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36話 夏の日のこと

 誰にでも忘れたい記憶というものはあると思う。


 辛いこと、悲しいこと、苦しいこと。


 それらすべては、その時に忘れたいと願ったところで消えてくれはしない。


 ゆっくり、ゆっくりと時間を経ることで部分的に消えていき、自分の中で『どうでもよくなったもの』になった途端、わずかな痕跡のみを残して消滅する。


 そして、幾年後かにそれを思い出すんだろう。あの頃はああいうことがあった、と。


 ただ、僕の『忘れたい記憶』は少々複雑だ。


 嫌なところが全面的な部分を占めているのは当然だけれど、泥水の中で光り輝く宝石のように、消え去って欲しくないいい思い出も付属している。


 だから、一概に忘れたい、なんてことを軽々しくは思えない。


「……ふふっ」


 ――青山春也。


 夜闇の中、彼の去っていく後ろ姿を眺めながら思う。


 優しい、なんて言葉は、本来自分自身にかけるべき言葉だったのかもしれない。


 ――と。



 思い返すのは、今から七年ほど前の夏のことだ。


 当時、僕は九歳。


 ちょうど夏休みを利用し、母方の祖父母の家がある町へ一人で遊びに行った。


 ……いや、遊びに行った、というのは間違いだ。連れて行かれた、というのが正しい。


 けれど、それは仕方なかった。


 母は父と離婚しているため、僕との二人暮らし。


 当然、ほぼ毎日働きに出ていて、家に帰ってくるのもいつも遅い。


 不満は間違いなくあった。


 学校で周りの奴らが休日に家族でどこかに行った、などと楽しそうに話しているのを耳にすれば、なぜ自分は、なんてことをしょっちゅう考えていた。


 だけど、その抱えていた不満を母にぶつけたところで、何も解決しない。


 母は一生懸命だったし、別に僕を嫌っていたというわけではない。


 仕方なかったんだ。


 それで、夏休み。


 母の仕事がさらに忙しくなったことを機に、僕は一人で祖父母の家に行った。



 祖父母の家での生活だが、二人はとても優しく、毎日朝、昼、晩と美味しい食事も出してくれ、また、僕の話を何でも聞いてくれたのを覚えている。


 くだらないことから、面白いことまで、何でも。


 基本的には不自由しない生活だ。


 なのに、僕はなぜか満たされた気になれていなかった。


 その時は考えた。


 よくわからないが、自分が欲張りになっているんじゃないかとか、とにかく色々と。


 けど、結局その原因不明の渇きは確かにならないまま、日々を過ごしていった。


 楽しく、不自由も何もないのに、重く、長く感じるような日を、一日、一日、と。



 そんなある日だ。


 楽しいはずなのに、何かが足りない現状を変えるため、僕は日中のうちから、祖父母に遠くへは行かないことを告げ、外に一人で遊びに行くことにした。


 自分がいつも過ごす街とは違い、少し歩くと木々が見える。


 続く住宅群がこの地のほとんどを占めているのか、中心街に出ても、それほど派手な建物や高いビルなどはなく、スーパーやコンビニ、その他もろもろの生活用品店が多めといったところだった。


 そうして、街並みをただ眺めながら歩き、町の外れに出て、ちょうど子どもたちが普段遊んでいるような公園付近を歩いている時だ。


 突然降り出した雨に襲われ、僕はどこかで雨宿りをすることを余儀なくされた。


 見渡してみたところ、公園内の大きな土管のような遊具、そこで雨宿りができそうだったので、すぐに走った。


 走ったとはいえ、まあびしょ濡れだ。


 いきなりの不運にため息をついていると――


「だ……だれ……?」


 そこには一人の女の子がいた。


更新遅れてほんっとうに申し訳ないです……。ここ二、三日ほど、卒論研究発表というウ〇チみたいなイベントがあり、資料作成のためにあまり時間を取れませんでした……。

とはいえ、そんなウ〇チイベントも解消させることができたので、またガリガリボリボリ更新させていきたいと思います!

「過去回想はつまらん! やめろ!」みたいな意見もよく聞きはしますが、すみませぬ(汗)

どうしてもここを書かないといけないので、どうかお付き合い願いたいです。次の回も一応回想で、その次から春也君視点に戻っていきます! 長くなりましたが、どうぞよろしくです!

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