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私たちカード同好会ですっ!  作者: あさままさA
⬛特別編その一「新井山ひでりのひねくれな日々」
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第十四話「約束の日! しずくとひでりのクリスマスデート!?」

 12月25日――前日はクリスマスイブということで新井山家は知り合いを集めての盛大なホームパーティー。


 賑やかな雰囲気に包まれ、豪華な食事とプレゼント……楽しいことづくしの一日のはずだが、今年のひでりは翌日に約束されたしずくとのデートのことで頭が一杯だった。


 楽しみ過ぎて昨晩は寝られず、完徹のまま今日を迎えた。

 しかし、ひでりの目は冴えており、眠気は一切ない。


 そんなわけでしずくと待ち合わせをするべく、お互いの家から中間の位置にあって場所もよく知っているカードショップの前にて立ち尽くすひでり。


 現在、十一時四十分。約束の時間を四十分も超過しているが、今日まで見てきた青山しずくという人間のルーズさを考えればよくあることなのでひでりは気にしない。


(それにしても、デートって友達が遊ぶ時にも使う言葉なのかしら? 青山しずくはどういうつもりで……? それが気になって眠れなかったし、美麗とかなでの一件であの場を取り仕切ってた時も、割と試合中はそのことばっかり考えてたし……)


 スマホを取り出して検索画面に「デート 友達」と入力するひでり。


 すると出てきた検索結果の中にはひでりのように軽い感じで気になる相手から「明日はデートだね」と言われて「相手にその気はあるのでしょうか?」という質問を行っているサイトが。


 その質問についていた回答が「その気がなければデートという言葉は使わないでしょう」であったため、ニヤついた表情で、


(困るなぁ……私はそういうつもりなんてないんだけど。でも、どうしてもっていうなら……?)


 と、自分にとって都合のよいネット情報に踊らされるひでり。

 そんな時――、


「どうしたのニヤニヤして? ちょっと気持ち悪いよ?」

「はひっ!? あ、青山しずく!? いつからいたのよ!?」


 突如として声をかけられ、内容を見られまいと反射的にスマホを抱きしめるようにして背筋をピンとさせるひでり。


 気付けばひでりの目の前に立っていたしずくは少し懐疑的な表情。


「いつからって、今来たところだけど……待った?」

「あんた待ち合わせにおける定番のセリフを一人で全部言ったわね……」


 別にしずくはいつものような不思議ちゃん成分満載な発言をしたわけではないのだが、ひでりとしては「今来たところ」をとっておいて欲しかったのかも知れない。


 さて、二人揃ったため移動開始。


 いつもの流れでショップの中へと入ろうとするしずくの裾を引いて静止させ、商店街内を歩いていく。


 ちなみに今日は二人であちこちに行くため邪魔になることを想定したのか、しずくは自転車ではなく徒歩でショップまでやってきていた。


「地元だからあんまり新鮮味がないね。もっと細かく予定を立てて、どこか違う場所へ遊びに行く方がよかったかな?」

「新鮮味がないっていうけど、私達って基本的にはカードショップしかいかないじゃない。普段行かないところへ赴けば、新鮮味だってあるんじゃないかしら?」

「確かにそうかも。昨日はずっと一日家にいたし、今日は外で思い切り遊びたいね」


 昨日、クリスマス会を自宅で行ったため一歩も外出していなかったことを思ってしずくは語った。


「そういえばそのクリスマス会、どうだったのよ? 楽しかった?」

「来年からは私がバトルマスター・ハズキになることが決まった」

「何でそんなことに!? 宴会の席で気が大きくなった緑川葉月からのパワハラ!?」

「プレゼント交換で衣装が回ってきたんだよ」

「クリスマス会って廃品処分市だったかしら……?」


 しずくに訪れた不幸を思ってひでりは腕組みをして首を傾げる。

 だが――、


「まぁ、私としても乗り気だからいいんだけどね」

「何で乗り気なのよっ!」


 どこか満足気な表情を浮かべるしずくに対し、ひでりは「なんでやねん」の挙動をしつつツッコんだ。


        ○


 商店街を歩いて十分ほどで見えてくるこの辺りで一番大きなショッピングセンター。


 ブティックや飲食店など数多の店舗を一つに束ねる巨大商業施設ではあるが、二人はこういった場所への興味が薄いためやってくることはあまりない。


 他の同級生からしてみれば、週末になれば決まって訪れる場所のはずなのだが……。


 ちなみにひでりは洋服を自分で購入することがない。こういう場所で売られているものよりも、もっと高価な私服を家の人間が山ほど購入してくるからだ。そして食事も家で食べる方が何倍も上等で、そして美味い。


 しずくはあまり衣服に興味がなく、カードにお小遣いを注ぎ込んで余った金額を携えてユニ○ロに行くので、こういった場所で服を選んだりはしない。そして、外食もファストフードをこよなく愛する……というわけで二人共、新鮮さは割と近くで、そして大規模な形で存在していた。


 さて、そんなショッピングセンター内にてひでりとしずくは慣れないながらも一般的な女子高生のような触れ合いを楽しむことに。


 お互いに服を選び合うこととなり、ひでりは意地悪にもしずくが着ないような可愛らしいフリル満載のワンピースを手に取って試着させた。


 しかし――、


「悪くないけど、この恰好だとロードバイクで走り回るのは厳しいね」

「ど、動じない……ですって!?」


 という感じでしずくの感情、その起伏のなさを改めて痛感させられた。


 そこから衣服ばかりを見ていることに疲れた二人はショッピングセンター内にあるゲームコーナーへ。


 しずくが欲しそうなブサイクな顔をしたぬいぐるみをひでりが取ってあげたり、二人で遊びに出た記念ということでプリクラ撮影。


 今のところしずくの語った「デート」という言葉に相応しい段取りで進んでいるため、ひでりはその言葉が本当に自分の思ったとおりの意味ではないかと胸を高鳴らせていた。


 まぁ、しずくにそのようなつもりはないのだが……。


 ゲームコーナーで遊び終わる昼食時を少し過ぎた時間となっており、フードコートへと移動。ランチタイムと相成った。


 そこではひでりが、


「へぇ、こういう所の食べ物ってこんな感じなの……面白い味ね!」

「面白い味って言う割には笑ってなくない?」

「そういう意味の面白いじゃないわよ……」


 ――と、舌が肥えているがために語ったオブラートを同席した人間に破かれるという一幕もあった。


 そこから昼食を終えるとショッピングセンターを出て、二人で行き先を相談。


 同級生達は普段、どんなところで遊んでいるのかという話になり、相談の結果――カラオケへ行くこととなった。


 受付を済ませ個室へ入って席に着くと、ひでりは見たこともない機械を手にして不思議そうな表情。


「このタブレットみたいな機具で曲を注文するのかしら……?」

「そうだよ。それで検索できるって凄い技術だよね……いつだったか来た時には驚いたよ」

「あんた来たことあるんだ?」


 少し驚いた風にひでりが問うと、しずくは首肯する。


「カード同好会で一度ね。あともっと昔にも家族と来たかな」


 詳細を語ればしずくが個人戦の地区予選を悔し涙で敗退したあと、夏休み中にお疲れ様会ということで葉月が企画して行ったのだ。


 このお疲れ様会でも色々あったのだが……それはまた別のお話。


「そうなんだ。……ちなみに、五人の中で誰が一番歌が上手いの?」

「ん? 幽子かな。なんか声とか使い分けて歌ったり本格的だったよ」

「意外……と思ったけど、なんか分かる気がするわ」


 以前、しずくの声真似を披露されたことを思い出しながら、ひでりは引き攣った表情で納得を口にした。


 そこからお互いに初めて歌声を聴かせることに。


 しずくが先手となったのだが、歌い出したのは珍妙な歌詞をしたラップ。いつもの平坦な口調を残しながらリズムに乗っていく。


 ちなみにこの曲、カード同好会でカラオケに行った時に、その日一番の話題となったほどの「とある要素」が隠されている。


 だが、ひでりにはピンとこないらしく、気持ちよさそうに歌っているしずくを見て微笑ましくなっていた。


 さて、しずくの曲が終わってひでりの番。家柄もあって歌はきちんと教わっているため普通に上手だったりする。


 なので、その美声をしずくに聞かせようとマイクを握る――のだが、ひでりが教養のため習っていたのは声楽。オペラ歌手のような迫力とクセをもった歌い方で流行りの曲を熱唱するため、しずくがまさかの吹き出しての大爆笑。


 ひでりは顔を真っ赤にしつつ、伸びやかな歌声を響かせた。


        ○


 フリータイムだったため、知っている曲をありったけ歌って四時間も騒ぎ続けた二人。


 声も枯れ、お互いが話すたびに笑いがこみ上げてくる楽しげな雰囲気のままカラオケ店を出ると、外は夜の帳が下ろされ、空には星屑がちらばる時間。


 カラオケでカロリーを大量に消費したのか、空腹感を感じるひでり。


「さっきお昼を食べたと思ったのに、何だかお腹が空いてきたわね」

「どこかで夕食にする?」

「それもいいんだけど……」


 しずくの問いかけにひでりは彼女から視線を逸らし、頬をポロポリと掻いて恥ずかしそうに顔を赤らめる。


 今日、ずっとひでりが考えていたこと。それを提案することの恥ずかしさと、実行された時を楽しみに思う気持ち……それがより一層、今日をそわそわとさせていた。


 そんな提案を、ひでりは口にする。


「何ていうか……その、えーっと……よかったら、ウチに……泊まりに来ない?」

「ん、いいの? 面白そうだし、行ってみたいな」

「そ、そう!? じゃあ決まりねっ!」


 しずくのあっさりとした回答に、両手を合わせて嬉しそうな表情を浮かべるひでり。


 いつぞや、しずくと友達になったら――という妄想をひでりはしていたが、それがことごとく叶う日となっていた。


 ――さて、お泊り会の取り決めは具体的な所へと進み、しずくはひでりの家で泊まりに行くべく着替えなど荷物を取りに帰るという話に。


「今日はひでりと行動すると思ったから電車で来たんだよね」

「そうなの? それはまた随分と危険を冒したものね……」

「うん、今日も一度失敗してるからね。……だから、無事に家へ帰ってまた戻ってこられるように祈っててくれる?」


 しずくの語った言葉に今日待ち合わせをした時のことを思い出し。ひでりは肩を落として嘆息する。


「家から車を呼んであげるわよ……。遅刻した理由ってそれだったのね」



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