第二話 夢の続き
第二話 話の続き
オネは目覚めた。
電車の中だ。
少し昔の夢を見た。
悲しい悲しい夢だ。
今も、この現実を受け止めきれなかった。
怖かった。
「次は、北演習場前。北演習場前。」
もう、次の駅で降りなくてはならなかった。
もうすぐお昼時だった。
少しばかりの荷物を持って、電車を降りた。
目の前には、平原が広がっていた。
とても市内とは思えない田舎感に溢れていた。
駅から少しばかり歩けば、石でできた大きな門があった。
ガタイのいい二人が立っていた。
「お願いします」
その男に、入隊書を見せた。
男は頷いて中に通してくれた。
僕は母と父との思い出をほとんど覚えていない。
さっきの夢はきっと偶然だ。
小さい頃に死んだから、ほとんど記憶にない。
五分ほど歩くと、木造の平家の建物がみえてきた。
そこには、やや長髪の男が袴姿で立っていた。
「どうも、特別軍隊Uの少将 アリシスだ」
「どうも、僕はオネです。よろしくお願いします。」
「オネだな。いい名だ。さ、中に入りたまえ。」
玄関に入ると、左右には市内の写真がズラリと並んでいた。
「靴を脱ぎたまえ。土足厳禁だから。」
「はい」
そして僕は、玄関の近くにあった更衣室で、軍服に着替えた。黒色に青の刺繍が腕に沿って縫われていて、ボタンは金色だ。少し大きめだったけど、とても気に入った。
「着替えたか?」
「はい。」
「それでは、隊長集会に行こう!」
「隊長集会とは?」
「この軍隊には、十四の隊がある。そこの隊長と一軍と呼ばれる司令隊員が集まって話し合う時があるんだ。」
「へー」
僕と少将さんは長い廊下を歩いて、突き当たりに木の扉があった。
おどろおどろしい扉だ。
「失礼いたします。」
扉を横に開けると、三列の机があり、そこにあぐらをかいている男や女が20人ほどが座っていた。
僕は緊張のあまり、震えていた。
みんなから強い眼差しを受けている。
絶対に目を合わせたら死ぬと思った。
少将はでっかい声で、
「ここに来ましたのは、新人のオネだ。皆、よろしく頼む。」
万来の拍手が巻き起こった。
なんやかんや優しい人たちだなと感じた。
僕は一歩前に出て、堂々と言った。
「オネです。よろしくお願いします。」
また、拍手が起こった。
昨日までのことを忘れてしまいそうな、温かさと優しさを感じていた。
「オネ君、君は今日から第十四番隊に入隊することとなる。エナ。よろしく頼むよ。」
強烈なウインク。
エナという男はそっぽ向いて、
「はい……」
と言った。
少将さんは手を叩いて言った。
「それじゃあ、解散だ。訓練は明日から始める。よろしく頼むよ。」
そして、隊長たちは、部屋から続々と出て行った。
僕はエナさんの方に向かった。
案外イケメンそうだ。
僕はエナさんの隣に座って言った。
「オネです。今日からよろしくお願いします。」
すると、エナは立ち上がって言った。
「こちらこそだ。よろしく頼むよ。部屋を案内するから、荷物持って来ておいで。」
「はい!」
僕は更衣室に置いていた荷物を取って、エナさんについて行った。
部屋は別の棟にあるらしく、僕ら十四番隊は二階にあるそうだ。
秋の木枯らしの舞う中、廊下を歩く。
階段を登ると、そこには扉が何個もあった。
なんだこれ、収容所の檻なしの感じじゃないか。
一番奥に14と書かれた扉があった。
「開けていいよ。」
エナさんに言われると、僕はノックして部屋に入った。
そこには両サイドに二段ベットがあり、奥には少し広い空間があった。
結局、収容所感はなくならなかった。
「オネです。今日からこの隊に入ることとなりました。よろしくお願いします。」
奥の空間には、短髪の白髪の男の子がいた。まあまあエナさんより若そうだ。しっかりしてそうだ。
「どうも。第十四番隊 三軍隊士 クリオです。よろしくね。」
あー、なんてこの仕事場にはいい人しかいないのだ。
喋り方も、声質もイケメンまっしぐら。
女子なら一髪ノックオンありえるくらいの美青年。
絶対この時代まで、ジャニーズあったら、百%入れただろう。
「もう一人いるんだけどね。」
クリオさんが言うと、
「おらーー!!ディオ!!挨拶せんかーーい!!」
はじめて、エナさんが大声で怒鳴る勢いで言った。
怖い。
何、新人に対してめっちゃ優しいけど、半年もしたら鬼教師に化けて、体罰盛り沢山系?
嫌だ嫌だ考えたくもない。
150年前くらいの価値観いらんねん。
「オネさん。ちょっと怖いかもしれんけど、すぐ慣れるよ。日常茶飯事だから。」
ふぅーよかった。
これで、毎日あざだらけの生き地獄生活を脱出できた。安心安心。
すると、左の二段ベッドの上の方から、手が出てきた。
「うわっ!!」
すると、その手を振っていた。
「ごめんなー、あいついつもこんな感じやから気にせんといて。あの子はディオ。四軍隊士や。」
エナさんが丁寧に教えてくれた。
「さあ、ついに十四番隊は四人になったな。」
さあ、僕はついに新たな生活が始まろうとしていた。
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