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8、ツユの実⁈つゆの実!ブシ!節作り

今日は森の南へ探索だ。

洞窟から出ると下位精霊さんや、中位精霊さん達がやって来て、色々な薬草や木の実キノコなんかの生えている場所を教えてくれる。

皆んな、その場所まで案内して採ってくれるんだけど、その姿が可愛くて癒される。

何か新しい物はないかしら?と森を進んでいくと、何だろうこの匂い…なんか懐かしい匂いに似てる…でも、近づくと結構キツイかもしれない。


「グレイクこれなんの匂いかしら?」


「あぁ、ツユの実だな。その木は実が熟してきて臭いがキツイな、離れよう」


「ツユの実って食べられるのかなぁ?なんだか懐かしい感じがして」


「ちょっと待てよ、あぁ、分かった。

食べても害はないそうだが、食べる奴は誰もいないとさ、おい!本当に食うのかよ」


グレイクが若干引き気味だが、この匂い、何だろう?熟した物と少し早い実を一粒づつ精霊さんが取って来てくれる。

プチっと潰すと茶色い汁が出てきたので、近くで匂いを嗅ぐと、ツンとした匂いが鼻を突き抜けるものの、この匂い何処かで…

おもむろにペロリと舐めてみると、んー!これ麺つゆ!麺つゆの味がするー!

この熟す前の実は?此方も潰すと先程よりも少ないものの、汁が出てきた為、ペロリと舐めてみるとこれは醤油だ!

まさか、こんな所でお醤油と麺つゆもどきが見つけられるなんて!


「グレイク!この実!たくさん欲しい。あっ、でも沢山取ったらダメか、森が困らないだけ、皆んな収穫手伝ってくれる?」


「はぁ⁈こんなもの本気でいるのかよ?まぁ…メルが欲しいって言うならしょうがねーなー。なんか大きな布、あぁ、家具包んであった布袋あんだろう、あれ出せよ」


グレイクに言われるまま袋を取り出すと、熟した実とそうでない実を分けて、あっという間に収穫してくれた。

この辺り一体を取りきってしまったけれど、グレイクが問題ないと言うので、有り難く頂き、手伝てくれた精霊さん達に魔力をたっぷりとお礼をし、別れの挨拶をする。


「おいおい、イヤにご機嫌だなぁ。」


「うん。だって私の前に住んでいた世界の調味料の味なんだよ!これで前の世界の料理が作れるんだもの、それに今までのように、こっそりと食べなくていいから思い切り料理だって作れるでしょう?私、この森で皆んなと暮らせて幸せなの。」


グレイクはそうか、と優しい笑顔で頭を撫で付けた。

家に戻り、町娘とそのお兄ちゃんをイメージして着替えを済ませた私達は、調理器具を揃える為、貯蔵容器の生産が盛んな港町へとやって来た。

ちなみに街に出る時、私は髪と目の色を茶色に、グレイクも人間に見えるように目や髪色を変えてついて来てくれる。



「さてと、先立つ物が必要だから、ギルドの依頼を確認して、買い取りして貰いましょ。」


「だが、メルの名前を使ってもいいのか?」


「だって、その為に、陛下との賭けをしたのよ?身分をそのままに自由の身となるって事は、名前をそのまま使う為だもの。これでギルドカードが使え無くなっていたら、ストーリー通り、お父様達も私の事を捨ててしまったと言う事だわ。もう国を出て2ヶ月以上経つでしょう。そろそろ…その事についても確認しておかないとって思って」


「そうだな、まぁ、そんな事すれば奴らは身を滅ぼすだけだが、人間とは愚かな生き物だからなぁ。だが、お前の家族はそんな冷酷な人間ではなかろう?安心しろ、どんな結果でも俺が側に居る。」


「もぉ、グレイク、私もその愚かな人間よ⁈でも、そうね父様達は私の事を愛していて下さったもの、大丈夫よね。」


ギルドに入り、高ランク用の薬草や素材収集依頼をいくつか取り出し、カウンターへと持って行くと同時に、バックから薬草を取り出し、鑑定をして貰う。

本来ならば依頼を受けた後に素材の収集に向かう流れだが、私はアイテムボックス持ちの為、その場で鑑定を行い、鮮度に問題がなければ、そのまま買い取って貰えるのだ。

勿論、低ランクからそんな事は出来ないが、私はグレイクや精霊達のおかげで、6歳から冒険者を始め、14歳にしてBランクになれた。

Bランクからは上級者とされている為、ある程度の信用があるのだ。


「リアメル・サラ・チベーリア様ですね。いつもありがとうございます。此方の薬草が今、不足しているので、助かりました。こちらが成功報酬になりますが、本日は口座になさいますか?」


「いいえ、今日はこのまま受け取ります。この薬草でしたら、同じ数なら出せますが、必要ですか?」


「まぁ。是非お願いします。では追加の報酬です。ありがとうございました。」


本当はもっと沢山持っているんだけど、怪しまれるし、他の人の仕事を奪ってしまう事になる。

でも、今日の報酬は合わせて金貨5枚だから、これで心置きなく調理器具の購入ができる。

私は見た目よりも幼く見える為か、ギルドから出た瞬間、柄の悪い人たちに囲まれた事が何度かある。

不要な争いを極力避ける為、お金はいつもグレイクが持ち歩いてくれる。


「メル、良かったな。」


「うん、このまま家族には連絡せずにいようかとも思ってたけど、自分の力で生活出来るようになったら、お父様に連絡してみようと思う。」


「そうか」


本当ならグレイクに聞けば国や家族がどういう状況なのかは分かるけど、グレイクには、家族の身に危険が迫った時だけ教えて欲しいと伝えた。

冤罪とは言えあれだけ大勢の前で断罪され、国から追い出された私には、もう居場所なんてない。今回の事で戻ったら更に家族に迷惑をかけるだけだもの。

ギルドを抜け、港の市場へと向かう途中、山積みの魚を前に愚痴るおじさんが目に入り、思わず声を掛けてしまった。


「こんにちは。大漁ですね。」


「大漁なもんか、今日は売れねぇ魚ばかりが引っ掛かっちまって、大赤字だ。」


見ると鰹にタコにイカにエビ、どれも美味しそうに見えるが、どこが食べられない魚なのだろうか?タコは元の世界でも食べない国もあると聞いたが、イカにエビ、まさか鰹まで?

聞いてみると、鰹はこの辺りでは大型魚の餌で、沢山取れるし、殆どお金にならない魚なんだそうだ。

それに、エビは固くて食べられたもんじゃない、と言う理由で…イカとタコは気持ち悪いんだとか…

やっぱりかと思う反面、エビが固い?ロブスターも混ざっているが、まさか殻を剥く事を知らないのか?おじさん…高級食材ばかりですが!

その後も、おじさんの愚痴は続いており、ここの漁師さん達の集まりは、どうやら全盛期を終えた漁師さん達の集まりで、1日に何度も漁を行うのは体力的に難しく、その日上がった魚を売り捌き、皆細々と暮らしているそうだ。


「あの〜おじさん、私の言う通りに捌いてくれたら、この魚を全部買い取りますって言ったらどうします?」


「そりゃおめぇ…全部買い取ってくれるのは嬉しいが、これだけの量捌くとなると時間かかるぞ?」


「全然大丈夫です。そこの包丁とまな板を借りますね。商品価格はおじさんに任せます。後の手間賃は私の説明を聞いて値段を判断して下さいね。」


その場に置いてある、まな板と包丁で鰹を捌き、骨をとってもらうようお願いする。

イカはハラワタを取り除き身とゲソに分けて洗って貰い、タコは2匹だけだったので真水につけて動きが鈍くなった所を〆てワタとスミを取り、いらない部分の処分だけお願いして先にアイテムボックスへ収納した。

後はエビだ、処理場でお湯を沸かしていたので、エビの処理の仕方を教えながら、ロブスターとエビを殻付きのまま茹でて貰い、皆さんに剥いて食べて貰ったところ、おじさんやおばさん達には好評だった。

この作業を考え、値段を出して貰ったら、大銀貨1枚…いやいや、いくら売れないものばかりとは言え、かなりの量だし、ゴミの処理にも手間がかかるだろう。

おじさん、おばさん合わせて10人がこの大量の魚たちを処理してくれるのだ、金貨1枚手渡そうとしたら「とんでもねぇよ!嬢ちゃん」と本気で断られてしまったので、「今後の事を考えて大銀貨6枚は受け取って下さい。」と強引に押し付けて後で取りに来ると、その場を後にした。

ここでの相場は知らないが、本当に高級食材ばかりなんだってば!むしろ大銀貨6枚でも安いぐらいだったんだけど、あれ以上は受け取っては貰えず、エビの食べ方を是非、周りに広めて欲しい!とお願いした。

本当は頭の部分も持ち帰りたいんだけれど、生ゴミが大量に出ると、森での生活は困る為、剥きエビ、剥きロブスターでお持ち帰りだ。


「メル、せっかく新しいワンピースを着て、めかし込んだのに、魚を捌き出して、何してるんだお前は」


「うっ、でもね、グレイク掘り出し物がね!でも、ちょっと魚臭いかも…浄化魔法かけて、カフェにでも行きましょう!夕方までかかるって言ってたし、調理器具もゆっくり探したいしたいから、ねっ。」


はぁー と大きなため息をつかれたのは言うまでもない。

カフェでお茶や軽食を楽しみ、その後は寸胴鍋やら大きな布巾やら業務用の調理器具など色々買い込み大量の魚を受け取って、今日は大満足の一日だった。


翌日、朝早くから起き、昨日大量に買い込んだ鰹をどっさっと出して、雄節はそのまま雌節はハラモを切り落とし、昨日買った特大の蒸し器を利用して、鰹を並べ、沸騰しない90度ぐらいの温度でじっくりと時間をかけて茹で上げた。

その後は冷水につけて粗熱を取った後、外に用意した燻製機に入れて暫く放置。

この間にツユの実の処理をと、気合いを入れて大量のツユ実を洗って水を切り、鍋に入れた所で、グレイクに手伝って貰おう。


「メル朝から一生懸命だな。コイツはどうするんだ?」


「グレイクちょうど良かった。コレを切り刻んで煮込んでから濾そうと思ってるんだけど、手伝って貰ってもいいかしら?」


「それは構わないが、さすがに部屋の中では匂いがすごい事になるから外に野営コンロを出して、そっちでやるぞ」


そうか、いくら風魔法で匂いを遮断して外に追い出しても限度はあるわよね。

外に出てコンロを設置した所で、グレイクが鍋の中身をミキサーにかけたように切り刻んでくれた為、それを煮込んでゆく。

熟した実とそうでないものそれぞれ、鍋3つ程あり、煮込んだ物を濾して、瓶詰めにし、その合間に鰹の燻製の水分を魔法で抜き取り、また燻製と言う作業を繰り返して醤油の瓶詰めが終わった頃には、燻製も出来上がっていた。

鰹の燻製は魔法で少しづつ水分を抜きながら二、三日で荒節を作る予定だが、今日は試しに1本だけ水分をかなり抜いてみた。

カビを付けた本格的なものは作れないけど、この世界の魔法を使えば、簡単に荒節が作れるかもしれないとの思いつきからだったけど、この感じ、もしかしたら成功しているかもしれない!

でも、驚いたのはあんなに立派な鰹がこの世界では魚の餌扱いなんて、今まで切り身でしか見なかった魚達は、ただ単に大きすぎたからなんて、想像していなかった。

さてと、せっかくだから今日は醤油と鰹の荒節を使って、おかか醤油のおにぎりと、キノコのお澄まし、だし巻き卵にエビフリッターにマヨネーズソースせっかくの醤油に海の幸だもの豪勢にいきたいよね。

荒節の表面のタールを風魔法で削り、そのまま売られている鰹節をイメージして削ってみると少し厚いが削れた!


「グレイクお願いがあるんだけど、コレよりももっと薄く削れるかしら?」


「こんな感じか?」


「うわぁー凄い!フワフワの鰹節だぁーコレ1本削って貰ってもいい?」


魔法で水分を抜きながら作ったけど、しっかり出来ていているから、残りは明日作っちゃおう。

荒節で出汁を取っている間に巨大卵をスパーンと割り、ボールへと移す。

いつ見てもこの世界の卵はデカイ…1つで30人分以上は卵焼きが作れるであろうサイズ、産んだ鳥さん、どんだけデカイんだろう。

以前どーしても食べたいと調理器具を拝借して作ったマヨネーズも未だに半分くらい残ってるもんね…アイテムボックス様は凄いね。

鍋から荒節を取り出し、氷魔法で鍋を冷やして卵に出し汁と麺つゆを加え、後は卵焼きをひたすら焼いてゆき、出来上がった物はお皿に乗せアイテムボックスへ収納。

次に荒節の出し殻で振りかけを作り、炊いたご飯に混ぜ合わせ大量のおにぎりに、あぁー贅沢を言わせて頂ければ海苔が欲しい。

おにぎりに手巻き寿司、佃煮やサラダ、パスタにも名脇役として活躍できる存在。

海苔は日本人には欠かせない食材なんだよ!せっかく自由に動ける身になった事だし、海苔もあるかもしれない!頑張って探してみせるわ。

さてと、後はエビのフリッターとソースに、お吸い物を仕上げて出来上がり。


「グレイクご飯だよ〜」


「コレはまた張り切って作ったな。うまそうだ」


「えへへ〜醤油と麺つゆが嬉しくて。後は保存食作りも兼ねてね。」


まずはおにぎりから、パクリと齧りつき、思わず「懐かしい」と言う言葉が溢れた。

卵焼きも、塩やチーズのオムレツが麺つゆと出汁に変わっただけなのに、何故こんなにも安心できる味になるのか、お吸い物を一口啜り涙が、出そうになった。


「美味いな。このおにぎりだったか、ツユの実を使った料理はいつもよりメルの魔力を濃く感じて、実に美味い」


「グレイクって味は感じるの?私の魔力は美味しいって言うけど、料理の味は?」


「?分からなくないが、メルの魔力の前では料理の味など些細なものだ。だが、安心しろ不味いモノは、残すことはしないが、流石に文句を言うぞ」


「なんか、今日はっきりした気がする。グレイクには料理の感想を求めてもダメな気がする。」


「そんな事はない、メルの一生懸命作ったものだから、何でも嬉しいんだよ。」



うん。やっぱりグレイクに料理の感想は求められない、って少し前までの日本食に対しての感動を返して欲しい。

でもちょっと私の魔力の味ってどんな味なのか気になったので、聞いてみたところ、「心が満たされる味だ」ってどんなんよ。

聞いても分からなかった。


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