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20話 久々の問題行動

 


 今日の天気は快晴だ。雲一つ見当たらない。


 私はんーっと背中を伸ばす。そして眼下に視線を向けた。中等部の時よりは高い校舎だ。


 思わずニッと口を歪めた。


 スリー・ツー・ワン。

 カウントを数え、ゼロになったところで自分の体を空中に投げ出し、屋上から勢いよくダイブした。


 地上からは所々から悲鳴が上がる。校舎の中から私の姿を見ている人達の悲鳴も上がっていた。なっはっは! すまんね! 驚かせちゃって!


 ぐんぐん地上が迫ってくる。はて? 意外と高くなかったな。もうすぐ地面というところで、私の体が今度は上に引っ張られた。空中にいる間に考える。もう少しゴム長くても良かったかもしれない。


 体が上下左右に重力と遠心力によって動いていたが、段々その動きも小さくなり、ある教室の窓の外から逆さ吊りの形でぶらさがった。おろ? 舞が顔を青褪めさせている。なるほど。ここは舞と花音の教室だったらしい。


「葉月っちぃぃぃ!!!? 何してるのぉぉぉ!??」


 ガラっと勢いよく窓を開けて問いかけてくる舞。何って決まってるじゃない?


「舞~。やっほ~」

「やっほ~じゃないんですけどぉぉ!?」

「楽しいよ? 屋上バンジー」

「お、屋上って……」


 そろそろと私の上を見上げる舞。そこには屋上からぶら下がっている長くて太いゴムが私の足に巻き付いている。


「はは葉月っち……? まさか……屋上からきたのかな?」

「そりゃそうだよ、舞。だから逆さまなんだよ?」

「そんな、当たり前でしょ、みたいな顔しないでくれる!?」


 え? 当たり前だよね? あっ花音が教室に入ってきた。こっちに気づいて驚いてる。


「は、葉月!? え? これ、どういう状況!?」

「花音~。これ楽しいんだよ~」

「た、楽しい? え? ええ?!」

「花音……あたしには無理だ……ここまでの馬鹿な事はできないよ……」

「え? ちょっと舞!?」


 ぐったりしているね、舞。花音は花音で状況が分からずオロオロしている。というより、教室の他の生徒もめちゃくちゃざわついてるね。


「葉月……やっと見つけたぞ……」


 ちょっと離れた所から、いっちゃんのドスの効いた低い声が聞こえた。そっちに顔を向けると、黒いオーラを纏ったいっちゃんがこっちにゆっくり歩いてくる。


「おーいっちゃん」

「一応……聞いておこうか。何をした……?」


 お~……これは怒ってるね。かなり怒ってるね。花音も舞もびびってるよ。


「いっちゃん? 怒ってる?」

「何をしたかを聞いてるんだよ……?」

「いっちゃん、どうしたの? いっちゃんなら一回は見てるよね。これは恒例のやつだよ?」

「恒例……ねぇ?」

「そうだよ、いっちゃん。高等部は中等部より広いからね。そして校舎も高くなっているから、これは是非試しておこうと会議がなされてね。そう結論が出たんだよ」

「そんな意味不明な会議がいつどこで行われたのかを知りたいものだなぁ……?」

「ん? 3日前ぐらいの私の頭の中でかな」

「そうかそうか……それでお前はあれか? あたしを撒いて、鍵がかかっているはずの屋上に忍び込み、そのバカげた意味不明なゴムを足に巻き付け、屋上からダイブしたと?」

「バカげた意味不明なゴムじゃないよ、いっちゃん。改良版バンジー君2号だよ! 1号君じゃないんだよ、いっちゃん!」

「そうだろうよ! 1号君とやらはあたしが中等部の時に処分したからなぁ!」

「葉月……最近何か作ってると思ったら、これを作ってたんだね……」


 そうだよ、花音。あれ、ちょっと疲れてる?


「た~か~な~し~さ~ん~?」


 おっ? 今度は寮長が集まってきた人の中から出てきた。さっきのいっちゃんと同じくらいの黒いオーラを纏っている。


「東雲さん? 小鳥遊さん? これは……何の騒ぎかしら?」

「はっはっはっ! 寮長、聞いてくれ! このバカが意味不明な理由を言って、また意味不明な道具を作って屋上からダイブしたらしいぞ! あたしのせいじゃないわ!」

「あら~そうなの? じゃあ、小鳥遊さんに一応聞いておこうかしら? な・ん・で・こんなことしたのかしら~?」

「え? 本能?」

「意味が分からないわよ!? 屋上からダイブするのが何で本能なのかしら!?」

「寮長? 何言ってるの? 人は空を飛んでみたいと思って飛行機が生み出されたんだよ」

「あなたが何言ってるの!? 飛び上がると飛び込むは違うのよ!?」

「それもそだね」

「だから納得するならやるなよ!?」

「楽しいことは積極的にやることが私のモットーだよ、いっちゃん!」

「そのモットーが周りに恐怖を与えているんだよ、馬鹿野郎が!! そんなモットーは捨ててしまえ!」


 え~無理~。っていうか、皆グッタリしてるね。大丈夫?


「そもそもどうやってあなた屋上に入れたの? 中等部の教訓を生かして鍵閉めてたのに……」

「鍵を開ける技術って必須スキルだよね?」

「そんな必須スキルないわよ!? ああ……はぁ……疲れる……小鳥遊さんが高等部に来てからストレスが……」

「それは大変だね、寮長。よく眠れてる? 今度マッサージしてあげようか?」

「そうね……お願いしたいわ――って、原因あなたなんだけどね!?」

「それもそだね」

「納得するならこういう行動はやめなさい!?」

「無理だと思う」

「即答!?」

「しっかりしろ!? 寮長ぉぉ!!」


 フラッとよろける寮長。ガッシリと支えるいっちゃん。前から思ってたけど、なんでいっちゃんと寮長が揃うと劇っぽいやり取りになるんだろうね?


「ねぇ、葉月っち……さすがになんかこの2人が哀れだからやめてあげて?」

「はぁ……葉月? 前にも言ったけど、危ないことはやめてね……?」


 舞と花音がとても哀れんだ目で他の2人を見つめながら、私に言葉をかけてくる。何を言ってるんだろう? この2人が勝手に劇場やってるだけなんだけど。それより2人にお願いがあるんだけどな。


「ねえ、舞、花音」

「「ん?」」

「さすがにずっと逆さ吊りで頭に血がのぼってね。ちょっとぼーっとしてきたんだよ。どうすればいいかな~? というか降ろして?」

「「早く言って!?」」


 ということで、慌てて2人は四苦八苦しながら私を降ろしてくれた。


 そのあと、寮長といっちゃんに改良版バンジー君2号は没収され、屋上のカギは新しいのに取り換えられたとさ。まあ、いいや。今度はもうちょっと長めに3号君を作ろう。


 そんなことを考えていたら、花音に止められた。


「今度そういうの作っていたら、葉月の苦手なオニオンサラダ食べてもらうからね?」


 私は3号君を潔く諦めた。生のたまねぎ嫌いなんだもん。


 いっちゃんと寮長が花音を尊敬の眼差しで見ていたよ。


一応伝えておきますが、屋上からのバンジージャンプ等の危険な行為は絶対に真似しないでください。これはフィクションです。物語として割り切っていただくようお願い申し上げます。

お読み下さりありがとうございます。

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