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70話 一花のバカ

明けましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

 


「――馬鹿だよ、一花は!」



 目一杯声を張り上げて、一花に向けて言い放つと、その一花は目を丸くさせて顔を上げていた。


 そこには困惑と、苛立ちと、色々な感情が浮かんでいるように見える。


 でもさ、これがあたしの今の気持ちだよ!


「馬鹿だよ、本当に!」

「……なんだと?」


 どんどんまた怒っているような表情になってきた。

 でも馬鹿だから馬鹿だって言っただけだもんね! 


「馬鹿じゃん! いつか同じことをする?! なんでそんな起こってもいないことを怖がってんの?! そんなの一花がするわけないじゃん!」


 絶対しない。

 だって今も一花はそのことで苦しんでる。


 そんな人が、同じことをするなんて到底思えない。


「一花が危険?! 全然危険じゃないじゃん! いつもいつも葉月っちのことを考えて、花音やレイラやあたしのことを心配してるじゃん!」


 ずっとこの一年見てきたから、それぐらい分かってる。

 葉月っちのことを優先してても、一花はあたしたちのことも考えていた。


 葉月っちが文化祭前に怪我した時も、葉月っちをちゃんと見ていなかったことに責任を感じていたあたしを心配してくれていた。

 葉月っちと花音がルームメイトを解消した時も、花音の体調のこと心配していた。

 宝月美園に葉月っちが刺された時も、レイラに任せているようで、そのレイラを心配そうに見ていたのも知ってる。


 いつもいつもいつも、一花は周りをちゃんと考えていた。


 葉月っちだけじゃなく。


「なのに、なんでそんな自分を嫌ってんの!? そっちの方が全然分かんないね!」


 優しいじゃん! ずっと周りを気にかけて、心配して、声を掛けてくれて! それが優しさじゃなかったら、なんなのさ!?


 花音もレイラも、もちろんあたしも! 

 その一花の優しさをこの一年目の当たりにしてきてるんだよ!


「一花のことを知らない!? 悪いけど、一花の方こそ自分のこと分かってない! あたしだけじゃなく、花音もレイラも知っていることを、一花が信じてないなんて馬鹿すぎるでし――」


 途端、視界が反転する。

 ドンッ! と自分の背中が床についた。


 強い衝撃が背中に走り、痛みを感じてつい目をギュッと瞑ってしまう。何が? と思ったのも束の間、目を開けた瞬間に何が自分に起こったのかも理解した。


 一花があたしに馬乗りになって胸倉を掴み、冷え切った目で見下ろしていたから。


「これでも、お前はそんなことを言えるのか?」


 今までに聞いたことないくらいに冷たい一花の声。

 まるで、こんなこと自分は平気でやれるんだぞ、と言っているようにも聞こえてきた。


 ……そう来る? 

 あたしには手も足も出せないって?

 一花のこんな暴挙にも、何も出来ないって?


 あー、だんだん腹が立ってきたんだけど!


 ムカムカムカと、目の前にいる一花に苛立ちが募ってくる。


「だから何さ!? こんなの、一花だってしたくないんでしょ!?」

「それを出来るって、あたしはそう言ってんだ」


 さっきとは違ってどこまでも冷静で、だけど底に暗い感情が見える一花のその声に、とんでもなく腹が立つ。


 いい加減諦めろ、と言いたそうなその目が、癪に障る。


 だから、その胸倉の服を掴んでいる一花の腕を逆に掴んだ――けど、何これ!? 全っ然ビクともしない! こんなバカ強い力なわけ!? こんなちっさい体のどこに、こんな力があったのさ!? 葉月っち、いつもこんな力に対抗してたの!?


「……馬鹿なのはどっちだ? お前が外せるわけないだろ」

「そんなの! やってみないと分かんないじゃん! そもそもこんなことして、一花は何がしたいのさ!?」

「お前にただ目を覚ましてほしい。それだけだ」


 ムッカァ!

 何それ!?


 どこまでも、一花はあたしの気持ちを認めない!


 そのことが本当にムカつく!!


 あたしの精一杯の握力で一花の腕を離そうとするけど、やっぱり離れていかない。それがさらにムカついてくる。


「……お前に」


 ボソッと小さい声で一花が呟いた。


「お前にあたしを止められるわけないだろうが……」


 諦めたようなその声が響いてきて、あたしの胸が苦しい。


「いざって時に、お前は何も出来ないだろうが……」


 そんなの……


「そんなの分かんないじゃんか!!」


 分かんないよ! そんなの!

 いつか来るかもしれないって一花は思ってるの?!


 こんな風にあたしのことを力で押さえつけて、殺そうとするかもしれないって!?


「確かにさ! 一花はあたしなんかより強い! 認める! 蹴りも強いし、葉月っちを物理的に止められるし! いざって時に、こうやって一花はこんなことするかもしれない!」


 だけどさ!


「でも一花はしないじゃんか! 今だってただ押さえつけるだけで! 他にはあたしに何もしてこないじゃんか!」


 ただ馬乗りになって、あたしの体を床に押さえ付けてるだけ!


「それ以上の酷い事してこないのに、なんでそんな自分を悪者みたいに言うのさ!?」


 嫌わないでよ!

 自分のこと、嫌わないでよ!


「全然一花は危険なんかじゃない! 何度でも言うよ! 優しいんだよ、一花は!」


 届くように、

 ちゃんと届くように、


 あたしの知ってる一花を伝える。


 一花の動かない手が、少しだけ震えた気がした。


「お前は……馬鹿だ」

「違うね! 今馬鹿なのは、一花の方だよ!」

「馬鹿野郎だ……」


 ゆっくりゆっくりと、あたしの胸元を掴んでいた手が離れていった。

 見下ろしてくる一花の目元は歪んでいて、今にも泣きそうにも見える。


「だったら……せいぜいその幻のあたしを見ていればいい。あたしは無理だ」


 え?


「あたしは……自分を信じられない」


 ちょちょぉぉ!? 結局、一花は変わんないの!? こんだけ言ったのに!?

 一花の口から出てくるのは、全然変わらない自分を否定する言葉。


 なんで全然伝わんないの!? 一花、どんだけネガティブだったのさ!?


 さっきから、一花はネガティブなことばかり。

 でもそれは、それほど自分を追い詰めていたってことだっていうのも分かる。


 ――そうは思うけど!

 だからってさっきからの一花の行動も言動も、こっちはイライラさせられっぱなしだよ! こんなに一花に苛立ったこと、初めてなんだけど!


 そのまま一花はゆっくりと立ち上がった。もうあたしの方を見ていないのも分かる。このまま今度こそこの部屋から出ていく気だ。


 そんな一花の姿を見て、プツンと自分の中で何かが切れたような音がした。


 このままでいられるわけないでしょうが!?

 あーもういい!! もうどうでもいい!


 一花が自分を嫌っていようが、

 優しいところを信じていなかろうが、

 あたしの気持ちを信じなかろうが、


 もう全っ部どうでもいい!!


 ガバッと自分の体を起こして、そのまま一花とドアの前に立ち塞がった。一花が虚ろな目で、あたしのことを見てくる。


「……どけ」

「どかない!」

「どけ」

「どかない!!」


 どかないったら、どかない! 


 今一番知りたい事、結局一花は教えてくれてないじゃんね!



「一花は、結局あたしのことどう思ってるのさ!?」


「…………は?」



 さっきまでの一花の虚無な表情が一変した。

 めちゃくちゃ呆けた感じで目を丸くさせて、口も半開きになっている。


 いやいや、そんな予想外みたいな顔しないでくれる!? 

 あたしが一番知りたいのそこなんだけど!


 さっきから一花は自分のことを教えてくれたけどさ! いやそれも嬉しいんだけど、一花のこと知れたし! 


 だけどだけど! 


「いや、あたしが知りたいのそこだから! あたしを好きかどうかだから!」

「………………」


 口を開けたまま、無言になっている一花。

 あ、あれ? なんかさっきまでのシリアス風な空気がどこへやらなんだけど? そんな変なこと一切聞いてないじゃん!?


「なんで黙ってんの?」

「…………何言ってんだ、お前?」

「いやいや一花こそ、何聞いてんの?! 最初っから、それ聞いてたじゃん!」

「…………何言ってんだ、お前?」


 同じこと二回も言ってるけど!?


「…………受け入れないって言っただろ?」

「いや、だからさ! それ、答えになってないって言ったよね?!」

「……同じ答えだろ」

「さっきも同じやり取りしたよね!? 違うって言ったよね!?」


 違うでしょうよ! 好き、もしくは嫌い! その二択なんですけど!?


「あたしが知りたいのは、好きか嫌いか、その二つのどっちかの答えなんだよ! そりゃあ、一花がその葉月っちに昔したことを引きずってんのは分かったよ! 自分のことを信じられないっていうのも分かった! でもそれ今はどうでもいいや!」

「ど、どうでも……?」

「うん! どうでもいい!」


 考えてみると、関係ないよね! 一花が来てもいない未来を怖がってるのも分かったけどさ、『それ、あたしに対してどう思ってるとかと全く関係なくない?』とか思っちゃったよ!


「ほら、一花! ちゃんと答えてよ! 昔のこととか、この先一花が何かをするかもしれないって面倒臭いこと考えてないで!」

「めめ、面倒……?」

「そんな難しいことは全っ部ほっといてさ! 一花は結局あたしをどう思ってるのさ!?」


 ジーっと一花を見つめる。一花は開いた口が塞がらないのか、目も開きっぱなしで、固まっていた。そんな面食らったように動揺してないで、ちゃんと答えてよ!? はっきりしてほしいんですけど?!


「一花?」

「…………」

「一花ってば?!」

「………………」


 む、無言。これはどういう意味? 分かんないんだけど! 


「何か喋ってくれないと困るんですけど!?」

「……困ってるのはこっちなんだが?」


 やっと喋ったかと思ったら、なんでさ!? ガシッと一花の両肩を掴むと、のけぞるように後ろに顔を引かせてる一花。逃げようとしない!


「なんっにも困んないでしょうが!? 好き!? 嫌い!? どっちなのさ!!」

「いや、あのな……だから……」

「じゃあ聞き方変える! イエスかノーかで答えなよ! わかった!?」

「はあ!?」


 それが一番手っ取り早い気がしてきたんだもん! 一花は滅茶苦茶混乱しているっぽいし! 今がまさに畳み込むチャンスでしょ! いや、チャンスにする! 


「一花はあたしを友達だとは思ってる? イエスかノーで!」

「……い、イエス?」

「あたしがルームメイトでよかった?」

「……イエス」


 え、イエスなの!? ただ何となく聞いてみただけだったのに、まさかこんなところで嬉しくなること言ってくれるとは思わなかった……って違う! 喜んでる場合じゃない!


 若干自分の頬が熱くなるのを感じつつ、まだ困惑しているように目を彷徨わせている一花を見つめる。


「あたしとの生活は嫌だった?」

「……ノー」

「あたしのことは恋愛対象として見ることはできる?」

「……」


 さっきまで困惑してたのにも関わらず、戸惑いながら答えてくれていた一花が口を閉ざした。視線を下に向けて、あたしの方には寄越さない。つまりは出来ないって事?


「一花、答えなよ」

「……分からん」


 お、ちゃんと答え…………ん? 

 分からん?


「そういう風に考えたことはない……」


 え、ん? そういう風に考えたことはない?

 いやいや、ちょっと待ってよ。だって一花、あたしが一花のこと好きだって、ずっと前から気づいてたんだよね??


「でも一花、あたしの気持ち気づいてたって言ってたよね!?」

「誰でも気づくだろ……あんな狼狽えて、顔を真っ赤にさせてたら」


 そ、そんなに分かりやすかった、あたし!? 花音はめちゃくちゃ驚いてたし、レイラも全っ然気づいてなかったから隠せてたと思ってたんだけど――ってそうじゃなくて!!


「気づいてたなら、あたしのことをそっち面で好きか嫌いかって考えなかったの!?」

「受け入れるつもりないから、そこまで考えた事は……そういやないな」


 ないな……じゃないよ!? 考えてよ! そこ重要!


「受け入れるか、受け入れないか、なんてことは放っておいてさ! 単純に! それはもう単純に考えてよ! あたしのこと恋愛対象で見れますか!?」

「なんでいきなり敬語?」

「そんなところに引っかからなくていいから!」


 なんでそういう細かいところにツッコんでくるのさ!? ただの勢いだよ! 自分でも分からないよ! っていうか、今は全部勢いだよ!


 勢いが全面的にあたしから出ているのか、一花もさっきまでの突き放すような目じゃなく、冷たい目でもなく、「そ、そうか」と言い淀んでいた。ちがぁぁう! そうかじゃないんだってば!


「ほら! 早く考えて!」

「い、いや、あのだな……まずは少し離れ――」

「いやでもあのでもないの! ここは一気にさっさと答える!」

「少しは落ち着け!?」

「落ち着いてたら、一花は余計なこと考えるでしょうが!」

「めちゃくちゃ言ってるの分かってるのか!?」


 グラグラと一花の方を揺らしながら叫ぶと、まっとうなツッコミを一花がしてきた。分かってますとも! 今の自分が訳分かんないことを喋ってることも!


 そんなあたしに痺れを切らしたのか、両手であたしの腕を切り離すように払った一花が、ハアと難しい顔でかなり深い溜息をついている。あまりに自然とされたから、あたしもされるがまま一花の肩から手を離してしまった。


「あのな……そこは重要じゃないと思うんだよ、あたしは」

「そこって?」

「だから……あたしがお前をどう思っているかってところだ」


 ……何言ってんの!? 重要なのそこなんだけど!! しかもそれって、考える必要もないってことじゃない!?


 人差し指で眼鏡を直している一花は、やっぱり考えなさそうな様子。イラ~っとまたしてくる。


 今度はそうくる? そうきますか?

 あーそう! 考えるつもりはないと! 


「だからもうしつこく聞――」

「却下!!」

「は?」


 一花の逃げるような答えを遮ると、またまた一花が呆けたように口を開けた。


「却下! 却下すぎる!」

「はあ?!」

「一花があたしをどう思ってるか分かってないのに断るとか! ありえなさすぎる!」

「いやいやいや、だか――」

「ちゃんと考えてよ! もっと自分があたしのことをどう思ってるのか、ちゃんと考えてよ!」


 そうじゃなきゃ、



「嫌いか好きか、それ以外の答えは受け付けないから!」



 いっっっっさい! 受け付けないから!!


「だ、だからだな、ちゃんとあたしの話を聞――」

「分かった! 考えてないっていうのは十分分かった! だから! ちゃんと考えて、その答えを聞かせてもらうまで待ってあげる!」

「ま、待つ!? おおおい、あのな? もうお前への答えは決まっ――」

「決まってないし! それまでルームメイト解消の件もなしだから!」

「その件も、あたしがここを出ていくから関係ないってさっき言っ――」

「じゃあ、答えが出るまであたしが出てくよ! ユカリか花音たちの部屋にいけばいいだけだし!」

「はあ!? 何を言い出し――」

「じゃ! そういうわけだから! 言っとくけど、一花から好きか嫌いかの答え以外出てこないなら、出てくるまで諦めないから!」

「いやいやいや!! おい、ま――」


 勢いよく一花に背を向けてドアを開けて、あたしの方から部屋を飛び出した。何やら部屋の中から叫んでいる声が聞こえた気がしたけど無視。あたしの胸中はずっとモヤモヤイライラしっぱなし。


 一花はさ、さっさとあたしと関係を断ってスッキリさせたいんでしょ!? 色々なそれっぽい理由をつけてさ! そうはいくもんか! 


 全然今まで考えてなかったら、ちゃんと考えればいい!!

 あたしはこの数年、一花のことで頭が一杯だったんだから!


 好きか嫌いかも考えてないって、友達より酷いじゃんか!!


 あたしのことで頭一杯にして、あたしとのこの一年を思い出したりなんかして、いっぱいいーっぱい考えてしまえ!


 そのまま勢いでバンッと一花とあたしの部屋の向かい側にある花音たちの部屋を開ける。一花と話す前に言っていた通り、花音は部屋に鍵を開けていなかった。さすが!


 ズンズンと短い廊下を進んで、花音と葉月っちがいる部屋のドアをまた勢いよく開ける。パチパチパチと目を瞬かせてあたしを見てくる花音と葉月っち、さらにはゴロンタ。


「舞?」

「花音! しばらくベッド借りるから!!」

「はい?」

「舞~? 何怒ってるの~?」

「みゃ?」


 花音は困惑していたけど、葉月っちはゴロンタと一緒に首をコテンと傾げている。


 ……そうだよ、元はといえば葉月っちのせいだよ!!


「葉月っち!」

「ん~?」

「葉月っちも! 少しは自分を大事にしなよ!」

「んん~?」


 八つ当たりみたいに葉月っちに言ってから、昨日も借りたベッドの布団の中に潜り込んだ。


 葉月っちにも事情あるかもしれないけど! ご両親のこととか前世のこととかあるかもしれないけど! 


 だけど、一花も葉月っちも自分を大事にしなさすぎなんだよ!! だから巡り巡って、自分の気持ちを蔑ろにしている一花が出来上がったんだよ!


 イライライラとしていると、ツンツンツンと布団越しに指で突いてくる感触があったけど無視!


「花音~、舞が怒ってる」

「えーと……舞? 何があったの? 一花ちゃん、どうだった?」

「いっちゃんとなんか話したの~、舞?」


 ものすごく困惑している二人を無視していると、ゴロンタが小さい隙間から布団の中に入り込んできた。モフモフと暖かな感触が顔にかかってくる。こやつ……顔の傍で丸まった。くぅ……ゴロンタめ。その癒し要素はズルいじゃんか。


 仕方ないから、そのままそのモフモフに顔を埋める。あったかい。


 さっきまでの一花の戸惑っている姿を思い出す。

 きっとあの部屋で冷静になった一花もイライラしているだろう。


 でも、今度こそあたしに対しての気持ちも考えてくれているかもしれない。


「……一花のバカ」


 バカで融通がきかなくて頑固で、

 自分のことが信じられなくて、嫌いで、変な事怖がってて、


 結局一花のことで頭が一杯になってる自分がいて、


 そんな自分が悔しい。


 駄目だ。

 こんなの、一花に負けている気分になる。

 こういう時は――。

 

 ガバっと布団から勢いよく抜け出すと、葉月っちと花音がまた目を丸くさせていた。


「花音! いきなりで悪いけど、お腹空いた!」

「はい?」

「葉月っちよりも豪華なご飯をお願い!」

「むむ! なんで~!?」

「葉月っちにうだうだ言う権利ないから!」


 こうなったら、お腹一杯にしてまずは寝よう! 余計なことを考えるのはお腹が空いている証拠じゃん! 明日からのことは明日になったら考える!


 その後、ちょっとだけおかずを多くしてくれた花音のご飯を食べて、シャワーも借りて、さっさとゴロンタを引き連れて布団に入った。花音と葉月っちは終始困った様子だったけど。


 一花のバーカと心の中で叫びつつ、ゴロンタの毛玉に顔を埋める。

 ゴロンタはやっぱりあったかくて、あれだけ苛立っていたのに、びっくりするほどよく眠れた。


お読み下さり、ありがとうございます。

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