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137話 行かない理由

 

「ね~いっちゃん」

「なんだ?」

「何で行かないの?」

「まだ言ってるのか……」


 お昼休み、また中庭でお弁当を食べてる。今日はね~小さいハンバーグが入ってるんだけど、これ美味しいんだよ。中にね、小さい人参がコロコロ入ってるの。それがまた美味しいの。


「前にあった悪役令嬢? みたいなイベントなの?」

「…………まあ、そんなものだ」


 ……歯切れが悪いな。なんか変だ。いっちゃんは乙女ゲームの話をするときは意気揚々と話すのに。


 いっちゃんをジッと見る。これ、なんか隠してる?


「あのな、何度も言うが今回は行かない。興味もない。それだけだ」


 ジッと見てたら、いっちゃんが呆れ果てた感じで私を見てくる。むー。せめていっちゃんが好きな事はしてほしいなって思ってるのに~。


「も~らいっ!」


 え? あれ? ハ、ハンバーグが消えた!? 後ろから伸びてきた腕に取られた!?


 バッと振り向くと、舞がハンバーグをモグモグさせているじゃないか!!


「ま……舞……?」

「うんま~! あっはっはっ! 葉月っち! これで目の前で食べ物取られるのがどれだけ嫌かわかったでしょ!」


 ほ~……へ~……ほ~……舞、今私を怒らせましたね。


「ふっふっ! そうだよ、葉月っち! あたしはその顔が見たかったんだよ!! あっはっは!」

「………………」

「はあ……おい抑えろ、葉月。舞もやめろ」

「これに懲りたら、もうあたしから食べ物取らないことだね! 食べ物の恨みは恐ろしいのさ!」

「だから煽るな!」


 ふふ……そうだよ~……舞~、食べ物の恨みは恐ろしいんだよ~? つまり……分かってるってことだよね~?


「舞~?」

「何かな、葉月っち?」

「舞はね~」

「うん?」

「一生恋人できないと思う~」

「あっはっはっ! 葉月っち! もうそれを言われても痛くも痒くもないね! 何故かって? あたしが魅力あふれる人間だと気づいてくれる人は必ずいると、信じてるからさ!」

「何言ってるの~舞?」

「何かな、葉月っち?」


 はあ、といっちゃんが横でいつものように溜め息ついてるけど気にしないよ? それにね、舞。考えが甘いよ? ふふ……ふふふ。


「一生恋人出来ないように、全部の力使って妨害するね~?」

「は? それは……どういう意味かな?」

鴻城(こうじょう)の力舐めすぎだよね~。手始めに監視つけて~、それっぽい人いたら、あることないこと吹き込んで~、それでも諦めない人いたら、その人拉致すればいいよね~?」

「何、怖い事さらっと言ってるのかな!?」

「そうすれば~舞は一生恋人出来ないよね~?」

「……ふ……ふふ。それは脅しだね、葉月っち! 葉月っちが家の力を使うわけないもんね!」

「何言ってるの~舞。こういう時はちゃんと使うよ~? 使えるものは使う主義だよ~?」

「ひいいっ!!! 目がマジだ!! い、一花! ちょっとやめさせて!?」

「お前の自業自得だろうが……知らん」

「いっちゃ~ん。手始めに舞の監視からね~」

「ぎゃああ!!! ストップ!! 葉月っち!! ストップ!! 悪かった! あたしが悪かったから!!」

「そう言ってもな~。もう舞のお腹に入っちゃったもんね~。食べ物の恨みは恐ろしいね!」

「1分前のあたしを殴りたい!! 一花!! マジでやめさせて! 葉月っちのストッパーでしょ!?」

「2人とも、そこまでにしようね」


 あ、花音だ。花音も来てた。「まったくもう」って苦笑してる。花音が自分のお弁当を広げて、箸でハンバーグを出してきた。


「ほら、葉月。これ食べていいから機嫌直して? はい、あーん」


 え、いいの? 食べる。あ~ん。モグモグ。ん~んまし~。


「かかか花音! 助かったよ!」

「舞も、からかいすぎだよ。ちゃんと反省してね」

「もちろん! 葉月っちをもうからかわないよ!」

「お前……前にも同じこと言ってたぞ」

「一花! あたし、過去を振り返らない主義なんで!」

「……じゃあ、また同じこと繰り返すな」

「そん時はそん時だよ! あっはっはっ!」

「舞~その時は本気でいくね~?」

「ごめんなさい! もうしません!」


 もう謝っても遅いもん。でも今回は許してあげる~。


 花音にもう一個ハンバーグもらって、モグモグする。ん~んまし~。あれ? そういや2人とも、今日は何か用事?


「それで、今日はどうした? 何か用事か?」

「あ、うん。あのね葉月」


 うん?


「しばらく文化祭の準備でいつもより遅くなるの。ご飯待てる? 待てなかったら食堂で食べてていいんだけど」

「待つ」

「ふふ、そっか。なるべく早く帰れるようにはするね」


 頭をいい子いい子されるけど、待つよ。もう花音のご飯以外おいしいと思わないもん。なーに、いっちゃん。その目は。


「あのな、花音。こいつをあまり甘やかさなくていいんだからな。最近酷くなってきてる気がするんだが」

「そうだよ、花音。少しは自分で何とかすること覚えさせないと。葉月っち、このままじゃダメ人間になっちゃうよ?」

「何言ってるの、舞? 私ダメ人間だよ?」

「堂々と言うことじゃないよ、葉月っち!?」


 え~? だってそうだもんな~。「あはは、ついね」って花音は笑ってるけど、今ほとんど花音がやってくれてるからね。まあ、それは前からなんだけど。最近はハグも毎日されるし。あれ、やばいんだよ。すぐ落ちるんだよね。


 でもそっか~。遅くなるのか~。帰りは大丈夫なのかな~って聞いたら、生徒会の男性陣が送ってくれることになってるんだって。会長は嬉しいんじゃないかな。花音といられる時間が増えるもんね。



 もうすぐ文化祭か~。


 早いモノでもうすぐ10月。



 舞と花音に会ってからは、何だか余計時間が早く感じるな~。

お読み下さり、ありがとうございます。

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