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133話 プレゼント

 


 パンケーキ屋さんを出て、少しブラブラ歩く。


「花音~? 帰る~?」

「んー……そういえばマグカップ壊れてたよね。買って行こうか?」


 あ~、そういえばそうだったね。この前舞で遊んだ時にいっちゃんに強制的に止められて、テーブルにあったカップ落としちゃったんだよね。


 とうことで、買いにいくことになりました。


 途中、花音が手を握ってきて「葉月が何もしないようにね」って離れないように指まで絡められたけど。でも何でちょっと顔赤いの? 「プニプニしてる」って言ったら怖い笑顔に変わって、「今度言ったら玉ねぎね」って怒られた。でもプニプニして気持ちいいよ?


 デパートに入ってマグカップの売場を探す。途中、ペットショップがあって、小さいワンちゃんと猫ちゃんがいたよ。


「見て~尻尾ふりふりしてるよ~」

「うん、可愛い。葉月は犬派? 猫派?」

「犬~おっきいの~。いつか食べてみたい」

「はぁ……食べちゃだめだよ。可哀そうだよ」


 食べたい発言が聞こえたのか、ガラスの向こうのワンちゃんが途端に尻尾を止めて固まっちゃったよ。大丈夫だよ、食べないよ。


「あら? 葉月ちゃん? それに花音ちゃん?」


 ん、この声?

 花音と一緒に振り向いたら、カイお兄ちゃんの婚約者の皐月お姉ちゃんが、スーツ姿でお付きの人と一緒にいた。そういえばここ、如月(きさらぎ)系列のデパートだ。


「皐月お姉ちゃんだ」

「こんにちは、皐月さん」

「こんにちは。2人で遊んでたの? 一花ちゃんは?」

「いっちゃん、お留守番してるよ~」


 今日は寮にいるって言ってたもん。


 いっちゃんがいないのが珍しいのか、皐月お姉ちゃんは目を丸くしていた。でもすぐクスリと笑って、目元が緩んでいく。


「じゃあ、今日は花音ちゃんとデートなわけだ」


 んん? デート? これ、デートになるの?

 ……あ、デートだね。2人で出掛けるってデートだわ。


「うん、そ~。可愛い花音とデートなの~」

「葉月……!?」

「そっか、ふふふ。魁人(かいと)が聞いたら悔しがるだろうな」

「お兄ちゃんとはや~」

「魁人に言ったらショック受けるだろうなぁ……」


 え~。やだ~。デートなら皐月お姉ちゃんがいるからいいじゃ~ん。それだったら花音との方が断然いいもん。って、あ、可愛いって言ったから、また顔赤くなってる。


「それで、ここに2人はお買い物しにきたの?」

「うん、そ~。マグカップ」

「あら、じゃあウチのも見ていく?」


 ウチの? 皐月お姉ちゃんがクスクス楽しそうに笑っていた。


「葉月ちゃん、私、今お店経営してるのよ。インテリアから宝石まで」


 へ~そっか、そうだよね。皐月お姉ちゃんもそりゃ仕事してるよね。私の中のお姉ちゃんは、この前まで高校生で止まってたからな~。


「どうする~花音?」

「うん……でも……」

「安心して、花音ちゃん。若い人向けのお店だから。それに現役高校生の意見も聞きたいし」


 意見を聞きたいと言われては行くしかないよね。花音もそれならってことで、皐月お姉ちゃんの店がある3階に皆で向かった。


 おお~広い。あっちが宝石コーナーで、こっちがインテリアコーナーだ。インテリアコーナーなんかいっぱい色々ある。しかも、来ている人たちも若い。私たちと同じくらいの高校生や、ちょっと大人めの大学生っぽい人たちがチラホラ来てる。学園に来てるお金持ちっぽい子もいれば、全然普通っぽい子もいた。


 値段もリーズナブルだし、ここなら花音も気兼ねなく買い物できるね。宝石コーナーの値段も手頃だね。ちょっとお小遣い貯めれば、誰でも買える感じ。ネックレスとかブレスレットとか指輪とか、可愛いデザインのもいっぱいあるし。


「お姉ちゃん、ここ人気あるの~?」

「ふふ、どうかしら。一応全国に支店出してるけど」


 人気じゃん。


 皐月お姉ちゃんはちょっと中で人と話してこなきゃいけないからって、裏方の方に行ってしまった。私と花音もマグカップ売場に行ってみる。色んな形やデザインのカップがズラリと並んでいる。


「どうしようか、葉月?」

「んん~。飲みやすいの~。いっぱい入るやつがいい~」

「じゃあ、これとか?」

「ちょっと小さいよ~」


 あれこれと花音と話しながら、結局は無難な大きさのカエルのデザインのマグカップに決まったよ。「このカエルさんと今度から遊んでね」って花音に言われたけど、約束できません!


 会計が済んだ頃に皐月お姉ちゃんが戻ってきて、花音にどうだったか聞いていた。


 花音の意見を聞いたお姉ちゃんが目を丸くしていて、「もうちょっと聞きたいから」って花音を連れてってしまったんだけど。え~いきなり暇になった。


 むー。花音が戻ってくるまで暇だ。


 宝石コーナーの方に行ってみた。ブラブラと見てみる。さすがに皐月お姉ちゃんのお店で何かしでかすわけにいかないから、早く戻ってこないかな~って思っていたら、可愛いネックレスを見つけた。


 小さい桜の形のデザインだ。中の宝石も薄くピンク色になってる。


 これ……今日の花音の服に合うんじゃない?

 これつければ完璧じゃない?


 前にも浴衣に合わせて花飾り買ったけど、あれも完璧だったよね。よっし、これ買おう! つけてるところ見たい! 次からは会長から買ってもらいなよ~って思ってたけど、見つけちゃったから、これも買ってしまおうではないか!!


 というわけで、即購入。カード出したら、店員さんびっくりしてたけど。色がブラックですからね。


 ラッピングも終わって受け取った時に、花音がお姉ちゃんと戻ってきた。お姉ちゃんは大変満足した顔してたよ。また意見聞きたいからって連絡先交換していた。あんまり花音を引っ張り回さないでね?


「花音~喉乾いた~」

「じゃあ、どこかで買ってバス停の近くの公園行こうか。さすがに私も疲れちゃった」


 あ、さっきのお姉ちゃんですね。むー。お姉ちゃん、あんまり花音疲れさせると酷い目に合わせるよ。一応、カイお兄ちゃんの婚約者だから大目に見てるだけだからね~。


 ジュースを買って、近くの公園のベンチに座った。帰りのバスの時間も調べて、それをもう待つだけですね。


 チューと買ってきたジュースを飲むと甘さが口一杯に広がった。もっと甘くてもいいけどな。はちみつ百パーセントは嘘ですね、これ。しかも下に溜まってるよ。


「ねえ、葉月。今日楽しかった?」


 ジュースをちょっと振ってると、隣の花音がそんなことを聞いてきた。ん? 楽しかった? そんなのもちろん。


「うん、楽しかった~。花音は~?」

「……うん。私も楽しかった」


 そう言って嬉しそうに笑う花音は本当に可愛いですね。あ、忘れる前に渡そ~。


 ゴソゴソと自分のリュックからさっき買ったネックレスの箱を取り出すと、花音が首を傾げている。えへへ~。サプライズ~。


「花音~。これあげる~」

「えっ?」


 花音が私の持ってる箱と私を交互に見ている。目がまん丸になってるよ~。呆けている花音の手を取って、渡してあげた。


「あけて~?」

「え、え?」

「はやく~」


 戸惑いながらもラッピングのリボンを解いていく花音。

 喜ぶかな~驚くかな~どうかな~。ちょっとワクワク。


 箱を開けて中を見た花音がポカンとした表情をして、片手を口に当てていた。お、驚いてる~。


「葉月……これ、どうしたの……?」

「さっき買った~、お姉ちゃんのとこで~」

「なんで……」


 なんで?


 何言ってるの~花音。



「花音に絶対似合うと思ったんだもん」



 ニコニコしながら言ってあげると、花音が一瞬目を大きく見開いてから、ちょっと顔を下に俯かせて口元に当ててた手で顔を隠していた。


 あれ、嬉しくないかな? 気に入らなかった?


「花音~?」

「……」

「嬉しくない~?」

「…………」

「気に入らない~?」

「………………」


 あ、あれ~? 反応がな~い。絶対似合うと思うんだけど。



「あ……りがと……嬉しい……」



 え、え? ホントに? なんで声擦れてるの? ちょっと不安になってきたんだけど。


 少し戸惑っていると、ゆっくり顔を上げてくれた。


 あ、大丈夫っぽ……い……。



「ありがとう、葉月」



 うわ……。


 心臓がドクンと跳ねあがった。


 ……何その笑顔……今日一番可愛いんだけど。


 ドクンドクンと心臓が鳴っている。


 すっごく嬉しそうに微笑んで、ネックレスを眺めてる。


「でも……本当にもらっていいの?」


 花音がちょっと不安そうに聞いてきて、ハッとした。


 やば、やばすぎ~……さっきの花音可愛すぎ……あ~もう、可愛いって罪ですね。会長も惚れるわけだよ。


 バレない様に一息ついて、にっこり笑った。


「もちろんだよ~花音。つけてあげる~。貸して~?」

「え?」


 だってつけてるところ見たいから買ったんだもん。


 花音の持ってる箱からネックレスを手に取った。留め金を外して、花音の首の後ろに手を回す。あ、もっと近くで見ないと分かんないや。


 カチャと止めて、手で辿りながら正面から見てみる。うん、やっぱりすごく合ってる。思わず笑みが零れてしまう。


「すっごい似合ってるよ~花音」

「…………」


 ん、あれ? また反応がな――


 キュッと花音が私の服を握ってきた。


 ……花音?


 じっと見てくる。


 少し頬を染めながら、

 瞳を少し潤ませながら、

 熱が籠っている感じで、


 こっちを見てくる。



 目が、


 離せなくなる。



「葉月……」



 ギュッと握る力が強くなった。


 花音の顔が近くにきてる。


 花音……? 何……?


 動けない。


「葉月……私……」




 ピピッピピッピピッ……。




 携帯のアラームが鳴って、思わずハッとした。


 あ……いっちゃんに連絡する時間……セットしてたんだった。


 花音も我に返ったような感じで手を離していた。あ、みるみる赤くなっていく。あ、手で覆ちゃった。あ、体丸めちゃった。えええ……何故にこの場面で?


「えっと、あの……花音? 大丈夫?」

「…………大丈夫です」


 なんで敬語?

 塞ぎこんで全然復活しないから、いっちゃんに連絡するために携帯を取った。


 さっきの、

 何だったんだろ。


 見たことない、あんな目。


 吸い込まれるような感覚。



 何を言おうとしたの……?



 でも隣で少し唸ってる花音を見ると、とても聞ける雰囲気じゃありませんね。


 何故にここで会長を思い出したの? その反応、いつも会長を思い出したときにする反応だよね? いや、いいんだけども。結構あるからね。


 いっちゃんに返事した時に時刻を見たら、バスが来る時間になっていた。


「花音~。もうバス来るよ~。いこ~?」

「………………うん」


 あ、だめだこれ。いっちゃんのプルプルモードと似てる。


 とりあえず、全然復活しない花音を連れて寮に帰った。




 ――――そして何故か夜に玉ねぎ出てきたよ! なんで!?


 理由を聞いたら「八つ当たりだよ」って怖い笑顔で言われて、頬を引っ張られた。


 理由が理不尽! 意味分かりません!

お読み下さり、ありがとうございます。

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[良い点] 葉月可哀想
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