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俺を嫌う幼馴染が彼氏との惚気話ばかりするので、仕返しに彼女(二次元)との惚気話したら様子がおかしくなった  作者: せせら木
第三章

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45話 それから

 それからのことだ。


 色々あったわけだけど、俺と冬香は付き合うことになった。


 ここ最近は特に色々あって、すごく苦しかったこともあった。


 けど、最終的に振り返ってみると、俺達にはそういうものが必要だったんだと、強く思った。



「じゃあまた明日な。一緒には帰れるのか?」


『うん。一緒に帰って勉強しなきゃでしょ? 追試会があるんだから』


「……まあ、そうだな。思い出したくなかったけど……」


『何言ってるの。それ終わらせないと進級できないし、夏休みもちゃんと迎えられないよ?』


「わかってますよ……。はぁ……」


『元気出すの。これ終わったら夏休みで……花火大会とかもすぐあるんだから』


「お! ってことは冬香、もしかして浴衣!?」


『うん。着る予定。嬉しかろー?』


「おう! 嬉しい! 一気に楽しみなってきた! 勉強も頑張れそう!」


『でしょー? じゃあ明日はちゃんと勉強なんだから』


「はい!」


『終わったら、その……ご、ご褒美あげるね』


「――! わかりました! ありがとうございます! さらにやる気が湧いてきました!」


『……うん。じゃあまた明日ね』


「了解! おやすみ冬香」


『おやすみ』


 LIME電話を切って、スマホを机の上に置こうとした時だ。


 再びスマホがバイブした。


 冬香が何か俺に言い忘れでもしたのだろうか、と思ったのだが、スマホの画面を確認したところで、かけてきたのが全くの別人であることに気付いた。


「……秋ちゃん……」


 LIME電話をかけてきたのは秋ちゃんだった。


 ここ最近、LIMEでのやり取りは交わしてなかったから、久しぶりということになるのだが、気まずさは拭えるはずもない。


 話をするのは二人で出掛けて以来だ。


「……もしもし、秋ちゃん……?」


『……ハル君、こんばんは』


「う、うん。こんばんは」


『いきなりでごめん。夜も遅いし……』


「いや、時間のことなら大丈夫。まだ全然寝ようとか思ってなかったし」


『なら、よかった』


「うん」


「………………」『………………』


 大丈夫、とはいったものの、それは時間に限った話だ。


 流れる沈黙と決断してしまったことへの申し訳なさで、俺はさっそく押しつぶされそうになってしまっていた。


 ……が、


『ハル君』


 その沈黙を秋ちゃんが破ってくれた。


『……えと……その、さ……』


「……うん」


『すっごい単刀直入に聞くんだけど…………いいかな……?』


「う、うん」


 単刀直入に、か。


 生唾を飲み込む。


 気付けば手のひらは汗で濡れていた。


『ハル君、瀬名川さんにあれから告白とか、したの?』


「っ……」


 確かに単刀直入だ。


 いきなりのことで、思わず息を呑んでしまう。


 どう答えるのが正解なんだ。


「……えーと…………」


『その反応は、したってこと?』


「……ま、まあ……」


 と、正直に言うほかなかった。


 嘘をついても仕方ない。それは今回の一件で嫌というほど思い知らされたことだ。


『……そっか……そうなんだ……』


「………………」


『……じゃあもう付き合ってるんだね』


「…………そういうことになる……」


 一応、暗い雰囲気を紛らわせるための努力として、「前まで嫌われてるとか、散々言ってたのにな」なんてことを笑い交じりで付け加えるように言ってみるものの、それはあまり効果がなかった。


 というより、むしろ地雷的発言なのでは、と思わせてくれるほどの沈黙がまた訪れてしまう。


 テンパりすぎだ。それにしても、なんて言っていいかわからない。


『……でも、よかった。思った通りで』


「……え?」


 俺の疑問符に対し、秋ちゃんはクスッと笑うだけだ。


『お幸せにね。おめでと。アタシからはそれだけ』


「……秋ちゃん……」


 一瞬、口から「ごめん」という言葉が出かかった。


 けど、それは言わずに踏みとどまる。


 何がごめんだ。どれだけ偉そうなんだよ。


『でもさ、ハル君』


「……?」


『もう少しで夏休みがあって、花火大会があるじゃん?』


「うん」


『そこでアタシはとびっきりの浴衣姿で行くから、それをハル君に見せつけるね』


「……なっ……!?」


『それじゃね。おやすみー』


 そこで電話は切られた。


 想定してなかったことを言われ、俺は少しだけの間そこでボーっとするのだった。



 それからの時の流れは早い。


 憂鬱だった追試会だが、冬香に毎日付きっきりで手伝ってもらい、何とかクリア。


 七月に入り、あとはもう夏休みを迎えるだけというムードがクラス中、いや、学校中から漂っていた。


 その間のことだけど、もちろん冬香とはそれまでの溝を埋めるかのように、色々な話をした。


 といってもまあ、新しくハマったギャルゲーのジャンルだったり、可愛いヒロインの話だったり、不人気ヒロインの可能性だったりと、オタクチックな話題が大半ではあった。


 それでも、晴れて恋人同士になったわけだから、好きということを遠慮なく俺は幾度となく伝えたし、冬香もそれに応えるように俺のことを好きだと言ってくれた。


 そのたびに赤面する冬香が可愛くて仕方ない。今思い出すだけでも、軽く悶えてしまう。


 きっと、俺たちはこれからもこんな感じなんだろう。でも、それでよかった。



 そんな風に過ぎ去る時の中で、やはり少し触れておかなければならない奴がいる。


 高岸夏太郎だ。


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