50、岩山のてっぺん
本当にいた!!!
ダンクがMK17を、たすき掛けから肩に移し、腰からハンドガンを取り両手で握りしめる。
こっちから岩棚が見えないと言うことは、岩棚の方からもこちらは見えない。
気付かれてないのは強みだ。
深呼吸して、一気に上へ駆け上った。
突然現れたダンクの姿に、寝そべっていた男が驚き腰の銃へ手を伸ばす。
が、すでにダンクは銃を向けている。
男の手が止まり手を上げた。
「撃たないでくれ」相手は真顔で懇願する。
「黙れ、喋るな。通信を切れ。」
男がヘッドホンを外し、ダンクの方へ放る。
ダンクの視線が、ついヘッドホンに向いた。
パンパンパンパン!
「し……まった!!」
胸に衝撃がいくつも走り、思わずひるんだ。
ダンクも反射的に男を撃つ。
が、ハッと気がついた。
防弾スーツの性能がいい!
サトミが言った、「撃たせとけ」ってこう言う意味か!!
男は弾が当たらなかったのか撃ち続けるので、両腕で顔を覆う。
頂上は狭いので、下がると落ちる。
何よりも、防弾スーツ着てると冷静になれる事に気がついた。
やがて相手の弾切れを耳にして、すかさず銃を向ける。
が、男は撃ちながらすでに立ち上がり、ダンクにライフルを向けていた。
ダンクが反射的にその銃口を横に蹴る。
タタタタタンッ!
アサルトライフルが空に向けて連射するのを横目に、すかさずダンクが足に向けて撃った。男は防弾チョッキをつけている。撃つなら頭か足だ。
パンパン!
「ぐあっ!」
男は足を押さえ、よろよろと2歩下がる。
思わずストックを地面に立てて身体を支え、苦悶の表情で何を思ったかバレルを握ってその銃を振り上げた。
「くそっ!この野郎!」
「まじか!」
ドカッ!
「ぐっ!この……ぉ!銃は殴るもんじゃねえ!」
肩口に銃床を受けながら歯を食いしばり、ダンクもとっさになぜかMk17を左へ振り回す。
男がサッと身をかがめてそれを避け、ライフルを構え直そうとした瞬間、ダンクが逆に左から渾身の力でMK17を横に振った。
「隙アリいいっ!!」
「ぐあっ!」
見事に男の脇腹にヒットして男は足下が浮き上がり、バランスを崩して、頂上からぐらりと森へ身体を傾がせる。
「あ、あ、この……うわぁ!」
男の悲鳴に反応して、とっさになぜか、ダンクが男のライフルの銃口近くを握った。
男と視線が合い、無言で見つめ合った瞬間、男が銃の引き金に手を伸ばす。
「ちょっ!」まずいっ!!
とっさにダンクの片手が腰の銃を掴み、銃口を男の額に向けた。
「やめ……!!」
「ごめん」
パンパンパン!
ダンクが目を閉じ、男に向けて引き金を引いた。
銃がフッと軽くなり、男の身体が山から落ちて行く。
「あ、あ、あ、あ、あ、やっち……まった…………」
ダンクがふらりと尻餅付いた。
手には男の銃がある。
「何だこれSSRかよ、ちぇっ、いいスコープ付けてやがるな。
よしっ!こいつは俺が貰った!」
タン!
キン!
「なに?!」
タンタンタン!
「うわ!」
遠くから銃声が響き、後ろから弾が来た。
銃に当たって弾かれ、慌てて身を伏せ山の反対側に少し降りて身を隠す。
そうっと顔を出すと、岩棚から男が一人ライフルを構えているのが見えた。
「クソッタレ、何でもサトミの読み通りかよ!あいつ、なんか変なビョーキじゃねえの?!」
ダンクが自分の銃を構えると、男が見えなくなる。
ダンクは急いでサトミに言われた方角に降りる場所を探し、慎重に降りてポジション決めると上の岩にMK20置いてMK17を構える。
どんなにいい銃より自分の銃が使いやすい。
クセもわかっている。
今日は風も強くない、弾が流されることも無いだろう。
サトミはまだ来ていない。
「すっげえ見晴らしいい。と、それより……マジで女いたらどうしよう。
俺、あいつ怖くなっちゃう……」
荒野は広大に広がってどこ探していいのか見当が付かない。
視線でデリー側の道をずっとたどる。
小さく、小さく、道の横の一本の木。
そこに馬を繋ぎ、女が背を向けて……いた!
「マジかよ!マジかよ!マジかよ!!
はぁ…………マジかよ…………
くそっ、あいつなんか言ったっけ?見つけたらどうしろって言ったっけ?
いや、なんも言わなかったよな、つまり、俺はどうすればいい?
撃つのか?女を?あっ!つっ……しまった、こっちじゃ手元が陰になって見えねえ。」
女は、銃声が聞こえなかったのか、落ち着いて座りデリーの方角を見ている。
これだけ撃ち合ったんだ。いぶかしんでも不思議じゃ無いのに……
まさか、耳が遠い?
バレルの爆発で、耳がやられたかな?
女の存在は確認できたが、遠すぎて地雷が見えない。
女が立ち上がってこちら側を向いた。
MK17を上に置いて、ダンクは男が持っていたMK20を構えてスコープを覗く。
光学スコープは驚くほど鮮明に女の表情までよく見える。
だが、こちらからは木の陰で地雷は確認できない。
女も、何か持っているようにも見えない。
「どうするよ、サトミ。
こっからじゃ地雷は確認できねえよ。
それに他の奴らいったいどこにいるんだ?森の中か?
なんかしっくりこねえなあ……
いい銃なんだろうけど……いきなりこんな銃持っても、なんか信用できねえ。
くそ、やっぱ自分の銃の方が信頼できる。」
自分の銃を握り、周囲に目を向けながら女に目を留める。
女は、またこちらに背を向けて石の上に座った。
どうする?どうする?
女の姿を見ながら、撃つべきか、でも地雷と関係なかったらただの殺人でしか無い……不安がごちゃ混ぜになる。
サトミの決断力の早さと対照的な自分に、少しガッカリする。
サトミなら、確認したと同時に撃つだろう。
「でもよう、あいつはちょっといかれてる。
こういう時、不安になるのが、迷うのが普通なんだぜ?サトミよ。」
ダンクがため息をつく。
そうしていると、右から土煙が一つ見えた。
ダンクは射撃手なので、格闘は苦手。
でも、装備が良かった!
防弾スーツサンクス!




