ。


 花音の前じゃ結構だめなところしか見せてない気がするけども。

 しかも死のうとしてるところも見せちゃったんだけどね。


「小鳥遊さんはぁ、好きな人とかいないのぉ?」


 随分入り込んでくるな。初対面でそれを聞くのか。花音の友達恐るべし。まあ、いいんだけど。


「いるよ」

「へー! いるんだ!」

「お嬢様の好きな人って興味あるぅ。どんな人ぉ?」

「私もー! 小鳥遊さん綺麗な人だから、そんな人が好きになる人がどんな人なのか気になるー!」


 お嬢様って柄ではないんだけども。まあ、お嬢様ですけどね。そして、綺麗ではないんですが。花音の方が綺麗だよ。


 でも、どんな人ね。あなたたちのお友達ですが。

 そうだなー……。


「可愛い……かな」

「可愛い系男子!?」

「あと温かい」

「んー? 温かいぃ?」

「笑顔最高」

「最高なんだ!?」

「柔らかい」

「えー? 柔らかいぃ?」

「ご飯美味しい」

「まさかの料理上手!?」

「包容力抜群」

「……全然想像できなーいぃ」


 指を折りながら並べて言ってみる。


 あと、なんだろ。甘えてくるところも可愛いよね。

 たまに暴走して、ギラついた目も最近は可愛く思えますね。


 花音のそういう可愛い時のことを思い出してたら、さっきよりポカポカしてきた。


 全部可愛い。

 全部好き。


 思わず微笑んだら、いきなり視界が暗くなった。うん?


「だからね、だめだってば……それ」


 上から花音の声が降ってきた。

 あ、声もだな。


 上を見上げると、ゆっくり手がどかされた。少し頬が赤くなった花音が見下ろしていました。

 あ、この照れてる顔もだな。


 うん、可愛い。

 好きだって本当に思う。


 ……そうか、好きなんだよ、花音のこと。


 さっきまでモヤモヤしてるのに嬉しくなるの、なんでかなって思ってたけど、私、花音のことが好きなんだよ。


 そんな風に誰かを好きだなって、大事だなって思える自分に驚いたんだ。


 ずっとずっと死ななきゃって思ってて、

 おじいちゃんたちが私を守っていなくなるのやだなって思ってて、


 でも今、

 嫉妬するほど花音を好きになって、

 守らなきゃって本当に思えてて、


 そんな自分がいるのは花音がいるからだっていうのが、堪らなく嬉しくなっちゃったんだ。


 ポカポカしてつい笑みが零れたら、また手で隠されました。だから、なんで?

 隣から花音の友達の声が聞こえてきた。


「花音、あれ、あっちにいたよね?」

「というか、それ小鳥遊さんに何やってるのぉ?」

「葉月のこと気になっちゃって、やっぱりこっちに来たんだよ。二人が変な事言ってなきゃいいなって」

「いや、花音ぅ? 小鳥遊さんに何やって――」

「蛍、知らないことが良いこともあるの」


 いや、あの、花音。私も知りたいんですが。なんでたまに手で顔隠されなきゃいけないんでしょうか? そしてまだどかされないんでしょうか?


「っていうか、かなり未練がましく広田がこっち見てるんだけど。花音、あいつに告白されたの?」

「されてないよ。それよりも茜たちのこっちが気になっちゃって、全然話聞いてなかった」

「花音ぅ……さすがに広田が可哀想じゃないぃ?」

「思わせぶりの方が残酷だと思うな、蛍。それに、私もう恋人いるから考える余地ないんだよね」

「「えっ!?」」


 ここでカミングアウト!? 二人と同じように驚いちゃったじゃないか! というか、花音さんや。ねえ、手どけて? いつまでこの状態!?


 さすがに意味不明な隠す手をペシペシペシと軽く叩くと、やっと花音がその手をどけてくれた。お、やっと花音の顔見れ――


 視界に入ってきたのは、あの熱の籠った瞳で見下ろしてくる花音の顔。


 少し頬を赤らめて、とても嬉しそうに微笑んでいる姿。


 ああ、ほらね。


 私が好きなのは花音だって、私の体が教えてくれてるよ。



「ここにいる葉月のことしか、今は考えられないからね」



 そっと私の頬に触れてくる優しい手の温もりに、ふふって笑いながら擦り寄った。


「え、え、え!?」

「ええええぇぇぇ!?」


 二人の驚きの声が響き渡ったとさ。


お読み下さり、ありがとうございます。

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