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ワクワクドキドキ(花音の実家編①) ―葉月Side

二年生のGW、花音の実家編です!

 

「花音の家?」

「うん、そう。よかったら、葉月も一緒に行かない?」


 ご飯を食べている時に、花音がそんなことを言ってきた。


 花音と付き合って――というよりも、もはや同棲しているといっても過言ではない今の恋人状態になって、早一カ月ちょっと。花音の可愛い笑顔をいつも見れる毎日に、ポカポカと胸が温かくなる日常を送っている。


 そんな中での、花音の実家へのお誘い。


「私が行ってもいいの?」

「うん、もちろん。私も葉月と一緒にいたいしね」


 ふふって笑う花音は超絶天使だと思う。


「それに、お母さんたちにもちゃんと葉月のこと紹介したいし」

「紹介?」

「うん、私の大好きな人だよって」


 すごく嬉しそうにそう言ってくれる花音だけど……それっていいのかな? 自分の娘の恋人が女だよ? まあ、この世界はいっちゃんが言うようにそういう世間の風当たりが緩いみたいだけど。この前いっちゃんと出かけた時にもいたしね、同性カップルらしい人がちらほらと。


 だけど、花音のお母さんたちがそれを許容できる人なのかどうかは分からないわけで。


「あ、安心してね。葉月のことはもう言ってあるから」


 ……なんですと?


「言ったの?」

「うん。ちゃんと葉月が女性なことも知ってるよ」


 え? 知ってるの? え、あれ? 


「お母さんたち、なんて?」

「今度ちゃんと紹介しなさいって。楽しみにしてるって」

「そ、そう」


 なんと。許容できる人達らしい。あまりにも呆気ない花音の軽い返事に、私の方が面食らっちゃうんだけど。まあ、よくよく考えてみたら、花音のご両親だもんね。花音、優しいし、包容力抜群だし、そんな花音を育てた人たちが偏見を持つはずないか。


 そっかぁって思っていると、花音が箸を置いて、私の隣に移動して座ってきた。どしたんだろ、急に? 


 そっとそのまま私の頬に手を当ててくる。


「不安にならなくて大丈夫だよ、葉月」


 そう見えたの? 

 パチパチと目を瞬かせて花音を見下ろすと、そのまま花音がほっぺにチューしてきた。


「葉月が嫌なら、また今度にするよ?」

「嫌じゃないよ?」

「本当?」

「うん」


 嫌じゃない。詩音たちには会ってるけど、花音のお母さんたちはどんな人たちなんだろって思うもん。それに、花音の実家に行くってことは、花音がどういう所で育ったか見れるってことでしょ? そんなの見たいに決まってるじゃないか。


「花音の家族が嫌じゃなければ、行く」

「ふふ、嫌なわけないよ。じゃあ、一緒に帰るって伝えておくね」


 いっちゃんにも言わないとなぁ。いっちゃんも一緒に来るかな? でも最近はもうめっきり引っ張られることはないから、いっちゃんが一緒じゃなくても大丈夫だとは思う。花音もいるし。


 あ、じゃあ、いっちゃんにお休みあげられるや。この際だから、いっちゃんも実家に帰ればいいじゃん。涼花お姉ちゃんがそれはもう絶対大喜びするでしょ。


 珍しく良い事思いついたから、気分が上がってニコニコしたら、花音がハアと溜め息ついてた。


「私の方が心配かも……他の人に見せられない」

「うん?」

「……なんでもないよ。おかわり食べる?」

「うん!」


 ちょうどご飯が無くなりかけていたから嬉しい! さすが花音! 気が利くしっかりさん!


 花音が持ってきてくれたおかわりのご飯を平らげてから、いっちゃんにGW(ゴールデンウィーク)に花音の実家に行くことを伝えたら、いっちゃんも同じように考えていたのか、あっさりと「行ってこい」と言ってくれた。


 なんか、楽しみになってきた! どんな場所なのかなあ? 花音のお母さんとお父さん、花音にやっぱり似てるのかなあ? 私が花音の恋人で驚かないかな? いっちゃんにも言われたけど、花音の両親の前では虫とかに興味行かないようにしないと。


 色んなことを想像して、ワクワクしてドキドキしたのが久しぶりで、その日は花音をギューって抱きしめて眠りについた。いつもだけど。



 ◇ ◇ ◇


「速い! 花音、速いよ!」

「ふふ、そうだね」


 あっという間にGWになって、花音の実家へ行く途中である。

 今回は車じゃなくて、電車を使うことにした。子供の頃からずっと車移動だったから、電車に乗ってみたかったんだよね! バスはさすがにあるけど!


 窓から見える景色が、次から次へと流れていく。でも遠くの景色はちゃんとゆっくりと流れて見える。当たり前だけど、いざ目の当たりにすると面白い!


「葉月、一花ちゃんから持たされた手紙見ないの?」

「うん?」


 窓の外に夢中になっていると、花音が思い出したように紙を出してきた。いっちゃんに寮を出る前に渡されたやつ。でも書いているのは予想がつくんだよね。


「いらない」

「一花ちゃんに念押しされてなかった?」

「こっちの方が面白いもん。花音が見ていいよ? きっと注意事項だから」

「そうなんだ」


 興味深そうに花音がその紙を開いていく。私はお外に夢中ですね! お、なんか建物が減ってきた。


 クスっと花音の笑い声が聞こえた。んん? なんか面白いものが書かれてたのかな? ちょっとだけ気になったから花音が読んでいる手紙というか、いっちゃんの注意事項リストを覗き込んでみる。


「面白いのあった~?」

「ううん。やっぱり一花ちゃんは葉月のことがよく分かってるなあって思ってね、ほらこことか」

「うんん?」


 花音が指さしたところを視界に入れてみた。そこに書かれていたのはこうだ。


『絶対花音の家に迷惑かけるな、虫探すな食べるな見つけるな。花音に隠れて礼音にお前の遊びを教えるな』


 うむ。安定の信用のなさですな。


「確かに、葉月なら礼音に遊びを教えそうだなって思っちゃって」

「遊ぶもん」


 礼音とは気が合うと思う。去年会った時に、体動かすの好きっぽかったし。


 それにしても、さすがはいっちゃんである。予想通りとはいえ、他にも色々と私が考え付きそうなことを書き出している。


 『花音の家に迷惑かけるな』かぁ。


 チラッと花音の顔を見ると、「どうしたの?」と微笑みながら聞いてきた。なんでもないと返しておく。


 迷惑はさすがにかけたくないなぁ。


 いつもはいっちゃんいるから、何とかしてくれるでしょって思って好き放題やっちゃってるけどね。まあ、私は自分に関わりのある人達以外はほとんど無関心というか、関心持たないようにしてるし。これ以上大切な人出来たら、自分でも制御効かなくなっちゃうからね。


 でも、さすがに花音の家族は違う。

 花音の大切にしている人たちだ。

 私もちゃんと大切にしたい。


 花音の両親は私の死にたがりを知っているのかな? きっと知らないと思うんだよね。

 そんな相手が自分の娘の恋人だなんて、絶対反対するに決まってる。私だってする。今は花音がいるから、何とかなっているって自覚もあるし。


 けど、花音の家族に不安に思ってほしくもない。


 未来はどうなるか分からない。今は落ち着いているけど、いつかまた昔と同じように狂ってしまう可能性だって十分ある。


 だからといって、花音はもう手放せない。


 ギュッと花音の手を握ると、花音も握り返してくれた。いっちゃんの手紙をもう片方の手で器用にバッグにしまって、私の肩に頭を預けてくる。その重みが嬉しいんだよ。


 窓の外に視線を向けると、いつも見ているけど、いつもと違う青い空と白い雲が流れていく。


 少しでも、今を守ろうって思う。

 花音が教えてくれたから、花音がいなくならないように守ろうって。


 花音が大切にしているものも全部全部守ってみせる。


 どうすれば花音の家族は不安がらないかな?

 どうしたら安心してくれるかな?

 ちゃんと私も花音のこと好きって言ったら、一緒にいることを認めてくれるかな?


「葉月、あのね」

「うん?」


 珍しく真面目に考えていたら、花音が何故か不安そうな声を出した。どしたんだろ、急に?


「あの……あんまり期待しないでね?」

「うんん?」

「私の家、その、すごくないから。すごくないって言ったら、お父さんに申し訳ないんだけど……いや、私からしたら十分すぎる立派な家なんだけど……葉月の家と比べちゃうとどうしてもね」


 え? 比べる対象おかしくない? 鴻城の屋敷は異常だから。海外からの要人クラスがいつ来てもいいように、あと、その人たちが狙われないように厳重に色々と仕掛けやら何やら目一杯突っ込んでいるからくり屋敷だからね。


 ギュッと強く花音の手を握って、ニコッと笑う。


「大丈夫だよ~花音」

「……」


 え、なんでいきなり黙っちゃうの? ねえ、なんでもう片方の手で顔隠すの? はっ! これは知ってる! 久々のプルプルモードである! このタイミングで何故!?


「心配すぎる……」

「か、花音?」

「ハア……葉月、絶対絶対、それ、私の前以外でしないでね?」


 どれ!? 前から思ってるけど、どれ!?

 どうすればいいのか分からないでいると、落ち着いたのかふうと息をついてからまた私の肩に寄り掛かってくる花音。スリスリと肩に頭を擦りつけてくる。何これ、可愛い。それが何を表してるのか分からないけど、もうどうでもいいや。


 花音の頭に自分も頬をスリスリと寄せる。


 何を心配してるのか分からないけど、花音が不安になるようなことはしない。花音が悲しいのは嫌だ。


 家族に私を会わせるのが不安なのかな?

 そんな考えが過った。


 ――なら、出来ることはある。


「花音」

「ん?」

「頑張る」

「どうしたの、いきなり?」


 分からなそうに顔を上げてきた花音に、安心させるためにまた微笑む。


「出来る事やる」

「んん?」

「えへへ」


 また窓の外の景色を視界に入れた。目を閉じて、子供の頃にメイド長から教えてもらったことを思い出す。


 うん、きっと大丈夫。

 これなら花音のお母さんもお父さんも、安心するはず。


 花音の両親に会う時のことを考えて、昔のママとパパのことを思い出して、ついまた口元が緩んだ。


お読み下さり、ありがとうございます!

本当は他に書いている話もあるのですが、SSでも時系列的に順番通りがいいかなと思いまして、急遽書いているGW編から始めることにしました。番外編前編の裏側ですね。

が、このGW編、葉月と花音の交互視点で進めるので、しばらくはまた番外編同様に週一投稿にさせていただきます←まだ書き終わってないからです(とは言っても5、6話ぐらいで終わる予定です)。

SSとは名ばかりの普通の長さの話になってますが、楽しんでもらえれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついにメイン2人組のイチャイチャ回!待ってました!葉月可愛い!葉月最高!もっとイチャついて〜! [一言] 虫探すな食べるな見つけるな笑笑笑
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