14、セキュリティ開発部
「武器の消耗品あるなら申請して、うちは軍を通して買い付けるから、だいたいなんでも手に入るわ。
ただ、時間かかるからお早めに。どお?」
「俺はこのスローイングナイフかな。軍に居た時は100本単位で頼んでた。
そう言えば注文してそのままだったなあ……
あと、高純度の油があれば。機械油でもいいけど。刀のさび止めなんだ。」
「わかったわ、あとで話通しとく。
あ、こっちよ。」
廊下を進んで局内でも一番奥、物置きの隣にいかにもあとで増築された感じの部屋にたどり着く。
「ここが以前言ってたセキュリティ開発部。
部長はちょっと変わった奴だけど、局員は武装すべきを提唱してここ増設させた人間なの。
もう1人が開発専門、他の局にもこの人が作った物提供されてるわ。
製品化されて郵便局限定で使ってるのもあるの。
まあ、みんな一目置いてるエジソンよ。
刀のこと話してるから、なんか考えてると思うわ。
二人とも元、軍の武器開発に携わってたみたいだから、気が合うかもね。」
ココン、ココン、コンコンコン
「これが合図。この音以外じゃドア開けてくれないから。
パスで開くんだけど、勝手に開くとめっちゃ怒られるのよ。」
「ふうん……」
確かに変人。
ガチャンと鍵の開く音がして、目の前に筋肉が現れた。
いや、語弊がある。
ピチピチ白衣から、立派な胸板にピチピチの白Tシャツがはみ出している。
顔を上げると、スキンヘッドにヒゲの中年男が偉そうにサトミを見下ろしていた。
「やあはじめまして、郵便局へようこそ。
私はセキュリティ部長のライズ。
向こうが副部長のカリン・ルーだ。と、言っても2人しかいないんだがね。」
手を出されたので、握手だろう。
普通の生活って、握手が多いんだなあ。手に毒仕込まれてそうで、躊躇する、慣れない。
ちょっと考え、ワンテンポ遅れて手を出すと、ガシッと握られた。
「手がでけえ……」
「まあ、君はちっこいな。えーと、ポストアタッカー最年少か。
うむうむ、可愛いからサトミんと呼ぶかね?」
「いや、普通にサトミでお願いしたいんだけど。」
ワッハッハッ
何が面白いのか、豪快に笑う。
なんか無駄に鍛えてるなーと思っていると、もう1人部屋の奥からやってきた。
「あっやっと来たね!ふうん、君がカタナ使い?
調べたけど、各パーツが美術品になってるね。
スタンガン仕込もうと思うけどどう?
仕込む隙間がありそうに無いけど。
柄は外せる?そこに仕込んでも良さそう?
装飾はどんな感じ?重さが変わると使いにくい?どこにスイッチ仕込むか希望ある?
換えのカタナあるの?ないの?とりあえず見せて。」
その白いボサボサ頭の青年が、自分の言いたいこと一気に喋ると握手より刀を出せとニッコリ手を出す。
生き生きした青い目が、興味200%いきなり抜き身で分解しそうで怖い。
サトミが思わず目をそらし、キャミーを見る。
ため息ついて、ドアへ向かった。
「こいつの頭冷えてからまた来る。」
「ええええ、誰の頭?」
「この、機関銃みたいに喋る人。」
「なんで?!俺ずうううううっと待ってたのに!」
「俺の刀はおもちゃじゃねえ。」
「そっそんな!おもちゃなんてっ!おもちゃなんて思ってません。いてっ」
青年が、いろいろつまづきながらダアッと走ってきた。
サトミがチラリと見て、サッとドアの外に出る。
「ちょっと!待ってよ!気を悪くしたなら謝るから!謝らせるから!サトミ君!」
足を止め、くるりと振り向く。
ドアを見ると、さっきの白い髪が半分顔を出して心配そうに見ていた。
「そうだな……単刀直入に言うと、この刀は………」
「知ってる、わかってるわ。沢山人殺してる。」
息を吸って、ほうっと吐いた。
言いにくいこと言ってくれた。
普通の生活ってのは、どこまで言っていいのかわからない。
サトミのホッとした顔で、キャミーが笑った。
「そうね、エジソンは少しネジが抜けてるから、はっきりした方がいいわね。
何がわかって欲しい?」
「刀の……怖さ、かな。
あいつの腕切って落とすって訳にはいかないだろ?」
「そりゃあ……困るわねえ……腕は2本無いとタオルも絞れないわ。
じゃあ、私もエジソンの事知って欲しいから、あらためて……
そうね、明日、君には見習いで隣町まで行って貰うから、それに同行でもいいんじゃない?」
「俺は構わない。けど、危険なんだろ?向こうはどうなの?」
「まあ、現場見なきゃ何が必要かわかんないじゃない?
ポストアタッカーって腕でやってる奴ばっかだから、普段エジソンの発明品ってあまり必要とされないのよ。たまにはいいんじゃない?守ってやってよね。」
「ふうん……」
振り向くと、エジソンってあだ名の青年は、泣きそうな顔で笑ってぐっとグーをサトミに向けている。
が、その手がプルプル震えていた。
なんとも頼りないが、自分の落とし前を自分で付けるその気合いは認める。
手を上げて背中を向けると、裏返った大きな声が聞こえた。
「明日!よろしく!僕、死なないようにがんばります!」
なんか悲壮感漂うなー
とりあえず、後ろ向きで手を上げて返して置いた。
キャミーが使っていたスライム銃は、ここで作った物です。
彼らも元、軍にいた開発者、辞めてすぐにスカウトされてここに来ました。
ここの局長はオカマですが、とてもやり手なのです。




