表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私たちカード同好会ですっ!  作者: あさままさA
⬛短編集「語るほどでもなかった!? カード同好会の日々!」
96/101

第十七話「葉月としずくの生配信!(今回はちゃんと配信シーンあります!)」

「どうも、私の名前は青山しずく。好きな食べ物はハンバーガーと焼き鮭のほぐし瓶……あ、瓶の中身が好きって意味で、そんなにアゴが強いわけじゃないよ」

「誰が瓶ごと齧ると思うのさー……。っていうか、いきなり自己紹介で好きな食べ物ってどうなのー? そんな情報与えられたら視聴者は困ると思うけどー」


 文化祭が終わり、しずくが一応はカード同好会部長となった十一月の末――葉月は動画撮影のオファーを同好会メンバーに出していくことを宣言し、まず最初に部のエースへと打診が行われた。


 そして土曜日、普段は自宅にて妹に相手役をやらせて動画撮影しているが、協力者に気を遣ってということか青山宅へとやってきた葉月。


 家へ着くとしずくの私室にて、テーブルを俯瞰できるような位置にカメラを固定して撮影を開始――というか、実は急遽の試みでライブ配信を行っていたのだが、しずくの第一声に早くも葉月は後悔していた。


(土曜日だからこういう生配信を見てくれる人も多いかと思って挑戦したけど……困ったなぁ。しずくって、もえと並んで同好会では生配信には適さない人物だったよー)


 引き攣った表情を浮かべる葉月だが、カメラはテーブル上を映しているので視聴者に顔が晒されることはない。


「あれ、これちゃんと映ってるのかな? 見えてる?」

「あー! こらこら、しずくー! カメラ覗き込んでどうするの! 顔が全世界に晒されてるんだよ、今!」

「ん? 別にカードゲームの公式サイトに、去年決勝トーナメント進出したせいで写真を公開されてるんだから今更じゃない?」

「なんか割り切り方が格好いいなぁー! 羨ましいよー」


 慌て、呆れ、溜め息を吐き出す。視聴者にはあまり伝わっていないかも知れないが、何をしでかすか分からない不思議ちゃんをカメラの前に解き放ってしまったため、葉月は気が気でなかった。


 ――とはいえ、内心ではこうも思っている。


(私がこうして起動修正すれば何とかなるかなー。そんでもって、しずくのネームバリューを使って視聴者数が上がるなら万々歳だよー。さてさて、視聴者数は……って、えぇー!?)


 葉月は現在の視聴者数を見て目を見開き、驚愕する。


(視聴者数が五千人を超えてるー! 確かに生配信のタイトルにも『青山しずく』の名前を入れたけど……凄いなぁ、これほど有名人だったとはー。……しかし、だとするとそんな人数の前で私はしずくをコントロールしなきゃいけないわけか)


 それほどの人数が視聴していると知っても緊張しないあたり、流石は葉月というべき肝の据わり方だが、しずくのコントロールに骨が折れる予感はしているようだった。


「おっと、コメントが続々と寄せられてるよー。えー、なになに……『青山しずくさんって、あの非公認で優勝しまくってる人ですか』だってさー」

「そうだよ。非公認で優勝しまくってる青山しずくだよ」

「さらりと言うから意外と嫌味がないねー。まぁ、実際に優勝しまくってるし、そうなんだよねー」


 葉月がハガキを読み上げるラジオDJのようにコメントを拾いだした一方で、しずくはその問いかけに応答しながらも落ち着きなく何度もカメラを下から覗き込む。


 当然、視聴者に届けられるのは時折、ドアップで写り込むしずくの姿である。


「あー、しずくー。さっきから覗き込んでるせいでコメント欄に『何回もこっち見てる人誰なのwww』って書かれてるよー」

「私の名前は青山しずく。好きな食べ物はハンバーガーと――」

「――いや、もう一回自己紹介しろって意味じゃないってばー。……えーっと、さっきから覗き込んでいるのが青山しずくだよー。さっき本人も言ってたけど、カードゲームの公式サイトに写真とか載ってるから知ってる人もいるんじゃないかなー」


 割と打算的に「しずくにボケさせ、私がツッコむ」と考えている葉月、視聴者に分かりやすいよう補足情報を届け、それに対する反響を確認すべくコメント欄を見つめる。


 すると寄せられたコメントは、


『え、さっきのが青山しずくさん!? 格好いい!』『無表情でカメラ見つめてるの可愛いww』『ホントにあの青山しずくが配信してるー』『え、女子高生なん!? 女子高生なん!?』『青山しずくじゃない方、知能指数低そうですこ』『今年は地区予選残念でしたねー』『スクショしたわ』


 などなど、しずくに対して好意的なものばかりで、ちょっと面白くなさを感じる葉月。


 一つだけあった葉月へのコメントも「すこ」と言いつつも馬鹿にしており、言われた本人は自覚がないだろうがどこぞの誰かとしか思えない発言に聞こえる。


 とはいえ、しずくはゲストなので葉月はあくまで彼女を立てるように動かなければならない。それを改めて自覚し、配信のテーマを進めていく。


「さてさて、それじゃあ今回初めての生配信というわけで不慣れな所はあると思うけど頑張って進めていこうかなー。タイトルにもあるように今日はしずくと対戦してみようかなと思ってるんだー」


 デッキを取り出し、テーブルの上に置きながら葉月は流れを説明した。


 ちなみに生配信のタイトルは、


『【生配信】あの有名プレイヤー青山しずくと対戦配信!【女子高生】』


 なので、かなり葉月は部のエースを客寄せパンダ扱いしている。そして、ついでに自分達の女子高生という期間限定ブランドを前面に押し出しており、結果として先ほどのコメントにも変な奴が混じることとなっていた。


 さて、葉月はデッキを取り出して戦う気まんまんなのだが、一方でしずくは自分の発言に対してレスポンスがコメント欄に返ってくる感覚が刺激的で面白かったらしく、テーブルの上で片肘をついて関係ないことを語り始める。


「最近、幽子……じゃなくて、部活の後輩に教えてもらったんだけど『賽は投げられた』って慣用句、動物の『サイ』じゃないんだってね。知ってた?」

「しずく、突然何を言いだしてるのー!?」

「サイでも投げちゃう怪力の持ち主が現れたことを指すのかと思ったけど、教えられて驚いたよ」


 自由気ままに喋り出したしずくに対し、声高に驚きを口にする葉月。


 そして、しずくのコメントを受けた視聴者からは、


『え、何? 青山しずくさんって天然なの?』『さらっと言う所が可愛いwww』『なんか大会で見かけた時とギャップあるなぁ』『頼む、教えてくれ! ほんとにJKなん!?』『葉月とかいうクソ可愛い生き物をすこれwww』『意外性あっていいですね~』『本当にそんな勘違いしてたのね……』


 などと、やはり好意的。


 何だかんだ自分の動画チャンネルをジャックされたような気がして面白くないらしく、ぐぬぬと表情を歪める葉月。


 一人だけ自分を推す声があることに目も向けず、しずくに人気と流れを完全に持っていかれたことに焦りを感じる。


「あとこれも最近もえ……じゃなくて、部活の後輩から聞いたんだけど、かき氷って全部同じ味なんだって。ビックリだよね。私、結構そういう雑学みたいなの好きでさ」

「かき氷はただの細かくした氷だからいくら作っても同じ味なのは当然じゃないー! 味が同じって言われて驚くのは大抵、シロップの方だよー! 間違ってないけど間違ってること吹き込んでるのもえっぽいなぁー」

「もう一つ、これもさっきの後輩から聞いたんだけど、ウニに醤油でプリンの味になるらしいんだよね。それと同じでメロンにハチミツで……えーっと、何だっけ?」

「多分キュウリだね……いや、違うんだけど。ウニに醤油は普通にウニだし、メロンにハチミツはひたすら甘いだけだよー」


 間違った知識を吹き込んで遊んでいるもえに呆れながら、葉月はどんどんと寄せられるコメントを眺める。


(……うわぁ、誰も早く試合をしろって言わないよー。しずくがこうやってやりたい放題してるのが楽しいのかなぁー。視聴者数はどんどん上がっていくけど、複雑ではあるねー)


 とはいえ、しずくの謎雑学披露も一段落したようだったため葉月は咳払いをして仕切り直しをしようとする。


 ――も、しずくはテーブル上を撮影しているスマホを手に取って部屋の一部分へと向ける。


「そういえば夏休みだったかな? 友達にUFOキャッチャーでぬいぐるみを取ってもらったんだけど、それがあんまり可愛くないって言うんだよね。どう思う?」


 ベッドの上に転がるブサイクな顔をしてブタのぬいぐるみを写しながらしずくは視聴者へと問いかける。


「こらこら、しずくー。何を勝手に動かしてるのさー。対戦するためにせっかく固定したんじゃないー」

「まぁまぁ、葉月さん。焦らなくたって視聴者は逃げないよ」

「いや、内容がつまらなかったら普通に逃げるよー!」


 好き勝手に自分の部屋の内部を配信するしずくからスマホを奪い返し、先ほどまでの位置に固定する葉月。


 やりたい放題なゲストに嘆息しながらコメント欄を見てみると……、


『ブサ可愛いっていうのかな? ちょっと変わった趣味ですね』『いつも配信してる部屋より何だか綺麗ですねwww』『あの正確無比のプレイをする青山しずくがぬいぐるみって可愛いwww』『あ、来たわ! これJKの部屋だわ』『それよりこのチャンネルの主を映してくれ~』『部屋綺麗ですね~』『それちゃんと飾ってくれてるのね!』


 などと、普段撮影で僅かに映り込む葉月の私室との差を指摘したものが散見された。


(……うわぁ、他人の家で撮影するとそういう所を指摘されるのかぁー。確かに私も最初は思ったよ? しずくって意外と部屋、綺麗にしてるんだなってー)


 そう思いながら葉月はしずくの部屋を改めて眺める。


 パーソナルカラーということなのか、青を基調とした寒色系でまとめられた部屋は少しボーイッシュ。だが、ぬいぐるみが効果的なのか女の子らしさは確かに存在していて、さらには葉月のように机の上にカードを積んだりもしておらず、片付いていることが綺麗という印象を与えていた。


(くぅ~、いいなぁー。どうしたって私の家は年季の入った和式の家屋だから部屋の中を映そうものなら『小汚いww』ってコメントが流れるだろうなぁー。羨ましいー!)


 ――さて、このしずくをゲストに据えた撮影の後、葉月はもえにもオファーするのだが……自宅に招いて撮影し、生配信という手段を取らなかったのは今回の反省を生かして……というか、痛い目をみて学習したということなのだと思われる。


 ちなみに、このしずくとの生配信は対戦を一切行わず雑談のみだったのだが、リアルタイムでなくても見られるように残されたアーカイブは葉月の他動画の再生数を追い越してぶっちぎりトップとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ