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NO STRESS 24時間耐えられる男の転生譚 ~ストレスから解放された俺は常人には扱えない反属性魔法を極めて無双する~  作者: 天宮暁
第五章 15歳

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48 報告

「……待ってくれ。情報が多すぎて消化しきれん」


 美貌の生徒会長が、額を押さえてそう言った。


 場所は生徒会室だ。

 といっても、言葉から連想されるような、前世の高校の一室とはかけ離れてる。

 高い天井の円形の空間がすり鉢上にへこんでいて、その底の部分に丸いテーブル――円卓がある。

 それこそアーサー王の円卓の騎士がぐるりと周囲を囲めそうなサイズの円卓だ。

 大企業の重役向けの会議室――あるいは、国連のなんとか委員会が開かれていそうな空間だった。


 円卓には、生徒会円卓が勢揃いしていた。


 俺の正面、中央にいるのが生徒会長にしてウルヴルスラ学園騎士団長エクセリア=サン=セルブレイズ。

 白い肌と明るい青の瞳の美人である。

 いかにもサンらしい明るい金髪が、ゆるくウェーブして豊かな腰までを覆っていた。

 常に堂々としていて、貴族然とした立ち居振る舞いをしているが、傲慢なところはなく、カリスマ的なリーダーとして慕われている。

 ハントから聞いた話では、あまりにカリスマがありすぎるせいで男が寄り付かず、むしろ女子生徒から言い寄られることが多いらしい。……ほんっとに無駄なことに詳しいやつだ。


 その隣に静かに座ってるのが、エクセリア会長の股肱の臣といえる副会長バズパ=ヌル=トワだ。

 ラシヴァを入学式の時の闘戯で叩きのめした男装の麗人だな。

 肩口で切りそろえた黒髪は、ややキロフを思い出させる髪型だが、男装してるとはいえ女性らしさははっきりしてる。

 今は黒く輝く瞳を俺に注ぎ、俺の話の真贋を見さだめようとしていた。


 会長から見てバズパ副会長の反対側に、初めて見る人物が座っていた。

 ストレートの黒髪とブラウンの肌。

 銀縁の眼鏡が特徴的な、小柄で物静かな美少女だ。

 最初に紹介された時には、生徒会書記メイベル=ヌルホド=キケリと名乗っていた。学術科だが、円卓の一人に数えられるらしい。


 その他に、入試の時に最初のガイダンスをやっていた男子生徒(武術科)と、俺の入試の試験官だった女子生徒(魔術科)が、バズパとメイベルの隣に座っている。


 この五人が、今の円卓のフルメンバーってことになるな。


 その向かい側に、俺とロゼが立たされ、長い長い説明をしてきた、というわけだ。


「信じがたい話ですが、各生徒騎士からも裏を取っています」


 副会長のバズパが会長に言った。


(バズパはトワ家の出身だ。あのセルゲイの孫娘だとか)


 この手の情報確認は得意なのだろう。


 円卓に座った、武術科の男子が言った。


「ですが、彼は認識阻害や暗示の魔法が使えるのでしょう? 全員で口裏を合わせることも可能なのでは?」


「それは考えにくいです」


 と言ったのは、書記のメイベルだ。


「なぜそう言える、メイベル?」


「あなたの仮説は、彼がそのような魔法を使えることを前提にしています。つまり、あなたは自分が疑っていることを前提にしている」


「ぐ……だが、彼に嘘がないとは言い切れないだろう。入試の結果が目立たないよう、試験官である彼女に認識阻害をかけた一件もある」


「その一件があるからこそ、彼にそのような力があることは確実なのです。

 帝国兵を発見し、捕獲した流れは、チームメンバーから確認が取れています。

 霊威兵装の件は、ユナさんという生き証人がいる。

 帝国丞相キロフや『ゼーハイド』との戦いは、彼らに合流したばかりの、信頼のおける生徒騎士たちが目撃しています」


 メイベルの言葉に、エクセリア会長がうなずいた。


「さすがに、これだけの状況証拠をすべて操作できるとは思えんな。もしそんなことができるのなら、わたしは自分の正気をも疑っておかねばならんだろう」


「ザスターシャの元王子であるラシヴァは、王家に伝わるブレスレットのおかげで、彼の精神操作を免れたという話です。彼がすべて事実だと証言している以上、エリアック君を疑う合理的な理由はほとんどありません」


「ほとんど……か」


 メイベルの判断に、バズパがつぶやく。

 「疑う余地があれば疑う」のがトワの家というもの、とセルゲイが言ってたからな。

 バズパはあくまでも俺を疑っていくつもりだろう。


「試験の件は、改めて謝罪します」


 俺は会長と、試験官だった女子生徒に頭を下げる。


「うむ。たしかに問題ではあるのだが、試験そのものに不正があったわけではない。

 ただ、認識阻害についてはなんらかの処分を下すのが筋だろう。

 しかし、処分を下せば、認識阻害などという危険な魔法の存在を公表することになってしまうな」


「いまでも不思議です。なぜ、1回目でターゲットを破壊するなどという歴史的な記録に疑問を抱くことができなかったのか……」


 試験官だった女子生徒が、険しい顔でそうつぶやく。


「わたしも、寮で君たちと話した後、エリアックの試験結果を調べてみて驚いた。

 ローゼリアが複数のターゲットを同時に破壊したのに比べれば、たしかに目立たないかもしれない。

 だが、エリアックの記録とて、前代未聞に近いものだ。ましてエリアックはサンヌルなのだしな」


「ロゼがこれだけ目立つなら、俺もそこまで実力を隠すことはなかったんですけどね」


「これだけの力だ。手の内を隠そうとするのは当然だろう。過ぎた力を見せつければ、いらぬ嫉妬を招きかねん。帝国への対策という君の言い分も、決して杞憂とは言えないしな」


 そう言ってエクセリアはバズパに視線を向けた。


「……よろしいのですか、会長?」


「ああ。彼らには知っておいてもらおう」


「わかりました」


 バズパが俺たちに向き直る。


「実は、学園騎士団内部に、帝国の間諜(スパイ)が入り込んでいるという情報があった」


「なんですって」


「君の懸念は当たっていたということだ。もっとも、まだ情報があるという段階にすぎないのだが」


 そこで、会長が口を挟む。


「堂々と騎士団領に入り込んで霊威兵装を持ち帰ろうとしていたくらいだ。ひょっとしたら、こちらの巡回情報が漏れているのかもしれんな」


「今年の新入生の身元を洗ってはいるのですが、いまのところ不審な者は見つかっていません。ミルデニアの貴族ならまだしも、他国からの留学生となると、わたしでは調査が及びません」


「ウルヴルスラが問題なしと判断した以上、帝国のスパイが紛れ込んでいるとは思いにくいのですが」


 と、メイベルが不服そうに言った。


「ウルヴルスラの判断も、絶対とは言えないだろう。それとも、ウルヴルスラの適合者として、メイベルには何か特別な所見があるか?」


「いえ、そういうわけでは」


 エクセリア会長と書記のメイベルの会話は、俺の知らない何かを含んでるようだった。


 会長が咳払いして話題を変える。


「それにしても、ユナの件は驚いたな」


「そうですね。まさか、二百年以上前の生徒騎士であるユナさんが、まだ『在籍』している扱いになっていたとは」


 メイベルが言うのは、ユナがウルヴルスラへの入場を許されたことだ。


 かつて生徒騎士だったとはいえ、学生証を持たないユナが、ウルヴルスラに入れるのか――俺たちは、その問題をすっかり忘れていた。


 だが、ユナがウルヴルスラのエネルギーフィールドに近づいたところで、ウルヴルスラからアナウンスがあった。

 例の無機的な声で、


『おかえりなさい、ユナシパーシュ。学生証を紛失しましたか?』


 と声が聞こえ、みんなが驚いた。


 ユナは特別にエネルギーフィールドを通され、その先で学生証の再発行を受けた。

 魔術科二年教室無所属ユナシパーシュ=アマ=ユナシパン。

 学生証にはそう記されていた。


「結果的に、ユナがウルヴルスラに在籍していた……いや、在籍している(・・・・)生徒騎士であることの裏が取れた」


「ウルヴルスラのアーカイブを調べたところ、ユナさんは第794期生だったことが判明しました。二年生にして、当時の円卓に所属していたそうです」


「俺たちが1035期生だから、241期前ってことですね」


 俺たちが一年、ユナが二年なので、ユナが霊威兵装に取り込まれたのは、二百四十年前の出来事ということになる。


「当時はザスターシャ王国が鉄鋼技術を背景に勢力を伸ばした時期でした。当時のザスターシャ王は、この学園都市ウルヴルスラの支配権をミルデニアから奪うべく侵略を決行。迎撃に出た生徒騎士から多数の犠牲者が出たと記録にはあります」


「『悲劇の世代』として有名な話だ。まさか、その生き残りがいたとはな」


「ウルヴルスラは、彼らの死を悼んで、彼らの在籍記録を抹消しなかったのかもしれません」


「慈悲深き学園都市の精霊に感謝を」


 円卓の人たちが、手を組んで祈るように目を閉じる。


 一方、俺はべつのことを思っていた。


(ひょっとして、ユナが霊威兵装の中で消滅を免れて生きてることを、ウルヴルスラは知ってたんじゃないか?)


 任務中に帰還が困難になったが生存している。

 帰還できないだけの特別な事情があるから、在籍期間の上限には抵触しない。

 だから、ユナの在籍記録を残していた。

 メイベルの感傷的な説明よりは、そっちのほうがしっくりくる。


 それはそれとして、もうひとつ気になるフレーズがあった。


「学園都市の精霊っていうのはどういうことです?」


 この世界で「精霊」といえば、六大精霊のことだ。

 地水火風光闇。

 これ以外に精霊が存在するという話はない。


「それは……いずれわかることだろう。君たちが円卓に入れば、だが」


 エクセリア会長が、机に肘をついて手を組み、それを顎に当てて、俺とロゼに目を向ける。


「非常時だ。君たちが生徒会円卓に入ってくれるのなら歓迎する。これは、正式な円卓への勧誘だと思ってくれていい」


 エクセリア会長の言葉に、バズパとメイベルを除く円卓の二人が目を剥いている。


(副会長と書記には事前に話してあったみたいだな)


 エクセリア会長、バズパ副会長、メイベル書記の三人が、円卓の核となるメンバーなのだろう。

 実際、魔力を見ても、他の二人はこの三人から一段落ちる。

 もちろん、円卓にいるくらいだから、一般生徒よりは格段に上なのだが。


 この学園の生徒騎士なら、欣喜雀躍する申し出だった。


 だが、俺は静かに首を振る。


「すみません、会長。俺が想定してる『非常時』は、会長の想定よりもさらに最悪なものなんです。俺とロゼが指揮をとって、会長たちには俺たちの下で働いてもらいます」


「な、なんだとっ!」


 バズパが椅子を蹴って立ち上がった。


 エクセリアはそれを無言で制し、面白がってるようでもあり、実は怒ってるようでもある目つきで、俺の顔をまじまじと見つめてくる。


「わたしでは、これから起こる事態に対応できないと? わたしも舐められたものだな」


「舐めてはいません。十分に実力のほどを承知の上で、それでもまだ不足だと思うだけです」


「ふむ……。

 だが、いくら逸材とはいえ、入りたての新入生にそう言われて『はい』とうなずくには、わたしはいささか自負がありすぎる。

 もしこの座がほしいなら、実力を示してもらう必要があるが?」


「当然です。正直、人を率いる器って意味では、会長の足元にも及びませんよ。俺も、ロゼも。

 俺たちには、今の体制下で、まだまだ学ぶべきことがたくさんある。そのことを、俺は幸運なことだと思います」


 強くなるためのチャンスが、すぐ手の届くところにあるんだからな。


 キロフとの戦いでは、不利を痛感させられた。

 俺はこの学園で、もっと強くなる必要がある。

 俺の実力を上げることはもちろん、チームとして、あるいは軍団として戦う方法をも身につけていく必要があった。


「ふっ……いい意気込みだ。

 それならば、あえて円卓には取り込まず、挑戦者の立場でいてもらうのも、学園のためになるかもしれないな。

 自慢ではないが、いまの円卓は強すぎる。挑戦者が萎縮してしまうのだ。円卓とそれ以外の差が、大きく開いてしまっている」


「そのせいで、円卓は適切な対戦相手に事欠く始末だ。

 これでは、自分たちの実力を磨こうにも限界がある。

 最近は、円卓を二チームに分けて戦うくらいしか、まともな実戦経験が積めなくて困っている。

 君たちの奮起に期待しよう」


 会長の言葉を、副会長が補足した。


「胸を借りるつもりで挑ませてもらいますよ。

 ところで、捕虜にした帝国兵はどうなさるおつもりですか?」


 ネルズィエンはキロフに攫われた(というか本国に連れ帰られた)が、その副官である老将ジノフや二十三名の帝国兵は、そのまま学園騎士団の捕虜になっていた。

 捕虜専用の身分証をウルヴルスラが発給し、都市内の捕虜収容所で拘束されている。

 学園とはいえ騎士団なので、戦争となれば捕虜を取ることは十分ありうる。都市内に専用施設があるのはそのためだ。


「こちらで尋問を行ったのちに、中央に引き渡すことになろう」


「処刑されたりするんですか?」


「確実なことは言えないが、帝国内の情報は欠乏している。貴重な情報源として、それなりの扱いを受けるはずだ。

 心配なのか?」


「え、いや……」


 考えてみるまでもなく、彼らは敵兵だ。

 俺が心配するのもおかしいだろう。

 ネルズィエンは、自分を信じてついてきた部下を殺さないでほしいと懇願していた。

 でも、捕虜の扱いを決定する権利は俺にはない。


「ゼーハイドについては何かわかりましたか? 試験の時の仮想ターゲットがゼーハイドとそっくりだった理由は?」


 俺の質問に、会長が書記のメイベルを見た。


「ウルヴルスラは、あれこそが真の敵だと伝えてきました。ウルヴルスラにとって、帝国は仮想敵ですらないようです。所詮それは人の建てた国であり、特殊ではあるが特異ではない、と」


「いや、言ってることがさっぱりわからないんですが……」


「これ以上は、今の段階では言えません。

 エリアック君がさっきの傲慢な放言を取り消し、エクセリア様に土下座して詫びた上で、どうか生徒会円卓に加えてくださいと乞うのであれば、教えてあげてもいいですよ」


 メイベルが、銀縁眼鏡の奥の黒い瞳を光らせてそう言った。

 口調は平坦だったが、それだけに押し殺された怒りが伝わってくる。


「は、はは……。じゃあ、その時を待つことにしますよ」


「エリアック君がわたしたちに屈する時を、ですか?」


「いえ、俺たちが円卓を倒す時を、です」


 俺とメイベルが睨み合う。

 エクセリア会長はそれを苦笑しながら眺めていた。

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