第4話【ユキと恋と】
前回出したのを少し変えました。
『気付けば後ろの席
用も無いのに振り返ってばかりだった
いつもチラ見で
あなたのことはっきりと見ることもできなかった
好きになったら負け
誰がそんなの決めたんだろあまりに本当すぎて
涙が止まらないんだけど…
※好きです 会いたいです
そんなたった少しの言葉が後少しだけ言えないんです
手を繋ぎたいです
笑いあいたいです
そんな妄想が
いつか本当にならないかな…
お別れなんて言いたくないそれでも
別れはあと少し先のこと
いつも交わす挨拶
少しの会話 それがもうすぐで思い出に変わる
さよならで終わり
なんて簡単な恋なら
もうとっくに捨てきれたはずなの…
※リピート
いつの日か
あんなことがあったね、
なんて思えるようになるまで
私はあと何回涙を流せばいいんだろう
※リピート
あなたを本当に忘れることができるまで
それまであなたを
好きでいいですか?』
この曲は、学生時代の自分の片思いをイメージしたのだ、とユキの歌詞カードに記されていた。
陽菜にとっても、これは結ばれなかった恋で、所謂せつない系に部類されることは分かっていた。でも陽菜は、今までに失恋や片思いなどを味わったことがなかった。
別に、モテるから、告られても断っているから、といった理由ではない。(そういった経験がないわけではないが…)
男子をカッコイイと思ったことがない!とは完全には言い切れないが…
「〇〇君はカッコイイよね」
「◇◇君は性格良いよね」
という女子の反応が、全く理解できないからだ。
−−人が何かに熱中してる姿って、みんなカッコイイもんじゃないかな?
性格だって、合う人もいれば、そうでない人もいるんだし…。
別に自慢じゃないが、陽菜だって今までに二、三人くらいには告られたことがある。しかし、その度に同じ理由で断っているのだ。
『私なんかのどこがいいの?』
『どうして私なの?』
『人を『好き』になるってどういうことなの…?』
そして相手が必死になって答えを返すと、
『ごめんなさい。だけど私はあなたに対してそこまで思うことはできない』
と締めをくくる。
毎回同じ答え。
…つまり、陽菜は、好きな人がいたためしがないのだ。
いつか運命の人が現れるから!
とか
私には恋なんて考えられない!
などではない。
純粋に、異性に興味がないのだ。
カッコイイなら、すごいね、で終わり。
性格良いならよかったね、で終わり。それ以上何も思わない。
陽菜はユキの曲を好きではいたが、歌詞に書かれてある気持ちまでは、読み取ることができなかった。
−−−恋がしたくない、わけではないんだよな…。
でも、もしかしたら、恋も知らないまま…このまま大人になっていくのかな、とさえ考えたことがある。
陽菜は自分だけが恋に無関係な存在だとすら思っていたのだ。
このまま、どこか客観的に第三者的な存在として恋を見ていくだけなんだろう、と。自分には何も関係ないだろう、と。
これからも、ずっと。
実行しようにも想う相手がいない。
行動に移す気力もない。
結局はいてもいなくても、変わらないんだ、と。
誰かをカッコイイと
誰かを素敵だと
誰かに会いたいと
思うことは確実にないだろうと…
そう諦めていたのだ。
そう、
彼に出会うまでは。