10話 再会?
「あ、降ってきた」
あたしがそう言うと、花音も窓の方に視線を移していた。
今日の天気予報は概ね曇り、だけど所々雨が降るところもあるでしょう、とお天気お姉さんが言っていたことを思い出す。
生徒会室で書類の整理をしていた時に、雨粒が窓を叩いてきたからつい視線を向けてしまった。
「うっへー......俺、傘持ってきてない......」
「わわわ私の傘、かか貸しましょうか?」
「え、いいの!? ラッキー!」
なんて会話をしだしたのは新しく生徒会に入った1年生2人。さすがに人手が足りないから、この間スカウトかけたんだよね。男子と女子一人ずつ。
じゃあ、あたしがお手本見せなきゃねって言ったら、男の子に「あ、大丈夫です」って即答された。なんでよ!? あたし、これでも先輩なんだけど!! って一人憤ってたら、花音がよしよしと慰めてくれた。
その話をしたら、葉月っちがヤキモチ妬いたみたいで、寮で花音に抱きついて「頭撫でて」ってお願いしてたよ。花音のあの嬉しそうな顔ったらなかったね。
「そそそろそろ来るんですよね......月宮学園の人たちが......」
「そうだね。今頃学園長に挨拶してるところだと思う。それからここに来るって話だったから」
「きき緊張します......」
胃の辺りを擦っている彼女に、花音が苦笑しながら答えていた。頭はいいんだけど、どうにも気弱で人見知りをする子みたい。
実は今日、少し離れた所にある月宮学園の生徒会と初顔合わせがある。
今年はお互いの学園が創立50年を迎える記念の年。お互いの学園の交流を深めようということで、体育祭や文化祭、クリスマスパーティーを合同でやらないか、という話になった。
これからもっと色々と忙しくなるなぁ......くう!! 本当だったらもっと一花にアプローチして遊びに行って、いい雰囲気になって告白! そして実は一花もあたしが......ってなる予定なのに!! 最近生徒会が忙しくて、そんなことをゆっくり考える暇もない! 帰ったら帰ったで寮の仕事もあるし、生徒会役員で成績も落とせないから、勉強にも追われている状態! あたし、忙しすぎない!?
でも帰ったら一花が労ってくれるから、実はそれが嬉しかったりするんだけどね。
それに、あたしの代わりに寮での仕事をたまに引き受けてくれたりするから、それがすごい助かったりしてる。ユカリも寮生だから、他の寮生へ困ったことがないか聞いてくれてるらしいし。葉月っちは相変わらず何かしらやらかそうとしてるけど。
「ああ、みんないるな」
そういえば葉月っちに白のTシャツを緑に染められた、なんてことを思い出してたら、九十九先輩たちが月宮学園の生徒会メンバーを引き連れて部屋に入ってきた。
うわ......なんだろ、あの男子......髪を背中まで伸ばしてる。ビジュアル系でも目指してるのかな? あたし、ああいう系はタイプじゃない。ま、あたしのタイプは一花だけど。
内心そんなことを考えながら、あたしたちも彼らを出迎えて一人一人挨拶していった。
向こうの生徒会長は美人さん。東海林先輩みたいなタイプかな? しっかりしてそう。そういえば先輩たち元気かなって思い出していたら、「舞、次」と隣の花音がコツンと肘を当ててくる。あ、いつのまにか自分の番になってた。
「あたしは神楽坂舞です。よろし──」
「は?」
例の長~い髪を一纏めにしている男子が何故か声をあげてきた。何? 何か驚く要素でも?あ、もしかしてピアスとか? これでも減らした方だけど。
不思議に思っていたら、何故かその男子はズイっと向こうの生徒会長さんを押しのけて一歩前に出てくる。あたしを睨んできてから、そのまま九十九先輩に視線を向けていた。
「落ちぶれたものだな、星ノ天学園も。こんな女を生徒会に入れているとか」
「「「は?」」」
思わずあたしと花音と九十九先輩の声が被っっちゃったじゃん。いやいやいや、いきなり何言い出しちゃってんの、この男。
「ちょっと、鍵宮君、やめなさ......」
「うっせぇ、引っ込んでろ。兄貴に何言われたか知らねぇけど、お前に指図される覚えはねぇんだよ」
「あのね......」
ハアと疲れたように向こうの生徒会長さんが頭を痛そうに手を額に当てていた。というか口悪っ! なんなのさ、こいつ? なんでこんな奴が向こうの生徒会に? あたしよりもあんたの方が不思議だよ!
......って、あれぇ?
なんか隣がヒンヤリしてきたんだけどもぉ?
「......随分と教育がなってないようだ」
「ふふ、月宮学園の方でこんな方がいるなんて初めて知りましたね。てっきり品行方正な生徒が多いと思っていたんですが?」
「(コクコクコク)」
そうっと隣を見ると、周囲を氷点下にする笑顔を浮かべている花音に、珍しく黒いオーラを纏って眼鏡に指をかけている九十九先輩、声も出さずに睨みつけてコクコクと頷いている阿比留先輩の姿がそこにあった。思わずブルっと背筋が震える。
怖いから!! なんで言われたあたしより皆がキレてるのさ!? 嬉しいけど、嬉しいけどぉ!! でもほら1年生見て!! 引いてるから!! 空気だけで引かせるってどんだけなのさ!? 向こうの生徒会メンバーも空気変わって身構えてるから!!
「はっ! 品行方正とやらを忘れてるのはあんたらの方だろ? そんな似合ってもいないのに、耳やら首やらにジャラジャラつけている頭が悪そうな女を生徒会に入れてるんだからな。あんたら、その女の正体知ってるのか?」
......この男、ある意味すごいんですけど! この空気の中、そんな発言出来るとか猛者じゃん!? そして正体って何さ、正体って!? ないよ! 隠してることなんてないよ! あたしが知りたいわ!!
「ちょっと、いい加減にしなさい!」
「うるせぇよ!! 触るな!」
「ああ、もう! やっぱり連れてくるんじゃなかった! ごめんなさい、九十九君......そちらの生徒会メンバーを侮辱するようなことを言ってしまって......」
「おい、侮辱じゃねえよ! その女はっ......んぐぅっ!!?」
他の生徒会メンバーが無理やり後ろから羽交い絞めして、もう一人が口を無理やり押さえつけた。めっちゃ焦ってる感じ。これ、あれかな? この男、問題児ってことかな?
「なんなんだ、そいつは......? 去年まではいなかったとは思っていたが?」
「ええ......今年から生徒会に入った子なの。前の生徒会長の弟で、卒業するときに面倒見てほしいって言われちゃって......。ウチの学園でも有名な問題児なのよ。夜の繁華街でも遊び歩いたり、学園の女の子たちにも無理やり手を出したりと、生徒からも苦情がいくつも入ってるから、監視も兼ねて無理やり生徒会に入れたんだけど......プライドだけは一丁前にあるものだから、なかなかこっちの言うことを聞いてくれなくて......」
ハアと思いっきり溜め息をついている生徒会長さんに、九十九先輩も釣られて息を吐いていた。これ、あれだね。絶対葉月っちのこと思い出してるね!
「問題児はどこにでもいるのは分かってはいるが......だが、神楽坂を侮辱するのはやめていただきたい」
え、九十九先輩!?
「はい。舞は大事な生徒会のメンバーです。見かけだけで判断されても困ります」
「(コクコクコク)」
か、花音に阿比留先輩......どうしよう! めっちゃ嬉しいんだけど!! あたし、めっちゃ大事にされてるじゃん!! ありがとう、花音、先輩たち!! この感動、どう伝えればいいのさ!
「確かに神楽坂はチャラチャラしてるし、騒がしくて仕方ない。学力もこの中では断トツでワースト1位だが、いないよりはマシだし、ちゃんとそれなりの努力をしている人間だ」
「ちょちょちょぉぉっとぉ!? 九十九先輩! あたしの感動返して!?」
いないよりマシって何さ!? 雑用って事ですか、そうですか!? 確かにこの中では学力一番低いかもしれないけど、学年全体でみれば、あたし上位の成績なんだけど! 褒めてるの、貶してるの!? どっち!?
九十九先輩はうるさそうにこっちを一瞥してから、また生徒会長さんに視線を戻している。隣でクスクスと花音が笑っていたけど、笑うところじゃないんですけど!?
ガーンってショック受けてたら、羽交い絞めされてた男子が「離せって!」って無理やり取り押さえていた人から体を離していた。うっわー、向こうの生徒会メンバーがめっちゃシラけた目を向けてるよ。あ、また睨んできた。
「あんたら騙されてるんじゃねぇの? 努力? こいつが? こいつの父親がどんな汚い手を使って、今の財力作ってるのか知らねえのか?」
「は? パパ?」
予想外のこと言われた。パパのこと知ってるって事? っていうか、パパは汚い手なんて使ってないんだけど!! むっかぁ~!!
「ああ、そういうことか......見事に騙してるってことだな。はっ! さすがあの男の娘って事か! 媚び売るのが上手いってことだよな! そうだったそうだった! あの時もそうだったもんな!」
「......あのさっ! さっきから何!? あたしのことはともかく、何でパパのことそんな風に言われなきゃいけないわけ!?......というか、あの時?」
は? あの時? どの時?
意味わからないし、パパのこと貶してきてつい声を荒げたら、一層不機嫌そうに睨みつけてくる。
「お前......まさか俺の事覚えてないのかよ?」
「え!? 覚えてるも何も初対面じゃん」
そう答えたら、「ちっ!」て激しく舌打ちされた。え、え? パパのこと悪く言われて、こっちの方がムカついてるんだけど!? どっかで会った事......いや、こんなビジュアル系、あたしの知り合いにはいないな。
思い出そうとしてもやっぱり記憶にない。怒りと疑問とで少し混乱してたら、その男子は「気分わりぃ」とか言って、いきなり扉の方に歩き出した。は!? いや、パパのこと謝ってよ!? 帰る気!? っていうか、結局あんた誰さ!?
「ちょっと鍵宮君、どこいくつもり!?」
「帰るんだよ! こんな女と同じ空気吸えるかっつうの! おい、星ノ天の生徒会。あんたらも騙されてないで、さっさとその女を追い出すことだな。碌な目にあっても知らねぇから」
めっちゃ喧嘩売ってくるじゃん!! さすがにめっちゃムカついた! これ、一発殴っていいでしょ? いいよね!?
と、足を一歩動かした時だった。
「どーん! 突撃、生徒会!」
「へぶっ!!!」
バンッ!! と、勢いよく開け放たれた生徒会の扉に、顔を思いっきりぶつけた彼の姿がそこにあった......。あ、倒れた。
「おい、葉月。あまり勢いよく開けるな。誰かがそこにいたらどうするんだ?」
「うん? 大丈夫だよ。誰もいなかったもん」
現れたのは葉月っちと一花。
いや、あの、葉月っち? いたよ? 葉月っち達から見えてないみたいだけど、扉の向こうで顔抑えて、彼が床でゴロゴロしてるから。
唐突に起きた今の事態に向こうの生徒会もポカンと呆けているし、こっちも茫然としてしまった。さっきまでの怒りはどこへやら、あたしも今は同情しかない。い、痛そうだわ~。
「あ、かの~ん」
そんなあたしたちの様子は無視して、葉月っちは愛しの花音に嬉しそうに駆け寄ってきたよ。あれ、花音はニコニコとしてるね?
「葉月、すごくスッキリした。ありがとう」
「うん?」
「小鳥遊、お前にしてはよくやった」
「(コクコクコク)」
「いっちゃん、褒められた!!」
「どうやら新会長になって、ストレスが溜まっているみたいだな」
「そうだな。普段のストレスも今の一撃でスッとしたかもしれない」
九十九先輩が満足気にそう答えたことに、呆れたように呟いた一花が驚いているみたい。いや、そうだよね。あたしも驚きだよ。
ただ、九十九先輩のそのストレスって葉月っちのことだよね? いくら悪戯減ったっていっても、無くなってないしね。この前なんか新聞部の写真を校内にバラまいて、それで生徒達からの苦情が入ってきて対応に追われたんだよ、うんうん。
「うん? いっちゃん、なんか人がいっぱいいる」
「舞が昨日言ってただろ。この人たちは月宮学園の生徒会だ」
今頃向こうの生徒会に気付いてる。遅いけどね!?
「でもどうしたの? 先に帰ってると思ったのに」
「んー? これ、傘~。花音の折り畳み傘、私のカバンに入ってた」
「え? ああ、そうだ。朝、葉月の分を用意して、私の分も入れちゃってたね。わざわざありがとう、葉月。気づかなかったよ」
「ん~」
傘を受け取った花音が葉月っちの頭を撫でてるし、葉月っちも満足そうに笑ってる。いや、あの花音? そういうのは寮でやりなよ。ほら、見て? 向こうの生徒会困ってるから。
「ちげぇだろ!? 謝れよ!!」
あ、彼が復活した。すっかり頭から消えてた。葉月っちも一花もやっと彼に言われて、存在に気付いたっぽい。
「誰~? いっちゃん知ってる~?」
「さあな。制服からして向こうの生徒会の一人か?」
「だから、謝るのが先だろ!? てめぇがいきなり開けたから、こっちは顔痛いんだよ!」
ふーふーってまだ顔を抑えながら精一杯葉月っちを睨みつけているけど......ビジュアル系君! 葉月っちにそんな睨みつけは効かないのさ!! ほら、見てごらん! あのどうでもよさそうな顔!! あの顔は花音のおやつのことしか考えてない顔なんだよ!
「知らな~い。いっちゃん、帰ろ~。花音のおやつ食べるのだ!」
「ふざけんな! 人を怪我させたことよりお菓子かよ!?」
「あー......東雲、さっさと小鳥遊を連れていってくれ。スッキリはしたが、これ以上の面倒は御免だ」
「それもそうだな......何やら面倒臭そうな男だ。おい、葉月。帰るぞ」
「ほーい」
「ちょ......ちょっと待て......東雲って言ったか、今!?」
何故か彼が一花の苗字に反応した。一花も自分の苗字を呼ばれて、不思議そうに彼に視線を向けている。まあ、東雲病院は有名だから、知っててもおかしくないけどさ。
彼が一花に近寄ってジロジロと見だした。
「なんだ?」
「......確かに背はこのくらいだったか? いや、でも......」
「ほう? 喧嘩を売りたいみたいだな?」
ブツブツと言ってる彼が一花の頭辺りに手を翳してるけど......それ、小さいって言ってる? 一花の地雷なんだけど。ん? なんでこっちをまた睨んでくるのさ?
「あのさ、本当なんなのさ? あたしだけじゃなくて、一花にまで喧嘩売るわけ?」
「舞、喧嘩売られたの~?」
「そうなんだよ、葉月っち。なんか分からないけど、パパのこと悪く言ってきてさ」
「舞の父親を? というか、この手をどけろ。鬱陶しい」
バシッと手を跳ねのけられて、今度は一花のことを睨んで見下ろしている彼。いや、本当なんなの?
「なんだよ、そういうことかよ。神楽坂は東雲の配下って事か」
はあ? 配下とかまた余計分からないこと言い出した。配下でもなんでもないんだけど? 今度は嘲笑うかのように、またあたしの方に視線を向けてくる。この顔、イライラしてくるから見てくるな!
「媚び売るのが、神楽坂家の十八番ってわけだな」
「誰も媚び売ってないんだけど! 本当、さっきからあんた何言ってんの!?」
「東雲家に守られていい気になってんなよ? ああ、でもお前に手を出すと、このちび様に俺が潰されっぶふぅ!!!」
一瞬にして一花の飛び蹴りが炸裂して、彼が吹っ飛んでいった。
ゴロゴロとまた床を転がっていく。
......えええ!!?
「ありゃー、いっちゃんにちびとか禁句だよ~?」
「ふんっ、売られた喧嘩は買う主義だ。誰がちびだ」
蹴り終わった一花が綺麗に床に着地してからパンパンと手を叩いてる横で、葉月っちが呑気に転がっていった彼に向けて言ってるけど......彼、きっと聞こえてないから!!? あれ、大丈夫なの!? ピクピクして動かなくなったんだけど!?
「い、一花、あれ大丈夫なわけ!?」
「大丈夫だろ? 手加減はしたぞ。そもそもなんだ、あいつは。媚び売るとか神楽坂家とか東雲家とか意味わからんことを。さらには人のことをちびだと? 初対面で言っていい事と悪い事が分からんのか」
「いやいやいや、絶対最後のを一番気にしてるよね!?」
あたしも色々言われてムカついたけど、今の一花の蹴りで全部吹っ飛んだよ!! 地雷っていうのは知ってたけど、あたしと葉月っちが言ってもここまで酷いツッコミは受けてなかったのに!!
って、あれ? それ考えると、あたし、一花にちゃんと大事にしてもらってる? え、何それ、嬉しいんですけど!
「あー......すまない、ウチの生徒が」
「い、いえ......彼の方が一方的に悪いから。こちらの方こそウチの生徒がごめんなさい......」
「オホン、まあこんな状態になってしまったからあれだ......打ち合わせはまた今度にしてはどうだろうか? もちろん、“代表者”のみ集まって」
「そうね。その方が私たちも大変助かるわ、ええ」
勝手に嬉しがってたら、九十九先輩と向こうの生徒会長が何やら分かりあっている様子で話し合っていたよ。
一花は彼に何かをしようとする葉月っちの襟元を引っ張って、「騒がせて済まなかった、失礼する」と、向こうの生徒会メンバーに涼しい顔でお辞儀してから出ていった。向こうの生徒会メンバーはまだ茫然としてたけどね。あ、一花と葉月っちのこれはいつも通りなんで、気にしないでください。
それからは彼抜きで簡単に自己紹介し終えて、月宮学園の生徒会メンバーは早々に立ち去っていった。彼はずっと気絶してた。よっぽど一花の蹴りが綺麗に入ったんだろうか?
それにしても、結局彼は何だったわけ? ハア、よく分からない。どっかで会った記憶もないし。
「舞は覚えがないの? 彼は一花ちゃんのことも知っているみたいだったけど」
「いや、それがさっぱりでさ。一花はほら、東雲だからそれで知ってたんじゃない?」
「東雲病院は全国でも有名だものね」
帰り道に花音も心配そうに考え込んでいた。
「ま、大丈夫でしょ! これからはあんまり関わる事ないと思うしさ!」
「でも彼、生徒会だよ? これから頻繁に打ち合わせも入ってくるし......」
「九十九先輩も言ってたじゃん。打ち合わせは代表者同士でって。会うとしても体育祭とか文化祭だけだって!」
「うーん......舞がそう言うならいいけどね......でも、またあんな風に舞の事言われるのはこっちが不快になるだけなんだよね」
か、か、花音!! そこまであたしのことをちゃんと想ってくれてたなんて!!
ジーンと感動して思わず道端で花音に抱きついたら、「きゃあ!」って可愛い悲鳴をあげていた。
「もう、舞。離れようね。びっくりするから」
「花音! あたし、花音と友達でめっちゃ嬉しいよ!」
「はいはい。私も舞と友達でちゃんと嬉しいよ」
苦笑しているけど、照れて少し頬が赤くなってる花音が大変可愛かったよ。葉月っちが好きになってしまうのも分かるね! ま、あたしが好きなのは一花だけど!! 一花がいなかったら、花音に惚れていたかもしれない!
その日の夕飯後にからかって葉月っちに、「花音って本当可愛いから、今日危うく好きになりそうになった!」って言ったら、いきなりヤキモチ妬き出して、ギューっと花音に抱きついてた。頬をぷくーっと膨らませて「だめ」って言う葉月っちも可愛いよ!
生徒会室で彼に言われたことなんて当に忘れて、「あっはっはっ」て笑ってたら、花音が機嫌を直すためか葉月っちのほっぺにキスしだしたよ。
あの、花音? 一応あたしと一花もいるからね? そういうのはあたしと一花が部屋に退散してから存分にやってください! 羨ましくて仕方ないから!! 一花も慣れすぎないで!? 放置しないで、この二人!!
お読み下さり、ありがとうございます。




