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21話 ルームメイトは少し変わっている —花音Side

 


「ただい……」



 寮に帰ってきて、自分と葉月の部屋のドアを開け、そして言葉が止まった。


 今日は少し遅くなった。クラスメイトのユカリちゃんの部屋に寄ってきたから。どうしても卵焼きを自分で作りたくなったらしい。教えるために、帰りは葉月たちとは別々だった。


 それが終わって自分の部屋に帰ってきたけど、視界に入ってきたものは、葉月が一匹のカエルと遊んでいる姿。


「お帰り~花音」


 そのカエルを手に取って、こっちを無邪気な笑顔で見上げてくる。ピョンっとそのカエルが床に飛んだ。


「……どうしたのかな、これ?」

「捕まえた」


 そう……だろうね。そうだろうね。だからここにいるんだろうね。逃げたカエルを捕まえて、また手の平に乗せている。あ、しっかり虫かごがある。


「それに入れようか、葉月」

「今から食べるのに?」


 ……食べるつもりだったんだ。前に言ってたこと本当だったんだ。じゃあ、その虫かごは? いや、ううん、それより。


「そんなにお腹空いてるの?」

「うん」


 じゃあ、早く作らなきゃね。虫かごよりも食べさせる方を優先させた。さすがにカエルは調理できない。パッパと作って、テーブルにどんどん置いた。「おお~」と感動している。


「そのカエルさんは自然に戻そうね、葉月」

「うん? あとでた……」

「戻そうね?」

「……可愛いよ?」


 ズイっとそのカエルを目の前に出してきた。……確かに少し可愛いかも。礼音もよく捕まえてきていたから、そこまで怖くはないんだけど……でも葉月、食べる目的で捕まえてきたんだよね?


 ニッコリ笑って、そのカエルごと押し返す。


「食べるのは可哀そうだから戻そうね?」


 「ちぇ」っと言って諦めてくれた。窓からポイと落としている。まあ、2階だから死にはしないでしょう、きっと……きっと。


 ご飯を食べて、お風呂に入って勉強タイム。

 学園の授業は実は楽しく思っていた。でも、ついていくので精一杯。意外と専門的なことも学んでいけるのが面白い。だけど、少しでもサボると絶対ついていけなくなるのは目に見えている。予習復習は欠かせない。


「ふんふ~ん♪」


 勉強していると、葉月がベッドの上で何かを作っていた。何だろう、あれ? 最近毎日やっている。気分良さそうに糸を通しているけど……。


「葉月、何を作っているの?」

「ふっふ~秘密~」


 楽しそうにしているから、まあいいか。自分の勉強に集中した。


 □ □ □



 ……ちゃんと何作っているか把握しておけばよかったなぁ。


 目の前には教室の窓から見える逆さまの葉月。しかもちゃんと、スカートの中は見られてもいいように短パンを履いてた。舞が疲れ切っていた。東雲さんと寮長兼生徒会副会長の東海林先輩の事を、いつものように怒られているのにからかっている。


 屋上から足にゴムつけて、飛び降りてきたらしい。

 危ない事この上ない。


 頭に血が上ってきたって言ったから、舞と2人で葉月を下ろした。ここが一階で良かった。

 今は正座させられて、東雲さんと東海林先輩に説教されている。


「あのね小鳥遊さん。いい加減にこういう危険な行動はやめなさい」

「寮長、何やら誤解をしているようだね」

「……何が誤解なのかしら?」

「私は確かに飛び降りました、認めます」

「それで?」

「でもどこにも危険はありませんでした!」

「これのどこが危険じゃないというの!?」


 先輩が手に持っているのは、葉月お手製の長い長いゴム。耐久性がないのか、所々が切れかけている。途中で切れていたら大惨事。


「あのな葉月。これがもし切れてたら、大怪我間違いなしなんだ。それはお前も分かっているよな?」

「むむ、いっちゃん。見くびられては困るよ」

「何も見くびってないんだが」

「その改良版バンジー君2号はね、1号君の犠牲の元に作り上げたものなんだよ。そう簡単に切れたりはしませんよ」

「切れたらの話をしてるんだよ……」

「いっちゃんや。失敗は成功の元だよ?」

「やかましいわ!?」


 うん、まったく反省してないね。これ、きっと同じようなのまた作るんだろうな。


 窓に腕を置いて、外で正座している葉月の名前を呼んだ。「ん?」っとこっちを見てくれる。


「今度そういうの作ったら、葉月の苦手なオニオンサラダ食べてもらうからね?」

「え、じゃあ作らない」


 即答してくれたから、うんうんと頷いた。これでこの危ないことは今後ないでしょう。葉月はちょっと変わってるけど、こういうとこ素直だよね。

 この時、何故か東雲さんと東海林先輩が私と葉月を交互に見てきた。不思議には思ったけど、丁度予鈴がなったから、次の授業の教科書とノートを机に広げていく。さて、ここからちゃんと集中して授業を聞かないとね。


 葉月はスクっと立ち上がって、またどこか行こうとしていたのを東雲さんに止められていた。


「花音……すごいね」

「ん、どういうこと、舞?」


 舞が何故か尊敬の眼差しを向けてきてたけど、どうしてだろう?


お読み下さりありがとうございました。

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