表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/57

17、推測の中身

「状況報告で、必要だったから撮ったんだが……消したいけど、消せないんだ……」


「いや、消さなくて良かったよ。」


ガイドからカメラをサトミが受け取り、写真を全部見ていく。

その表情を、ガイドが見て驚いた。

眉一つ動かさず、表情も変えず悲惨な写真を丹念に見ていく。


「お前さん、部隊どこだ?前線にいたな?」


「さあ、忘れた。この写真はどちら向きになる?」


「馬の頭が転がってる方がロンドだ、荷物持ってる帰りにやられた。」


「なるほど、指向性地雷で足止めさせて、重機関銃でとどめ刺されたか。

地雷はワイヤートラップか。」


「そうだ、でもこの型はリモコンも連動出来る。」


「いや、これは・・・馬が引っかけるのを待って、爆発音がしたら機関銃だ。

この人は運が悪かった。」


ゴクンと、二人の唾を飲む音が聞こえた。


もしかしたら、自分達も地雷の前を通ったかもしれない。


そう言う事だ。目をそらしていたことを、はっきり言われてしまった。

自分達は、運良く馬がトラップを引っかけなかった…………

運が、良かっただけだということを。


「周囲から機関銃は?どこから撃ったか特定出来たか?」


「岩山側……出口、ロンド側だ。車で待ち伏せてんだろうよ、薬莢がいくつか落ちてた。

ポリスが、軍に連絡するから任せろとさ。

さすがに機関銃相手じゃ手が出せないと。」


「ふうん……やっぱりな。

サンキュ、わかった。」


サトミがガイドにカメラを返す。

ガイドは目を閉じて電源を切った。


「大丈夫か?こんな刺激の強い物を見て。」


ガイドが心配してサトミに問う。


「大丈夫だ、問題ない。」


そう軽く返してサトミは指を噛み、何かを考えている。

ガイドは見せたことを少し後悔しながら、彼に思い浮かぶことを聞くしか無かった。


「なにか……‥何がわかる?

俺達はポリスから、ただコースを変えろとだけ言われている。

しかし変えるのは容易じゃ無い、岩棚も岩山と森も迂回するのに倍とは言わないが時間を食う。

俺たちの仕事は早く郵便を届けることだ。

でも、何をどうすればこのいかれた奴らを避けられるのか頭を抱えてる。」


ガイドの言葉は切実だ。

変えてもきっと場所を変えてやられる。


サトミにはわかったのだ。

これは、本当に、「ポストアタッカー狩り」なのだと。


ポストアタッカーを殺すことが目的になっている。


でも、それを言っていいのかわからない。

思い浮かぶことだけを話そうと口を開いた。


「……いや、ただ、重機関銃はこの辺の、生活に追われて盗賊やってる奴らが手に入れられる物じゃない。

威力が強すぎて陸戦条約でかなり前から規制されてる。

規制品は、裏でかなりの高額取引だ。


この指向性地雷も昔よく使われていた奴だ。が、

今は地雷自体が、リモートだろうがなんだろうがすべて禁止条約に引っかかる。

独裁政権は無視して使ったが、軍でも終戦後の地雷除去は非人道的とかで最優先項目だった。

指向性地雷は地上に設置する物だから見つけやすい。

戦時中軍で使用されたものは無いと断言出来る。

軍に残があっても武器の横流しは死刑だ。

金が欲しくても割りに合わない。」


「だったら、ゲリラが盗賊に売ったとか?」


「治安維持のゲリラ掃討は終わっている。

残党組は個別に盗賊に鞍替えした奴もいるだろうが、奴らが持っていたとしても人馬相手に重機関銃ぶっ放すほど派手じゃ無い。オーバースペックだし、弾代の方が高くなる。

ゲリラのスポンサーやってた奴らは戦争で儲けていた、終戦じゃ復興の方が儲かる。

もし金があって出すとしたら、不良在庫を抱える武器商人だ。」


「ゲリラの頭が資金稼ぎに売ったとかは?」


「そうだな、俺が知る限りゲリラの頭は消えた。

資金も限られてるから、奴らがなんかやるとしたらテロだな。

でも、ポストアタッカー1人殺してもテロのメリットは無いだろう。

あいつら考えるのは、善良な市民の大量死だ。」


サトミが大きく息を吐く。

ガイドとリッターは、しかし彼の即答に少し驚きながら、顔を見合わせていた。


「サトミ・ブラッドリー、お前15だろう?いったい何年軍にいた?」


「それは……‥、ここに勤める上で話さなきゃ駄目なことか?」


「いや、あまりに返答が早い上に断定的だ。

いったいどういう事かと思ってな。」


渋い表情のガイドに、しかし、サトミはニヤリと返す。


「ただの推測だよ。俺の経験とか、深い物は無い。中身の無い推測さ。」


軽く返しながら、しかし心は焦っていた。


喋りすぎた。マズい。


こんな事、これまで軍のミーティングでやっていたことだが、ここは軍じゃ無い。

自分がどんなところにいたか、簡単に推測を呼んでしまう。うかつだった。


これまでは、こんなうかつなことを他人がやったら、軍に居た自分なら許さない。

口の軽い奴は大嫌いだった、峰打ち骨折確定だ。

だが、それを自分がやってしまったことに、少しショックを受けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ