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118,絶対ハッピーエンド ! 2

いままでよんで下さった方々ありがとうございます。

このはなしも大詰め…もうすぐ完結いたします。

最後まで一緒にいて頂ければ幸いです。


「…対価契約の意味を分かっているのか?」


リリスはジェニーを見下ろした。


ジェニーは少し赤くなって目を伏せて頷いた。

「分かってるわよ。貴方と契約したじゃない…ちゃんと憶えてる」

 

リリスは長い爪の指先でジェニーの顎を持ち上げた。


「覚えている、ではなく今思い出したんだろう?」


そしてジェニーの耳に唇を寄せて囁いた。

「…この間のお前は良く啼いて愛らしかったぞ」


ジェニーは更に赤くなりながら抱き寄せようとリリスの身体を押した。


「ゆ…夢の話でしょう?け、契約の話をさせて」


「いいだろう。言ってみろ」

リリスはあっさりと手を離して引き下がった。


明日はバランタイン邸に安置してあるアベルの身体が埋葬される予定だった。

ジェニーは、リリスを真っ直ぐ見て自分の願いを言った。


「アベルを生き返らせて欲しいの」


 ーーーーーーーーーーーーーー



「………それは出来ない」


リリスは腕を組んだまま言った。


「どうして…?」


リリスは口を開き、何かを言いかけて止めるとため息をついた。


その代わり――大きな艶のある4枚の黒い翼がばさりと広がって、部屋に入る陽の光を遮ってしまう。


「ジェニ―、死んだ者を生き返らせるには相応の報酬-対価が必要だ。

 処女か魂だが…お前はすでにアベルに()()()()()()から選択肢は魂のみ。

 

 貰うのはお前が寿命を終えてからでもいい…何と言っても知らぬ仲ではないからな。

 

が、魂は勿論輪廻の輪には入れず、未来永劫私と共に居る事になるぞ。

それでも願うか?」



わたしは深く頷いた。


「アベルを生き返らせて。わたしの魂でいいならあげる。貴方と一緒にいるわ 未来永劫…ずっと」


腕を組みわたしを見下ろすリリスの眉がピクッと動いた。


「それから皆の記憶からわたしを消して欲しいの。

 …最初から知らなかったように。お願い、リリス」


「なぜ記憶まで消す必要が?」


「自分が生き返れば、アベルは絶対に察するからよ。わたしが貴方と契約したことを。

 アベルは絶対にわたしを責めない…でもきっと自分の事は責め続けるわ。

それを見るのはつらいから」


ぱたぱたと何か―落ちる音がする。


わたしのドレスに水滴が落ちる。


勝手に涙が落ちて…わたしのドレスを次々と濡らした。


リリスは何も言わなかった。


さっきの様に肩を抱いたりする事はなかった。


ただ、わたしの顔を上に向かせると、しばらく涙を唇で吸い取ってから

指の腹で拭ってくれた。




そして夜中にわたしの部屋から出ていった。



わたしはベッドに潜り込んだ。


決めるべき事を決心したから、今夜はやっと眠りにつく事ができそうだった。


アベルが生き返ったのを確認したら、最初の予定通りわたしはモブ人生を送ろう。


結婚は無理でも他に好きなことをやればいい。


時折リリスとお茶をしつつ薬草研究をするのを考えたら

(結構楽しそうじゃない?)

と思えた。


そして寿命が尽きればリリスに魂を捧げて――。


(充分な人生じゃないの)


充分だ。


誰も傷つかない。


良かった。



皆みんなハッピーエンドになるのだ。 


ーーーーーーーーーーーーーー 


リリスは不機嫌だった。


何故か原因ははっきりわからない。


(ー望んだはずではないのか?)


欲しい娘が自ら自分の手の中に堕ちてくるのだ。


未来永劫その魂を閉じ込めこの手で愛でれば良い。


(何故あんなにあっさりと…)


「わたしの魂をあげる」

「貴方と一緒にいる。未来永劫ずっと…」


イライラが頂点に達した時、丁度バランタイン邸に着いた。


リリスは4枚の翼を仕舞って魔力を切った。


そして透き通る白い肌、長い黒髪、赤眼の妖しく美しい男の姿に変わるとバランタイン邸の中庭に入って行った。


バランタイン邸も頻繁に弔問客が訪れる為だろう


キーパーを完全に切ってあった。



リリスはレイモンドを捜した。


バランタイン邸はひっそりとしていた。

真夜中であるという事だけでなく誰もが声を殺しているかの様だ。


中庭に面したセレモニーホールが、どうやらアベルが安置されている場所のようだ。


リリスは窓から中を覗くと、レイモンドだけがいた。


彼は白い棺の前に佇んでいた。


リリスは窓をノックするとレイモンドが振り返り、リリスの姿を確認して呟いた。

「閣下…」


レイモンドはセレモニーホールの扉の鍵を開け、リリスを「お入りください閣下」と招き入れた。


セレモニホールの壁は白く、天井は高く中央の祭壇には白い箱-丁度成人男性が入れそうながおいてある。


レイモンドははっきりと見て分かるくらいやつれていた。


冷血公爵と言われた片鱗も無く、ただ瞳は泣きはらしたように真っ赤だった。

「閣下…来てくださり…ありがとうございます」


リリスがレイモンドの肩をポンと叩くと

「ああ…」

と言ってリリスの肩で泣き始めた。


しばらくリリスはレイモンドの背中をトントンとしていたが

「アベルを見ていいか?」

とレイモンドへ訊いた。


「…はい。閣下」

リリスは白い箱へ近づいた。


様々な白い花々に囲まれてやはりアベルは顔色は悪いが、ただ眠っているように見える。


その身体には、消えそうなくらい薄いオレンジ色の光がベールの様にかかっている。


「…レイモンド」

リリスはアベルの義父に訊いた。



「私をアベルと二人にしてくれるか」


読んでくださり、ありがとうございます。

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