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俺を嫌う幼馴染が彼氏との惚気話ばかりするので、仕返しに彼女(二次元)との惚気話したら様子がおかしくなった  作者: せせら木
第三章

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46話 助言

「やあ。どうした、珍しいな。君から僕のとこに来てくれるって」


「………………」


 夏がやって来る一歩手前ということで、日差しの照りつく暑い屋上。


 そこの陰の部分で、俺と高岸は対面していた。ここだと少しだけ暑さを軽減させることができる。


「……別に。大して深い用はない。ただ、話を聞きたくなったんだよ」


「僕の連れをどこかに追いやってまで、かい?」


「いや、そういうわけじゃ……」


「ははっ。ウソウソ。冗談だよ。そこに関しては大丈夫。あいつらもさっきまでトイレに行きたいって言ってたし、あとで僕が追いかければいいだけの話だからね」


「……なんだよ。じゃあそういうこと言うんじゃねえよ……」


「ふふふ。君はやっぱり優しいな、青山君」


 下がり眉で言って、イケメン、いや、高岸は目元に垂れた前髪をサッとかき上げながら続けた。


「それで、話ってのはなんだい? 言っとくけど、自慢とかなら聞かないよ?」


「……自慢とかじゃない。冬香のことでもない。相生さんのことだ」


「相生さん? 彼女のことを、またなんで今さら?」


「……お前が冬香に近付くのはまだわかる。それで色々と吹聴するのもわかる。けど、相生さんの話からもお前が出てくるのはどう考えても不自然だ」


「ふむ。つまり、青山君としては僕が瀬名川さん以外にも、相生さんとも関係を持っているんじゃないか、そう聞きたいわけだ」


「端的に言えばそうなる。どういうことだよ? 二股かけようとでもしてたのか?」


 語調を少しばかり強くし、問うた。


 すると、奴は吹き出し、腹を抱えて笑い始める。


 俺にはそれがからかわれてるようにしか思えず、つい高岸を睨み付けてしまった。


「何だよその笑いは。当たりってか?」


「違う違う。そうじゃなくて、ちょっと僕に対して警戒心出し過ぎじゃないかなって思ってさ」


「出すに決まってんだろ。お前は……なんか悔しいけど、モテるしイケメンだし、女もとっかえひっかえしてるとかよく聞くし」


「ひっどい偏見だなー、それ。モテるかとか、イケメンだとかは置いといて、女子をとっかえひっかえとか、そんなことするわけないだろ? 案外僕って一途なんだよ?」


「胡散臭い一途発言だな……。つっても、火のない所に煙は立たぬってやつだ。なんかそういうことがあるから、噂もされるんじゃねーのかよ?」


「それはあれだね。嫉妬とか、そういうのだ。僕に告白してくる女の子って、何も恋人がいない子ばっかりじゃないから」


「……は? なんじゃそれ?」


「今の彼氏に不満があって、浮気じみた感じで近付いてくる子もそれなりにいる。で、彼氏さんの方から恨み言を広められたり、言葉は悪いけど、あんまりモテない人から言われもないことを言われたりとか、そういう感じだね」


「……」


「もっと言えば、今の君みたいに根拠のない噂を信じて垂れ流してくれる輩もいる。止められないんだよ。悪い噂って」


「……なるほど……。だったらすまん。申し訳なかった」


「ふふっ。いーよ。君のことは妬ましく思ってるけど、嫌いじゃない。許すよ」


「悪かった」


 頭を軽く下げると、高岸は俺の肩を軽く叩いてくる。「もういいから」と。


 そして、そこに座ろうとも言ってきた。


 高岸の提案通り俺たちは地べたに腰を下ろし、話の続きをする。


「一々話が脱線するね。相生さんのことだったか」


「ああ」


 俺が小さく頷くと、高岸は顎部分を触り、「うーん」と少しばかり間を置いた。


「言えないようなことでもあるのか?」


「いや、そういうわけじゃない。むしろ逆。彼女とは何もないし、俺から話しかけたところから知り合いになったとか、そういうことでもないんだ」


「じゃあ、秋ちゃ……いや、相生さんがお前に話しかけたことが始まりだってのか?」


「うん。そういうこと」


「……なるほど……」


 この、受けなくてもいいのに軽くショックを受けてしまう現象のことをなんというのだろうか。


 秋ちゃんはもう俺の中でそういう対象じゃない。ていうか、そういう対象であってはならない。


 花火大会に浴衣を見せつける、なんてことも言われたが、もう秋ちゃんのことを特別視するのはやめなければ。


「まあ、けどね、面白いのはここからなんだよ青山君」


「?」


「彼女と何もない、高校で初めて出会ったばかりの人。という認識でいた僕なんだけど、どうも不思議と初めて会った気がしなくてね」


「……? どういうことだよ?」


「いや、僕にもわからないんだ。これはただの直感っていうか、思い込みっていうか、あれだ。スピリチュアルなこととか、すぐに信じちゃう人が陥りがちな『前世で会った気がする』とかいう謎の直感。あーゆー感じなんだよ」


 俺を指さし、目をカッと開いて言う高岸。


「なんだそれ……。バカげた話だな」


「ああ、僕もそう思う。我ながらバカげたことを感じる奴だ。てか、そこはちょっとノッて欲しかったよ! なんか僕だけがおかしな奴みたいだから!」


「いや、その通りだろ」


「違うんだって! 今のはノンスピリチュアル思想の人間がスピリチュアルを感じるっていう高等なボケだから!」


「わっけわかんねぇ……」


「ああああ、もう! 追い打ちかけて冷めた目で見るのやめてくれって! 恥ずかしくなるだろ!?」


 と、言われてもだった。


 訳が分からないのは変わりないが、その訳の分からないことで頭を抱えて恥ずかしそうにする高岸を見るのは少しだけ面白かった。


「まあいいや。つまるとこ、お前と相生さんは何もないってことでいいんだな?」


「ああ、そうだよ」


「なら、今度適当な機会に相生さんの方へ聞いてみる。時間取って悪かったな、高岸」


「あ、ちょっと待ってくれ青山君!」


 立ち上がり、去ろうとしたタイミングで高岸は俺を呼び止めてきた。


「? なんだ?」


「君はさ、今年の花火大会とか、行くのか?」


「まあ、一応行くつもりだな。まだ少しだけ先の話だけど」


「それは瀬名川さんと?」


「恐らくな」


「なるほど。だったら、一つだけ四季を交えた助言をしておくよ」


「? 四季を交えた……助言……?」


「ああ」


 頷く高岸だったが、俺にはこいつが何を言っているのか、まるで理解できなかった。


『季節は前だけにしか進めない。けど、たまにはうしろを見るといいよ』


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