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最終話 ルームメイトはかけがえのない愛しい人になったらしいよ?

 


「ねえ、いっちゃん」


「何だ?」



 いっちゃんと舞の部屋に今います。

 花音と舞はお弁当を作っているのだ。


 今から、花音たちと寮長や会長たち生徒会メンバーと、遊びに出かける予定になっているよ。お弁当作りが終わるまでは暇なので、いっちゃんと一緒にここで暇潰し中。


「あのね、いっちゃん」

「だから何だ?」

「私ね」

「さっさと言え」

「花音が好きだったよ!」

「知ってる」


 え、あれ? 知ってた? しかも反応薄くない? 気づいたの、つい昨日なんだけど。何故にいっちゃんが知ってるの?


 ポカンとしてしまった私を、いっちゃんはいつものように呆れた感じで見てくる。これはあれだ。何言ってんだこいつ、という目だ。


「あのな、葉月」

「うん?」

「あたしはこの1年、何でこいつ気がつかないんだと、何度も何度も思ったよ」

「そうなの?」

「思い返してみろ、この1年を」


 はて? 思い返すとな?


「まず花音の生徒会勧誘」

「うん?」

「お前、花音が少し手荒に扱われただけで暴れたじゃないか」

「あれは会長がね、悪いんだよ」

「次にレクリエーション」

「うん?」

「花音がいなくなったってだけで暴走したじゃないか」

「いきなりいなくなるのはね、一気に頭が冷えるんだよ」

「次に海」

「うん?」

「花音がいなくなって一番に探しにいったじゃないか」

「そうだね」

「次に不良に絡まれるイベント」

「あったね、そういえば」

「花音が怪我するかもしれないってだけで暴走したろ」

「それはそうだね」

「次に水族館」

「うん?」

「また花音がいなくなったと知って、助けにいくことしか考えてなかった」

「そうだね」

「つまり」


 つまり?


 バンッ! と勢いよく、いっちゃんは読んでいた本を閉じたよ。



「どうやって死ぬかしか考えないし、行動しかしないお前が、花音に関してだけは積極的に行動してたんだぞ?! なんで、今の今まで気づかないのかが不思議でたまらないわ!?」



 はっ! 確かに! 花音以外のことは全っ然行動していない! 他は全部どう死のうかな~とか、それに関することしか考えてなかった!


「お前、花音に最初から惚れてたんだよ! 何を今更と思うだろうが!」

「最初から!? なんと!?」

「鈍感すぎるわ! 気づけ!」

「無理」

「無理じゃないわ!? お前自身もそうだが、他人にはもっと気づかないし! 花音が哀れだったぞ!」


 え、そうなの? ま、まあ花音にも言われたけども。


「花音は花音で分かりやすかったしな。お前を見る目がガラッと変わったし、態度もガラッと変わったし。さすがに冬休みはお前やばかったから、花音に知ってるからちょっと待ってくれって頼んだけど、でも花音ももう抑えられなくなったんだろ。どんどんエスカレートしていった。お前の面倒だけでも大変なのに、花音の方もフォローしなきゃいけなくなった。大変だったなぁ、ご飯とお菓子の攻撃は……」


 どこ見てるの、いっちゃん。そんな遠くを見つめるようにどこを見てるの? そんなに花音分かりやすかったの? ご飯とお菓子って何のこと? 全っ然気づかなかったんですけど。


 あと陰でそんなにフォローしてくれてたんだね、いっちゃん!


「大好きだよ! いっちゃん!」

「お前、それ花音の前で絶対言うなよ。さすがにあの花音は、あたしでも相手するの怖いからな」

「いっちゃんと花音の好きは違うもん」

「違くても言うな。嫉妬の目で見てくる花音は怖いんだよ」


 花音、そんな目でいっちゃん見てたの? そんなに嫉妬してたの?


「はぁ……まあ、上手くいって何よりだ。お前もあんまり欲に取り憑かれるなよ。花音が泣くぞ」

「そう……だね。でも、いざって時はいっちゃんいるから大丈夫! 頼りにしてるよ、いっちゃん!」

「全っ然自分で何とかする気がないな!? 少しは休ませろ!」

「無理」

「せめてバカな方の行動抑えろ!」

「もっと無理」

「なんでそっちの方が無理になるんだよ!? そっちをメインで抑えてほしいんだよ、あたしは!?」

「ガンバ、いっちゃん」

「お前が応援するな!?」


 いや~応援しますよ~。だって色々やっぱりしたくなっちゃうもんね~。もはやクセになってますな。


 あれ、いっちゃん疲れてるね。すごい疲れてるね。テーブルに突っ伏しちゃったよ。疲れさせてる原因、私だけどね!


 あ、そうだ。言い忘れてた。


「ねえ、いっちゃん」

「……なんだ?」

「私ね、死にたい欲もあるんだけどね、他にも欲が出てきたんだよ」

「ほう?」

「花音にチューしたい欲が今すっごいです!」

「いきなり惚気るな!?」


 いやでも本当そうなんだよ。昨日もいっぱいしたし、今日の朝起きた時もしたけどね。起こされて、あの可愛い笑顔が目の前にあるんだよ? それはしたくなります。それに花音もしてくるもん。


 昨日の花音のおねだりも可愛かった。これから一緒に寝たいって言ってくるんだもん。もちろん返事は「いいよ」ですよ。寝る前にもいっぱいしたしね、チュー。その後、ハグされて気持ちよく寝れました!


 ん? なんだい、いっちゃん、その目は? 何の目だい?


「お前、そっちはあたし止められないからな。あんまり花音に負担かけるなよ?」

「でも花音もしてくるよ? 今日も朝、私はほっぺだけど、花音は口にしてきたもん」

「……花音も全開だな」


 また疲れ切って、そして呆れかえったように首を振るいっちゃん。でもキス気持ちいいもん。それにあの嬉しそうな花音も可愛いしね。見てるとこっちまでポカポカしてくるのです。んふふ~。


「それよりお前……さっきから何してる?」

「ん?」

「それだ。その手に持ってるものなんだ?」


 これ? これねー、今日の夜に屋上から打ち上げようと思ってね! なんと、これは花火です! 花音と一緒に見るのだ! 喜ぶかなって思って! あ、そうだ。


「いっちゃんも一緒に見ようね!」

「何をだよ!?」

「もちろん、花火ですが?」

「それ、花火か!? 待て……待て待て……何で花火でその材料なんだよ? その量じゃ爆発す――」

「お空に爆発させれば花火だよね?」

「違うわ!?」


 あっれ~? そうだった? 確か前にママが爆弾をおじいちゃんに投げて、おじいちゃんがそれを打ち返して、お空に花火が咲いたような気がしたんだけどなぁ。私の記憶違い?


 結局その花火は、慌てたいっちゃんに没収されちゃったよ。まあ、いいや。作るとしたら、もっと本格的に作ろうではないか。


 説教しようとするいっちゃんから逃げて、花音と舞の所に戻ったら、準備は出来たらしい。おお、おいしそうなおかずたちがいっぱいです。これを今からお空の下で食べるのだ。楽しみ~。


 その後は寮長とも合流。寮長が私の姿を見て、かなり嫌そうな顔をしていたね。この寮長の顔を見るのも今日で見納めか~。なんて考えてたら、寮長が行き先を聞いてきた。


 花音が微笑みながら、私に視線を寄越してくる。花音に言ったら、賛成してくれたんだよね。


 満面の笑みで寮長に行き先を告げたら、目をまん丸にして驚いていた。



 □ □ □ □


「全く、いきなり呼ばれたかと思えば……」

「あっはっは、まあまあレイラ! いいじゃん、どうせ暇だったんでしょ?」

「あはは……この前卒業して、当分来ないと思ってたんだけどなぁ」

「怜斗さん……僕と宏太は明日も来る予定ですよ……」

「(コクコク)」

「……ふんっ」


 やってきたのは星ノ天(ほしのそら)学園。


 会長たちは何でここ? っていう顔をしているよ。それもそうだね。


 でも私はここに来たかったのだ。


 屋上でお弁当食べる予定だから、レイラ、もう帰ってもいいんだよ? 鍵だけ学園長から貰ってきてもらったからね。用事はもう済みました。


 そう思ったけど、今は春休みだから誰もいない。ウズウズしてきた。落とし穴作ってレイラを落とそうじゃないか! と言ったら、舞に止められた。は、そうだ!


「舞!」

「ん、何?」

「舞を埋めてあげるよ!」

「嫌だけど!?」

「レイラと一緒がいいんでしょ?」

「誰もそんなこと言ってないんだけど!?」


 隠し持っていたスコップを取り出すと、舞とレイラが追いかけてきたよ。土の中に埋まるのも面白いのにね! 経験済みです!


 っと――あら?


 舞とレイラから逃げている時に、チラッと苦笑している花音の方に視線を向けると、重そうに皆のお弁当を持っている。ずっと持たせたままだった。


 だから急いで花音のところに走ってったよ。「持つ」って言ったら、一瞬驚いたように目を大きくさせて、すぐにいつもの可愛い笑みを向けてくれた。うん、可愛い。喜んでくれたなら、嬉しいよ。


 舞とレイラとその紙袋の中を覗き込んでいたら、花音は生徒会メンバーと話し始めた。


 むむ。会長と話してる。しかも楽しそう。モヤモヤして、あ、これが嫉妬かって思ったよ。


 舞たちに紙袋押し付けて、会長に突撃! 無理やりよじ登ってみたら、かなり嫌そうだった。少しそんな会長を見てスッキリ。そしてこれ、思ったより面白い。


 ん? あ、あれ、花音? 何でそんな怖い笑顔になってるの?


「葉月、そこから降りようね?」

「うん? このまま行く」

「誰が行くか!?」

「だめだよ。危ないから降りようね?」


 ニッコニコと怖い笑顔の花音には逆らえません。


 ちぇって思いながら、素直に降りた。疲れている会長が面白かったからツンツンしてたら、今度は無理やり顔を花音に向けさせられました。「だめだよ」って言って、まだ怒ってる様子。会長の上に無理やりよじ登ったの、そんなに危なくないんだけどな。


 でも怒ってる花音より、花音の笑顔の方がいい。次からは花音がいない時にしよう、そうしよう。


 どうしたら花音の笑顔が見れるかなって考えていたら、いっちゃんがこれまた疲れたように花音との間に入ってきた。花音はいきなり顔真っ赤にさせて周りを見てたよ。狼狽える姿、可愛いかった。



 それからは皆と一緒に校内散策。見慣れているけどね。寮長たちは思い出話に花を咲かせていたよ。寮長たちにとっては3年分の思い出があるから、話も弾んでいる。


 中庭に差し掛かると、舞が声をあげた。


「お、ここ一番咲いてる」


 舞が指差した方に視線を向けると、確かに桜が満開で咲いていた。


「今年の桜は、見事ですわね」

「まだゆっくり見れてなかったから、今日はちょうどよかったよね!」


 レイラと舞がそんな話をしていたのをどこか遠くに聞いて、その桜の向こう側の時計塔が視界に入ってくる。


 ……不思議。

 ずっとこの1年、あの時計塔を見てた。

 どこかワクワクして、いつかって期待をしてた。

 ずっと、あそこから空を見ながら落ちるのを夢見てた。


 だけど、今は心が穏やか。

 落ちたいって……思ってない。


 本当は、この時計塔を見て、今どう思うのか気になった。


 だから今日、ここに来たかった。


 隣の花音をチラッと見る。花音は桜を見て、嬉しそうに目を細めている。


 手には、花音の温もりも感じる。



 こっちの方が、見ていたいかも。



 ギュッと握ると、花音も微笑んで私の方を見てくれた。


 前はあんなに時計塔に心奪われたんだけどな。


 桜、嬉しそうに見てたな。好きなのかな。

 そういえば、鴻城(こうじょう)の屋敷でもお花畑見て感動してたっぽい。花が好き?


「いっちゃん、桜が違う花咲かせたら凄い?」

「……何する気だ?」

「これがどーんと違う花になったら、皆、嬉しい?」

「だから……何する気だ?」

「さっきの花火、改良すれば出来るかなぁ?」

「だから何する気だ!? というか、あの花火を使うな! あれはただの爆弾だ!!」


 確かに。いっちゃんのツッコミの通り、あれだとここ一帯を吹き飛ばしてしまう。


 けど、花音を喜ばせたいんだよ。喜ぶかな。

 木の下の桜を拾って、つい眺めた。


 あの花火を処分するために電話をかけだしたいっちゃんを無視して、花音の方にまた視線を向けてみる。


「花音、見たい?」

「ん? んーそうだなぁ……」


 クスっと困ったように笑っている。それは見たいってこと?


「私は……桜をやっぱりこの季節に見たいかな」

「なんで? 違う花もあれば、きっと綺麗だよ?」

「確かに色んな花があれば綺麗だと思うけどね。でも季節ごとに見れるから、毎年楽しみに出来るの。1年毎の楽しみ。だから、余計綺麗に見えるんじゃないかな。毎日見れるものじゃないから。違う花だって、それぞれ咲き頃ってあるでしょ?」


 ――そんな感じのこと、確かメイド長も言ってた。花火を見た時、そう言ってた。


 実際花火見て、私もたまにならいいなって思ったんだよね。


 手に持ってた桜を落として、咲いている桜を見上げる。花音から手を放して、木に登ってその枝を折ると、舞とレイラから「何してるのさ(んですのよ)!?」と怒ってる声が聞こえてきた。でも気にしない。あとでまた枝が生える薬でも作って塗ってあげるから、いいよね。


 それを花音に渡すと、きょとんとした顔を向けてくる。


「これ、飾る」

「部屋に?」

「うん」


 それだと、少しは部屋でも桜を楽しめるかもしれないでしょ?


 苦笑しながらどこか嬉しそうに、花音はその枝を手に取ってくれた。その笑顔が心の中をポカポカさせてくれたから、満足です。


 中庭を後にして、他にも図書館や生徒会室も一通り回ってから屋上に向かった。


 お弁当を広げて、皆でお喋りしながら食べ始める。寮長たちの思い出話に、いっちゃんや舞、レイラも混じって楽しそうに話していた。


 私はというと、ちょっとだけ皆と離れて花音と一緒に食事中。甘い卵焼きをモグモグさせながら、空を見上げた。


 今日は雲があるけど、概ね快晴。

 太陽の光がポカポカと降り注いでいる。春らしい心地いい風も頬を撫でてきた。


「綺麗だね」

「……うん」


 花音も目元を緩ませて空を見上げていたよ。思わずといった感じで、そう呟いてきた。


 それにお外のご飯、最高です。しかも花音の卵焼きもウインナーもおにぎりも全部おいしいから、さらに最高。


 空の青が、今日は余計キラキラ見える。


 昔の私にも見えてるかなぁ。

 私を通して見えてるといいなぁ。


 あれ以来さっぱり出てこなくなったからね。よほど花音のギューが好きとみた。花音に抱きしめられると、あったかくて気持ちいいもんね。


 でも、忘れないよ。


 この綺麗な空を見ながら、死ぬときは落ちようね。



『そのときは迎えにくるよ~』



 心の中で呟いたら、一瞬、そんな返事が返ってきた気がした。


 自然と、口元が緩んだ。


 それは今日じゃないけれど、


 明日でもないけれど、


 でもいつか、



 その時がきたら、私の中のあの子がきちんと迎えにきてくれる。



 そう信じられることに満足してお弁当を平らげたら、隣の花音はやっぱり嬉しそうに微笑んでいたよ。おいしかったんだもん。


 食べ終わって、ノソノソと花音の膝に頭を乗せると、クスっておかしそうに笑いながらも頭を撫でてくれた。だって、花音の太もも柔らかくて心地いいんだもん。


 愛おしそうに、花音は見下ろしてくる。


 この目に今まで気づかなかったんだなぁ。

 鈍感と言われて、今は納得できるかもね。


 でも今は、花音が自分を好きなんだなって思えるよ。

 今まで私を愛してくれた人たちと同じ表情だって分かるよ。


 ママやパパもこんな風にいっつも見てきたから、それが嬉しくてたまらなかったんだよ。


 今日感じたこと言ったら、花音はどう思うのかな?

 喜ぶのかな?


「今日ね……」

「ん?」

「落ちたくなってないよ」


 意味が分かったのか、少し驚いた顔をさせてから、やっぱり嬉しそうに微笑んでくれた。


「そっか。良かった」

「うん……」


 ゆっくりまた花音の手が髪を梳くように撫でてくる。

 嬉しそうに微笑みながら、撫でてくる。


 死にたいって思わない事は、やっぱり周りを喜ばせることだよね。


 花音のその表情が、それを証明してくれてる気がする。

 花音が笑ってくれると、自分の存在がいていいんだって思えてくる。


 花音の向こう側に、空が見える。


 綺麗だよ。

 この空を見ながら死にたいって思ってるよ。


 でも今は、



 それ以上に、目の前の花音を見ていたい。



 太陽の光が降り注いで、花音を余計綺麗に見せてくる。


 目を奪われて、ずっと見ていたくなる。


 手の感触も、

 温かさも、

 心地よくて酔いしれる。


 これがなくならないように、


 この温もりがなくならないように、



 ずっと守っていこう。



 この手が、


 その微笑みが、



 消えてしまわないように、守っていこう。



 ずっと見ていたいと思う限り、


 多分あの子は迎えにこない。



 あの子も花音の温もりが好きだから。


 胸の中をあったかくさせてくれる、この笑顔が好きだから。



 ポカポカする。


 体が、

 心が、

 ポカポカと温かい。


 太陽の光が、空を眺めてる花音に降り注ぐ。


 その光を浴びて、花音がまた綺麗に見える。


 暖かい春の陽気な風が、より一層心地いい。



 花音は乙女ゲームの主人公。



 いっちゃんの好きな乙女ゲームのヒロイン。


 優しくて、可愛いヒロイン。



 ありがとう、花音。


 こんなに幸せな気持ちを思い出させてくれて。



 ありがとう。


 私を攻略してくれて。



 ありがとう。


 私を愛してくれて。



 ママとパパが生きていた時にずっと感じていた幸せを、


 今、また感じることができるよ。


 だから、


 そうやって笑ってて?


 そばでずっと笑ってて?



 その笑顔を見ていたいから。


 ずっとずっと見ていたいから。


 その温もりに包まれていたいから。



 その笑顔を見られることに、


 その温もりを感じられることに、


 嬉しくなってフフって笑ったら、花音が空から私の方にその憧を向けてきた。


「どうしたの?」

「んーん。何でもない」


 ゲームはやっぱりハッピーエンドが一番だよね。


 だから、私がちゃんと守るよ。


 ヒロインが笑顔でいれるように。


 その温かさを失わないように。



 主人公の花音をずっと守るよ。



「花音」

「ん?」

「好きだよ」


 そう言ったら、ボンっと音が鳴りそうなぐらい、一気に花音の顔が真っ赤になった。ふふ、おもしろ~、か~わいい~。


「ふ、不意打ちすぎるよ……」

「そう思ったんだもん」

「もう……」


 ハアと溜め息をしつつも、やっぱり花音は嬉しそうに微笑んでくれる。



「私の方が好きだよ」



 ポカポカする。


 花音のその気持ちが、

 温かさが、


 これ以上なくじんわり身体に染みこんできて、また嬉しくなる。


 撫でてくれる手に擦り寄ると、花音もまた幸せそうに撫でてくれる。どんどん心地いい眠気が襲ってきた。



 明日もまた、この暖かさを味わえますように。


 明日もまた、この笑顔を見れますように。



 未来へと思いを馳せて、眠りにつく。


 明日も、


 明後日も、



 未来を信じて、今日を生きる。



 そういう気持ちにさせてくれたのは、最初はただのルームメイトだった。



 そのルームメイトは乙女ゲームのヒロインで、


 私に明日をくれて、


 幸せをくれて、




 そして、かけがえのない愛しい人になったらしいよ?




 最後までお読み下さり、誠にありがとうございます。


 正直まだまだ書き足りない部分があるという思いもありますが(舞と一花の恋の行方やら、それこそ不憫に終わってしまった会長のその後やら、葉月と花音の本格的なイチャイチャ、あとは葉月の両親のエピソードやらetcetc......)、ですが葉月と花音の物語としてはここで完結と致します。


 本当、この作品は投稿するのにかなり勇気がいりました。特に葉月の過去ですね。R-15にどこまで引っかかるのかも分かりませんし、人に寄ってはやはり気分が悪くなるのではないかと不安で不安で仕方がありませんでした。


 ですが、最後まで投稿しようと思えたのは、やはり読んでくれる方々がいるという事実です。感謝してもしきれません。心の底から何度も何度もお礼を申し上げます。ありがとうございました!皆様のおかげで最後まで投稿しようと思えました!


 次話からは番外編として一花と舞の物語になりますので、興味がおられる方は、よかったら引き続きお付き合いいただければ幸いです。


 よろしければ最後に感想等いただければ嬉しく思います!


 最後までお付き合いいただき、そして葉月と花音のことを見守っていただき、本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 海外のファンですが、この本に会えてよかったと思います。2人のラブストーリーを読んだら自分も幸せになるそうです。そして葉月の昔のことを読んだら涙が出てしまって、感動しました。 感想をうまく書…
[良い点] とても面白くて秋の夜長に一気読みしてしまいました。 花音、葉月両者の視点から見れたのでよりじれったさが増して一喜一憂しながら楽しませてもらいました。 贅沢を言うと、葉月が花音のことを好きだ…
[良い点] 花音と葉月の物語最高でした 面白くて一気に読んでしまいました! 番外編で他の子達の話も、このふたりの甘い話も楽しみに待たせていただきます!
感想一覧
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