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138話 次のイベント内容

 


「おい、葉月。ちょっとこっち見ろ」

「ん? なんだい、いっちゃん?」

「今、口に入れてるものを出せ」


 なんだい、藪から棒に? やだよ。ゴクンと飲み込んであげました。


「…………お前、今飲んだな」

「飲んだよ?」

「正直に言え、何飲んだ?」


 何だい、いっちゃん、藪から棒に? そんなの決まってるじゃないか。


「バッダ」


 舞が寝転んでいた体を起こして「はっ!?」って言ってきた。なんでそんなにビックリするの? バッダはおいしいんだよ? もちろん、ちゃんと調理してから食べてるよ。このバッダに関してはバッチリできますからね。他の料理は壊滅的だけど。


 いっちゃんが額に筋浮かべてる。どうしたの?


「やっぱりお前か!」

「え、え? どうしたのさ、一花? というか本当に食べたの、葉月っち?」

「おいしいもん」

「ええっ!? 嘘でしょ?!」


 え、ホントだけど。それよりいっちゃん。お前かって何が?


「何かあったの、いっちゃん?」

「何かあったのじゃないわ!? 今寮内にバッダが出て困ってるんだよ!! 何した!?」


 いっちゃんが胸倉を掴んで揺らしてくる。何? はて、あれの事かな?


「何か誤解してるようだね、いっちゃん」

「何が誤解なのか言ってみろ……?」

「私はね、定期的に食べれないかと考えました」

「その時点で嫌な予感しかしないが」

「えっと葉月っち? まず定期的に食べる考えやめようか?」

「つまり捕獲しなきゃいけないんです」

「……それでお前は何やった?」

「コツコツコツコツ捕ってきました」

「なんで物語風なの、葉月っち……?」

「でも、入れる場所がないと困ります」

「「……それで?」」


 まったくもう2人はせっかちだな~。


「寮内の敷地に籠を何個か作って、そこに入れてあるよ。その内の1つが壊れたんじゃないかな?」

「さも当然みたいな顔するな!?」

「ちなみに葉月っち……? 何匹捕まえたのかな……?」


 顔を若干青褪めさせている舞が聞いてきた。何匹? え~と毎日20匹をノルマにしてたから~……。


「300は……いるんじゃない?」

「「は?!」」


 いや~大変だったよ~。いっちゃんと花音の目を盗んで、毎日ノルマを課してやり遂げたからね~。おかげで花音にバレない様にバッダを食べれるようになったんだよ。うんうん。


 って、うお!! いっちゃん! いきなりなんで蹴ってくるのさ!?


「何をやらかしてくれてるんだ、お前は!?」

「なにが~?」

「今、寮の周りはバッダだらけってことだね……外行きたくない……」

「舞? バッダはね、おいしいんだよ?」

「やかましいわ!? その籠どこに置いてる!? さっさと処分しないと、寮生がトラウマになる!」

「あちこち~」

「言う気がないな!?」

「だって苦労して捕ったんだもん。いっちゃん、食べ物の恨みは恐ろしいんだよ~?」

「お前が今恨まれてるんだが!?」

「そんなの気にならないけど~?」

「少しは気にしろ!? これじゃ埒が明かない! くそ!! 葉月、お前絶対大人しくしておけよ! あたしが全部探して処分してくるから、そこ動くな! 舞、こいつが何かしたらロープで縛っとけ!!」

「うぇ~!? あたしが葉月っちを!?」


 いっちゃんは颯爽と行ってしまったよ。なんで~? いいおやつになるのにな~。ねえ、舞、「葉月っち、大人しくしといてよ……」って目が据わってるんだけど、大丈夫?


 ん? あれ、花音からだ。なんで電話?


「もっしも~し」

『あ、葉月? ごめんね、今日のご飯なんだけど』


 え、ご飯?


『ごめん。今外に出てて、会長と一緒なんだけどね。まだ帰れそうにないから、食べて帰ることになっちゃって』


 なんですと!? えっ!? じゃあ、私のご飯は?

 あれ、微かに外の音が聞こえる。電車のアナウンスの声みたい。結構遠い場所まで行ったのかな?


『冷蔵庫にね、冷凍したのあるから。それ解凍して食べてくれる?』


 あ、なんだ。あるならいいや。


「わかった~。舞にやってもらう~」

『本当にごめんね。お詫びに明日、オムライス作ってあげるからね』

「大丈夫だよ~。花音も気をつけてね~」

『うん。それじゃあ、また後でね』


 そう言って、花音は電話を切ってしまったよ。本当に忙しそうだね。多分、文化祭の来賓の人たちに事前に挨拶に行ってるんだろうけど。恒例だって確かこの前言ってたし。


「花音、何だって?」

「ご飯冷凍庫にあるから解凍して食べてって~。花音遅くなるって。だから舞やって~?」

「はあ、仕方ないな~……その代わり、大人しくするんだよ、葉月っち。どうする? 今食べる?」

「ん~……もう少し後でいい」

「じゃあ、その時に言ってくれる? そうしたら温めてあげるからさ」

「ん~」


 バッダの件が分かってから、かなりくたびれてるね、舞。元気ない。まあ、舞は虫全般が苦手だもんね。


 あ、そうだ舞。元気になることやろ~!


「舞~いこ~!」

「どこに!? 今さっき大人しくしてって言ったばかりなんだけど!? 1分も経ってないんですけど!?」

「時は金なりだよ、舞!」

「ちょっ……!? どこ行くのさ!? ああ~!! 一花! あたしには無理だよ~!!」


 大丈夫だよ~舞! これからはワクワクタイムだよ~!



 □ □ □



「ってここ……あたしらの部屋なんだけど……?」


 そうだよ。どこ行くと思ってたの~? 向かいのいっちゃんと舞の部屋だよ~。舞がジト目で見てくるよ。


「……葉月っち、ここで何やるつもりなのかな?」

「舞、静かにしないとだめだよ~?」

「何やるつもりかな~葉月っち? 事と次第によっては、一花のこと探しにいかなきゃ行けないからね~?」


 いっちゃん、携帯持たずに行っちゃったもんね。でも大丈夫だよ、舞!


「舞……今からお楽しみ時間なんだよ……」

「……どんなお楽しみ時間なのかな?」

「いっちゃんのあるか分からない秘密を探ろうぜ! って、お楽しみタイムだよ!」

「おっ! それは面白そうだね! ってだめに決まってるでしょ!?」

「舞……バレなきゃいいんだよ……」

「はっ……確かに……」


 うんうん。舞も乗ってきたみたいだね。いっちゃんがどんな服を持ってるかとか下着とか、隠してるものが実はあるんじゃないかなってワクワクするでしょ~?


 舞とにっこり笑いあって、私たちはこの時通じ合いましたよ。


 私がいっちゃんの机を漁り始めると、舞がいっちゃんの下着が入ってる場所を探り始める。あ、前に下着見られたこと気にして仕返ししようとしているね、あの顔は。


 私も何か変な本とか隠してないかな~って机の中のノートとかを見始める。


 あ、これ、いっちゃんの乙女ゲームのノートだ。前に見せてもらったことあるんだよね。懐かし~。


 パラパラと捲っていく。子供の時から使ってるノートだからその時の字もある。色々書き足していってるけど。


 そういえば、見にいかないって言ってたイベント、どんなのなんだろう? 文化祭とかありそうだけどな~。


 パラパラ捲っていく。書いてないかな~。書いてると思うんだけどな~。あ、文化祭の文字だ。これか……な……。


 ――――え?



『文化祭前の乱闘事件』



 乱……闘……?



『日にちー不明』


 ……わからない?


『場所ー不明』


 ……これも?



『攻略対象者と主人公が男数人に絡まれて、攻略対象者が主人公を庇って怪我をする』



 怪我……?


『日にちは記載されていなかったが、文化祭前の恒例、来賓への事前挨拶時だと思われる』

『帰りが遅くなって食事をした後に絡まれる』

『どうやって把握するか考察中』

『監視を使うか? いや、さすがに花音に監視をつけるわけにはいかないし……』


 待って。


 待って、それって。


 さっきの花音の言葉が蘇る。



『ごめん。今外に出てて、会長と一緒なんだけどね。まだ帰れそうにないから、食べて帰ることになっちゃって』




 ……………………今日?




 窓を開けた。




「はあ……なんだ、全部普通だったよ。ねえ、葉月っち、もういいや。もど――」



 風が吹いて、カーテンが揺れる。



「え……葉月っち? え、どこっ!?」



 机の上で、ノートがパラパラと捲られている音が聞こえた。


お読み下さり、ありがとうございます。

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