26話 秋ちゃん
投稿しない詐欺申し訳ないです……。やっぱり一日以上空けて何も投げないのは体に毒でした。
とはいっても、明日の投稿もまた保証はできないです。もしも投稿してたら、「あ、上がってんじゃん」くらいに思っていただけると助かります!
「でも、ハル君なんでこんな夜遅くに外出歩いてたの?」
「え……」
「そ、そりゃね、私の家の近くまで来てくれてるのは…………わざわざ会いに来てくれたり……? とか思っちゃうけど……そんなことは、さ、さすがにないよね?」
テーブルを挟み、対面するようにしてお茶をちびちび飲んでいる相生さん。
伏目がちに言うその姿は何ともまあ可愛いものだった。思わず笑みがこぼれてしまう。
「な、なに? なんで笑うの?」
「いや、ごめんごめん。そうやって恥ずかしそうにするとこ、なんだかんだ昔と変わんないんだなって思って」
「っ!」
俺に言われ、顔を赤くさせた後、彼女はちまちまと縮こまるようにして顔をうつむかせた。
「……だ、だって……しょーがないじゃん……。そう簡単に変われるわけないし……」
「見た目は結構変わったと思うけどなぁ。最初全然気付かなかった」
「そーだね。全然気付いてくんなかった。せっかくハル君にびっくりしてもらおうと思ってファッションとかの勉強したのに……」
「……あ、そ、そういう……」
「そうだよ! 中学の時からオシャレ頑張ってたの、ハル君のために! 高校は山口の方に行こうって考えてたし、ハル君の行くとこって決めてたし!」
「えぇっ!?」
ヤケクソになって胸を張りながら言う相生さん。
俺はそれを聞いて驚くのもあったのだが、同時に急激な恥ずかしさみたいなものを感じて顔が熱くなっていくのを感じていた。
彼女はそんな俺を前にして、続ける。
「なのに、やっと会えたと思ったら一年間声かけてくれないんだもん……。もう、私限界だった。そういうプレイなの? って思っちゃってたんだから」
「ぷ、プレイですか……」
「え、やっぱりそうだったの……!? ほんとは気付いて――」
「ち、違う違う! 気付かなかったのはほんと! プレイとかじゃないから!」
「ほんと?」
「ほんとほんと!」
「……むぐぅ。でも、そうやって力強く気付かなかったって言われるのも傷付く……」
「えぇぇ!?」
「プレイならプレイだったって言ってくれていいんだよ? ……わ、私……それはそれでいいなって思うし……」
「いや、なんの暴露!?」
「……ハル君の趣味なら……放置プレイだって私は……」
「秋ちゃん!?」
「……実際ね、気付いてもらえない間……その……放置されてるんだって思いながら一人で――」
「待て待て待てェ! だからなんの暴露!? ちょっと落ち着いて秋ちゃん! 違うから! 断固としてそんなことしないから俺! 健全ですから!」
ちょっと会わないうちに新たな扉を開いてしまっていた相生さん。
放置プレイいけるって、この子なかなか高レベルな変態だろ……。
驚きすぎて無意識に彼女の呼び方も昔のものに戻してしまっていた俺だった。
「じゃあ、ハル君はふつーのが好き?」
「っ! ……ま、まあ……」
そして繰り出されるどうにも答えづらい質問。
俺はキョどりまくりながら、秋ちゃんとは別方向を向きつつ返した。
そんな俺の仕草が面白かったのか、クスクス笑う秋ちゃん。
本当は割とアブノーマルなのもいけるとか、絶対に言えない雰囲気だった。
ちくしょう……なんだこれマジで……。
「でも、呼び方やっと戻してくれたね。秋ちゃんって」
「……ま、まあ、元々こういう呼び方だったし、いつ戻そっかなーとはずっと思ってたし……」
「あははっ。もー、遅いよーハル君」
「……すみません」
「ふふっ。うむ。素直に謝ってくれたから特別に許してあげよう。次はこういうことしちゃダメだよ?」
「……はい」
あくまで素直なスタイルを貫く俺。
対して秋ちゃんは引き続きクスクス笑ってた。
小学生だった時、ここまで屈託なく笑うような子じゃなかったのは覚えてる。
もちろん、まったく笑わなかったというわけではなかったのだが、遠慮がちに笑うような、そんな子だった。
それがこうして今みたいに笑えるようになったのは、俺の知らない期間にいい人たちと巡り会えていたという証拠じゃないだろうか。
小学校六年、中学の三年間を通して、彼女は彼女なりに俺とは違った青春を送っていた。
外見だって可愛いし、いい子だし、それなりに告白もされてきたはずだ。
もしかすると、彼氏だっていたことがあるのかもしれない。
彼氏だって――
「? ハル君、どうかした?」
「ん、いや、何でもないよ」
「そう? なんか顔色悪いけど……」
「大丈夫。何でもない」
――冬香。
ついついあいつのことを連想してしまい、我に返ってしまった。
今、あいつはどうしてるんだろう。
LIMEでナツタロウとでもやり取りをしているんだろうか。
――ダメだ。考え出すとキリがない。やめようもう。
「ねえ、ハル君」
「?」
「ハル君さ、今日ほんとは体調不良で休んだんじゃないんでしょ?」
「……え?」
「だって、そうだよ。体調不良で休んでるのに、お母さんとかが夜に外出るの許してくれるはずないもん」
「………………」
「……何か、あった?」
心配そうに小首を傾げ、問うてきてくれる秋ちゃん。
表面上では隠そう、隠そうと思っていても、足が向いてる時点でそれはもう隠しきれないものになっていた。
俺は、ずっと秋ちゃんに話を聞いてもらいたかったんだ。
そして、何もかも忘れさせて欲しい。
そう願っていたのだ。
優しく聞いてくれる秋ちゃんの表情を見て、俺は知らず知らずのうちに涙をこぼしてしまっていた。




