表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/366

216話 飲み込まれる

刺傷、流血シーンあります。苦手な方は無理に読まずに221話まで飛ばして頂きますようお願いいたします。221話は前半があらすじみたいなものですから、無理に読まなくても大丈夫です。

 


『食べる?』


「連れて行きなさい」


 彼女の命令に、花音の近くにいた男が動き出した。


「おい、やめておけ。これ以上あたしを怒らせるな」

「はっ! どうせ今だってそこから動けない癖に、何言ってるのかしら?」


 彼女の指示でゾロゾロと扉から人が出てきて、いっちゃんたちが囲まれた。


『食べられる?』


『誰が?』


 男が花音の縛られてる腕を取って、無理やり立たせた。


「いやっ!」

「悪いな。このお嬢さんに逆らったら、俺たちが代わりに水槽の中に入れられるんだよ」

「花音を離しなさいな! うぐっ!!」

「レイラ!」


 レイラが違う男に突き飛ばされて、舞が声をあげた。



『花音が?』



「一花様! お嬢様が!」

「舞を後ろに連れていけ!」

「一花!?」

「あたしの言う事を聞く約束だろ!」


 いっちゃんが監視の人に指示を飛ばしている。

 いっちゃんたちの周りを男たちが取り囲んでいる。



「葉月!? ちっ!!」



 いっちゃんの声が聞こえた。






「花音に……触らないでくれないかな~?」





 花音の腕を引っ張ってる男の後ろに、私がいた。


 男が振り向いた瞬間、男の腕を逆に捻ってそのまま床にドンッ! と倒すと、近くにいた男がこっちに手を出してきた。


 あは! きた~!


 その男の腕を取って投げ飛ばすと、違う男の人に当たってストライク! でもまだ何人かいる~!


「葉月!」


 後ろから花音の声が聞こえた。

 振り向くと、不安そうな、辛そうな顔をしている。


 なんで~?

 なんでそんな顔してるのかな~?

 今からね~。


 『人がどうやって死ねるか』を試していくんだよ~?


 足元にいる男が動き出した。頭をゴンッッと、足で押さえつけてあげる。


 うん? ピクピクしてる。

 んふふ~。

 でもこれじゃ死ねないんだね~。


「葉月……だめだよ、やめて?」


 また花音が何か言ってきた。


 なんで~?


 首を傾げて花音を見る。

 少し怯えている。


 下にいる男を見る。

 この人はだめ~?

 じゃあ、向こうで試そうか。


 顔を違う男たちに向ける。

 その男たちの向こう側で、次々倒れていく人影が見えた。


 こっちに向かってる?


「葉月、危ない事はだめだよ?」


 花音が声を掛けてくる。

 辛そうな声で掛けてくる。


 でも、周りの人は違うみたいだよ~?


 それに、

 このままだと、


 花音が鮫に食べられちゃうよ~?


 どうせだったら、私が食べられようっと!


 にっこり笑ってから、男たちのところに足を動かした。


「葉月! お願い、やめて!」


 後ろから声が聞こえてきたけど、目の前の男たちが迫ってくる。


 あは。

 あはは。

 どうしよっかな~!


 思考が染まる。

 どんどん染まる。


 心臓は熱くなる。




「ほんと、あなたって邪魔」




 うん?



 声がしたと思ったら、お腹にグチュリって何か入ってきた。


 目の前には地味で変な恰好の女がいた。



「葉月っ!!??」



 花音の声が聞こえてきた。

 お腹に入り込んだ何かが抜かれる。


「あんたら、何やってるのよ。さっさとあの女を連れて行きなさいよ」


 目の前の女が周りの男たちに何か言ってる。

 それを聞いて、男たちが動き出す。


 うんん?


 血が出てる。

 目の前の女を見る。

 何とも思ってない?


 あれ?


 あれれ~?


 “こっち側”?


 この人、“こっち側”?



「あなたもここで死んじゃえ」



 こっちを見て笑っていた。


 あ、この人、“こっち側”。


 あは。


 初めて見た。



 私以外の完全に狂ってる人。



 さっきより深く。

 脳が、体が。

 引き摺り込まれる。


 シネル?

 シネル? シネル? シネル?


『もっとぉ~!!』


 頭であの子の声が響いた。


 シネルシネルシネルシネル?


 欲が染まる。




「あは……あはは……! あはははははははは!!!」




 周辺に私の笑い声が響いていく。


 目の前の女がポカンとしてる。

 動こうとした男たちが固まる。



「はづ――き……?」



 後ろで何かの声が聞こえる。


「葉月!」

「葉月っち!?」

「だめ、だめですわ! 葉月!」


 誰かの声が聞こえてくる。


「あなた……なんで笑ってられるのよ?」


 目の前の女が茫然とこっちを見てきた。


「ふふ! あは! あっははは!!!」


 笑いが止まらない。


 流れてく血を両手に塗れさせて、自分の目の前に持ってくる。

 流れてく血が床に落ちていく。

 悲鳴が周りから聞こえる。


 シネル!


 これで!



 ようやく!!




 死ねる!!!!




 それ以外何もいらない。


 目の前の女の顔を掴んだ。

 血で塗れた手で掴む。


 その時に初めて怯えた表情を見せたけど、知らない。



 だって、あなたは“こっち側”の人間だから!



 あの子の声が、頭の中で私の欲とシンクロする。







「『やっと死ねるよおおおお!!!!! あははははははははは!!!』」






あくまで葉月の中の“死なないと”という欲に染まってしまったという認識でいただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ