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34、意識と気配

食事食べたあと、局周りのリッター除く皆で話し合った。

とにかく1日2便は死守したいと。

これが総意だ。


この事件が肩付くまで、単独は危険なので双方2人組みで出ることにした。

ロンドは4人しかいないので、1日おきデリー行きと負担がかなり増える。

局長に許可を得て、一般局員をエクスプレスの個別配送の加勢に回して貰う。

合意書を複写紙で簡単に書いて、一枚ジェイクに渡し、一枚局長に提出した。


「ヨシ!決まった!

明日からポストアタッカーは、早馬専門だ!」


「ダンク達は二人でも襲われた。気を抜かず、油断せずよろしく頼む。」


ガイドとジェイクが握手する。

ジェイクはその後、荷物積んでデリーへと帰っていった。


「じゃあ、俺とリッター、ダンクとサトミで組んでオッケー?」


「いいぜ、な、サトミ。」


「うん、俺は構わない。」


「じゃ、明日から1日おきだ、体調万全によろしく頼む。」


「おー!」


ダンクが元気に拳を上げる。

どうしていいのかボーッと見てたら、右手つかまれて一緒に手を上げさせられた。




話し合いのあと、ガイドが今日の事件の報告をダンクから受ける。

ガイドは俺たちのリーダーだ。

報告義務があって、ガイドはまとめて局長に報告しなければならない。

サトミは横で聞いていて、ひどく気が重かったが、ダンクは盗賊側が事故を起こしたと報告した。


「危うく当たりそうになったけど、サトミが弾いてくれたんだ。助かったよ。

帰りに見たら、弾詰まりを起こしたらしくて、バレルが爆発していた。

ただ、男の死体の横に女の靴があったので、仲間が一人逃げたらしい。」


「そうか、出来れば主犯が知りたかったな。とにかく無事でよかった。」


報告が、そこで終わった。

サトミは驚いて、二人を見る。

敵の事故に自分の関与を報告しなかったダンクに、どこか、後ろめたさが浮かぶ。

暗い顔で苦いだけのインスタントのブラックコーヒーを入れて飲む。


苦い……砂糖が欲しい。

とても苦くて、ストレスだ……


そうしているうち、リッターが帰ってきた。

今日は荷物が2局だけだったので、早かったのだ。

決まったことをガイドから聞いていて、事件のことも話を聞いてうなずいている。

無事で良かったと、リッターが肩を叩く。


顔を見上げると、裏表無く優しい顔をしている。

意地悪な人間観察はしないのか。

みんな優しい。

きっと、俺がここに来たのは、本当にベストだったのだろうと思う。



俺は…………


信用……しなきゃ、されない。


だから、自分のことも話さなきゃならない、それは今だと思った。



「恐らく…………主犯は逃げた女だ。」



驚きもせず、3人が振り向く。

ガイドが腕を組み、サトミに向き合った。


「どうしてそう思う?」


「……どう言えばいいんだろうな。俺には気配がわかるんだ。

殺気、邪気、強ければ強いほど性格まで推測できる。

息づかいが聞こえる。

一度会えば、姿を見なくても近くに居るだけでそいつだとわかる。


あと……弾を放てば、それが見える。

いや、目で見えるんじゃ無い、なんて言うのかな……肌でわかるというか……

なかなか信じて貰えないけど…………

女は殺気がシャープで強い。ああ言う殺気は動機のある奴の特徴だ。」


ガイド達の顔を見る。

人にこんな事言っても、小馬鹿にされて笑われるのが常だった。

だから、人に話さなくなった。


でも…………

笑ってない…………


3人は、真剣に聞いてくれていた。

フッと息を吐く。肩の力が抜けた。


「俺は……こんなだから、軍には便利な人間らしい。

だから、俺には常に監視が付けられた。

脱走を懸念して、家にも帰されなかった。

俺は、こう言う人間なんだ。」


「よく、辞められたね。」


リッターが問う。それは当然だろうと思う。


「辞める時は、無理難題が課せられたけど……でも、それクリアーして辞められた。

辞めること自体、あり得ないことだったろうけど、脱走か退役認めるかどっちかにしろと突きつけたら、難題クリアーできたら退役許可するって、上が言ったんだ。

上が脱走を選んだら、俺は何人切って出てきんだろうって……考えれば、ちょっと怖い。

相当死んだだろうから。」


「ふうむ……にわかに……信じられんな……だが、事実なんだろう。」


ガイドがあごのヒゲをザリザリこする。


「その……気配がわかるっての?超能力って言うの?カードの裏がわかるって奴?」


リッターが聞くが、それとは違う。カードに意識は無い。

サトミがパーティションを指差す。


「そう言うのとは違う。俺は人の気配や意識が感覚でつかめる。

散々テストされたけど、カードの裏とかまったく当たらなかった。

生き物のみ、言うなれば赤外線探知機のようなものだ。


例えばだ、これの向こう……こんな感じで人間がいる。

男がこれとこれ。キャミーがこれ。男女は普通、気配も意識も違う。

ただ、ごちゃ混ぜの奴がいるって事、ここに来て初めて知った。局長は男だけど、気配は女性で戸惑った。」


パーティションで分けてある部屋の、隣の部屋は窓口にも接していて一番大きい。

郵便窓口と貯金窓口、その後ろの郵便受け付け事務、貯金事務作業、全部で表のスタッフの20人はいる。

サトミは紙に、人の位置を丸でさっさと書いていく。


「ふむ……」


怪訝な顔で、ガイドが受け取ってリッターとドアを開けて見た。


「どれどれ?…………え?ちょっとガイド、よく見せて、……え?……マジ?」


「ああ、…………ビンゴだ。」


神妙な二人に、近くに居た郵便業務のリナが首を傾げる。


「どしたの?」


「なんでもない、クイズの答え合わせさ。」


「ふうん……」


ドアを閉めて、ソファに戻って座る。

半分笑いながら、ガイドが感心して首を振った。


「信じられなかったけど、信じるしかないな。

こんな能力……って言っていいのかな、初めて見た。ほんとにこう言う人間いるんだな。」


サトミが笑ってニッと笑う。


「すまない、でもガイドのパンツの色はわからないから安心してくれる?」


「そりゃよかった。こう言うの、超感覚って言うのかな、まあ、常人にはわからんな。」


ガイドも超感覚なんて考えたことも無かったが、こうなれば受け入れるしか無かった。

サトミの超感覚は、土台に盲目の時代があります。

感覚を研ぎ澄ます、その状態が24時間続いている感じです。

目が見えなくても、目の見える人と何ら代わりの無い生活が送れるなら、なぜまだ子供の彼が入隊を約束しても目が見えるようになりたいのかと、家族は入隊を大反対したのです。

それでも見える人に見えない人の気持ちは、わかるようで100%はわからなかったのでしょう。

彼はただ、それでも家族の顔が見たかったのです。

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