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第二十三話「女の勘」

 建物2階の部屋をリーリアと僕に割り当てると言う宣言に朱里が反対し、家主としてそれを押し通そうとするリーリアに使徒権限で女2人に割り当てる事を決定すると言う、朝食と合わせるには重い話題を乗り越え、僕達は家を出た。ちなみに僕の寝室は暫定的に屋上の小屋とした。ベッドないけど。


「おはようございます、ヴィーさん」

「おはよう、アラタ、シュリちゃん」

「おはようございます」


 ヴィオレが泊まる宿の一室。一先ずそこで話をしようと、朱里と共に朝から訪れた。要件はもちろん、神都への潜入に関してだ。


「ヴィーさんの捕虜奪還に全面協力しようと思う。朱里もそれで構わない?」

「へ? あ、はい。勿論です」

「それはありがたいけど……」


 遠慮がちなヴィオレだが、断るつもりはないようだ。まぁ、単独乗り込むくらい大事な人を救うのに使えるものは使えるべきだとわかっているのだろう。足を引っ張りそうな相手なら別だが。


「その代わり、そちらにも手伝って欲しい事がある」

「そう言う事ね。わかった。救出に支障がない範囲なら出来る限り手を貸すわ」

「……女神の入れ知恵ですね」


 朱里の反論、と言うか追及をかわす為に先に話さなかったのだが、どうやら彼女はそれに気づいたらしい。まぁ、そこを追及されるのも想定内だ。


「魔玉、と言ってわかる?」

「やっぱりそうでしたか」

「やっぱりそうだったのね」


 似たような反応する2人。もしかしてヴィオレ、と言うか魔界側も勝敗条件を知っているのだろうか。いや、知らない訳がないか。あっちの使徒も居るだろうし。


「魔界の女神様から、長く伝えられているのよ。魔玉を守り、聖玉を奪え、って」

「知っていましたか。陳腐な言葉になりますが、捕虜か魔玉、どちらから選んでください」

「魔玉は人界軍に奪われたわ」


 僕はそれを知っていたが、朱里は知らなかった。だから捕虜と交換で魔玉を要求するとでも思っていたのだろうか、彼女はマズイと言う表情を浮かべている。


「知ってます」

「だったら、何故?」

「捕虜と一緒に奪還するので、協力をお願いします」


 目的は違えど途中まで同道しましょう。それが僕の提案だ。実は最悪、囮になるかなと言う思いも無くはないが、朱里に怒られそうなので本当に最後の最後、最悪の場合に使う手、くらいのものだが。


「外部協力者もそれなりに準備出来ると思うから、そっちと合流して作戦を立てたいんだけど、良い?」

「……それは構わないけど」

「私も賛成ですが、先輩。後で覚えておいてください」


 おー怖い。朱里に睨まれながら、全員で宿を出て新居に向かう。集まるのはもちろん、食堂だ。


「と、言う訳でリーリア。神託はあった?」

「ありました。いえ、あった。女神の宿願を果たすため、って。昨日の神都への潜入の件だよね?」

「そう。潜入して捕虜の魔族と戦利品の宝玉を手に入れて、女神リア様に捧げる」

「生贄と宝物。捧げものかぁ。それが宿願である、と?」

「そうとも言えるしそうでないともいえる」


 煙に巻くような言葉。いや、まさに煙に巻くつもりで言っているのだが。

 情報は正確に共有しておきたいが、詮索はあまりされたくない。そういう意味では女神の意志って言い訳、便利と言うか万能だな。


「決行日は任せるけど、最速でお願いする。神都に滞在する全ての信徒に神託が届いているはずだから、協力を要請しておいて」

「わかりました!」


 そう言って飛び出していくリーリアを見送り、今度は朱里の部屋へ移動。実行までヴィオレと相部屋にして貰う事を決めると彼女を部屋に残して僕の部屋、と言うか小屋に移動。尋問の始まりだ。


「何故また相談もなく決めたんですか? 先輩は忘れっぽいのですか。それとも鳥頭なのですか」

「それ意味一緒だし」

「……あれ? 何か誤魔化そうとしてます?」


 秒でバレた。ナニコノ後輩、普通に怖いんだけど。


「バレたくない何かがあるんですね?」

「あるね」

「素直に話しますか? それとも私の機嫌を損ねてから話しますか?」

「話すのは決定事項なんだ?」

「今回は事が事ですし、私も手伝いたいと思っていたのでこれを引き合いには出しませんけど」


 そう言って朱里は、今朝気合を入れてギブソンタックにした髪を揺らす。それはありがたいが、何故だろう。物凄く恐ろしい。


「実は魔玉を手に入れたらご褒美が貰える」

「内容を聞いても?」

「黙秘で」

「髪触り放題とかそんな感じですか? そうなんですね? あれ、違う?」


 だから察しが良すぎて怖いですって。いやまぁ、言いたくはないけど先に伝えておくメリットもあるので最悪、話してしまってもいいかなと思っていたんだけど。


「どうせ後でも怒られるだろうから、まとめて怒られた方がいいかなーって」

「怒られる事をする自覚はあるんですね。確信犯ですね。誤用ですけど」


 考える。

 伝えれば世界を見捨てる共犯者になるだろう。それは世界には同郷と、ここで仲良くなった人たちを裏切り、見捨てる行為だ。この世界がゲーム終了後どうなるかを話さなければ平気かなとも思っていたのだが、朱里の察しが良すぎて今はちょっと自信が無い。


「全部終わってから話す、じゃだめ?」

「……先輩がどうしてもと言うのであれば、条件付きで」

「じゃあ、それで」


 即決で返答。そんなもの、背負わなくていいならその方が良い。僕の自己満足だが、これでも男の子なので仕方のない事だ。


「魔玉の奪還が難しいと私が判断したら今回は諦めてください。その代わり、奪還の協力を魔王軍に取り付けて貰うよう、ヴィーさんに頼んであります」


 一体いつの間に。どうやら先手をうち、保険をかけていたのは僕だけではなかったらしい。元々無理なら諦めるつもりだったのだが、それは言わないでおく。もちろん、捕虜奪還の方も。


「わかった。約束する」

「絶対ですよ? 怪しい女神なんかより、ちゃんと自分の安全を優先してくださいね?」

「はいはい」

「はいは一回、です」


 その後、戻って来たリーリアから潜入の日時とその手段、内部協力者との接触方法を聞くと、各々が必要な準備をする為に解散。数日後の実行まで思い思いに過ごす事となった。

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