162話 お帰りなさい
レイラが帰って、いっちゃんと舞も自分達の部屋に戻っていった。
今は花音と2人きり。
お風呂もゆっくり浸かって、ベッドでゴロゴロしてる。
「葉月、髪乾かすからおいで?」
相変わらずお世話が神懸かってますね、花音さんは。やってもらうけど。
トテトテと花音のところに向かって、ブォーって乾かしてもらう。この梳いてくる花音の手が気持ちいいんだよね。
乾かしてもらって、さぁベッドに戻ろうとした時に、花音が意外なことを言い出した。
「あの……葉月?」
「ん~?」
「…………」
え? 何で黙るの?
「花音~な~に?」
「えっと……」
「ん~?」
なんで目を泳がせてるの? なんか頬もちょっと赤いんだけども……お風呂でのぼせた?
首を傾げて花音を見てると、意を決したかのような顔してきたから、思わず身構えちゃったよ。
「今日、その……一緒に寝ない?」
……はい?
思わず目をパチパチしてしまったのは当然ですよね?
えっと一緒に?
まぁ、前にも寝たことはあるけども。
でもハグじゃなくて?
花音がベッドから降りて、何故か近づいてきたけども。
「だめ……かな?」
下から顔を覗き込んで、ウルウルした目でしかも上目遣いで見てきたけども。というか何これ。可愛いんですけども。
あ、いや一緒に寝るってあれかな。怪我してからの、花音の甘えてくるやつかな?
あ、そゆことね。
なるほど。
「別にいいよ~?」
私がそう言うと、ものすごく可愛い笑顔出てきましたよ。
まぁ、たぶん大丈夫でしょ。
花音にハグされると寝てしまうしね。
襲うことは……ないと思う……多分。
というわけで、今日は花音と一緒に寝ることになりましたよ。
寮のベッドはセミダブルだけど2人でギリギリのサイズだ。前、一緒に寝た時も思ったけどさ。ちょい狭いよね。いや、1人だったら十分広いんだけども。
「花音、奥いく~?」
「どっちでもいいよ」
ということで私は奥にいきました。いそいそと詰めて、花音も布団の中に入ってくる。そうしたら、やっぱり体を寄せて腕に抱きついてきた。
うん。病院で恒例になった甘えんぼですね。ま、それなら仕方ないかな。
横向きになるとやっぱり近かった。すぐ目の前に花音の顔。
そうすると、今度は花音が腕をそっと私の腕の下から入れて、背中に回してきた。うん、入院前に恒例になったハグですね。
でも、
やっぱり、温かい。
いい香り。
そういえば、入院中は寝る前のハグなかったからね。
強制的に薬飲んで寝てたから。
落ち着く。
自分も花音の背中に腕をそっと回す。
起きてる時のハグより近い気がする。
花音もギュッと更に近づいて、私の首元に顔を埋めてきた。息が少しくすぐったい。
「葉月……」
「ん~?」
「おかえりなさい……」
「…………ただいま」
段々眠くなってくる。
花音の鼓動と、
香りと、
温もりが、
眠気をどんどん誘ってきて、
瞼を閉じた。
「葉月……寝たの?」
耳元で花音の声が聞こえる。
その声すらも、眠くなってきて、
「……葉月」
頬に花音が手を触れてきたのはわかったけど、それすらも心地よくて、
「もう……だめだよ……」
何を言っているのかも聞き取れない。
意識が落ちる前に、
手じゃない柔らかい感触が体に触れた気がした。
それから先は記憶になくて、
起きたら朝になっていた。
お読み下さり、ありがとうございます。




