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速達配達人 ポストアタッカー 旧1 〜ポストアタッカー狩り〜  作者: LLX
プロローグ〜ポストアタッカー狩り
1/57

1,地雷強盗(流血有り)ややグロ、読み飛ばし可

青い空の下、一人の青年が荒野の中整地された一本道を馬で駆け抜ける。

彼は郵便マークの入った麻のバッグを鞍の後ろに積み、休みを知らず一気にその場所を駆け抜ける。


腕には赤地に白抜きの郵便マークに電撃が入り、ポストエクスプレスの文字が入った腕章。

白いシャツの上にはオリーブ色の防弾ジャケット、馬の腹から首にも防弾装備の郵便マークが付いた馬着が巻いてある。

鞍には自動小銃、腰にはハンドガン、武装はそれだけでは終わらないはずだ。

だが、彼の落ち着かない様子は、どれだけ武装しても安心できないのだろう。

その場所は何か不安があるのか、遠くに岩場が見えると顔を上げ、左右を見回している。


だが、意を決したように身体を伏せ、馬の速度を上げた。


その岩場はこの道で唯一、一方を岩だな、もう一方を低い岩山と森と、左右を岩で挟まれている場所だが道幅は広い。

盗賊に追われても逃げられる余裕のある広さなので、これまではライフルによる狙撃に注意するくらいだった。


だが、彼の表情には硬さが見えて、しきりに馬を急く。

道の中央を駆け抜け、下草の中、岩が転がった場所を通り過ぎようとしたときだった。

馬が何かを引っかけ、走るタイミングの変化を感じる。


しまった!


とっさに頭を腕で庇う。


バーーーーーーンッ!!!


その瞬間、爆発音があたりに響き、右半身に爆風を浴びて馬ごと吹き飛ばされた。

防弾ジャケットで守られたおかげで、即死を免れ右側が血だらけの顔を無意識に上げた。

口の中が、あふれる血と何かでジャリジャリする。

それを吐き出し、あえぎながら、必死で呼吸した。



やられた!畜生!落ち着け、落ち着くんだ。



半分の視界の中で、後悔と、そして後悔と、友人や恋人の顔がいくつも浮かぶ。

馬がパニックを起こしてなのか、無意識に痙攣しているのか、血だらけで激しく足をばたつかせて泡を吹いていた。

上半身を上げ、右手を動かそうとするがボロボロで千切れかけている。

焦って動く左手をなんとか腰の銃へ伸ばした。



死にたくない!死ねない!


俺は!帰るんだ!



そうだ、衛星通信でエマージェンシーを!


郵便!郵便は無事なのか?!


パニックで考えがまとまらない。

銃を置いて、腰のバッグにある衛星通信機の緊急ボタンを押す。

その時、遠くから連続した発射音が忙しく響いた。

反射的に銃を撃つ。


タタタタン!シャッ!シャシャッ!キュンッ!


忙しく空を切る音と共に、目前の馬の首がはじけて吹き飛んだ。

血を浴びて視界が赤く染まり、息を飲む。

次の瞬間、身体にいくつも衝撃が走った。


なぜか、地面が見えて、空が見える。

何かが、自分の身に起きていることを理解した。


早く、衛星通信で知らせなきゃと、うつろに考える。

彼女の微笑みが脳裏に浮かび、赤い空を見つめた。


耳元で、また空を切る音がして頭が揺さぶられる。

彼の意識は、そこで途絶えて消えた。





武装した人々を乗せた馬数頭と、ポリスの車が、GPSの信号を頼りにその場へ急ぐ。

現場が近くなり、思わず警戒してスピードを落とすポリス達を置いて、郵便マークを付けたジャケットの人間を乗せた馬がその場へトップスピードで飛び出した。

岩の壁を越え、左右を岩に挟まれたその広い道に出る。

その先に、赤い塊が目に飛び込んだ。

呆然と馬を止め、衛星のマップで動かないGPSのマークを見る。

それは、自分のマークと、もう一つのマークをきれいに重ねていた。


「ま……さか…………ウソ、だろ?…………」


馬から下りて、一歩、一歩、近づく。

足下に、血に染まった郵便バッグが、中身をまき散らして風に揺れている。

動かないその赤い塊の中に、見知った男の横顔があった。


「リー…………ド……‥」


足が、動かない。

時間がそこで、止まったような感覚にとらわれた。

風向きが変わり、血の臭いが全身を包む。

その男と、職場で語り合った時の顔が、いくつも浮かぶ。


背後でポリスが口を押さえ、よろめきながら離れて吐いた。

何か声をかけられるが、耳に入らない。

岩山を見ると、昨日まで2枚だった、てっぺんにはためく血だらけの腕章が……‥

自分達が誇りにしている、そのマークの腕章が、3枚に増えている。


わなわなと手が震える。

火が付いたように怒りがこみ上げた。


「畜生ーーー!!!」


腹の底から叫ぶ声が、岩山と岩棚の間で反響する。

それはいつまでも消えず、彼の心を揺さぶっていた。

以前書いたポストアタッカーの主人公、サトミがポストアタッカーになるまでの話しです。

10年ほど前に書いた旧作の設定を参考に、新規で新しく書き起こしました。

除隊してすぐなので、一般人へと離脱するのに苦労しています。

就職するまで日常が続きますが、読んだことが無い方もどうぞ。


戦後混乱の中、治安が悪く、普通の仕事をすることが困難になっています。

特に速達便には貴重品もあるので狙われてしまいます。

それでも現状は早馬で走るしかないのです。


どうぞよろしくお願いします。

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