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11、熊男さんのお料理教室

今日は朝から大忙し、これからネッドさんとタコ飯、イカ団子のお吸い物、唐揚げに、肉じゃがを作り、醤油や麺つゆの価格設定をしてもらう。

全て下準備は済ませてあるから、あっという間に終わるはずね。


「よし!始めましょうか。昨日作った醤油と麺つゆです。ちょっと舐めてみて下さい、こっちが熟成前で熟成後の実で作った物です。」


「あぁ。全く味が違うし、このままだと塩辛いが、旨味が凝縮されている。」


この世界で日本酒やみりんが販売されている所は見た事がないから、私的に麺つゆが凄く助かるんだよね。

下準備済が済んだ材料をテーブルの上にどさりと出しながら、簡単な調理の説明をしていく。


「煮物のお肉と野菜は炒めてありますから、ここに出汁と調味料をこのぐらいづつ入れて煮込みます。お吸い物は沸騰したら、このイカ団子のたねを入れましょう。ここで使用している調味料はこのぐらいづつです。」


「思っていたよりも使用量は少ないんだな。本当にこれだけで味がつくのか?」


「ええ、煮立ってきたら味見してみましょうか」


「あぁ、頼む。それと、この団子汁に使用する調味料はメンツユではダメなのか?」


「そうですね。麺つゆは甘味もありますし、先日召し上がった、うどんのお汁の味になります。」


「なるほどな。熟成されているかどうかの違いだけなのに、あそこまで味が変わるのか」


後は出来上がった料理の量を見て貰えばいいから、ネッドさんにはお昼まで好きに過ごしていて貰えばいいだろうと思っていたら、料理をしてみたいと言ってくれたので、そのまま手伝って貰う事にした。


ヒグマのように大きな体のネッドさんが唐揚げをちまちまと揚げている姿はなんだか可愛らしかったし、大きな手で握られた、おにぎりは巨大で、私の作ったおにぎりと大きさを比べると、3倍以上は大きかった。

グレイクも料理の間いつも側に居てくれるけど、こんな風に誰かと料理をする事は新鮮で、とても楽しかった。


ぱっと見、体が大きく威圧的に見えてしまうネッドさんだが、好奇心旺盛で子供のように無邪気な事が以外だった。

料理中イカとタコが気になると言うから、調理前の捌かれた状態を見せた時の引き攣った顔は面白かったなぁー。

頑張って貰ったし、お昼は唐揚げ、お吸い物、ポテトサラダにタコ飯を沢山食べて貰おう。


「さてと、たくさんできましたね。煮物は味を染み込ませたいので、夕飯まで我慢して下さいね。お昼ご飯にしましょうか。そう言えばネッドさんって、お酒は飲まれますか?」


「あれを夜まで我慢か…楽しみだな。酒か?そうだな非番の日は飲むが、普段は飲まないかな。それがどうかしたのか?」


「タコとイカで燻製を作ろうと思いまして、お酒を飲む方であればおつまみにと」


「酒を飲まなくとも、そいつは楽しみだな。

だが、あのタコとイカってのは見た目が強烈だなぁ。」


「でも美味しいでしょ? 」


ネッドさんは「そうなんだよなぁ」となんとも言えない表情で苦笑いをした。

ぜひソースを発見してお好み焼きとたこ焼きを食べたい!

でも、醤油でも十分美味しく食べられるから和風ソースの研究から始めよう。

後は一夜干し、これも作りたい!焼いて一味マヨネーズを!って唐辛子も見つけないといけないか…調味料は公爵邸から大量に持ってきている為、外ではどんな調味料が売られているのか知らない。

今度街に出た時には自分の目で確認してみたいから、そういったお店にも立ち寄ってみよう。


「それで、昨日、今日、醤油と麺つゆの作成や調理の工程を確認して頂きましたけど、商品価値はありそうですか?

でも実が手に入ったとしてもやっぱり、ギルドに下ろすまでにはならなそうですよね。」


「イヤ、それを昨日の夜、考えていたんだが、リアメルがそんなに儲けを考えていないのであれば、一つ協力して欲しい事があるんだが、聞いてくれるか?」


「はい」と頷く私を見てホッとした顔を見せたネッドさんはセルム族と言う辺境の奥地で暮らす種族について話し始めた。

何でも彼等はとても弱く、臆病な種族で、山の奥でひっそりと暮らしているそうなのだが、目立った産業もなく、他種族と付き合う事が苦手な為、貧しい暮らしをしていると言う。

そんな彼等の住む山は険しくツユの木が沢山植えられているので、彼等に醤油と麺つゆを作って貰い、売り上げの何パーセントかを私に支払うと言うものであった。


「ちょうどその村の救援依頼があっんだが、頭を悩ませていたんだ。作り方を確認して思ったのは、実の収穫と選別以外は特に難しくはないし、鍋にも特殊な加工を施せば瓶詰も楽になるだろう。その救援依頼してきた主は、風の精霊の多く住む場所にいるし、精霊とも仲がいいから収穫についても大丈夫だろう。後は、ギルドに借入れという形で工場も建設するつもりだから衛生面も安心してくれ」


「でも、そんな貧困の民族が借り入れしてまで大掛かりな工場を建設して儲からなければ…まだ常温でどのぐらい持つのかもわからないし、すいません。私、簡単に考えていました。工場はどのぐらい資金がいるんですか?」


「嫌、この調味料なら絶対に売れるから問題ない。工場といっても規模は小さいし、保存に関しても出荷までは時間停止させた状態で保管ができるからな。トータルで大金貨5枚程度だと思うが、これを年間大金貨1枚返済と考えて、その瓶一つ銀貨1枚と考えれば、あの量の木があれば、全く負担にならないだろう。その為にはこの味を広く広めていく必要がある。」


真剣に見つめられ、「だから店の件は前向きに考えてくれ」とお願いされてしまった。

でもなぁー、この荒節も必要な物で、お店で使う程、量産は……できるかなぁ?

と悩んでいると、明日は港町へ行こうとネッドさんが張り切っていた。


貧しい人達のためになるのなら、私への支払いは要らないとも言ったのだが、そこはビジネスだからしっかりさせないといけないと、ネッドさんに押し切られてしまった。

詳しくは現地を視察して、どのぐらい生産できるのか検討がついてからという事になり、何処かで料理を振る舞っても、この調味料が何で出来ているのかは内緒にして欲しいと言われた。

セルム族の秘伝のタレとして広めれば、ツユの実と分かりにくいだろうし、みんなが真似出来ないだろうと言う事だ。

もっと気軽なものでもとも思うが、皆んなが真似出来てしまえばセルム族の貧困は解決しない、その為にはそういった事も必要なのかもしれない。


「それにしてもこのサラダにタコ飯にイカ団子、なんと言ってもこの唐揚げは本当に美味い。リアメルはすげーなー。こんな飯を食べれるなんて幸せだ!あの時、諦めず彷徨い続けて良かったよ。」


「そんな大げさですよ。今日一緒に作ってみて、そんなに難しい事はしてないでしょう?誰でも作れますから。」


ネッドさんは食事のたびに大袈裟と言ってもいいほどに料理を褒めてくれるが、そんなに褒められると恥ずかしくなってしまう。

麺つゆと醤油があればそんなに複雑な事はしていないのに。

そんな話しをしながら昼食を食べ終えたネッドさんは森へ出掛けたので、私はせっせと燻製作りに勤しんだ。


「ふぅ〜今日はこんなもんかなぁ。じゃあ皆んなまた明日ね。」


「おっ、リアメル外にいたのか。今日はとっておきの土産があるぞ」


「ネッドさんお帰りなさい。とっておきのお土産って何ですか?」


ネッドさんは家に入るなり、アイテムバックから満面の笑みで取り出したのは、大量の肉の塊たち。

えっと…昨日の鳥肉の3倍以上の量はあるけど、まさか1体分のお肉じゃないよね?

私はどんどん出てくるお肉の塊にボー然と立ち尽くした。

だって、こんな量のお肉なんて生まれて初めて見たもん…


「どうだ、驚いただろう。見回りの途中で襲いかかってきたんだが、大物でなー。捌かねーと持って帰って来れなかったんだ。脂が乗って美味いぞ!こいつも料理に使ってくれ!」


「す、凄い量ですね。ありがとうございます。さっそく今夜焼いて食べましょう!」


ネッドさんが浴室に向かうのを見送り、目の前の肉に山に目を向ける。

まさかの1体分のお肉達かぁ…いけない、固まってる場合じゃなかった。

魔物のお肉は名前を聞いても分からないから、少し焼いて味見してみましょう。

色はピンク色で美味しそうね〜♪ジュっと炙り一口、はぁ〜脂の乗った豚肉!今晩はこれで生姜焼きにしよう!

この前もらった生姜もどきでタレを作って、玉ねぎもどきと一緒に漬け込んでいる間に付け合わせのキャベツもどきの千切りを用意して、そろそろお肉を炒めましょう。


ジューっとお肉の焼ける匂いに食欲が湧いてくるなぁ。

タレが少なく煮詰まってきたら、キャベツを敷いたお皿の上にドンっと山盛りの生姜焼きを乗せて完成!

私はキャベツを添えるよりも、下に敷いてお肉の熱でしにゃっとしたキャベツが好きなのだ。

これに肉じゃがと白米、汁物をつけたらボリューム満点ご飯ね。


「先にありがとう。さっぱりした。おぉー美味そうな匂いだな」


「ちょうどいいタイミングでしたね。たっぷり焼いてありますから沢山食べて下さい。もちろんお肉だけじゃなく、下に敷いてある野菜もちゃんと食べて下さいね。」


「もちろん、リアメルの食事は野菜がしっかりと摂れる事がありがたい。仕事柄、食事が疎かになりやすくて、こんなに沢山の野菜や果物はなかなか摂れないんだよ」


ネッドさんは盛り付けた料理をテーブルへと運ぶと、もう待ちきれない様子だ。

2人で頂きますを済ませ生姜焼きを頬張る。

はぁ〜この生姜もどき、前の世界のものとは違ってほんの少しの量で臭い消しも風味もしっかりつくから凄く助かる。

これなら過剰摂取の心配も無いし、あの一つでかなりの料理に使えるわ。

などと考えていると、ふとネッドさんが静かな事に気がつき、視線を向けると黙々とご飯と生姜焼きを頬張っていた。

これはお代わりが凄そうだから、テーブルの上にご飯のお櫃をもう一つを出しておきましょう。


次によく味の染み込んだ肉じゃがを一口!

なんだろう、煮物ってお母さんの味って言うのかな?ほっこりする味なのよね。

私はそんな幸せを噛み締めながら食事をすませたのだが、ネッドさんは丼飯6杯、生姜焼き山盛り2皿、肉じゃが大鉢に2杯に汁物3杯と相変わらず気持ちのいい食べっぷりだった。


でも、待てよ…もしも食堂を経営するとして、誰基準の量が一般的な1人前?

毎日ネッドさんをみていると一人前って何だろう?と思ってしまう程だ。

ネッドさん基準だった場合、私一人ではとてもじゃないけど、お店の料理は作りきれない…なんて、ちょっと遠い目になってしまった。



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