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33、気配りな男ダンク

箱の中から、整然と並べられた簡易的なシースに入った小型の投げナイフをガラガラ出していく。

横から丁寧に中を出したが、ナイフしか入ってない。普通の荷物だった。


「なんだ、ふつーかよ。」


が、妙に重かったのは、下にダンベルが一組入ってる。

きっと送料跳ね上げてやろうという腹だろう。

よしよし、ジンのイージーレベルの嫌がらせだ。

あいつも元気そうだ。


「このダンベル、俺が部屋で使ってた奴か……」


出してみると、ダンベルの間に手紙が入っていた。

後ろからダンクがのぞき込む。

だが、広げた手紙を見てまた、え〜〜と声上げる。

そりゃそうだろう。内容はただひたすら数字が並んでいる。


「なんだよその手紙は!良く検閲通るなー、そっか、検閲って戦時中だけかな?」


検閲とか、非人道的だと思うが普通にある。

だからわかるように書かなくちゃ駄目なんだけど、俺のチームは特権があった。

しかし、それで内部情報外に出して、銃殺された馬鹿な奴もいる。

おかげでチームの存在は噂になって、余計に恐れられた。


「見てもわかんねえだろうな。まあ、そうで無いと困る。えーと、46か。」


サトミはナイフをテキトーに箱に突っ込んで、ダンベル一つ組み立て、箱を小脇に抱えて懐かしそうに腕の運動しながら事務所に持って行く。

そして、紙とペンを取りだし、端から順がどうなってるかわからないアルファベットの羅列を書き始めた。

それから数字に沿って……いや、沿ってない。

どう言う見方をするのかわからないが、どんどん手紙の数字から文字を書き出す。

そして書き写したら、外でアルファベット書いた紙と手紙をポケットのライターで火を付けさっさと燃やした。


「ええええええええ〜〜〜手紙まで燃やすかよ、なんで?友達からだろ?

お前ほんと信じられない感じ。」


「まあ、友達のような、なんか違うような、そんな奴なんだよ。」


突然、事務所横の窓がガラッと開いた。


「コラーーーー!!!局の敷地内で燃やす時は焼却炉!ダーン、新入りが外で火遊びしてる!!」


「なにいいいい!!!」


室内で叫びが聞こえて、慌ててサトミが灰に残った火を消す。


「ヤバい!ダンが来る!」


「あー、わかった、悪い!消すから!」


ダンクと二人で足で消してると、消防チームのダンが血相変えてバケツ持って来て灰に水まいた。


「火事になったらどうするんだ!火事、火事!怖い!火事!そこに並んで立て!」


めっちゃ怒られて、なぜかダンクまで頭を下げる。

もうしませんと宣言させられて、ようやく解放された。


「あーなんかひでえ目に遭った。」


「ごめんごめん。燃やすとこ決まってるって知らなかった。」


とは言え、サトミはちっとも気にしてない風で、手紙を読みながら事務所の椅子に座った。


「ほんとお前変な奴、映画で見たスパイみたいだなー」


ジェイクは先に食っている。バーガー4つにコーラ2本、やっぱり大食漢だった。

オーバーカロリーだろと思うが、他の局の奴はどうでもいい。


「ガイド来たら話し合うか。昼から帰るか、明日朝帰るか……ガイドの家に世話になるかなあ……」


ジェイクがぼやく。酷い業務妨害だ。

これじゃ速達の意味が無くなる。


「車、出して貰う?馬じゃ危ないならさ。」


ダンクがバーガー食べて、コーヒー飲み始めた。


「馬も車も一緒さ、防弾じゃないからタイヤ撃たれたら立ち往生だ。

たいして変わらんな。

一般のトラックが襲われないのは防弾装備にタイヤも特殊だ。

あれ、昔、新人が道外れて地雷踏んだけど、普通に走ってきたからな。

だから車体が重くなるからハイブリッドだけど、あれ2便走らせたら送料3倍になるって言われてる。」


「駄目じゃん……ぜんぜん駄目じゃん?

はああああ…………

サトミ、先にメシ食えよバーガー冷めるぞ。

手紙、暗号で来るほど、なんかすげえこと書いてあんの?」


サトミが思い出したように、バーガーを手に取る。

一口食べてもぐもぐしながら、ひょいと肩を上げた。


「んーー、就職祝いだって、このダンベル。俺のじゃん、あいつマジケチだよな〜……

あと、あいつらに武器流してた武器商人は〜〜えーと、消滅したらしい。」


「消えた?どういう事だ?」


「そのまま。この世から消えたって事。

あのガキの供述は残が弾帯2と地雷1、まあ、弾帯はもう関係ないか。」


ジェイクがバーガーかぶり付こうとして止まっている。

ダンクは、ふうんとコーラ飲んだ。


「ちっこいのって、いったい何もんだ?」


ダンクがさあと首を振る。サトミが苦々しい顔でコーラ飲んだ。


「サトミだ、ちっこいの言うな。この間軍出てきたばかりだ。

これは軍の同僚だよ、もう手紙は来ないと思う。気にするな。」


あの部隊は幽霊みたいな物だ、外部との接触は極端に嫌う。

ジンが手紙くれたのは、ちょっと意外だった。

あいつがどんな顔して書いたかと考えれば、ちょっと寒気がする。


手紙のラストには、返事はいらない、ぬるい事を聞いたら殺したくなると書いてある。

まあ、あいつはそれが通常運転だ。

俺が外に出たのを苦々しく思っているはずだ。1,2度殺しに来るかもしれない。


「ふうん……ま、いいけど。軍に少年兵って珍しいよな。ああ、ダンクもだったっけ。」


「うん、でも、珍しくもないぜ?地雷1か〜、それで終わればいいけどな〜……」


ダンクがしおしおした顔でバーガー食べる。

確かに、武器商人殺って終わりならいい。

しかし、戦後の今は、金さえあれば探せば手に入るだろう。

使う使わないは、盗賊達のモラルの問題だ。

少なくとも今まで奴らは、銃で追っては来ても地雷使う奴は、機銃使う奴はいなかった。

あの女は、ポストアタッカー殺すのが目的だ。

その為ならどんなことでもやるだろう。



やがてガイドが帰ってきて、ダンクがお疲れとバーガー2個渡す。

ガイドは帰りに買ってこなかったので、助かったと喜んでいた。


ガイドの分まで買ったから、あんな大きい袋だったのか……。

ダンクは本当に気が利く男だ。

人付き合いの大切さが身に染みているのだろう。

サトミもダンク見てると、凄いなーと思う。

普通の生活で気配りなんて、サトミはしたことがない。新鮮だ。


「なんだよう、俺に惚れた?」


ダンクがニイッと笑う。

サトミがにっこり、うんと返すと、恥ずかしそうにガタンとずっこけた。


ダンクは戦争で孤児になって軍に連れて行かれ、少年兵にされた為に人間不信でした。

でもそれを根気よく立ち直らせてくれたのは郵便局の局長や仲間、そして教会に関わる人々です。

彼はだから、人と人の付き合いを大切にします。

そして自分はそれで救われたからこそ、サトミにもそうなって欲しいと願うのです。

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