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14、一人ぼっちになって思う事

早朝、朝食の準備をしようと降りて来たところにネッドさんから告げられたのは、これからセルム族の村へ視察へ向かう事になってしまったと言う事…そこまでは良かった。


「えぇ! 100人分の試食ですか?」


「あ、ああ…無理を承知で頼んでる…スープ一口づつとかあればこの調味料の良さは十分に分かって貰える…だから頼む、この通りだ」


「そ、そんな、頭を上げてください!大丈夫ですから、ねっ?」


いくらなんでも急すぎるけど、夜中に依頼主から叩き起こされ、翌日の早朝から視察なんてネッドさんも、お仕事大変なんだなぁ。

普通に考えたら無謀なお願いだけど、私のアイテムボックスには沢山の保存食と言う強い味方が沢山ある!

大急ぎで、醤油と麺つゆを使ったお惣菜やおにぎりなど持てるかぎりの料理をネッドさんのアイテムバックへと詰め込んだ。


「リアメルこんな沢山の料理を貰っちまって本当に悪い。今度、埋め合わせは必ずする。」


「そんな大袈裟な…料理は、また作れば良いいし、気にしないで下さい。はい、これはネッドさんのお弁当。気をつけて行って来てくださいね。」


「良いのか?ありがとな!それじゃあ行ってくる」


「はい、行ってらっしゃい。」


ふぅ〜、なんとか出発の時間に間に合って良かった。

セルム族さん達も醤油と麺つゆを使った料理を気に入ってくれるといいんだけど、人に食べて貰うのはやっぱり緊張する。

ネッドさんが出掛け、静まりかえったダイニングは何処か落ち着かない…ここの所、何時も賑やかな食事だったもんね…朝食は軽く済ませて外に出よう。


外に出て昨日買った大型の燻製器が目に入ると思わずニンマリとした笑みが溢れてしまう。

ふふふ、これで大量の燻製が作れる…いけない落ち着け私。

上機嫌で鰹や一夜干しのイカを並べ終えると特にやる事も無いし、大量に買い込んだ食材で保存食作りでもしようかなぁ。


ダイニングに戻り、目に入った時間に一瞬、見間違えたのかと思ったけど、見間違いじゃない。

ネッドさんが出掛けてからまだ1時間しか経ってないの?

グレイクが留守にして直ぐネッドさんと一緒に生活していたから全く気にならなかったけど、1人で過ごすと何時もよりも時間が長く感じるのかな…私1人だったら毎日何をしで過ごしたらいいのか分からなかったかも知れない。

ネッドさんとの生活も残り2、3日か…やっとグレイクが帰って来てくれるけど、ドランス国行きの話しをしたらどう反応すのか考えるとちょっと緊張しちゃうな。


ドランス国に行けば家族や友達と手紙のやり取りも……って、手紙なんて書いていい訳ないよね。

断罪回避する為に、いろいろ対策をしてたけど、結果は変えられなかった…それはもしかしたら陛下達がいらっしゃってもストーリーは変わらなかったのかもしれない。

むしろお父様達が不在で良かった…目の前でお父様達まで変わってしまったら、私はきっと耐えられなかったから。


お父様やお兄様は王の側近であり未来の宰相だ。

そんな人達の周りに例え冤罪であっても国から追放された娘が、いつまでも影をチラつかせていれば、我が家を蹴落そうと企む貴族達のネタにされてしまうものね。

それに、婚約破棄され、死の森から奇跡の生還を果たした娘など傷モノとして、ろくな扱いなど受けないし、家族のお荷物になるだけだ。

家族は心配してくれているのかもしれないけれど、このまま会わない…やっぱりそれが一番いいんだと思う。


ストーリー通りだと、卒業と同時に結婚式を挙げ、幸せいっぱいなスチルでゲームは終了する。後1年と少しは、行動に気をつけよう…あの人達にこれ以上何かされたら、たまったもんじゃ無いものね。

でも、殿下ってあの状態で次期国王になれるとは到底思えないんだけどな…まぁ、そこは頑張ってヒロインちゃんとお幸せに!


はぁー 、ダメだ…いつもならグレイクが俺が側に居る、そんなこと気にしなくて大丈夫だって言ってくれるから、こんなに悪い事ばかりを考え無かったのに…独りぼっちってこんなに不安になるんだね。

あぁーもう!こんな時こそ、無心に料理を作るのよ!と意気込み料理作りを開始したら、どうやら今度は没頭し過ぎていたらしい。

ネッドさんが目の前で手を振って顔を覗き込んでいたのにも全く気がつかなかった。


「ただい…!  うお!なんだこの量は!

 ん?リアメル?おーい!リアメル」


「あ、あれ?ネッドさん? えぇ!い、今何時?」


「お前…まさかとは思うが一日中こんな調子だったんじゃないだろうなぁ?」


「え?……えへへ〜。たくさん作り過ぎちゃったかな?」


あの後、無心!無心!と暗示をかけ黙々と作り続けた結果、目の前には、様々な形に切られた大量の野菜の入った籠や、取り込んだままの一夜干しの山…

それ以外にも出来上がった物は全て収納してあるけど、未だにコンロには鍋がズラリ……

あっれ〜⁈こんなに沢山、人参の細切りを用意して、何を作ろうとしたんだっけ?

時計を見ればもう夕方…モヤモヤとしていたら、お昼も食べずに8時間以上もひたすら料理を作り続けていたのか。

グレイクがいたら、ご飯も食べずに、体調を崩したらどうする!とか言って怒ってそうだなと苦笑いが溢れた。


「簡易キッチンまで並べて…お前飯は食ったのかよ…って……リアメル?どうかしたのか?なんだか変だぞ?」


「ご飯は味見いっぱいしてたからお腹いっぱいになっちゃって。この野菜、何に使おうとしたのか思い出してただけですよ……あは、あははは〜」


「そうか?……なら、良いんだけどよ、ほらセルム族の集落に向かう途中にある村で買った土産だ。」


そう言いながら取り出されたのは巨大な缶に入った牛乳にバターにチーズ!

こ、これで蟹クリームコロッケが作れる!乳製品欲しかったの。


「うわぁ!ありがとうございます。このチーズも凄く美味しいそうですね。」


「うん、良かった。いつものリアメルだな。やっぱり土産は食材にして正解だったな。」


「そんな、人の事を食いしん坊みたいに!でもこれで蟹クリームコロッケが作れます!ネッドさん夕食を楽しみにしてて下さいね。」


「あぁ、じゃあ俺はイカの串でも抜いておくわ」


ネッドさんに御礼を言って今日の献立を考える。大量のニンジンでツナの炒め物と、カニとツナで2種類のクリームコロッケ、せっかくだし、蟹づくしで蟹ピラフにしちゃう?

そう決まれば、まずはここのお片づけからか、お鍋の蓋をとれば、大丈夫もう出来上がってるからこのまま収納。

それから、この刻んだ野菜の山達かぁ…大量の玉ねぎは役立ちそうで良かった。


先ずは玉ネギを炒め、半分に分けたら片方へ蟹の身と白ワインを、もう片方へツナとコーンを入れ炒める。

次はホワイトソース作りね!大量に作る時、風魔法はとっても便利なのよね。

ミキサーじゃなければ鍋は切れない筈から大丈夫、混ぜるだけなら大分コツを掴んできたし、練習あるのみよね。

バターを溶かし、小麦粉を加えながら魔法で鍋をかき混ぜてしっかりと炒めるとクッキーのようないい匂いがしてくるので、牛乳を少しずつ加えて艶が出てきたら火を止め、炒めた具材に混ぜて塩で味を整える。

ツナも同様に味を整えたら、氷魔法で冷やして後は形を作って揚げるだけ。

ピラフに人参炒めを作っても消費しきれなかった野菜は……料理の下準備をしたと思ってアイテムボックスへ仕舞っておきましょう。

夕食の時間ネッドさんが今日行ったセルム族の村のことを話してくれた。


「うおっ!コレ美味いな!

あぁ、すまない。それで何処まで話したか、そうそう、今日視察ついでにツユの実も半分程、収穫して保管庫において来たんだ。各3000袋ぐらいか?生産には十分だろう?」


「そんなにたくさん凄いですね!あ、あの試食はどうでした?皆さんのお口にあったかどうか気になって。」


「勿論、大好評だ。食べきれなかった料理は全て置いて行けって…あっ、悪い全部置いてきちまったんだよ。」


「良かった。皆さんに喜んで頂けたのを聞いて安心しました。」


「だから大丈夫だって言ったろ?後は食堂だけだ!毎日じゃ無くても週5日ぐらいでも良いんだ。時間も昼、夜どっちかだけでもリアメルの好きにしていい」


「あの、考えたんですけど、最悪どなたかご紹介頂いてお料理をお教えするか、レシピを書き出してお渡しすれば食堂は何とかなるかなって。そうなったら荒節は私が納品しますよ。それならセルム族の方にも迷惑がかかりませんし、ねっ!いい考えでしょう?」


「イヤ、そう言う事じゃねーんだよなぁ。何っつーか……なぁ……リアメルは、友達と此処にずっといて幸せか?」


「?? うーん、今はすっごく幸せですけど、生活する為には働かないといけないとは思ってます。此処数ヶ月…皆んなに甘やかされてばかりでしたから……でも今日1人ぼっちは寂しいんだなぁって思いました……友人が長くいないせいもあるんですけど、今日はネッドさんも居なかったので、外に行けば違ったんでしょうけど…家の中で1人だと何をしたらいいのか分からないものですね。」


「……ギルド本部で店をだせば、友達がいない日でも賑やかだぞ?俺も店が開いている日は必ず顔を出すし、1人じゃ大変だから調理補助も信用のおける奴を探す。リアメルが人間だからって危害を加えらるなんて考えず、安心していい…だからリアメルもその友人の説得に協力してくれ」


「そう……ですね……でもダメだったらお弁当屋さんでもやりましょうか?それなら1日短時間で少しのスペースが有ればできますからね。」


「弁当…………そうか、弁当から始めよう!リアメルなら保存魔法ぐらいすぐ覚えられるだろう。保存魔法さえ掛ければ、アイテムバック無しでも1日持つ。それなら店の開店準備の間、口コミを広げられるし、俺もリアメルの飯を毎日食える。ギルド本部がどういう所なのか見学もできるしな、あ、でもリアメルが怖いなら、売り子はコッチで用意するから大丈夫だ。納品も、転移魔法と通信魔法さえあればできるから直接来る必要も無いし。」


「イヤ魔法はあまり期待しないで下さい。真っ二つになった鍋見ましたよね…でもお弁当なら、怒られないかも!でも、そこまでしていただいていいんでしょうか?」


「良いんだよ!最初は俺が職員の間に広めて、それから本格的に営業すれば、売り子代も赤字にならないだろ?売り子もまだ、ギルドの最年少部の者に依頼を出せば、そーだな3時間、銀貨1枚で2人ぐらい十分に雇える。薬草収集なんかよりも安全で、安定した収入になるから、継続して雇えばいい。」


「ネッドさんって、スゴイですね。お弁当なら毎日、卸せそうですし、私も友人はゆっくりと説得したいので、売り子さんを雇う形で、是非やらせて下さい。」


「よし決まった。明日は容器を探しに行こう。それで帰って来たら、今日大量に作った料理も使って試作を作ろうぜ。」


「はい。じゃあお弁当用の食材も購入しないといけませんね。お恥ずかしい話しですが、物の値段があまりよく分からなくて……」


「あーうん、昨日の買い物を見てて、そんな気はスゴイしてる。だから明日と明後日、俺のいる間にメニュー何種類か考えて実際に作って価格設定しよう。俺も休みの時はちょこちょこ顔出すから、新作が出来たらその都度、価格は決めればいいしな。」


「はい。ありがとうございます。」


うわぁ、お弁当屋さん楽しそう。でも保存魔法の勉強もしないとか、やる事があるって楽しい。

クリームコロッケもツナと2種類にすれば格安でできるし、エビや魚のフライ弁当、唐揚げ弁当にトンカツ……揚げ物ばっかりだな。

防御膜使ってお弁当開けた時に解除する様にしておいたら丼物もできるかも!


「このカニってのも美味いんだなぁ。でも港でリアメルが一生懸命剥いてたあれだろ?手間がかかるんだよなー」


「そうなんですけど、頑張れば美味しいんですよ。ネッドさんのお土産のおかげでピラフとクリームコロッケが作れました。」


「あぁー遠かったけど、セルム族の村まで行って良かった。そうだ、リアメルが作ってくれた弁当の豆!あれ凄く美味かったんだよ!」


「浸し豆気に入ってくれました?私も好きなんです。昨日商店で見つけたので、大量に購入したんですよ。あれ、気をつけないと食べ過ぎちゃうんですよね。」


コトリと浸し豆を取り出すとネッドさんは喜び、モグモグとご飯を食べ続けた。

うん……明日になれば、一人前の量もはっきりするはず。

私の思い描く5人前がネッドさんの1人前ぐらいかなぁ?


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