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俺を嫌う幼馴染が彼氏との惚気話ばかりするので、仕返しに彼女(二次元)との惚気話したら様子がおかしくなった  作者: せせら木
第三章

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47話 久しぶりの花火大会

「え、も、もう来たのシュン!? まだ早いよ!?」


「早くねーよ。あと三十分ほどで花火上がり始めるだろ」


「嘘!? って、ほ、ほんとだ! もうこんな時間!」


「いらっしゃいシュン君。ごめんなさいねー。この子ほんとに準備が遅くて。今から着付けするのよ」


「はは。全然いいですよ。待ちます」


「じゃあ上がって待っててくれる?」


「はい。お邪魔します」


 夏休みに入ってから五日ほどが経った日の夕方。花火大会当日。


 俺はさっそく準備をし、冬香の家へと向かった。


 目的はもちろん、一緒に祭りに行くためだ。


 元々小さい時から一緒に行っている花火大会だが、今年は少しだけ心構えが違う。


 冬香と付き合い、恋人同士になって迎えるそれは、想像以上に行く前からドキドキするものだった。


「……ほんと、遅えよって感じだけどな……」


 通されたリビングで、俺は椅子に座りながら、『あるもの』を見て苦笑する。


 ハイビジョンテレビの傍にある、戸棚の中に置かれた写真立て。


 そこに写る幼い俺と冬香のツーショット。


 俺たちが不器用じゃなかったら、こんな回り道はしなかっただろう。


 つくづく自分に呆れるのだが、それでも胸の内はそこまで暗いものでもなかった。


 ようやく俺たちは一緒になれた。


 その喜びが一番大きかったから。



 冬香の浴衣の着付けが終わり、俺たちは町の海沿い部分へと繰り出した。


 家からバスに乗って移動し、五分ほどだ。


 正直、身軽で動きやすい恰好なら歩いていけない距離でもないのだが、冬香は浴衣姿で、そこまで長いこと歩けない。


 だから、五分ほどだけどバスを使う。


 バス車内には、俺たちと同様、祭りに行くものだとされる人たちがたくさんいた。


 浴衣に、甚兵衛姿の男女も見受けられる。カップルもそれなりにいた。


「? どうしたのシュン? なんかニヤケてない?」


「ん、ああ。……ふっ、俺ももうあいつらと同種かと思うと、なんかニヤケちまった」


「あいつら?」


「カップルだよ、カップル。今までは妬みの対象でしかなくて、正直爆発すればいいのにって常々思ってたけど、もう今は俺たち自身がそれになっちゃったからな。平和に見てられる」


「……///」


「ん、なんか冬香顔赤くない? 意識しちゃった?」


「なっ……! べ、別に意識なんてしてないよ!? そういうシュンだってちょっと顔赤いし!」


「は、はぁっ!? ぜ、全然そんなことねーけど!? ねーんだけど!?」


 言い合ってると、うしろの席に座っていた穏やかそうなおばあさんの笑い声が聞こえてきた。


「若いってのはいいわねぇ~」


 その言葉を受け、俺たちは急激に恥ずかしくなり、同じタイミングで顔を逸らした。


 堂々とバス車内で何をやってるんだよほんと……。


「……でもさ、シュン……」


「……?」


「……こうやってまた二人で花火大会行くの……久しぶりだね……」


「ま、まあ、そうだな……」


 言って、冬香は俺の手の甲に自分の手を重ね合わせてきた。


 恥ずかしそうに、ぎこちない動きで。


「……もう、隠さないって決めたから言うけど……私……すっごく嬉しい……」


「っ……! ……そ、それは……俺も……だけど……」


「……緊張も……してるの……昔と違って……」


「お……俺も……です……」


 そんなやり取りを小さい声でしてると、バスが目的地に到着した。


 一斉にわらわらと降車していく乗客たち。


 俺たちも降りなければ。


「……だから、さ……、シュン、手……つなご……?」


「え……あ、お、おぉう……!」


「そしたら、たぶん緊張してても大丈夫だから」


 赤面する彼女に言われ、俺は手を握り、そこに軽く力を込めた。


 微かに震え、緊張しているのが本当に伝わってくる。


 そして、ゆっくりと冬香の顔を見つめると、はにかむようにに微笑みを向けられた。


「……じゃ、行こう……?」


「う、うん」


 俺たちは一緒に歩き出した。


 祭りはこれからだ。


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