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33話 GWイベントを見るために?

3章入ります。

 


「いっちゃん~暇~」

「グダグダするな」

「いっちゃん~暇~」

「じゃあ課題をやれ」


 花音は生徒会に入ってから本当に忙しくなった。

 朝は私のご飯作って、お昼のお弁当作って、私を起こしてから先に登校。お昼は生徒会室で仕事を寮長に教わりながら、お弁当を食べる。放課後はこれまた生徒会の仕事をやって、その後寮長に時間もらってお勉強。帰ってくるのも遅くなったけど、帰ってきてから夕ご飯作って、それからお風呂入ってまた勉強。それから就寝。

「生徒会の仕事に慣れればもう少し余裕はできると思う」って言ってたけど、今は入ったばかりだからホント多忙。


 さすがにお風呂掃除とか買い出しは私がやってるけど。あと食器洗うのも。生徒会入る前は交代制でやってたのを止めた。いやいや、私だってそれぐらいのことはしますよ? いっちゃんが泣いて喜んでたけど。


 生徒会の男性メンバーとも上手くやっているらしい。前ほど嫌っている印象はない感じ。童顔先輩が上手くバランスとっているみたい。


 そんな感じであっという間にGW(ゴールデンウィーク)になった。そして、実は今、花音は寮にいない。実家に帰っている。「作り置きしてあるから食べるときに温めてね」って3日分のご飯は作ってくれた。3泊して帰ってくるらしい。


 そして今日は2日目である。ちなみに舞も帰省中。寮に残っている生徒の方が少ない。私といっちゃんは帰らない。というより、私が帰らないから、いっちゃんは帰れないだけなんだけど。この3日間はいっちゃんが私の部屋にお泊りだ。


「いっちゃん?」

「何だ?」

「……帰っていんだよ?」

「その話はもう終わっているだろうが」


 1人でも大丈夫なんだけどな~……いっちゃんは私を寮に残して何か馬鹿なことしでかすんじゃないかって心配している。そして、その心配は正しい。色々やろうと思って、花音に気づかれないように準備していた道具を全部没収されました。


「葉月。今度の試験は中等部の時みたいに、全部鉛筆コロコロして解答とかやめろよ」

「え~やだ」


 ちなみに一回それで全教科0点を叩き出したことがある。先生たちが嘆いていた。

 そんな私がどうして高等部に進級できたかって? そこは実家のあの人たちが学園長に頼んだらしいよ。私的には別に進級しなくても良かったんだけどね~。あ、それはダメだ。高等部でしか出来ない事もあるや。


 いっちゃんが真面目に勉強してる横で、私はゴロゴロしながら虫の図鑑を眺めていた。


 カメレオンってホントにこんな目をしているのかな~。というか、これ虫の図鑑って書いてるのになんでカメレオンが出てきてるんだろ?


 花音が帰る前に作ってくれてたお菓子を食べながら、何故だかいっちゃんが難しい顔をしていた。何か分からない問題でも出てきたのかな?


「どしたの、いっちゃん?」

「いやな……今度のGWイベントをどうやって見にいくか考えてた」


 いっちゃん、勉強してたんじゃないの? 人には課題しろって言ってたから、てっきりそれをやっているのかと思ったのに。


「ちなみにGWイベントってどんなの?」


 私はいっちゃんのノートを覗き込む。GW最終日に生徒会メンバーで集まって、中間試験の後にあるレクリエーションの打ち合わせをするらしい。そこで、花音と攻略対象者が2人きりになって、攻略対象者の見たことない顔を見て花音がちょっとドキっとする、という流れなんだそうだ。


「見たい……これは見たい……でもどうするか……」


 いっちゃん。『これは』じゃなくて全部でしょ。


「見に行けばいいじゃん」

「いやなぁ……もし見つかったら理由を聞かれるだろ。寮長にでも見つかったら、すぐ帰れと言われるだろうし……」

「無視すればいいじゃん」

「あたしはな、寮長に迷惑かけたくないんだよ。あの人には中等部の時からお前のことで世話をかけてるからな……恩があるんだよ」


 はて? 何でいっちゃんが恩を感じているんだろうか? 感じなきゃいけないとしたら私じゃないんだろうか? だけど、ツッコんだらツッコミ返しがきそうなので、とりあえず黙っていよう。


「いっちゃんは見たいんでしょ?」

「そりゃ見たい……だが……いやだったら……」


 また考え込んでしまった。何をそんなに考えてるのかな~?


「いっちゃん、いっちゃん」

「ちょっと黙ってろ。今本当にどうするかを……」

「そんなに考えなくてもいいんじゃない、いっちゃん?」

「……どういう意味だ? お前なんか案があるのか? いや、いい。どうせ碌でもない」

「信用無いな~」

「何度も言うがないぞ?」

「それもそだね」

「……このくだり最近多くなったな……」


 ツッコミ疲れだね、いっちゃん。でもさ、今度はホントに大丈夫。私的にはまともだよ。


「とにかく、いっちゃん。本当にそんな考えなくてもいいと思うんだよ」

「はぁ……なんだ、一応聞いてやる」

「見たいなら見に行けばいいんだよ、単純だよ」

「だからその方法をだな……」

「理由なら簡単だよ。『花音を迎えにきました』でいいじゃん」

「!?」


 え? なんでそんな『盲点でした!』みたいな顔をしてるのさ。


「花音と知り合いじゃないなら、どうして生徒会室に休みの日にいるのかの理由が寮長に説明できないけどさ。私たちの場合、部活に入ってるわけでもないしね。私がいるだけで寮長は不安になるだろうし」

「……寮長に不安を与えてる自覚があるならやめろ?」

「でも、花音は私のルームメイトだよ? 花音と晩御飯の材料を一緒に買いに行く約束でもして、早目にいけば見れるんじゃない?」

「スルーをするな。でも確かにそうだな……その手でいけるな、うん……」


 うんうんと頷くいっちゃん。ほら~私だってちゃんとまともなことを言えるんだよ~。それに一緒に買い出し行けると、玉ねぎ買うの阻止できるしね。買い出しは私が最近やってるけど、花音に怒られるんだよ。あの怖い笑顔で「ちゃんと買ってこないと駄目だからね?」って。


「お前にしてはよく気が付いたな、よくやった」


 あの怖い笑顔の花音を思い出していると、いっちゃんが褒めた。……ん? い、いっちゃんが褒めた……?


「いいいっちゃん、大丈夫? 熱あるの?」

「珍しく褒めてやったのに、何故体調を気にされなければならないんだ?」


 え~そりゃそうだよ。


「普段のいっちゃんを知ってるんだから、心配になるよ。本当に大丈夫? 私がまともなこと言ったから? やっぱり面白くないから? 他にも方法はあるから、やっぱりそっちの方にしよ? ね、そうしよ?」

「他の方法ってなんだ!? というより、褒めただけでどんだけ心配してるんだよ!? まともでいいんだよ、まともで!!」

「あ、監視カメラをつけておこう! それならゆっくり見れるよ、いっちゃん! 会長たちの間抜けな姿も録画できるし! それを学園の生徒に売ろう! お小遣い稼ぎにもなるね!」

「タチ悪いわ!? 会長たちが哀れだぞ!?」


 あ、いつものいっちゃんに戻ってきたな。これこれ。これがいっちゃんなんだよ。


「だって、いっちゃんが褒めるなんて何十年に一回あるかないかじゃん。心配になるのは当然じゃないかな?」

「前世ではお前とは知り合いでも何でもないんだから、何十年の付き合いはないんだけどな……そもそも、普段から褒められる行動をしないお前が悪いんだろうが」

「私が褒められる行動をしたら、いっちゃんもっと褒めてくれるの?」

「お前はあたしをなんだと思っているんだ? 当たり前だろ?」

「そんなのいっちゃんじゃないよ。頭おかしくなった?」

「おかしいのはお前だよ!? なんであたしが褒めるのが、おかしい事になってるんだよ!?」

「そうだよ、いっちゃん! 私が頭おかしいんだよ!」

「堂々と認めることじゃないんだよ!?」


 全くもって正論だった。


「とにかく……さっきお前が言った方法で今回のイベントを見ることにしよう」

「え? 監視カメラ?」

「違うわ!? 桜沢さんを迎えに行くって案だよ!」

「もうつけてあるから大丈夫なのに~」

「いつのまに!?」


 その後、寮長に報告されて監視カメラは取り外されました。そしてめちゃくちゃ怒られました。別に変なことに使ってないのにね。っていうか、つけたこと自体忘れてたモノだったんだよね~。あ、そうだった。寮長の動きを把握するためのカメラだった。行動するときに邪魔されたらたまったものじゃないからさ~。


 ちぇ~、これでまた何かやる時は細心の注意をしなきゃならないな~。

 え? 花音に言う? それだけはやめて、寮長! 花音が喜んで玉ねぎ切っちゃうから!!


 2日後、帰ってきた花音にチクられた私はたっぷり一個分の生の玉ねぎサラダを食べさせられました。泣きながら食べました。「もうやっちゃ駄目だよ?」って頭撫でられたけど、笑顔がちょっと怖かった。


 あれ? なんか私、花音に逆らえなくなってない? おかしいな~?


 あ、私おかしい人だった。正常だった。

お読み下さり、ありがとうございました。

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