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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幼馴染に告白されたけれど、奴にはカジキマグロが刺さってる

作者: 糸勺 束


「む、昔からずっと好きでした! 沙羅(さら)とつっつつ、付き合って下さい!」


 好きな人に告白された。


 それは僕の人生で最も幸せな出来事。

 明日死んでもおかしくないくらいに今の僕は幸せで。

 明日からピーマンしか食べれない夕飯を過ごしても苦にならないくらいの喜びを僕は感じる。




 ……はずだった。



「えっと……その、返事を聞かせて貰えないかな?」


「あ、ああ。うん……」


 

 僕の幼馴染である瀬近沙羅(せにあさら)はひとつ年下の幼馴染だ。子供の頃はいつもよちよちと僕の後を着いてくるような子だったのだけれど、中学と高校で別れ、疎遠になった一年で、彼女は成長、というか進化を遂げた。


 成長期が来ないと言っていた低身長はスラリと伸び、胸や腰は自らが女性であることを主張している。

 声には華があり、綺麗に伸びた黒髪は光に照らされ光沢を放っている。


 誰が見ても正真正銘の美少女だ。

 そんな彼女にいつしか恋心を抱くようになり、高校を卒業した今日──ついに彼女から告白を受けた。

 内気な彼女だったが、どうやら胸度とともに、度胸までも成長したようだ。


 しかし、彼女の変化はそれだけではない。


 なんと、彼女の胸にはカジキマグロが刺さってるのだ。



 む、胸に!!!!


 カジキマグロが!!!


 刺さってる!!!


「も、もしね。……沙羅の事を受け入れてくれるなら、今、ギュッと抱きしめて欲しいの」


 死んじゃうよ。

 ハグしたら俺にもカジキマグロが刺さって死んじゃうよ。


 彼女の背中から、突き刺さったカジキマグロは見事に胸を貫いて谷間から角が露出している。


「ほんと、どういう原理だよ……」


『へいへーい。兄ちゃん。あつーい抱擁を交わせよぉ〜。死んじまうかもしんねぇけどなぁ』


 カジキマグロが喋る。

 

 カジキマグロが!!!!


 喋る!!!!


 パワーワードの連発に頭の中がこんがらがってくるな。さっさと去ね。


 ちなみに、このカジキマグロは僕にしか見えていない。声だって聞こえていない。

 何回か沙羅に話したことはあるが、信じてもらえなかった。


『そうだぜ〜? 俺様が見えるのはお前だけだ。そして、お前だけが俺に触れる』


 そう。つまるところ、これは嫌がらせなのだ。


『リア充死ね。リア充死ね。リア充死ね』


 ビチビチとはねるカジキマグロ。

 振動で沙羅の胸もどるんどるん揺れるが、本人は気が付いていないようだ。


「……もしかして、沙羅のこと、嫌い?」


「ち、ちがう! 違うよ! ぼ、僕も沙羅が好きだ!」


 ただ、それ以上に死にたくねぇんだよ!!!


「両想い……? やっ、やったーー!!!」


「う、うわぁ、く、来るなぁ!!!」


 カジキマグロの角が迫ってくる。

 喜びのあまり、沙羅がこちらへと駆け寄ってきたのだ。


「ま、まて! まって! 沙羅!」


「なんで!? 両想いなんでしょ!? 沙羅ね、ずっとギュッてして欲しかったの。お願い!」


「いや、死んじゃうから! 僕、死んじゃうからっ!」


「分かるよ。沙羅もね、幸せ過ぎて死んじゃいそう。胸がドキドキしてて、今にも破裂しそう。でも今はね、この幸せを二人で分け合いたいの」


『ほら、さっさと抱けよ。この甲斐性なしがよぉ』


 う、うるせぇ!!!


 おおおお、お前は黙っとけ!!!


「ふ、沙羅……」


「えへへっ、なあに?」


「僕は今、とっても幸せだ。幸せ過ぎて……死んじゃいそうだ」


「うん。沙羅と同じだね」


「今、僕が沙羅とハグをしたら、僕は嬉しくて、嬉しくて、嬉し過ぎて、きっと死んじゃうから……ハグはまた今度にしないかい?」


 頼む。諦めてくれ!

 諦めてくれ! せめてハグだけは諦めてくれ。


「じゃあ、二人で一緒に蕩けて死んじゃお」


「ぐふぁ……」


 ダメだった!!!


 沙羅のやつ、目がハートになってる!


 終わったあぁぁ!!!


「ま、まって、分かった。今、覚悟を決めるから」


 僕は深呼吸をする。

 これだけ僕を好きだと言ってくれる人がいるんだ。

 例えここで命を失う事になっても、僕はその気持ちに応えたい!


 振られるくらいなら、痛いの我慢した方がマシだ!

 いや、多分我慢どころか死ぬけどね。


「ええいままよ!」


 僕は助走をつけて飛び込むようにして、沙羅へと迫り、そのまま強く抱きしめた。


 きつく。きつく。熱烈に。


「えへへっ、ツカマエタ。これでズットイッショだね。ぜったいにニガサナイんだから」




 こうして、僕の一生は終わったのだった。




 僕の幼馴染である瀬近(せにあ)沙羅はひとつ年下の幼馴染だ。子供の頃はいつもよちよちと僕の後を着いてくるような子だったのだけれど、中学と高校で別れ、疎遠になった一年で、彼女は成長、というか進化を遂げた。


 成長期が来ないと言っていた低身長はスラリと伸び、胸や腰は自らが女性であることを主張している。

 声には華があり、綺麗に伸びた黒髪は光に照らされ光沢を放っている。


 誰が見ても正真正銘の美少女だ。


 彼女の背中にはカジキマグロが刺さり、胸には幼馴染が磔にされている。



 そう言えば、彼女の名前の由来はサラセニアだと聞いたことがあったっけ。サラセニアってなんだろう。


この前見た夢を少しアレンジしたものです。

ちなみに、僕の現実の幼馴染なんですけど、最近結婚しました。僕と結婚するんじゃなかったのかよ!


はい。という訳です。


↓に別作品のリンクも貼ってあります。

陰キャが友達作りに四苦八苦しながら成り上がるお話です。(何回かランキング入りしてます)

勘違い系が好きな人はぜひ、数話だけでも目を通して見て下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃインパクトのある話でした! [一言] あとがきで「結婚したのか……俺以外のやつと……」って神谷ボイスで喋るCM思い出しましたわww
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